Sunday Candy

平日があっという間に終わる毎日だ。給料日には汁なし担々麺、という淡いルールはこの街に来なければできることはなかったとおもう。久しぶりに食べたからか山椒の香りが強く抜けた。大将としばし会話して家を出た。

金曜日、仕事が終わるとスーパーへ。「さんまの開き、いかゲソの刺身、小さなアワビふたつ」という、まるで晩酌のつまみのような買いものをした。仕事が終わったときには酒でもやろうという気分だったし飲み屋に行くよりずっと安いのだが、結局、酒は飲まなかった。イカには卵黄を落とし、小さなアワビをさらに刻んだ。韓国産だという小さなアワビには、意外や昆布の上質な香りが移っていた。サンマを焼くのにクッキングシートを切らしてしまったのでアルミホイルで代用した。おいしい、と反芻しながら口に運んだ。

数ヵ月前に小学校時代の友人と会ったときになぜか自分探しの話題になり、「自分探しなんかしてもじぶんはそんなところにいない」という何度も何度も聞いた台詞を耳にした。その通りの部分もあるが、そこまで言い切られてしまうとその瞬間嘘になる言葉があって、それがこの自分探し論だと思う。そもそも、自分探しという言葉が表しているのは若い世代が引っ掛かりがちな人生における根元的な疑問に対する希求行動、または好奇心や純粋さの発露であるはずで、自分自身を探すわけではない。それをやったこともない人が言葉尻だけとって否定するというのは人生の機微に対して浅はかすぎやしないか。旅で広がる見識もある。ただし旅に過剰な期待は禁物だ。人生を変える出会いが待つこともあるかもしれないね。天井には蜘蛛がうろうろしている。もう二ヶ月の付き合いだな。そろそろ名前でもつけてやろうか。

土曜日、洗濯と自炊に精を出す。昨日の夜に買って下ごしらえをすませてあった里芋をことことと煮っ転がした。つちくせえポテトンロール。上出来だ。一度冷ませて味を染み込ませる。10時頃、母親が来てご飯や冷凍食品をおいてってくれた。素直にありがてえ。以前、母親になんでこんなことをしてくれるのか聞いたことがある。

ぼくは保育園に通っていた頃、両親は仕事で忙しく終園時間には間に合わないので保育園から紹介してもらった地域のおばさん(たぶん50-60歳くらい)がぼくと兄の面倒を見てくれていた。ぼくらはおばさんのことを●●のおばさんと呼んで、クリスマスのお祝いまでしてくれるおじいさんとともに慕った。母はどうやらそのおばさんから仕事の後に夕食の一品もらうことがあり、それがほんとうに助かったらしい。仕事で忙しいときの一品にどれだけ助けられたか知れない、と言っていた。だから、仕事で忙しい誰かに返したいのだと。ぼくは少なくともふたりに、素直に感謝しなくてはならない。

午後、東上野へ移動。ザ・なつやすみバンドとMUSIC FROM THE MARSのライブを観た。向かいではマンション工事。今日の会場は角打ちらしい。初めての角打ち。狭い店内でハートランドを飲む。お世辞にも片付いているとは言いがたい店内だが、不思議と落ち着くのはすべてを許容する上野という土地が成す懐か。居心地の極北。
MFTMの対バンなのでラプソディーはやるものだと思っていたけれど、おもにPHANTASIAからの演奏にこだわったのかやらずでした。そういえば今年は夏を終わらせるなつやすみバンドを見なかったのでようやく夏にとどめをさせた。ついにDVDを買えたぜ。

休日が終わればあっという間に平日。しかし今日の定時さえ回れば、飲み会・登山・なつやすみバンド・ロロ「父母姉僕弟君」と、ぼくの大好きなものが目白押し。難しいことはよくわからないけれど、劇団もバンドも、いつもそこで続けてくれていることが、ぼくらの希望なのだと思う。いつもありがとう。