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2017-09-04

半群的世界観と群的世界観

連続群を理解するための数学的な前置きはなぜあんなに長いのか、というのが気になっていて、確かにあれは位数というような量は持たないんだけど、かわりに次元とか極性とかそういう有限性の制約を受けていて、だから代数的計算ができるし、こんどは次元や極性の対称性自体が有限群をなしている、ということになる

ざっと考えてみるに、どうも

って折り合い悪いというか、なにか対立する世界観だと思う

この対立はもちろん計算論には存在していなくて語の問題というのは両方に関係するし、もちろん両方に足を突っ込んでるBaezみたいなつわものもいるし、最近の量子力学(や動学マクロ経済学)の教科書はオートマタが最初のほうのページで出てきたりもする

理論物理の人がなぜ半群なのに繰り込み群と意図的に間違った名前で呼び続けてるかというと、要するにリー群の閉じた属とかW*環とか解析的連接層とかを考えていて、エネルギー保存がexactに成り立っている(詳細釣り合い)ような十分に大きな系をとればそれは群の直和に分解できる、という確信があるからであって(経路積分数学正当化もおそらく似たような話)、しかし計算機サイドはそういう閉じた系をほとんど常に想定しない(無限に伸びたテープ!)

で、逆に数理物理的な見方を計算機クラウドとかを考えるときに使うことはありうるか?余帰納性のあるところには繰り込み群があるとはいえそうなので

2017-08-15

記憶とはなにか?

記憶とはなにか?

それは「相関を切る」ことだ、と答えたい。

たとえばキーボードから文字を入力するとき、コンピュータが記憶する文字列キーボード上の指の座標と運動量とそれらの高次モーメントと相関する。入力した文字が短いタイムラグで画面に表示されるなら、指のモーメントと画面上の表示の変化も相関する。

しかしいったん記憶した文字列はもはやコンピュータの外のいかなる現実ともほとんど相関しない。強烈な電磁ノイズでその記憶を破壊することはできるだろう、その文字列オブジェクトとして持っているハンドルを知っている人間ならハンドルを指定して消去や編集できるだろう。

しかし、ハンドルを知っているとはどういうことか。つまりその文字列に用事がある、縁があるとは限らないが、少なくともそのコンピュータに用があるのだ。本人が書いたわけではなくとも、たとえばその人間がそのコンピュータにアクセスして文字列ハンドル一覧を取得するなどした場合、その人間の記憶とコンピュータの状態全体は相関している。その結果としてその人間はコンピュータの記憶した文字列にアクセスできる。

2017-02-20

人間は草食動物たりうるか?

追記:オーガニック死霊のはらわた

この小説読んだのに忘れてた…

性行動と食性の可塑性

ヒトの性行動には可塑性があることが知られている。男性同性愛者は全人口の5%を占めるといわれる(これは遺伝的要因も強いらしい)。人口の伸びの止まった豊かな国ではこの可塑性は文化的に抑圧されず、政治的に配慮が進み、また性行動や文化的なジェンダーの多型化傾向が強まるように見える(ここではこの件を追究しない)。性行動の可塑性のひとつとして、性行動の減退、というものがあり、男性の「草食化」などと日本語では俗称される。

いっぽうでヒトの食性は基本的には雑食(動物性と植物性の食物を摂取する必要がある)とされているが、大豆など、不足するアミノ酸を補うことで菜食で生きることは可能ではある。カロリーを穀物に多く依存する東アジア人の腸は欧米人のそれに比べ長い傾向があるとされる。

ヒトを文字通り「草食化」させる方法について考えてみたい。

ヒトと細菌共生と、ウシと細菌共生の違い

ヒトの腸に共生する微生物群(腸内細菌叢)は近年のヒト医学生理学において活発に研究されているトピックである。腸の自己免疫疾患を糞便移植によって治療できる、という報告は多くの注目をあつめた。

食品業界でいわば「工業的に生産できる食物繊維」として脚光を浴びている、難消化性デキストリンという物質がある。これはデンプン加水分解する際に僅かに生じる、分枝をもつ多糖類であって、胃で分解できないが、腸に到達するとそこで代謝され、腸内細菌叢の栄養源として利用される。

腸内細菌叢による難消化性デキストリン代謝メカニズムは、ウシの第一胃(ルーメン)に共生する微生物群によるセルロース代謝メカニズムと類似している。では、ウシのルーメンの中身ないしそれに似たものをヒトの腸に共生させたら、ヒトは草食性になりうるだろうか?

腸と脳と人格

ヒトの腸のクロム親和性細胞は脳神経同様にセロトニンを生産することが知られており、腸内の単糖類の濃度が上昇した場合、これらの細胞の活動に影響を与える可能性がある。そもそもクロム親和性細胞は獲得免疫機構との関連が指摘されていて、むしろヒトの脳自体が免疫機構の高度化のいわば副産物として知能を獲得した可能性すらある。

腸の内容物をコントロールすることで我々は高次脳機能を間接的にコントロールできる見込みが高いし、将来的には「人格」というものの独自性は次第に失われると考えられる。

2016-09-24

NHK 超絶 凄ワザ!「幻の技法解明SP 明治の超絶技巧を再現せよ!」(2016年9月24日放送):多様体の滑らかな変形について多くを教えてくれる映像

上記のテレビ番組を観た際に筆者が考えたことを簡単に述べたいと思う。筆者としてお伝えしたいのは、番組が2016年10月1日の16:35-17:05に再放送される予定であることと(実際の放送時間は電子番組表でご確認ください)、面白いので特にある種の人は本放送を観ていないのであれば絶対に観るべきであることの二点である。

追記:当該番組はNHKオンデマンドではこちらから視聴可能な模様。

番組の概要

この番組はNHK名古屋放送局が制作して2014年から放送されているドキュメンタリーで、主に製造技術分野での高度技術(state of art)をチーム対決仕立てで見せるという趣旨のもので、まあフジテレビの「ほこxたて」からの影響は否めない。とはいえ筆者は今回偶然に観るまでこの番組を知らなかった。

工芸手法として、鍛金というものがある。これはどういうものかというと、金属板を鍛造、すなわち叩いて変形、伸縮させ、望む形の彫刻を作る、というもので、自動車などの板金加工の延長線上にある手法といえる。

明治時代の鍛金工芸作家、山田宗美(1871-1916)の、鉄板による作品は現代では再現不能とされる高水準の工芸品である。彼の主要作品は出身地の加賀市美術館に収蔵されており、没後100年の今年、特別展が催された他、常設の展示もある。

今回番組で取り上げたのは彼の作品「鉄打出兎置物」であり、現代の鍛金家、小林有矢がこの作品の部分的な再現に挑んだ。番組の立て付けとしては過去の名匠に現代の職人が挑む、という体である。なお山田や小林の仕事について筆者は全くの無知であることを付記しておく。

筆者の感想

写真:山田宗美作、鉄打出兎置物(勝手ながら加賀市美術館のロゴ画像を貼らせていただいた)

山田の「鉄打出兎置物」の兎の両耳部分は約11cmの高さがあり、これらを一枚の鉄板から溶接も鍛接(二枚の金属片に加熱、加圧して接合)もなしに穴を開けることなく打出すことは素人目にも常人のなしうることとは思われない。

幾何学的にいえばこれは連結性を失わずに特異性を生ぜしめるということであり(穴が開いたら種数が変化してしまうので)、ミレニアム数学問題のひとつである3次元ポアンカレ予想についてグリゴリー・ペレルマン(Grigori Perelman)が分析し遂行可能性を証明した、非特異化の操作を、逆順に辿れば、ほとんどそれそのものの操作といえる。

さて一旦そう見えてしまうと、筆者には、番組の中で小林が山田の作品の再現のために直面するあらゆる困難が、3次元多様体の変形にあたって直面する数学的困難と対応しているように思えてならなかった。

板金加工や、機械工学一般について知識のある方にはおそらくは肉厚を削るということの必要性や困難さを説明する必要はないのだろう。肉を削りすぎれば加工の度に強度が低下して、いずれ穴が開くのだ。

つまり、強度は接続の存在に、肉厚はエントロピーエントロピー密度)とか質量ポテンシャルとか、そういうものに見えてくるのだ。

これ以上語れば完全に興を削ぐであろう。あとは再放送をご覧頂くことを望むばかりである。なお番組に数学物理学は一切登場しない。

リッチフローと幾何化予想 (数理物理シリーズ)

リッチフローと幾何化予想 (数理物理シリーズ)

2016-09-16

播口陽一『ネットワーク・テクノロジー』

Cisco Catalystの中核部品開発者によるEthernet物理層の解説本

FE/GbEのオートネゴシエーション任せにしてhalf-duplexを選ばれてしまい痛い目を見た人は多いと思いますがどのようにそれが動作しているかご存じでしょうか。この本はEthernetATM物理層について当時最新の技術を解説していた数少ない本です。GbEやバックボーンの10Gの時代には少し古い内容ですが(ATMなど新規構築ではもう使われない技術もあります)基礎知識は古びていません。

著者はInternetのCIDR移行期に、緑の箱で知られるC社のネットワークスイッチの中枢部品であるTernary CAM(連想配列メモリ)のVLSM対応を行い、関連する特許を書いています(たとえば米国特許US 6307855 B1で検索してみてください)。自分はこの本の元になったUNIX Magazineの連載時に読んでいました。UNIX Magazineの事実上の廃刊のあおりもあってこの隠れた名著が知られていないのは残念なことです。

(初出:2013/7/20 Amazon.co.jp レビュー)

筒井多圭志『ADSL―Asymmetric Digital Subscriber Line』

SoftbankBBの立役者によるADSL技術サーベイ

もはや物理層としてのADSLは光化によって駆逐される過去の技術であり、この本を技術的興味から手に取る人もいないでしょう。可聴帯域を超える電気信号を細かく帯域に分割して電話線に流し、デジタル信号処理によって可能となる高度なエラー訂正によって高速通信を可能にするという意味では無線の(携帯電話の)スペクトラム拡散通信とも共通の基礎をもつADSLの技術は、冷戦終結によって民生転用可能になったかつての軍事レベルの技術ですが、同時にV.22/V.22bis→V.32/V.32bis→V.34→V.90と高速化した(可聴帯域用の)アナログモデムの延長線上の技術でもあります。

学生時代のCコンパイラ開発で一部には知られていた著者はデジタル信号処理と通信技術を知悉しており、工学部から医学部に編入、医師としてデジタル補聴器の開発などに携わり、当時再開発が行われていた六本木ヒルズの情報インフラの設計に関わった後、1990年代後半にSoftbankBBのADSL事業の技術面での中心人物となり、ISDNとの干渉などNTT系の技術者との論戦などで矢面に立って事業を成功に導き、2013年現在も同社の執行役員です。この本には著者が会社の支援なしで(大学に在籍していたとはいえ)独力で技術論文特許を調査して理解した情報が沢山詰まっており、予備知識の無い人にはこれらがすべて公開情報から調べることができるとは信じられないと思います(今はGoogle Scholar特許検索、IEEEウェブサイト等も充実しておりずっと楽になりました)。

デジタル信号処理の基本的な知識がなければ何が書いてあるかはわからないと思いますが、これだけの技術知識が、関心と若干の語学力さえあれば個人の力で収集し理解できるし、時宜を得れば大事業さえ興せるということは普通の人にとっても勇気付けられる話ではないでしょうか。

(初出:2005/5/16 Amazon.co.jp レビュー、改訂履歴不詳)

ADSL―Asymmetric Digital Subscriber Line

ADSL―Asymmetric Digital Subscriber Line