ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「果てなき路」 〜映画の罠〜

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公式サイト:http://www.mhellman.com/音が出ます!

監督・製作:モンテ・ヘルマン
脚本・製作:スティーヴン・ゲイドス
製作:メリッサ・ヘルマン
製作総指揮:トーマス・ネルソン、ジューン・ネルソン
撮影:ジョセフ・M・シヴィット
音楽:トム・ラッセル
音楽監修:アナスタシア・ブラウン
編集:セリーヌ・アメスロン
VFX:ロバート・スコタック
美術監督:ローリー・ポスト
(2011年 アメリカ 121分)
原題:ROAD TO NOWHERE

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
ハリウッドで活躍する気鋭の若手映画監督ミッチェル(タイ・ルニャン)は、新作の製作に着手する。
彼は、ノースカロライナで起きた事件を基にした物語に必須なのは、
主人公ヴェルマ役にぴったりの女優だと考えていた。
そんな折、多数のオーディション映像の中から、
無名のローレル(シャニン・ソサモン)という女優を発見する。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

不勉強なので、モンテ・ヘルマン監督の作品は初めての鑑賞です。
「断絶」(1971年)が有名(大コケしたという意味でも)だという事ですが、
いわゆるアメリカン・ニューシネマの作品は、元々あまり見てないし。
で、先入観無しに見ることはできました。

この映画、たぶんハマるとクセになるかも。

女性がパソコンでDVDを再生するシーンから始まり、
やがてその映像がスクリーン一杯に映し出されます。映画の中の映画の始まりです。
ベッドの上に座る女性がドライヤーでマニキュアを乾かしているんですが、
そのうちにドライヤーを自分自身に向け、何か不吉なモノを予感させます。

映画は続き、その後の突然の銃声と、飛行機の出現は衝撃的です。
衝撃的といえば、ラスト近くの展開も急激でしたけど。

最初に登場するこの「果てなき路」という映画の話と、
この映画の製作にとりかかる過程や撮影現場という現実の話と、
「果てなき路」の原作ともいえる過去の事件にまつわる話の
3つが入り組んで、見ているうちに訳がわからなくなってきます。

作品と現実、映画中映画と映画中現実との境界線もあいまいになっていきます。
いかのも怪しげな保険調査員ブルーノ(ウェイロン・ペイン)や、
劇中映画の原作でもあるブログを作成したナタリー(ドミニク・スウェイン)とか、
出て来る人物は、どことなくB級映画の雰囲気がただよわせていて
そこが逆に私には面白かったですね。

ローレル(ヴェルマ)役のシャニン・ソサモンは、いかにもファム・ファタール的な匂いがして
見ている者が「ヴェルマ役は彼女しかいない!」と思ってしまうところが、
映画の中と監督同じじゃないですか。これもまた、一種のデジャヴ体験?

シャニン・ソサモンは「ホリデイ」ジャック・ブラックの恋人役だったらしいけど、全く記憶にない。
今作品でのこの役だからこその存在感だったのかも。

この映画ね、わからないところが多々あってもう一回観たい気になってしまうんですよね。
そこは、あえてそうしてるのか?と思ったりして。罠なのかもしれないと。

映画の中の監督・ミッチェル・ヘイヴンは、モンテ・ヘルマン監督自身の姿が
投影されたものかもしれませんね。
名前こそ、ヘイヴン(ヘヴン)←→ ヘルマン(ヘル)と真逆ですが。
ミッチェルがローレルと夜中に見る映画は「ミツバチのささやき」「第七の封印」、
もう一本は知らなかったのですが「レディ・イヴ」という1940年代のアメリカ映画らしいです。

十三 第七藝術劇場にて鑑賞。