ゲッベルスの贈り物/藤岡真
- 作者: 藤岡真
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2001/08
- メディア: 文庫
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ねじれた感性による一本道ミステリ。各登場人物の視点からすれば、この物語は特段の困難には満ちておらず、少なくとも筋立ては紆余曲折していない。しかしながら、我々読者から見ると、この物語は非常に歪に映る。多重視点とその組み合わせ方により、読者を煙に巻く作品といえ、非常に手が込んでいる。
もう一つの特徴として、登場人物の言動が「ズレている」ことが挙げられよう。普通の人間は恐らくこういう受け答えはしないし、こういう風には考えないだろう、ということを登場人物は各所で大真面目にやらかすのだ。全体通してとぼけた味わいを醸し出しており素晴らしいのだが、作者に《自分が書いている人物は奇矯なのばっか》という自覚があるのかどうか不分明な辺りは、ヲチャー精神*1を掻き立てられる。『ギブソン』『白菊』も同様ではあったが、長編第1出版作品ということもあってか、この特徴がより顕著だ。この作家を考えるうえでは非常に興味深い。
そもそも、先述のようによくできた作品でもあるので、藤岡真初体験に向いていると共に、奇怪なミステリを好む人には大いにお薦めしておきたい。