CCD傾斜機構の顛末と意外な効果





The reopening of the slant device
一年越しの再取付け。干渉を避ける為にフラットケーブルに直にハンダ付けしています。




傾斜機構の取付けを再開してみました。前面パネルへの干渉によって止むなく中止していましたが、実は当時分解中にフラットケーブルの接触不良が発生し、それが原因でメイン基板を駄目にしてしまいました。そのまま放置もできないので、その後、新たにS620を入手して2号機を元の状態に戻した状態でもう1年にもなります。やり残した実験なので、リスクはありますがこのあたりで取付けてみる事にしました。2号機は分解しにくい構造なので、ほとんど完全分解しないとCCDの載せ替えができません。その構造を思い出しながら分解してフラットケーブルも接触不良に注意しながら慎重に組み込みました。(写真上)さて、駆動は正常です。次に前面パネルを載せてみましたが、無事干渉もなく取付け成功です。見たところでは一応想定していた動きをしています。しかし、ここでもうひとつ問題が発覚しました。CCDはスタート位置で8度傾斜しています。考えてみれば解るのですが、そのために内部LEDの光路を遮ってしまうのです。(下図)そこで、フライス盤で前面パネルの裏側に光路の隙間を削りました。それでも1mmほどの僅かな隙間なので、照明効率は不十分です。したがって感度が高くトーンも安定していませんが、テスト撮影はなんとかできるようになりました。しかし、あいにく屋久島のこのシーズンは天候が悪くなかなか撮影できません。3週間近く待ってやっと撮影可能な日が訪れました。快晴ではないのですが、贅沢も言えないのでテスト撮影を実施しました。さて、これがSWC装着の最初の画像です。(写真1)しかし、傾斜機構の効果はまったくありません。どちらかと言えば傾斜のない状態よりも画面両サイドの暗くなる範囲が増えているようにも見えます。試しにF520に一部加工してSWCを取付けて撮ってみると、撮像範囲が小さいのでS620機よりも減光の影響も少なくなっています。(写真2) 私は以前ビオゴンの光路を作図した事があるのですが、両サイドの光路を直角に結ぶためには40度以上の傾斜が必要になり、8度程度の傾斜ではどうやらまったく足りていないようです。しかし、現在のデジタルバック型の構造では干渉があって、これ以上の角度をつけるのは不可能です。また、もう一つの解決策だった樹脂補填という方法がたとえ成功しても、稼げる角度は同程度と予想されるので、ハッセルビオゴンはどうやっても使えないという悲しい結論になってしまいました。残念です。しかし、思い直してふと考えたのですが、もしかすると他のワイドレンズでは何らかの効果があるかもしれません。そこで傾斜機構付きのS620機と比較の為にF500機(YAKUSCAN)にペンタ645用の35mmf3.5を付けて撮ってみました。(写真3.4)この2点の写真を比較すると、F500機はLED装置の分でレンズのセンターが僅かに右に寄っていますが、それでも左側の周辺減光が顕著です。対してS620機では周辺減光がいくらか改善しているように見えます。これは傾斜機構の効果かもしれません。撮影絞りはどちらもf16ですが、試しに画面左端を拡大してみると、画像に流れの現象があります。(写真5.6)これはペンタ35mmf3.5のレンズ性能に起因するものですが、比較するとS620機では明らかに画像が改善しています。ここに傾斜機構の効果が現れているように思います。そもそもラインCCDは常に直角に画像を取込むように出来ているのですから、この現象はスライドさせるシステムの宿命とも言えるでしょう。その意味で傾斜機構は、少なくとも画面長辺両端の画質を向上させる良い手段になるかもしれません。いずれS620機のLED照明を改善して、特にワイド系の他のレンズもテストしてみたいと思います。ちなみに、SWCの同じ所の拡大画像を見てみると、ビオゴンには流れの現象はありません。(写真7)すばらしい描写ですね!やはりこのレンズが使えないというのはつくづく残念でなりません。


1年前の記事はこちらです。CCD 傾斜機構に挑戦 4 http://d.hatena.ne.jp/YAKU/20101115/1289788082



Insufficient illumination
スタート位置のCCDは8度傾斜しているので、LEDの光路確保が難しいのです。





Slant of S620+SWC
写真1、S620傾斜機構+SWC。残念!まったく傾斜機構の効果はありません。


F520+SWC
写真2、F520+SWC。撮像範囲が小さい分、両サイドの減光は僅かです。画像処理で補正できそうです。





F500+PENTAX35
写真4、F500+ペンタ35mm。F500機はLEDスペースの都合でレンズのセンターが少し右に寄っています。特に左側に減光があります。


Slant of S620+PENTAX35
写真3、S620傾斜機構+ペンタ35mm。おそらく傾斜機構の効果で画面両サイドの減光がありません。





Equal double F500
写真5、F500の等倍画像。ペンタ35mmも画面端では像の流れが出ています。


Equal double of S620jpg
写真6、S620の等倍画像。流れはありますが、傾斜効果で画質が改善しています。





Equal double of SWC
写真7、ビオゴンの等倍画像。ペンタ35mmとは別次元の描写で、流石に像の流れは認められません。














写真の見方について:ここに掲載の写真ではスキャナカメラの実力が伝わりませんので、写真をクリックしてください。Flickrに飛んだら、写真左上のActionsの中からView all sizesを選ぶと各サイズの写真が見られます。一番右側のOriginalが最大サイズです。しかし、残念ながらサイズ制限があるので、実際の画像サイズまでは掲載できません。


Google translate English)

http://translate.google.com/translate?hl=en&ie=UTF-8&sl=ja&tl=en&u=http://d.hatena.ne.jp/YAKU/&prev=_t&rurl=translate.google.com&twu=1