経済学的にもっとも正しい投資法

正しい投資法なんてあるんだろうか?ある、というのが橘玲「臆病者のための株入門」の主張だ。

概要

ジェイコム株問題やホリエモンの話題を皮切りに、株式投資とはいったい何なのか、経済学的にもっとも正しい投資法は何なのかをわかりやすく、簡潔に述べている。

感想

とても読みやすい本だ。ホリエモンなどの時事的な問題を分かりやすくまとめ、自然に投資への理解が深まるように書いている。特に、効率的市場仮説から効率的ポートフォリオまでのくだりがよい。デイトレードなども合理的に評価し、メリット・デメリットを挙げているのは好感が持てる。

だが、外貨で運用する資産の扱いには疑問が残った。為替利益をフリーランチとしているが、意識的に為替でフリーランチを食える投資家なんて存在するんだろうか。本書からは著者の合理性への強い信頼を感じる。だが、為替は経済合理性によってのみ動くのではない(参考リンクを参照のこと)。

さて、著者自身が述べていることだが、本書に書かれた方法を著者は実践していない。提唱者自身が行っていない投資法にお金を出すかどうか、それは各人の自己責任において自由だ。私は出さない。

ちなみに、数章毎に「まとめ」がついているが、あまりまとまっていない。結論となる第8章だけ読む方がわかりやすい。

引用

ギャンブルはうさんくさくない。
株式投資はギャンブルである。
だから、株式投資はうさんくさくない。

株式投資に「勝つ」合理的な方法はふたつしかないことがわかる。市場の歪みを利用するか、長期投資で樹から果実が落ちるのを待つか。どちらが優れているということはなく、いずれの投資法も資本主義の本質から生まれたものだ。

世界でもっとも人件費の高い国に暮らす私たちにとって、最大の資産は自分自身である。


臆病者のための株入門amazon, bk1

参考リンク

谷口智彦「通貨燃ゆ」

通貨燃ゆ―円・元・ドル・ユーロの同時代史amazon, bk1
ある通貨が、どのようにして基軸通貨になるのか、それは経済だけ、政治だけの視点では理解することはできない。本書ではドルがいかにして基軸通貨となり、そして基軸通貨であり続けているか、これからも基軸通貨であり得るかを経済と政治の複合的な視点で述べている。