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映画評論家町山智浩アメリカ日記

町山智浩の映画解説リストです。
現在約800本の映画が50音順に整理され、解説へのリンクが貼られています。
お探しの映画解説はたいていここで見つかると思います。


週刊文春の連載「言霊USA」はオンラインで読めます。


町山智浩のWOWOW映画塾、YouTubeで観られます!

町山智浩の映画塾2(101〜200)

町山智浩の映画塾3(201〜)


TBSラジオ『たまむすび』に毎週火曜日午後3時から出演中です。


過去のたまむすび

「キラ☆キラ」はYouTubeに残ってます

ロフトプラスワンでタランティーノと公開飲み会(無修正)

2010-10-21 特電ポッドキャストで「去年マリエンバートで」

お待たせしました。ポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」更新しました。

史上最も難解な映画のひとつといわれる「去年、マリエンバートで」についてです。http://enterjam.com/?eid=954#sequel

なんでこんな昔のフランス映画のことを話すのか、というと、「インセプション」のポスターが「去年、マリエンバートで」のポスターと似ているからなんですね。

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ちなみに「マリエンバートで」のありえない影は地面にペイントしたそうです。

ぼくの話は例のごとく際限なく横滑りしていきますが、最後は仮想現実に命を取られていくという「インセプション」の話になんとなく戻ります(そうか?)。

うっかり「カサーレスはマルケスの弟子」と言ってますが、正しくはボルヘスの弟子です!

だからクリストファー・ノーランが「インセプション」のヒントを得たボルヘスの「円環の廃墟」とつながるのに、うっかりしました! 録音し直そうと思ってます。

収録した後で気づきましたが、話に出てくる「モレルの発明」という小説はクエイ兄弟の劇映画は、「ピアノ・チューナー・オブ・アースクエイク(地震のピアノ調律師)」の原案にもなっているそうです(だいぶ違う話ですが)。

このクエイ兄弟の映画、俺、ずいぶん前のトロント映画祭で観たなあ。

「モレルの発明」は1974年に映画化されていました。

↓これは主人公が、モレルが発明した完全映画で生物を撮影するシーン。

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ブラーが「去年マリエンバートで」にオマージュを捧げたPV↓

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2009-09-16 マイケル・ムーアの新作「キャピタリズム(資本主義)」

マイケル・ムーアの新作「キャピタリズム:ア・ラブ・ストーリー(資本主義というラブストーリー)」をトロント映画祭で見てきました。

今回の金融危機とサブプライムローンをテーマにしたドキュメンタリーです。


ニューズウィーク日本版ウェブの連載「やじうまUSAウォッチング」で、感想を書きました。

http://newsweekjapan.jp/column/machiyama/2009/09/post-60.php

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予告編

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2009-09-11 アフガニスタンのスター誕生というかスカウト・キャラバン

さっきカナダのトロント映画祭に着きました。

今、空港からのバスの中で更新してます。

日曜日の昼までトロントにいます。

TBSラジオ毎週金曜日午後3時3分からの「キラ★キラ」、

本日は「アフガン・スター」というドキュメンタリー映画について話します。

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タリバン政権下で音楽やテレビを禁じられていたアフガニスタンにTVタレントを探すべく、勝ち抜き歌合戦番組が始まった! 全国民の3分の1が観たその番組「アフガン・スター」の決勝までの三ヶ月を追った記録映画です。

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ホテルにチェックインしたので、食事に行ってきまーす。

2005-10-10 オスカー有力候補◆悒ポーティ』のフィリップ・シーモア・ホフマン

TomoMachi2005-10-10

マイケル・ジャクソンのカストラートみたいな声には元祖がいる。

作家トルーマン・カポーティだ。

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トロント映画祭で満員で観られなかった『カポーティ』を観る。


昨日の『グッドナイト&グッドラック』もそうだが、自分が観客で一番若かった。

他は全員白髪のおじいちゃんおばあちゃんなのだ。

今の若い子はカポーティとか興味ないんだな。


映画はカポーティが『冷血』を書いた6年間の彼を追う。

1959年、カンザスで起こった一家四人惨殺事件を新聞で知ったカポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、『ニューヨーカー』誌の記事にしようと、カンザスに取材に行く。

取材に同行するのはカポーティの幼馴染で『アラバマ物語』の作者ハーパー・リー(キャサリン・キーナー)。


最初はとにかくホフマンのカポーティ演技がおかしい。

甲高い声、なよなよ、くねくねした仕草、いかにもゲイなファッション・センス。

カポーティを見るなり保守的なカンザスの警官たちはロコツに「なんだ?このオカマ野郎は」という顔をしてみせる。

カポーティは天才的美少年作家として華々しくデビューした「アイドル作家」だったが、

当時は中年を迎えて、容貌は衰え、小説家として行き詰り、経済的にもうまくいってなかった。

逮捕された犯人ペリーと面会したカポーティは「彼は僕のGoldmine(金を生んでくれるもの)だ」と狂喜する。


この映画はまず、「ノンフィクション作家による取材対象の搾取」がテーマになっている。


カポーティは獄中のペリーに自分の不幸な生い立ちを語って彼に共感を示し、

「世間は君を血も涙もない人殺しだと思っているが、人間としての君を知りたい」と説得してインタビューをとりつける。

貧しく悲惨な彼の生い立ちに同情を見せながら話を聞いていくカポーティだが、

ニューヨークに帰るとプラザホテルのバーあたりでタキシードを着てマティーニのグラス片手に文壇仲間相手に現在書いているノンフィクション・ノベルの自慢話をする。

ペリーはカポーティが自分を取材した本に『冷血』という題名をつけたことを知って裏切られた、と思う。

カポーティはインタビューする前は弁護士を探すなどして死刑を引き伸ばそうとしたが、

インタビューが終わってしまうと、ペリーがいくら懇願しても弁護士探しに協力しない。

ついに死刑執行が近づくと、面会にも行かなくなる。

ペリーからかかってくる電話から逃げ続けるカポーティ。


『冷血』から犯罪ノンフィクション・ノベルというジャンルは始まった。

佐木隆三も『冷血』には大きな影響を受けているはずだ。

しかし、人殺しと、それを書いて利益を得る作家のどっちが冷血なのか?


この『カポーティ』にはもうひとつの見方もある。

犯人であるペリーと共犯のディックとの間にゲイ的な関係が暗示される。

男性的な共犯者ディックに、女性的なペリーは惹かれ、強盗殺人にいたった。

カポーティはペリーの中に自分を見出し、

彼との面会に夢中になっていく。

それを見ているカポーティのゲイの恋人ジャック・ダンフィーは黙っているが、明らかに嫉妬のような感情を抱いている。

これは『羊たちの沈黙』のクラリスとハニバルにも似たラブストーリーでもある。



そして死刑執行の日。

ベッドに引き篭もるカポーティにハーパー・リーはペリーからの電報を読んで聞かせる。

死刑に処される罪人が、彼を利用した作家に書いた言葉は……。

2005-09-15 トロント映画祭Ε劵好肇蝓次Εブ・バイオレンス

TomoMachi2005-09-15

朝6時の飛行機でトロントからニューヨークJFK空港に飛ぶ。

空港からタクシーでパークアヴェニューのリージェンシー・ホテルに直行。

ぎりぎりセーフで朝10時からの「ヒストリー・オブ・バイオレンス」のインタビューに間に合った。


パブリシストの女性が「飛行機欠航したんでしょ。なんとか来られて良かったわね」と言った。

「ローラ・リニーもトロントから飛行機が飛ばなくて困ったんですって」

僕、彼女と同じ飛行機でしたよ!

「あら、そうなの! 彼女はさっき、TODAY(NYから放送されるモーニングショー)に出てたわよ。この番組に出ることになってたから、トロントから自動車で夜通し8時間飛ばして、NYに着いたばかりだって!」

それで、昨日、彼女はあんなに真っ青になってたのか!

しかし、たいしたプロ根性だ。


インタビューでは『ヒストリー・オブ・バイオレンス』主演のヴィゴ・モーテンセン、デヴィッド・クローネンバーグ監督、それにギャング役のウィリアム・ハートに会った。

 これはアメリカについての映画だ。

 主人公トム(ヴィゴ・モーテンセン)はインディアナの田舎町でダイナーを営む平凡な父親。

 しかし、ある日、強盗を素手で倒したことでマスコミに注目されてしまう。

 そして、彼を訪ねて、片目のギャング(エド・ハリス)が店に現れる。

「ジョーイ、ひさしぶりだな」

「人違いでしょう? 私はトムですが」

「ジョーイ、相変わらず人殺しが上手だなあ」

  トムは、実は若い頃、ジョーイというギャングの殺し屋だった。

  そのギャングの片目をえぐったのも彼だったのだ。

 復讐のため、ギャングたちがトムの家族に襲いかかる。

この発端部は以前に紹介した原作コミックと同じだけど、中盤以降の展開は映画独自のもの。


 これは話としては西部劇だ。かつてのガンマンが静かに農民として暮らそうとする話と同じだ。また、ヤクザの過去を隠した板前の話として高倉健の主演映画になってもおかしくはない。

 ところが、この映画のトムはそんなヒーローにならない。

 彼の暴力はいつものクローネンバーグ調で、リアルで残虐に描かれるからだ。

「暴力とは肉体を損傷することだ。正義の暴力だって同じだ」クローネンバーグはインタビューで語った。

「戦争も同じだ。どんな理由があろうと暴力は暴力だ。暴力は暴力を生む。ブッシュ政権は西部劇のメンタリティーを現実の政治に持ち込んでいる。もちろん、この映画はアメリカの現状と無縁ではないよ」

 モーテンセンは一つの質問に対して遠くを見ながら抽象的な答えを延々と話し続ける不思議な男だった。

 しかし、いちばんヘンテコだったのは彼の兄を演じるウィリアム・ハートだった。

 明らかに酔っていた。

そして「ランディ・ニューマンの『ルイジアナ1927』って歌を知ってるかい? 1927年のニューオリンズの大洪水を歌った歌なんだが……」と言って歌を歌い始めた。

Some people got lost in the flood

あの洪水で亡くなった人々がいる

Some people got away alright

逃げ延びた人々もいる

The river have busted through cleard down to Plaquemines

川はあふれ、プラクマインズにまで達した

Six feet of water in the streets of Evangelne

エヴァンジェリンの街には深さ6フィートの水に沈んだ

Louisiana, Louisiana

ルイジアナ ルイジアナ

They're tyrin' to wash us away

奴らは僕らを洗い流そうとしている

President Coolidge came down in a railroad train

クーリッジ大統領は列車でやって来た

With a little fat man with a note-pad in his hand

ノートを持った小さな太った男を連れて

The President say, "Little fat man isn't it a shame what the river has

done to this poor crackers land."

大統領は言った。「この川のせいで貧乏人どもの土地がけっこう悲惨なことになったじゃないか」


 この1927年の洪水での共和党のクーリッジ大統領の黒人の被害者に対するぞんざいな態度が原因で、それ以来、黒人は民主党を支持するようになったと言われている(南北戦争で奴隷を解放したリンカーンは共和党だった)。

「この歌は1974年に書かれた歌だけど、まったく今回のことを予言してるじゃないか」

ウィリアム・ハートは半泣きで言った。

うなずくしかないけど、映画と関係ないよ。困ったね。


インタビューが終わるとすぐにオークランドに飛んだ。

NYにいた時間はわずか5時間ほどだった。

飛行機の中のテレビでは『愛しのローズマリー』を放送してた。

何度観てもこれは涙の出る傑作ですよ。

2005-09-14 トロント映画祭ゥ魯螢院璽鵝Εフェーリア

TomoMachi2005-09-14

朝から『ウォレス&グロミット』の取材。

監督のニック・パークとヒロインの声を演じるヘレナ・ボナム・カーターのインタビュー。


ヘレナ・ボナム・カーターは旦那のティム・バートンの『コープス・ブライド』の声もやってるのですっかり声優みたいなことになっている。

バートンは息子に夢中で夫婦円満だそうです。


ニック・パークは本物のウォレスを持ってきていて、触らせてくれた。

オイラの指紋がウォレスの体の表面に残った!



その後すぐに『秘密のかけら』の取材に直行。


ケヴィン・ベーコンは変な役ばかり演じる俳優になってしまった。

『スリーパーズ』では少年院で少年時代のブラッド・ピットにイタズラする看守。

『インビジブル』では痴漢透明人間。

『ワイルド・シングス』ではマット・ディロンと恋仲のゲイ。

『ウッドマン』では幼女にイタズラした過去があるためにミーガン法で監視され更正できない男。

そして、この『秘密のかけら』では……。言えねえ、言えねえ、もう言えねえ(三日月刑事に尋問される千田満五郎風)。


アトム・エゴヤンは「いやあ、僕の映画で観客があんなに笑うのを見たのは初めてだ。笑わせるのって楽しいね」とコメディ演出がすっかり気に入ったようだった。


そのインタビューが終わるとすぐにトロント空港にダッシュ。

NYで急遽、明日の朝からデヴィッド・クローネンバーグの新作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の取材ができることになったからだ。


なんとか間に合って飛行機に乗るが……動かない。

動かない。

「ハリケーン・オフェーリアがNYに向かって北上中です。NYの着陸許可が出ません」

そのまま3時間飛行機に閉じ込められた。

オイラの席はエコノミーのいちばん前。

すぐ前はファーストクラスだ。

真っ青な顔で添乗員と話している女の人に見覚えがある。

あ、ローラ・リニーだ。

『愛についてのキンゼイ・レポート』でキンゼイの奥さんを演じてアカデミー賞候補になった女優さんだ。

何か相当、切羽詰った表情だ。


結局、NY行きの飛行機は全便欠航になった。

トロントに一泊して、明日朝6時の便でNYに飛ばなきゃならない。

ローラ・リニーはバゲッジ・クレイムから吐き出されたバッグを掴むとどこかにダッシュして行った。

2005-09-13 トロント映画祭と詭のかけら

TomoMachi2005-09-13

朝10時から『ウォレス&グロミット』劇場版「人ウサギの呪い」の試写。


タイトルからわかるように、「狼男」や「フランケンシュタイン」などユニヴァーサルの怪奇映画のパロディで、畑を荒らすウサギを駆除するウォレスとグロミットが、巨大ウサギと戦うのだが、その正体は……。

クライマックスは大怪獣映画。


夜はアトム・エゴヤン監督の新作『秘密のかけら』(写真)のプレミア。

これはエゴヤンにとって初めてアメリカを舞台にした映画。

50年代ハリウッドで一斉を風靡したディーン・マーティンとジェリー・ルイスをモデルにしたコメディアン・コンビ(コリン・ファースとケヴィン・ベーコン)、

彼らの伝記を書くため、72年に新人女流作家(アリソン・ローマン)が取材するうちに、彼らのホテルの部屋でメイドの変死体が発見された事件が浮かび上がる。


エゴヤンの映画といえばカナダのようにBLEAK(寒々しい)と言われることが多い。

特にこの『秘密のかけら』のストーリーは、過去の悲惨な事件を調査する素人探偵モノで、

あの暗く、救いのない『スウィートヒアアフター』とよく似たプロットなのだ。

ところが、

なんと、『秘密のかけら』は上映中、最後まで観客は笑いっぱなしのエロチック・エンターティンメントだったのだ!


笑いのキモはアリソン・ローマン演じる作家の尻軽ぶり。

ヒロインのアリソン・ローマンは26歳なのに幼すぎるルックスなので、『マッチスティックマン』では、ニコラス・ケイジの中学生の娘を演じていたが、この『秘密のかけら』でも、ヒロインの小学生時代を自分で演じている!

しかも、すぐに男と寝てしまうし、おまけにLSDでラリって「不思議の国のアリス」とレズってしまう(音楽はもちろん『ホワイト・ラビット』!)


 エゴヤンはロリコンである。

 カソリックの女子高生の制服で踊るストリッパーを題材にした『エキゾティカ』、父と女子高校生の娘の近親相姦を描いた『スウィート ヒアアフター』、少女連続殺人鬼を主人公にした『フェリシティの旅』で、性描写、特に未成年のそれに厳しいアメリカを苛立たせてきたが、この『秘密のかけら』はとうとうMPAA(アメリカの映倫)からNC17(成人指定)を食らってしまった。

 

 しかし、問題になったのはアリソン・ローマンのロリエロではなかった。

 最後に明らかになる事件の真相が、あっと驚くセックス・シーンなのだ。

 これにMPAAが怒ったというが、観客は大爆笑だった。

 上映前にトロント市長が「ここではアメリカでは許されないシーンもノーカットでお見せできることを誇りに思います!」と挨拶して喝采を浴びていた。