書き手と読み手の、実りあるコミュニケーションとしての読書について

M.J.アドラー、C.V.ドーレン「本を読む本」はほとんどの本にたいしては不要な読み方の本である。何度も繰り返し読むたび得るものがあるような、そういう本の読み方についての本だ。

今で言うフォトリーディングのような読み方(点検読書)についても触れているが、それも深く読む本かどうか判別するための手段としてである。本書は読み手と書き手が4つのレベル(初級読書、点検読書、分析読書、シントピカル読書)を通していかにして”相互理解”に達するか、その方法を述べている。

この本の通りの読み方をしている人はおそらく少ないだろう。けれども、本を深く理解するためのヒントを得る、または「本を理解する」ということの上限を知る、という意味では読む価値があった。

ところで、本書ではテレビやラジオといったメディアを精神を人間の精神を麻痺させるものとして批判している。人が受け身で情報をただ受け取るだけのメディアは確かにそうだろう。だが、人と人とのインタラクションが存在するものはどうだろう?MMO、ブログ、SNS。本書が書かれたときには存在しなかった、読み手が書き手であり、書き手が読み手であるようなメディアで人と人が理解し合う”読み方、書き方”というのはどうあるべきなんだろう?

要約

積極的読書への四つの質問
  1. 全体として何に関する本か?
  2. 何がどのように詳しく述べられているか?
  3. その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か?
  4. それにはどんな意義があるのか?
読書のレベル

初級読書
問題:その文は何を述べているか?
読み書きのレベル。

点検読書
問題:その本は何について書いたものであるか?
問題:それはどういう種類の本か?(小説家、歴史家、科学論文か)
組織的な拾い読み、または下読み。
表面読み。

分析読書
第一段階:徹底的に読む。本の概要、要約をまとめる。著者の問題としている点をつかむ。
第二段階:キー・ワードを見つけ出す。命題と論証から著者の問題解決が何であるかを検討する。
第三段階:批評する。

シントピカル読書
同一主題について二冊以上の本を読む。
準備作業として主題に関する文献表を作成、文献表の書物を全て点検読書する。
関連箇所を見つけ、キー・ワードを整理する。
命題をたて、それぞれの本の論点を明確にする。
最後に、主題についての論考を分析する。

引用

自分の理解を超えた本を読むときこそ、読み手はいっさい外からの助けに頼らず、書かれた文字だけを手がかりに、その本に取り組まねばならない。

意欲的な読み手は問いかけをする。意欲的でない読み手は問いかけをしない−だから答えも得られない、ということになる。

良い本は積極的読書に値する。だが、内容が理解できただけでは、積極的読書として十分とは言えない。「批評の務めを果たして、つまり判断を下してはじめて、積極的読書は完了する」。


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