河合隼雄、中沢新一『仏教が好き！』

http://book.akahoshitakuya.com/cmt/11955673

だっていきなり仏教はキリスト教やイスラム教に対するメタ宗教、みたいなこと言いだすんだからびっくりよ。キリスト教なら海外の小説なり批評なり（引きずられて国内の批評も）を見ればどこかしら目配せされているからかえって見聞きすることが多いけど、あんまり仏教について今まで考えたことがなかった。それでたまたま買ったらこれだもの。ほかにも、イスラム教の「アッラー」は仏教で言う「輪廻を脱出した者」に近いが決定的に違うのは名付けてしまうかどうか、とか、各宗教の母親・女性の扱い方の意味とか。こんな軽いタイトル＆表紙なのに。

仏教が好き!

フォークナー『アブサロム、アブサロム！（上）』

http://book.akahoshitakuya.com/cmt/11956050

複数の人の口から物語を語らせるスタイルは、神を措定して透明に語るよりずっと倫理的かもしれない。括弧やイタリックで人の口や思考だと明示しながら、明示が意味を失うほど過剰な長さで繰り返される物語に「余りにも多く、余りにも長く、聞きすぎて来た」（p.322）と聞き手・クェンティンが叫び、自分で物語の空白を埋め始めるのはほとんど私たち読者のよう。探偵小説なら自ら動いて客観的に空白を生められても、ここでそんな振る舞いは彼に許されない。物語の、というより物語の語り方の決着が下巻でどうつけられるのかとても楽しみ。

アブサロム、アブサロム!(上) (講談社文芸文庫)