最強伝説黒沢

大学のときの先輩と友だちを家に泊めた。まどろみを楽しんだあとにシャワーを浴びた。こんなときに限って米も野菜も切らしている。ふたりを残して近所のパン屋に足を運んだ。二日酔いに油は厳しそうなのでサンドイッチを3つ買った。柿をふたつ剥き、3人で食べた。布団を干したり簡単な床掃除だけしてから外に出た。

先輩とふたりでダリ展に向かった。乃木坂から向かう。コンビニなんかひとつもなかった。すこし公園で散歩をし、美術館へ向かった。時代ごとに配置されたダリの作品は、彼の人生の縮図のようでもあり、その時代の投影のようでもあった。ぼくは彼の初期作品にこそ魅力を感じた。モダニズムシュールレアリスムに傾倒する前の作品。色使いがとてもきれいで、とくに空が焼ける色が好きだ。初期の作品でもっとも好きだったのは「縫い物をする祖母アナの肖像」。周りから「こんなの描いてもらったら嬉しいわね」なんて声が漏れていた。

そのあと、先輩にすこし疲れが見えた。二日酔いなんだろう。公園で昼寝でもしましょうかとミッドタウンへ向かう。途中ヘパリーゼとお茶を買っていた。ぼくはお腹が減ったのでおにぎりを3つ買った。ほんとうは焼きそばが食べたかった。ずんずん進むとイベントがやっていて、木漏れ日の下で本を読んだ。隣に移ると10m×10mくらいのスペースにレースのカーテンが並べられて開いたり閉まったりしていた。そこで子どもたちはとにかく走り回っていた。ぼくらはそれを見ながら芝生に寝転がる。どれくらいそうしていたのか。そろそろ帰ろうかと、別れた。

ぼくはひとり漫画喫茶に行き「最強伝説黒沢」を読んだ。初めは救いのなさに動悸が激しくなったりした。いつからか黒沢のどうしようもなさにじぶんを重ねた。ホームレス編では、こんなのまさにはたらくおっさんじゃないかと思い、はたらくおっさんをかけながら読んだ。めちゃくちゃパンクな漫画だ。

読んでいるうちにすこし汗をかいたのだろう。外に出ると冷え込みが厳しくすぐに電車に乗った。汁なし担々麺を2週間ぶりに食べて、からだをあっためてから帰宅した。