弘南鉄道大鰐線、廃止を検討

私がつい「誕生した理由もわからなければ、どうして今までに廃止されなかったのかもわからない」などと言ってしまったばっかりに……(関係無い)。

大鰐線、16年度末での廃止を検討 自治体困惑 青森
河北新報 6月29日(土)6時10分配信
 青森県大鰐町青森県弘前市とを結ぶ弘南鉄道大鰐線(中央弘前−大鰐、13.9キロ)について、弘南鉄道平川市)が2016年度末での廃止を検討していることが28日、同社への取材で分かった。
 同社によると、27日に開かれた株主総会のあいさつの中で、船越弘造社長が廃止に言及した。大鰐線の赤字が経営を圧迫していることなどを理由に挙げたという。ただ、廃止は総会の議案にはなく、同社も今後、取締役会などでの協議が必要だとしている。
 同社によると、大鰐線の累積赤字は約2億3000万円まで膨らんでおり、13〜16年度の4年間でも、さらに1億円の赤字が見込まれるという。
 株主でもある弘前市の葛西憲之市長は「(廃止は)寝耳に水で、経営者として軽率な発言だ」と不快感を示し、「市民の足を守らなくてはいけない。今後も同社の経営改善に協力していく」と話した。
 大鰐線は1970年10月、弘南鉄道弘前電気鉄道から経営権を譲り受け、運行を始めた。乗客数はピーク時の74年度が389万8000人だったが、2012年度には57万6000人に減少した。
 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130629-00000008-khks-l02

このほか、『Business Media 誠』も今日付の記事で大鰐線を取り上げている。『誠』には珍しく(オイ)ちゃんとした記事です。どうして廃止にならなかったのか、どうして市関係者には廃止が寝耳に水だったのかなどまで簡潔に説明されている。ちゃんと現地に行って写真撮ってるのもエライ。とりあえずリードだけ引用しておこう。

杉山淳一の時事日想:弘南鉄道大鰐線は存続できるのか
――地方に存在する事情

青森県弘南鉄道株主総会で、社長が「2017年3月までに大鰐線を廃止する方向で考えている」と語った。経営者として、赤字部門はすぐにでも廃止したいはず。それを3年後という期限で語ったが、そこに民間企業の苦渋が見え隠れする。
 
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1307/05/news014.html

まぁ廃止になるのは誰がどう見ても仕方のない話として、そもそも何のために作られたのかのほうを調べてみると、ちょっと気になる記述が見つかりました。
弘南鉄道70年史』p140、大鰐線の路線紹介のなかにこんな一節があります。

もともと、大鰐線は、貨物(リンゴ)輸送にもウエイトをおいた路線で、そのほとんどが田園とリンゴ樹地帯を走っていたが、近年、急速に宅地化が進み、バラ園のある千年駅から終点の中央弘前駅間は完全に住宅街となり、途中の西弘前駅にはスーパーが隣接している。

貨物輸送にもウエイトをおいた、という割にウィキペディアの「弘南鉄道大鰐線」の「歴史」の部分にこう書かれています。

1970年(昭和45年)10月1日 弘南鉄道に譲渡。同社の大鰐線となる。貨物営業廃止。

あれ? ということは大鰐線は全く貨物営業をしていなかったのでは……。
ならば、と「弘前電気鉄道」の項をみてみるが、その「車両」の部分には貨車も機関車も全く書かれていない。
さらに同じくウィキペディアの「弘南鉄道」の項を見ても、「過去の車両」の「電気機関車」に上げられているのは「ED30形(弘南線)」のみ。これは「1両(ED301)のみ在籍していた」という。
もちろんウィキペには誤りや漏れがざらにあるのですが、車両には熱心なファンが多いから、ローカル私鉄の電気機関車なんてオモシロイものに関する記述が抜けたままほったらかしだとは考えにくく、やはり電気機関車は無かったと捉えざるを得ない。
しかし1970年に貨物営業が廃止されたのだから、それまでは(つまり弘前電鉄時代は)貨物営業をしていたということになる。また、『弘前市史』資料編p888〜890に掲載されている昭和27(1952)年1月31日付の「東奥日報」記事には「弘前電鉄の起駅大鰐駅国鉄大鰐駅を共同使用して旅客、貨物とも連絡の取扱を受けている」とあります。
うーむ、となると一体? 「貨物営業はしているけど実績ゼロ」というケースか、あるいは電車の車内に荷物置き場のスペースをつくっての小口貨物の扱いだったのでしょうか。でもそれをまさか「貨物(リンゴ)輸送にもウエイトをおいた路線」とはいいませんよね。あるいは「計画段階では」くらいの話なのかも?

ちなみにこのED22 1(ラッセル車の後ろ)が大鰐線に来たのは1974年。目的は貨物列車の牽引ではなく除雪でした。
 
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