ほうかご百物語 3

 これは買いだわ
 相変わらずの奈良山萌えノベル。こういう飄々としていて実は強い、でも最強って訳でもないキャラがツボな自分としては、この三巻目で定期購入を決定。ちょっと奈良山が性能高すぎる気もするけど、気にしない。
 電撃大賞の実力は伊達じゃない、という印象。イタチだけに。一巻目はとんでもなく手堅い大賞作、二作目も手堅い良作という印象があっただけに、三作目で手堅い良作を再び叩き付けられてしまうと、これだけのペースでこれだけのモノを……と素直に脱帽するしかない。いや、本当にこの刊行速度でクオリティの維持は凄いと思う。これは買いだわ、面白い。
 例の如く、一冊の本に五つの短編を連ねて全体の形を作るスタイル。海外ドラマ的な毎日がクライマックスのストーリー仕立ては嫌いじゃないから良い。むしろ、この話で一本の長編を書くと間違いなくグダるということを作者自身がよく理解しているのであろうか、ベストな選択だとすら思う。今回は作者があとがきでも語っていたとおり、前作前々作に比べてストーリーのスパンが短いらしいけど、かえってそれが良く作用したと思ったりもする。やっぱり、ある程度の連続感は欲しいよね。
 前作では薄いと感じた新キャラ達も、今回は存在感たっぷり。逆に古典教師なんかはやりすぎちゃった感があるけど、それくらいでいいと思う。ライトノベルなんだから。正義ボクっ娘も活躍(?)して、前作の影の薄さを払拭。先輩はなんやかんやで美味しいところを持って行くし、主人公のしつこいモノローグもあっさり目に。今作の新キャラである雪女やその旦那も良い味出していたと思う。でも、天狗二号こと半裸ボクサーはなんか、雰囲気が合わないと思ったけど。まあ、それはそれで。
 キャラ的には好みじゃないけど、ビジュアル的には大好きな妖狐先生も活躍。今まで強い強いと言われつつも実力が不明だった先生の本気が見られて、存在感を増せたと思う。ただ、先生の戦闘シーン全カットは少しだけ残念。ちょっとでも良いから片鱗を見せて欲しかったなーと。
 とにかく、このスピードでこのクオリティを維持できる峰守ひろかず氏は凄いと思います。京極しん氏のイラストもとっても良いし、買いの一冊、いやシリーズ。いつかは電撃の看板作家になってくれるんじゃないかと期待してます。
 そういえば、ヒロインのイタチさんに全く触れてないな……イタチさんは可愛いです。

 名言
「あのな、馬鹿かお前は! 本物と同じなの、見た目だけだろうが!」