ISSF NEWS2010:6

ISSFNEWS2010_6



この号は、年末12月30日に届いていた。


このひとつ前のISSF NEWS は、世界選手権報告号で、分厚い特大号だったのだが、紹介は省いてしまった。そのさらにひとつ前の号が届いた時点で、大会は終わっており、リアルタイムで関心を寄せたビッグイベントだっただけに、3ヶ月遅れは時期的にあまりに旬を逸しており、訳出する気が起きなかった。


松田選手の一大会二種目制覇は、射撃史上に残る歴史的な快挙で、記事でももちろん大きく取り上げられていたが、広告面でもすでにELEY社の顔になっていて、どーんと大きく印刷されていた。


その他では、女子10mライフルで、今シーズン流星のように現れたイ・チーリン(YI Siling)が、この大舞台で女王ウ・リュシ(WU Liuxi)を400+105.6という凄まじいスコアで圧倒したのが、私には最も印象深かった。このブログで誌面を紹介するようになったそのはじめにふと気になった選手が、どんどん結果を出してついには不動の地位を確立するまで、毎号追いかけたことで、まるでスターの誕生に立ち会ったような感じがした。


今回の6号は、ワールドカップファイナルの様子と、1月から適用されているルールの変更点について主に伝えている。


ISSF NEWS 6:2010

COVER PAGE

エニオ・ファルコ(ENNIO FALCO:ITA)。2010年のワールドカップファイナルを制した42歳のスキート射手。アトランタで金を獲得して以来、オリンピックに出場を続ける息の長いトップ射手である。先日の世界選手権では、ロシアのVarely Shominを激戦の末シュートオフで下して2位となり、2012ロンドン五輪の出場権を獲得した。

ISSF ACTIVITIES

ISSF Rule Changes 2011 Summary...

11月7-8日にメキシコのアカプルコで臨時の役員会が行われ、ルール変更についての詰めが行われた。
議論されたのは主に、ファイナルの形式変更についてである。
ライフル、ピストル種目のファイナルは、テレビ放映の際に選手紹介と1発目までの間に、長い試射があることがIOCのメディア担当部局から改善すべき点として指摘を受けていた。今回のルール改正は、北京五輪からOBS(Olympic Broadcast System)とISSF共同で検討を進めてきたものだということである。
世界選手権では、本格的に世界に向けた中継を行い、入場料を取って大会を見せる、ということが行われたが、よりその方向を推し進めてゆくルール改正となったといえる。
2010年のワールドカップファイナルですでに試行され、最終チェックが行われた。今回はそれを元にルール改正の細かい部分が詰められた。
その結果、今年から、ライフル・ピストル競技のファイナルは次のようになる。

  • 開始30分前にファイナリスト発表
  • 開始20分前に射座に移動
  • 開始14分30秒前から、8分間の試射(ライフルスポーツの松田選手の記事によると、ワールドカップファイナルでの試行では、3分のプレパレーションと5分の試射)
  • 試射が終わると、選手は銃を置いて観客の方を向いて整列、紹介を受ける
  • 紹介が終わると、再び射座に入り、2分間の試射を含めた準備
  • そして、ファイナル1発目へ


ラピッドファイアピストルでは、さらに大きくルールが変わり、本戦得点をリセットして、(この後のワールドカップファイナルの記事によると9.7点が境界ということであるが)当たり/はずれ、のポイント数で勝負する形式のものになる、という。

CAT 2010

News from the Shooting Confederations of Americas

アメリカ射撃連盟の総会が行われ、新しい役員が選出されたことを伝える記事である。
メキシコ人であるISSFの会長オレガリオ・バスケスラニャ(Olegario Vasquez Rana)が、31年にわたってアメリカ射撃連盟の会長も務めてきたが、このたび、グアテマラのカルロス・シルバ・モンテロッソ(Carlos Silva Monterosso)に、その地位を譲った。また、ISSFの副会長でもあり、アメリカ射撃連盟の副会長でもあったゲーリー・アンダーソンも副会長の地位を譲り、副会長は再任のラファエル・グエラ・モリネド(Rafael Guerra Mollinedo:Cuba)、今回新しく選出されたジョルジュ・ペーニャ(Jorge Pena:Mexico)、グイド・コゴルノ(Guido Cogorno:Peru)の3名となった。
ロンドンの次にオリンピックがリオデジャネイロで開催されることなどから、アメリカ射撃連盟の今回の総会は、重い意味を持つものと見られる。

COMPETITION

Follow up of the World Championship

世界選手権での、射撃用品を供給しているさまざまな企業ブースの様子や動きについて伝えている。
特にRWS(RWS-DYNAMIT NOBEL)とワルサー(WALTHER)、アスコー(SIUS ASCOR)の3社について詳しく伝えている。

ISSF World Cup in Ismir

トルコ・イズミルで行われた、クレーのワールドカップについての記事。イズミルは、トルコ第3の都市である。トルコでのワールドカップ・ファイナル開催は初であるとのこと。

ISSF World Cup Final in Munich

ミュンヘンで行われた、ワールドカップファイナルの記事。
ワールドカップシリーズと世界選手権の上位選手によるグランプリマッチであるが、ISSF ACTIVITIESにあるとおり、新しいルールの試行の場ともなった。特にラピッドファイアピストルのファイナル形式の変更は、大きなもので、アーチェリーの決勝形式を髣髴とさせる、選手同士が戦って勝ち残っていく、という感じの競技となり、観客にはとても面白いものになったようである。
全体としては、ロシア勢が4つの金メダルを獲得し、国別対抗では他を圧倒した。


ワールドカップファイナル恒例の、メダリストだけによる、5000ユーロを懸けたアスコー杯が今年も行われ、ライフルは女子50m三姿勢のチャンピオン、ジェイミー・ベイエール(Jamie BEYERLE:USA)が、ピストルは女子25mピストルのチャンピオン、ニーノ・サリュバゼ(SALUKVADZE Nino:GEO)が獲得した。
全種目のメダリストが自分の専門種目か否かに関わらず一堂に会して、エアライフル・エアピストルを1発ずつ撃ち、最低点の人から順に脱落して行くこのゲームには観客の熱狂が想像できる。選手たちが、真剣ながらどこか遊び心も混じったパフォーマンスを繰り広げる様も目に浮かぶ。1年を締めくくるイベントとして、本当に面白そうである。


松田知幸選手が男子10mエアピストル、男子50mピストルで銅メダルを獲得している。

  • 10mピストルは、ベオグラードのワールドカップを制した26歳のマウロ・バダラッチ(Mauro BADARACCHHI:ITA)が1位、カザフスタンのラシッド・ユヌスメトフ(Rashid YUNUSMETOV)が2位、50mピストルは2010年一貫して上位に入り続けてきたベテラン、ダリル・ザレンスキー(Daryl SZARENSKI:USA)が制し、2位にロシアのウラジミール・イサコフ(Vladimir ISAKOV:RUS)が入った。
  • 女子25mピストルを制したニーノ・サリュバゼ(Nino SALUKVADZE:GEO)は、4度目のワールドカップファイナル制覇。本戦でトップに立ったベオグラード大会の覇者、22歳の新星セリーヌ・ゴベルビーユ(Celine GOBERVILLE:FRA)は銃器のトラブルもあって3位に沈んだ。2位にはレンカ・マルスコワ(Lenka MARUSKOVA:CZE)が入っている。10mはロシアのキラ・キリモワ(Kira KLIMOVA:RUS)が逆転して僅差の優勝、2位にベラルーシのビクトリア・チャイカ(Viktoria CHAIKA:BLR)、3位にはセリーヌ・ゴベルビーユはこの種目でも3位に入っている。
  • 新しい種目になった、といってもいい25mラピッドファイアは、ロシアのエース、レオニッド・エキモフ(Leonid EKIMOV:RUS)が制し、2位にリカルド・マゼッティ(Riccardo MAZZETTI:ITA)、3位ジョルジュ・ラメズ(Jorge LLAMES:ESP)。日本の秋山選手は、全体で2位という高い素点で決勝(準決勝)に進出したものの、残念ながら上位入賞とはならなかった。
  • 男子ライフル種目は10mが、1位は今年突然ブレークした観のあるデニス・ソコロフ(Denis SOKOLOV:RUS)、2位は今年の顔的な観のニッコロ・カンプリアーニ(Niccolo CAMPRIANI:ITA)、3位は実力者シディ・ペーター(SIDI Peter:HUN)。50m三姿勢はベテランながら世界ランク1位となっているアルテム・ハジベコフ(Artem KHADJIBEKOV:RUS)、2位シディ・ペーター、3位ニッコロ・カンプリアーニ、と二人の安定した強さがここでも発揮された。ちなみに伏射は1位、ベテランのセルゲイ・マルティノフ(Sergei MARTYNOV:BLR)、2位若手のアンリ・ユンガネル(Henri JUNGHAENEL:GER)、3位ビヨルン・ベルグ(Vebjoern BERG:NOR)であった。
  • 女子ライフル種目は地元ドイツのソーニャ・フェイルシフター(Sonja PFEILSCHIFTER:GER)が10mで1位、三姿勢で3位、アメリカのジェイミー・ベイエール(Jamie BEYERLE:USA)が三姿勢を制し、10mで3位と、「2強」を印象付けた。ドイツの若手ビーテ・ガウス(Beate GAUSS:GER)が10mで2位、三姿勢の2位に昨年の覇者リジャ・ミハイロヴィック(Lidija MIHAJLOVIC:SRB)が入っている。全体としては、10mは1・2位、三姿勢はファイナルに3名とドイツ勢の活躍が目立ち、地元観客を沸かせたことがわかる。10mの3位争いは、ジェイミー・ベイエールに、カテリーナ・エモンズ(Katerina EMMONS:CZE)とエラーニャ・ナルデリ(Elania NARDELLI:ITA)の2名を加えた3人による熾烈な争いが相当に面白かったようだ。

DOPING

THE ISSF IPOD - The "information portal on doping"

2011年1月1日に発効する、新しいドーピングルールについて要約が記載されている。ISSF MEDICAL COMMITTEEのページで必要に応じて確認されたい。


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