大阪府立大学の知名度にビビった

http://sankei.jp.msn.com/politics/local/090625/lcl0906250015000-n1.htm

 大阪府橋下徹知事が存廃を含めた抜本的な改革を検討している府立大学(堺市中区)について、府が1000人の府民を対象に初めて実施したアンケート調査の結果が24日、明らかになった。府民の96・5%が府立大の存在を知っていたが、「名前だけなら聞いたことがある」という回答が4割以上を占め、橋下知事の「顔が見えない」という府立大批判を裏付けるかのような格好になった。

http://sankei.jp.msn.com/politics/local/090625/lcl0906250015000-n1.htm

 まずこの記事のタイトルがまずい。大阪府大の名前を知っている人が4割しかいないようにも読める。実際は96.5%が大阪府大の名前を知っている。他の大学、たとえば大阪大学大阪市立大学についても同じように調査していないので、「96.5%」がどんな意味を持つのかわかりにくいが、私は十分な知名度だと思う。(しかし、他の大学と比較できないアンケートに意味はあるのか?)


 そもそも、大阪府大について何の関係もない人たちが、大阪府大について名前以外の情報を知っていることが相当珍しいのでは。大学の名前を出されて、あぁあそこはバイオが強いね、○○教授がいらっしゃるし、あと最近あのプロジェクトを立ち上げたね…などと言える人が果たしているのか? 名前以外で何か知っているにしても、おそらく、キャンパスの所在地を知っているくらいだろう。あとは知り合いの母校です、くらいしか思いつかない。

 
 しかし、このアンケートだけで大学を裁くのは無理がある。国内の研究者とか大学関係者に学問的な知名度を測るアンケートをとったほうがいい。

 府立大を知っていると答えた965人に、8項目のイメージを挙げ、尋ねたところ、「できるだけ安い授業料で多くの学生に教育の機会を与える」と感じる人は71・8%。「地域に密着して研究や学問の成果を社会にわかりやすく伝える」は53・2%、「新しい技術や製品の開発を通じて地域経済に貢献する」は42・4%となった。

http://sankei.jp.msn.com/politics/local/090625/lcl0906250015000-n1.htm

 しかし、「できるだけ安い授業料で多くの学生に教育の機会を与える」ことが求められているみたいだけど、「儲けない」大学経営にすればするほど研究費は削られていくことをちゃんとわかっているのだろうか? 奨学金制度や授業料の減免制度が充実している日本において、「国公立大学の授業料の減額」が「多くの学生に教育の機会を与える」手段として最適とは言い切れないと思う。私の友人にも、授業料の減免(半額や無償も含む)を利用している人はいる。これらの制度は、高校でアナウンスされているはずなのだが…。


 次点の「地域に密着して研究や学問の成果を社会にわかりやすく伝える」にしても、大学の存在をアピールしていくにはお金がかかる。研究の予算を削ってでも、社会に(結局一般人には理解できないものも含めて)研究の成果をアピールする機会を増やすのが正しいのかどうか、考えてみてほしい。


 私としては、「高校生以下の子どもたち向けのイベントを大学で行う」ことにお金を使って欲しい。私も小学生のときに大阪大主催の科学教育系イベントに行ったが、科学に、そして大学に夢を持つきっかけとなった。こういったイベントを通じて、学問の面白さを若い世代に伝えていくことこそ、大学の生き残る道ではないか。

蛇足

 たとえば、「名前以外に早稲田大学の何を知っているか?」という質問に「福原愛ハンカチ王子!」と答えた場合、その人が名前以外の早稲田大学を知っていることにしていいのか?*1
 そして、あなたは、「名前以外に東京大学の何を知っているか?」「名前以外にあなたの地元の国公立大学の何を知っているか?」*2

*1:もちろん、スポーツで知名度を上げるのも商業的には立派な戦略だが

*2:そもそも、橋下知事の「顔が見えない」という言葉は、いろいろな解釈ができる