鳥飼否宇『異界』

異界

異界

 初めまして(荒)です。このブログに書いてくれるよう会長に頼まれたので書きます。
 昭和36年(1903)那智勝浦で鶏や兎などを襲う狐憑きと称される少年が目撃される。人語を解せず獣のように吠えながら山のなかに消えていったという。その騒動のなか、ある病院で新生児が攫われるという事件が発生する。その事件の付近に居合わせた変り者の博物学者・南方熊楠(みなかたくまぐす)とその弟子が持ち前の好奇心で事件解決に乗り出すというミステリー。
 面白かったので一気に読んでしまった。読んでからしばらく考えてみるとちょっと首をひねってしまうようなところもあったが目をつむろう。なんと言ってもこの熊楠のキャラクターが良かった。40前という年齢にもかかわらず老成された口調、性格がおかしい。しかし、狐憑きの真相には肩透かしをくらった。予想通りというしかなかった。でも次々と予想外な真実がでてきてそれが一つに繋がっていくところなどは圧巻だ。ちょっとした叙述トリックも○。それにしても南方熊楠が実在した人物だとは…。個人的にはこれのシリーズ化を希望だがおそらくないだろう。
 (荒)