トーマス・ルフ展が国立近代美術館で開催中。
「顔写真を大きく伸ばしたんだ。へ〜・・・・・。で?」
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この手の当たり前の写真を大きくして価値を高めてる写真のことを「坪単価いくらの写真」と呼ぼう。広さ=価値、っていう不動産の価値観に支えられた写真。でかいけど、構成要素はやたら少ないから人件費さえ投入すれば短期間に次々と量産可能で、実にリーズナブルな芸術。
で、これらただただ大っきい写真を買うのは誰か? それはもちろん、不動産デベロッパーさんたち。余剰資金もたっぷりあるし、展示スペースにもことかかない。それよりなにより、面積と価値が釣り合ってるっていう価値観を共有している。「おお! 同志よ!」 。不動産は、安定資産。それを証券化した不動産証券は超安定資産。超安定資産=永遠不変の価値。不動産=面積こそが、不動不変永遠の価値を表象する。ゆえに、大っきい写真には、不動不変永遠の価値がある。不動不変永遠の価値こそ、芸術! アリガタヤアリガタヤ。
愚か。
そもそも不動産=不動の資産って神話は、2008年リーマンショックで解体したよね? 土地を担保にしてようが、変動相場で売り買いされてる以上は、相場の気分次第で価値が上下するただの「商品」。不動産だろうが、家屋だろうが、土地だろうが、小豆相場やらレアカードトレードやらと変わらない。17世紀オランダの「チューリップ恐慌」を思い起こそう。チューリップの球根を大の大人が必死になって全財産賭けて売買してたことがあったんだぜ? 不動産もそれと同じってことが、2008年にははっきりしてる。今は、2016年。なんで今更? なんで今更、面積至上主義の写真を国立美術館でやるの??? そのことの国家的意義やいかに?
実は意義はある。
2008年リーマンショックで不動産もバブル商品にすぎないと世界的には認識されているにもかかわらず、アベノミクス下のニッポンでは、今まさに「不動産バブル」中だから。アベノミクスで溢れ出た余剰資金(元は国債のわけだが)は、ぜ〜〜〜んぶ不動産投資にまわっていて、今やニッポンは、不動産バブル状態。「今って21世紀だよね?・・・不動産バブルって30年前の話でしょ?・・・」と不安になるが、実際そうなっているんだから仕方ない。アベノミクス下の2016年ニッポンは官製景気の不動産バブル中。なんかねえ・・・。
不動産バブル投資で危うい官製好景気を演出しているアベノミクス日本。その国の首都で、いまだリーマンショック以前を彷彿させる「坪単価至上主義写真」を「国立」美術館で展示。これぞタイムリーな時勢感覚! まさに「お役人ニッポン」の取り残され具合と、カモられぐあいを表象していて実に感慨深い。
嗚呼、素晴らしい、見事にアベノミクス経済を表象した展示だ。
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