奇妙な盲目の小さな乳房 

えんじゅの並木路で 背をおさえつける
秋の陽なかで
少女はいつわたしとゆき遇うか
わたしには彼女たちが見えるのに 彼女たちには
きつとわたしがみえない
すべての明るいものは盲目とおなじに
世界をみることができない
なにか昏いものが傍をとおり過ぎるとき
彼女たちは過去の憎悪の記憶かとおもい
裏ぎられた生活かともおもう

けれど それは
わたしだ
生れおちた優しさでなら出遇えるかもしれぬと
いくらかはためらい
もつとはげしくうち消して
とおり過ぎるわたしだ

小さな秤でははかれない
彼女たちのこころと すべてたたかいを
過ぎゆくものの肉体と 抱く手を 零細を
たべて苛酷にならない夢を
彼女たちは世界がみんな希望だとおもつているものを
絶望だということができない

わたしと彼女たちは
ひき剥がされる なぜなら世界は
少量の幸せを彼女たちにあたえ まるで
求愛の贈物のように それがすべてだそれが
みんなだとうそぶくから そして
わたしはライバルのように
世界を憎しむというから

吉本隆明 「少女」

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