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中満 泉 の ブログ

世界から:中満 泉 の ブログ

2013-12-06

ネルソン・マンデラ

14:14

小雨の降るニューヨーク。今日の国連旗は半旗。ネルソン・マンデラ氏逝去への弔意を示すためであるのは言うまでもない。

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人類社会は時として歴史や人間の精神的進歩をもたらす偉人を生み出す。マンデラ氏は間違いなくそのような偉人の一人だった。オバマ大統領の最初の政治活動がアパルトヘイトに反対することだったとは、訃報直後の彼の会見まで知らなかったのだが、他にもマンデラ氏に大きな影響を受けた人間は多いと思う。

オバマ大統領とはレベルが違うけれど、私もその一人だ。まだ早稲田大学法学部の学生だった頃、アパルトヘイトに関するビデオを東京国連広報センターから借り出してキャンパスで上映会を企画したり、ANC活動家が来日するとキャンパス教室を借りて講演会をやったりしていた。学生数の多い早稲田でも、そういう集まりに来る学生はほとんどいなくて、クラスの仲のよい仲間たちに声をかけて来てもらっていたっけ。「民生」でも「革マル」でもない、さっぱりわけのわからない活動をやっている人間だ、と思われていただろう。私は国際法ゼミだったのだが、与えられた卒論のテーマが「海洋法」だったにもかかわらず、私だけ教授と交渉して「反アパルトヘイトのための国際経済制裁」というテーマに変更することを了承してもらった。多分、こういったことの延長上に、今の私がいる。

それにしても。アフリカのみならず、アメリカヨーロッパメディアも放送・ネットも含め今日はマンデラ氏逝去と彼が人類に残した大きな遺産のニュースばかりだ。対して日本のメディアは?インターネットで見る限り、扱いは小さい。サッカーW杯、日韓中関係、特定秘密保護法成立のニュースがメインだ。せめて安倍首相には国葬に参列して、平和、和解、正義といったマンデラ氏のビジョンを日本も追求していくという決意を見せてほしい。

2013-04-12

近況報告

15:08

去年の8月からブログを更新していなかったので、どうしたのですか、大丈夫ですか、仕事やめたのですか、とのメールまでいただく始末。政策部長からアジア中東部長に異動してからというもの、ともかく忙しかったというのが言い訳です。勤務時間中のスケジュールが分刻みなのは当然として、何か事件があると夜中でも週末でも即対応しなくてはならない。

もうひとつさらに大きな理由としては、中東アフガンという地域を担当するということは、要するにこの地域での国連危機管理の実質的な責任者というわけでもあり、意図しなくとも私の発言が非常に政治的な意味を持って受け止められてしまうというリスクが高く、ともかく気を使うことが多くなったこと。実は昨年10月の約2週間のアフガン出張や、今年2月の中東シリアレバノンイスラエル)出張中もフライトの中でいろいろ書いたのだが(iPad便利ですね)、その直後のアフガンシリアでの状況に鑑み、ブログに公表することは適切ではないと考え結局アップロードを控えた経緯もある。日本のメディアにも報道されていたが、シリア国連要員の人質事件を抱えている最中に、私の個人的な印象などを語るのはどう考えても不謹慎だろうと思う。

アジア中東部長としての近況報告は、去年内閣府国際平和協力本部のリレー・エッセーに掲載されたインタビューもご覧いただきたいと思う。(http://www.pko.go.jp/PKO_J/info/messages/relay_5.html)西は西サハラから、去年の末に東チモールのミッションを成功裏に閉鎖することができたので東はアフガニスタンまでを担当し、真中に中東地域。やはりもっとも時間をとられるのはシリアレバノンなどの中東地域である。中東の地域専門家ではない私にとっては、勉強し理解しなければならないことが山ほどあって、毎日大変だけれども、刺激に富んだ毎日だ。と同時に、膠着状態にある安保理のため現段階では国連が効果的な活動ができないシリアの情勢には、毎日心が痛む。そして、2月に実際に現場に入ってその状況を目の当たりにした。シリアへの出張は私にとってはボスニア以来ほぼ20年ぶりの、本当の意味での激戦地域への出張であった。

プライベートでも忙しい日々。これまでずっとNJにある私立の全日制日本人学校に通ってきた次女を、アメリカ私立学校に転校させるための「お受験」。アメリカでも私立学校は基本的に幼稚園や1年生から入るのが一般的なので、4年生からの編入というのは空きができたら可能ということで、入れるかどうか心配だったけれど、何とか引っかかってくれた。学校訪問、子供の面接、両親の面接、子供の性格や家庭の考え方などをエッセイにまとめる願書の準備(英文5ページのエッセイ!)、そして子供の学力テスト。(このテストというのが知能テストのようなもので準備不可能といっても過言ではなく、サンプル問題をウェブサイトで見つけてやってみたところ、夫・私・中学2年の長女全員が解答不能という問題がいくつかありました!)当日、次女は1対1の口頭で行われる約3時間のテストを、何とかパス。こちらの学校は9月入学なので、目下入学準備中。そしてこれからは、日本語をいかにキープしていくかとの格闘になる。

長女は13歳にしてすでに私の身長を超え、成長に目を見張るばかりだ。勉強も自分でやりたいことが増えてきて、かなりがんばるようになった。特に興味のある分野ができてきて、それがなぜか理系。両親とも典型的な文系なので、不思議なことだ。全国テストと大学受験資格テスト(SAT)を受け一定のレベルに達した生徒むけのサマープログラムに合格し、この夏3週間ペンシルバニアのある大学のキャンパスで「解剖学生理学」を学ぶことになった。典型的な親バカの娘自慢で申し訳ありません。

娘たちにはもちろん幸せな人生をおくってほしいと思っているが、同時に彼女たち持つものや教育によって与えられたものを、他の人や社会に役立てたい、と思う人間になってほしいと思う。そして、彼女たちを見ていると、多分そういう人間になってくれるのかな、という気がしている。

2012-08-04

自然の恵み

01:53

 スウェーデンでは昨冬は暖冬だったそうだ。そのせいなのか、今年は我が家の庭の様々な木は見事な花を咲かせたという。ライラックの木に始まり、サクラ、キングサリ、ハナカイドウ、シャクナゲツツジ、ボタン。そして今も咲いているつるバラに、いろいろな種類の紫陽花。いつも私たちがやってくる7〜8月にはたくさんのラベンダー

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唯一、いつまでたっても花をつけないのがフジ。もう植えてから5年くらいたち、結構な大きさになっているのにまだ一度も花をつけたことがない。本やネットでいろいろ調べて、リンの割合が多い肥料をやってみたが、さて、来年はどうなるか。それにしても、私は庭仕事が好き。ガーデニングといったしゃれたものではなく、土にまみれて、虫と格闘する庭いじり。定年で仕事を辞めたら春をこの別荘で過ごして、次々と咲く花々を楽しみたいものだ。(夏しかきたことがないので、今のところバラと紫陽花ラベンダーくらいしか咲いてるのを見たことがないのだ。)

 各種の果物も今年は大豊作。我が家の土地に自生しているブルーベリー(3キロ)や野いちご(500グラムくらい)、木いちご(ラズベリー、1キロくらい)がたくさんの実を付けた。赤すぐりの収穫は約1.5キロ。ルーバーブ(日本ではなじみがないが、西欧ではパイやジャムに人気のあるもの)約1キロ。グースベリーはたくさんついている実がよく熟するように待ってパイを焼こうと思っていたら、3粒のこして全部鳥に食べられてしまった。

 今年もジャムを大量に作る。ルーバーブ苺ジャム7瓶、赤すぐり5瓶、ラズベリー6瓶、ブルーベリー11瓶。収穫からジャム作り、そしてジャム瓶の真空加工まで、二日がかりの作業となった。大切な方々へのお土産にしたり、我が家の1年分の貴重なジャム。両親にもここから小包で送ろうかと思う。

2012-08-01

異動

10:52

 本日付けで政策部長から、同じPKO局内のアジア中東部長に異動することになった。異動の打診があったのは6月末、上級部長(D2)以上は事務総長承認が必要となるので手続きを経て本日発令された。

 アジア中東部長のポストが空席となってすぐ、PKO局長より話があった。この部はシリアを管轄しているところなので、なるべく早急に部長を決める必要があること、これまでの実績からぜひとも私にやってほしいと思う、とのこと。アジア中東部はシリアレバノンゴラン高原など中東全域、アフガニスタン東チモールカシミールなどアジア地域に加えて西サハラを管轄している部だ。危機管理観点からも局内でも最も忙しい部なので、正直迷うところもあった。NYでは夫も大変忙しいポストにいるので、2人の子供たちにあまり負担がかからなければよいのだが。これまでにも増して時間の使い方に気をつけなくてはならない。

 子供を持つ働く女性にとって最も大切なのは、ともかくやらなくてはならないこと、やりたいことに優先順位をつけ、スケジュールに入らないものはすっぱりと切り捨てること。私の場合、早起きしてなるべく早く出勤し、夕方はなるべく早く帰宅して子供たちと夕食を共にし、宿題の監督をし、必要なら子供たちが寝てしまってから自宅でコンピューターに向かい仕事を片付ける。結構ある夕方のレセプションやディナーの招待はほとんどお断りするか最初の10分だけ出席ということにして、TVを見るとか、せっかくNYに住んでいながらコンサートに出かけたりなど、娯楽のたぐいがスケジュールに入ることは、今のところ残念ながらほとんどない。

 さて、偉そうなことを言いつつ、現在私は恒例のスウェーデンでの夏休み中。普段が忙しいのでスウェーデンの森の中で家族と過ごす夏休みは私にとって大切な時間だ。どんどん成長していく娘たちに、生活上の基本的なことを教え込むのも夏休み中の大事なこと。手際よく片付けながら料理をしていく手順、残り物の食材を捨てずにおいしいお昼ご飯に作り替えるコツ、お風呂の入り方(日本から風呂桶を買い求め、スウェーデンの我が家には日本風のお風呂がある)と掃除の仕方、基本的な庭仕事や植物の知識など。どれも自分の子供の頃に両親に教わったな〜と思い出しながら教えている。宿題に加えて、私からいろんなことを細々言われるのが、娘たちは迷惑らしく、逃げ回っているが。

 3度の食事作りと家族の洗濯、庭仕事で忙しい。仕事の忙しさと全く違うこの忙しさを「楽しみつつ」、アジア中東部のスタッフが用意してくれたかなりの量のブリーフを、ほとんど息抜きのために読む毎日である。

2012-07-03

Slaughter vs. Sandberg

19:19

「スローター対サンドバーグ」。法廷での争いではない。最近、アメリカのキャリア女性の間で大きな話題になっている、「果たして女性はキャリアも家庭も、すべてを手に入れることができるのか?」という論争だ。

事の発端は、アトランティック誌の最新号に掲載された、プリンストン大学ウィッドローウィルソン国際関係学部長のアン・マリー・スローター教授のエッセイである。そのタイトル、「Why Women Still Can’t Have it All」。http://www.theatlantic.com/magazine/archive/2012/07/why-women-still-can-8217-t-have-it-all/9020/

スローター教授は、クリントン国務長官アドバイザーとしてプリンストン休職してオバマ政権入りし、最近、プリンストンに残してきた家族(ティーンエイジャーの息子2人と同じくプリンストン大学教授の夫)のために、国務省のポストから辞任した。良く知っているわけではないが、セミナーなどで数回ご一緒したことがある。このエッセイの中で彼女は、アメリカの組織文化がいまだに本当の意味で家庭を持つ女性が活躍できるものではないことを自らの体験を下に赤裸々に告白した。同時に、すべてを手に入れようと必死に努力したフェミニスト世代の下の、若い世代の女性には、もっと柔軟に人生設計をするようにとアドバイスしている。例えば、40代で成功しなければならないわけではない、平均寿命が延びて60代でも元気に活躍できるのだから、家族とともに過ごす年代にキャリアが少しスローになっても良いではないか、ということだ。

対するシェリル・サンドバークは、フェースブック社のエグゼクティブである。40代前半の彼女は、2人の子供の母親でもあるという。彼女は2009年にフォーチューン誌で、若い世代の女性たちにともかく勇気を持ってすべてを手に入れるべく努力せよ、前進せよと呼びかけ、以来、各地での講演でそのメッセージを繰り返している。

スローター教授のエッセイは発表の同日、国連の私たち女性職員の間でも瞬く間に話題になった。実は私はPKO局の中では唯一の、「結婚して子供もいる上級部長」ということで、局内の女性職員からメールが何通も飛び込んできた。時機を見て、他の女性幹部職員とも連携して、何かしら議論の場を設けなくてはと思っている。

告白すれば、私自身の考え方は、自分の人生の経緯の中で時に応じて変化してきたと思う。以前は、当然サンドバーグ派。女性だからすべてを手に入れられないのはおかしい、後進の女性のためにも、家庭もキャリアもすべて手に入れなくてはならない、それが可能ですよと示さねばならない、と何時も思ってきた。でも、今は徐々にスローター派に移行しつつあるのかもしれない。幸い私はスウェーデンという、こういう論争そのものが存在しない社会(つまり、男女がほぼ完全に同権になり、男性もごく当然のごとく「今日は僕が子供を保育園に迎えに行く日なので失礼します〜」と4時に退社することが可能な社会)出身の理解のある夫がいるので、これまでほとんど苦労することなしに両立が可能であった。しかし私が近頃同僚たち、しかも同世代の「同志」的な男性職員とよく話すのは、最終的に、プライベートでもバランスよくハッピーでなくては、本当によい仕事ができないのではないか、ということ。ということは、キャリア進展が多少スローになっても、それは将来への投資ととらえる余裕を持つことも重要なのではないか、ということ。確かに私の内面をのぞいてみると、いつも娘たちのことを考えている。ということは、これが目下の私のプライオリティーなのであろう。そして、今から、子供たちが巣立ったときにはこれをしたい、あれをしたい、といろいろと計画を立てているのだが。

日本の女性たちよ。是非、スローター・サンドバーグのエッセイを読んで考え、行動してください!