Wの跡地

2004-1-26(Mon)

[][][][] 21:42  21:42 - Wの跡地 のブックマークコメント

「こんばんはー」

ノックして開かれた扉の向こう、落合香奈(おちあい かな)に真壁は笑いかけた。落合も笑顔を返して部屋に招き入れる。

真城雪(ましろ ゆき)が常に押さえているロイヤルスイートの一室だった。今でこそあるじは木賃宿に住まっているが、その代わりに現在ではある戦士とその看病人が利用している。

「南沢さんはいかがですか? 目が覚めたって」

「うん、さっきシャワーを浴びに行ったからそろそろ出てくるんじゃないかな?」

それから、信じられる? と。

ナミー、昨日の夜からこれまでご飯二升食べてるよ。

「二升? いや少ないくら――え? 升? 二合ではなくて?」

いやいや、と落合は首を振る。二升だよ。二十合とも言うよ。よっぽど疲れたんだね。

「何十人もの命を救うってのは、やっぱり大事業なんですねえ」

しみじみとした真壁の述懐に落合もうなずいた。何十人も救うというその表現が大げさでもなんでもないことは、この街のすべての探索者が知っている。

扉の音、そしてのんびりとした声で名前を呼ばれた。

短パンだけはいて上半身裸の巨人がそこに立っていた。全身いたるところに残る傷跡は、もちろんこの数日以外のものがほとんどだろう。それに自分の身体も程度こそ違えど同じような有様になっている。それでも真壁は自然と頭を下げた。

下げた首筋に低い声が降ってきた。ありがとう、と。顔を上げると巨人は笑っていた。

「俺のほうでも、真壁くんにはお礼を言いたいと思っていますよ。よく俺を選んでくれたって」

真壁はさらに深く頭を下げる。