論理的な文章

論理的な文章が書けていない、とかよく言われる。考えてみれば論理的な文章を書くトレーニングはどこで行なっただろうか、と考えてしまう。私の場合、学校ではなかった。学校でやったのかやっていないのかは覚えていない。あまり記憶にない。私の場合一番覚えているのは予備校である。予備校の夏期講習で「小論文対策」とか銘打った講座があり、私の第一志望校は小論文があったので、一応受講した。
いきなり小論文を書け、と言われる。文章を見せられて、それについてテーマを立てて論じるのだ。もちろん本文の正確な読解は大前提で、テーマを立てる作業、論拠を考え、説得的な文体で叙述する作業、これらを一時間半でやらなければならない。いきなりは無理だ。そもそも「小論文」をどう書くのかも知らない。「僕」なのか「私」なのか、「です、ます」なのか「だ、である」なのか。はたまた行末に「。」が来る時にはどう処理すればいいのか、等々。小論文を書いたあとは文を書く時の基本的な技術の講義。「である」体で書く、とか、副詞や連体詞に漢字は使わない方がよい、とか、「私」であって「僕」はだめ、とか。
翌日小論文が帰ってくる。「採点対象外」。講評欄には「エッセイに過ぎない。論文になっていない」。確かに感想文みたいなことを書いたような気がする。ほとんどが「採点対象外」だったようだ。こうしてショックを与えておいて「論文」とは何かを教えられる。淡々と「論文」とは何か、を教えられるよりはインパクトがあったのか、論文をどう書くのか、ということは少しは頭に入ったような気がする。私は結局浪人したので現役の夏・冬、浪人の夏・冬と4回受講したのだが、悲しいことにあまり成績は伸びなかった。毎回小論文を書かされ、評価が出てくるのだが、評価方法がA、A−、B+、B、B−、C+、C、C−と結構細かく評価がなされていたが、私は概ねB。時にB−。時にB+だった。ほとんどの人間がB前後なので某予備校では標準的な出来だったのだろう。ただ小論文の基本的な知識を持っている、ということは結構な強みになった。学校で受験した模擬試験では全国でトップクラスだった。これは単に小論文の書き方をおさえていただけなのだが、小論文の模擬試験を受けた人の中に論文とはどう書くものか、を知らない人が多すぎただけだろう。某予備校の小論文講座を受ければいやでも論文とはどう書くものかは身に付く。
大学で指導する側に回って痛感したのは、私もそうだったのだが、論文の書き方を身に付ける機会がなかった、ということだ。私の場合小論文のある大学が第一志望で、その大学は共通一次試験のおかげで余裕で不合格だったわけだが、それでも小論文の講座を受けたことで、一応論文の書き方をマスターしていたことが大きかったのだろう。大きなアドバンテージにはなったと思う。もしその講座を受けていなければ、大学に入った段階で、随筆と論文の違いをマスターできず、とまどった事だろうと思う。
多くの大学教員は論理的な文章を書く技術は、高校までで身に付いているはずだ、と思っている。進学校ではそこまで考えるのだろうが、私のいた高校が多様なレベルの生徒がいたので、論理的な文章を書くトレーニングを結局しなかったのではないだろうか。実際はどのような進路に進もうとも、論理的に思考し、論理的に叙述する技術は不可欠だと思うのだが。
大学でも最近は面倒見がいいので、カリキュラム上で論理的な文章を書くトレーニングを開始した。ちなみにレポートは五年保存という規定があるので、原則学生には返却しない。あれはトレーニングではなく、評価対象なのだ。評価が定まった後にトレーニングしても遅い。
ライティングと言われる講義を一回生で行なう。大学院生をライティングアシスタントとして雇用して、細かい添削は大学院生が行ない、大筋を教員が判断する、というシステムだ。これには苦労した。肝心の大学院生が論理的な文章を書く基本的な素養がないのだ。大学院生の指導から始めねばならない。しかしそんな暇は無い。結局私が全部自分でやり直した。二度手間だった。
ちなみに予備校の小論文対策講座の授業ノートは今でも大切にしている。大学の講義でも可能な限りそれを基にした論文記述の対策講義を入れることにしている。学生の食いつきが一番よかったりする。

今年の総括

昔の記事を何となく見直していたらこんなものを見つけた
2006-03-30 - 我が九条
順位予想だが、結構当たっている。
私は中日・阪神・ヤクルト・巨人・横浜・広島と予想した。結果は中日・阪神・ヤクルト・巨人・広島・横浜だった。5位と6位を外した。まあ一番迷うのはそこだ。ヤクルトも明るい材料はあまりなかったが、巨人はもっとなかった。それだけの話で、今はセリーグは中日阪神の二強時代になっている。巨人は選手補強がちぐはぐで補強ポイントを誤っている。ヤクルトは弱点がはっきりしすぎる。広島と横浜は論外。
今年の判断の誤りは広島のブラウン監督の効果を見誤った。