共生の道を探して:「修羅」から「地人」へ/32 ある物理学者の選択 /福岡− 毎日jp(毎日新聞)

共生の道を探して:「修羅」から「地人」へ/32 ある物理学者の選択 /福岡

毎日新聞 2012年11月22日 地方版
 ◇再び毒で毒を制すのか

 動力炉・核燃料開発事業団(現・日本原子力研究開発機構)の東海再処理工場アスファルト固化処理施設で火災・爆発事故が起きた97年3月は、高速増殖炉もんじゅ」のナトリウム火災事故で凍結状態に陥った日本の核燃料サイクル計画を、現状復帰させるべく着々と布石が打たれている時だった。プルサーマルと再処理事業の推進を原子力委員会が打ち出し、閣議了解されたのはわずか1カ月前。半月前には推進派に偏った委員構成の高速増殖炉懇談会が設置され、唯一残った高速増殖炉開発も現状復帰へ向けて歩を進め始めたばかりだったからだ。

 「そんな微妙な時に再処理の安全性を大きく揺るがす事故が起きたんですから、核燃サイクルの現状復帰路線を断ち切って議論をやり直す動きが出てしかるべきでした。ところが推進勢力は実に巧妙なやり方でその動きを封じていったんです」

 長崎県西海市大瀬戸町雪浦の物理学者、藤田祐幸さん(70)はそう語る。

 推進側が利用したのは事故を起こした動燃を糾弾する世論だった。

 もんじゅ火災のビデオ隠し事件で批判を浴びた動燃は、再処理工場の火災・爆発事故でも虚偽報告が発覚した。最初の火災発生時、1分間のスプリンクラー噴霧を行った直後に消火を確認しただけでなく、9分後に再度目視で消火を確認したと報告書に記載していたが、実際は再確認していなかったことが事故の1カ月後に露見したのだ。しかもバレないよう口裏合わせを謀っていたことも分かり、「うそつき動燃」とのごうごうたる非難が巻き起こった。

 科学技術庁はこれに素早く反応した。うそ発覚の10日後には「動燃改革検討委員会」を設置して表向き世論に応えるポーズを見せたのである。

 ただ、この検討委員会には原子力政策に批判的なメンバーは1人も含まれておらず、わずか6回の会合を開いただけで3カ月後には報告書を発表してしまう。内容は動燃の名前を核燃料サイクル開発機構に改め、すでに存続の意味が無くなっていた三つの事業を廃止するよう勧告するものだった。つまり、それ以外の高速増殖炉核燃料サイクル技術の開発という動燃の主要事業は無傷で新法人に引き継ぐという方向性を打ち出したのだ。そして原子力ムラの住人ばかりで固めた作業部会によって具体化の作業が進められ、翌98年5月に動燃改革法が成立する。

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 「一連の動きを僕らは茶番だと訴えましたが、世論はついてきませんでした。結局、動燃という看板を掛け替えただけで核燃サイクル計画はそのまま生き残った。批判的な世論も利用してガス抜きし、論点をずらして思い通りの方向に導いていったわけです。お見事としか言いようがない」

 藤田さんはそう言った後、もっとすごいことが今始まっているのではないかと顔を曇らせた。

 今年6月、原子力基本法に「安全保障に資する」という言葉が突如加えられ、宇宙航空研究開発機構JAXA)法から「平和目的に限る」という規定が削られた。

 「あれで日本の分厚い保守層はピーンときたんじゃないでしょうか。もんじゅ火災と再処理工場爆発を経ても核燃サイクルを死守したのは、背景に核兵器への憧憬(しょうけい)があるからです。実際、尖閣諸島などの問題に絡めて、核抑止論が大っぴらに語られ始めましたからね。福島の事故前には考えられなかったことですよ」

 かつて日本の保守層は、米国の水爆実験で被ばくした第五福竜丸事件により沸騰した国民の反核・反米の世論を、「原子力の平和利用」を推進することで抑え込もうとした。「毒をもって毒を制す」と称して。

 福島第1原発事故後、国民の過半数脱原発を求めるなど、エネルギー確保という理由だけで原発や核燃サイクルを維持することに世論は否定的だ。その脱原発の世論を、今度は逆に近隣諸国とのトラブルを利用した核抑止論で転換しようとしているのではないかと藤田さんは言うのだ。

 核と原発を一体のものとして批判し続けてきた物理学者の心配を、杞憂(きゆう)と笑っていいのだろうか。【福岡賢正】<毎週木曜掲載>

〔福岡都市圏版〕

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インフラの価格競争力(企業 強さの条件)  :日本経済新聞

2010/9/9付
情報元
日本経済新聞 朝刊

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 茨城県にある日立製作所の主力工場で、原子力発電所の工法を一つ一つ見直す作業が始まった。「工期を8カ月短く」。原発事業を担う日立GEニュークリア・エナジーの社長、羽生正治(59)の号令が飛ぶ。

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原発と自治体財政 - 地震大国ニッポンの原発はただちに全廃を! - Yahoo!ブログ

故中川平太夫知事は1985年に県議会で、「原発で若狭の地域振興はできなかった」と〝脱帽″しています。(「福井の月の輪熊と原発」を参照)

日立製原発に反対したリトアニア 「日本の原発は危険」 背景にあったロシアのプロパガンダキャンペーン  WEDGE Infinity(ウェッジ)

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2292
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