Books Review No.95 科学者という仕事

科学者という仕事 酒井邦嘉著 中公新書

学問の分野を問わず、学位としての博士のことをPh.Dという。


このPh(Philosophy=哲学)とは、もともとギリシャ語ので『知を愛する』という意味である。


科学に携わる研究者のPhilosophy(哲学)について考えているのが本書である。


科学者の卵やこれから科学者を目指すものにとって、本書にまとめ上げられている考え方やアフ
ォリズムは研究する上で必ず役に立つ。


例えば、僕にとって朝永振一郎先生の言葉は座右の銘にしたい。


『私の自然科学研究の経験は、すべてのことに近道のないことを教える。一つ一つの積み重ねをたゆまず、あきることなくやっていく、それがもっとも確実な方法であり、それが最も速やかに目的に達する道であると私は信じている。』


本書から一般の人にも有用でないかという内容があったのでここに引用する。


研究者に必要な才能について、堀田先生の言葉を一部引用。


『研究者はみな研究が好きで好奇心があり、そういう才能を持った人の集まりです。その意味で「好きこそものの上手なれ」といえ、自分に与えられた才能でスタートします。才能で勝負というわけです。ところがしばらく走ると、実は自分の才能のない部分がrate-limiting factor(進み具合を制限する要因=ボトルネック)となってきます。実験は好きだが論文書きが下手な人はその好例です。(中略)
つまり人生のレースは才能で勝負しているように見えるが、実は最後は才能のない部分をいかにカバーできるかが肝心です。つまり本当は「ない才能で勝負」するのです。まあ、これが人生の面白さともいえるのではないでしょうか。』


これについては、どの世界でも同じ気がする。