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やしお このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-01-25 Mon

イエスマンが出世する流れ

 傍からは「あいつはイエスマンだ」と見えても、たぶん当事者はそう思ってない。本人の意識としては当然のことをしているという感じなんじゃないか。

 強圧的な相手から防御するために、自分の意見を抑圧してイエスマンにならざるを得なかった、という面従腹背タイプももちろんいるんだろうけど、それは傍から見ると「共同被害者」という感じで、「あいつはイエスマンだなあ」と思われるタイプとはちょっと違うんじゃないか。もっと単純に、その相手に心酔している、というのに近い状態なんじゃないか。

 相手の方がはっきり優秀だったり頭が良かったりして、もうこの人ならあらゆる分野で自分よりも正確な判断をしてくれるはずだ、という完全敗北を受け入れる/絶対的な信頼を寄せる。自分の間違いをその人に指摘されるのがほとんど喜びのようになってくる。自分が考えも及ばなかったような点をきちんと指摘して、あざやかに解決してくれるのを見たくなってくる。そういう賞賛が態度や視線に現れてくる。そして本当に心底、「いやあ、ほんとにその通りですね」とイエスを言う。自分で考えることを放棄して依存していく。

 周りからは「あの人イエスマンなんかになっちゃって」と見えていても、本人としては「だってあの人の言うことは実際正しいんだから当然でしょ」という感じになっている。


 一方で被イエスマンの方は、そりゃ悪い気はしない。「ったくしょうがないやつだなあ」とか「結局俺がいないとダメなんだから」と文句を口にしながら居心地の良さを感じている。他人に依存される、「あなたはすごい」と肯定してもらえるのは、当然自尊心を満足できてうれしい。

 もし本当に客観的に自分と組織を見られていれば(これじゃダメだ)(依存構造をなんとかしないと相手にとっても組織にとっても良くない)と思えるだろうけど、構造が見えていなければ、居心地がいいという感情の方を無意識に正当化する方向へ理屈を構築してしまう。

 被イエスマンの側から見ると、イエスマンはあたかも勉強熱心で向上心のある人間に見えてしまう。積極的に自分にアドバイスを求めてきて、間違いや改善点を指摘すると、嫌な顔をせずほとんど嬉しそうに受け入れてくるからだ。それで「将来性がある」と言ってイエスマンを引き上げてしまうかもしれない。

 もともと間違いを指摘するということ自体、自分を肯定できるという意味では気持ちが良くても、他人を否定するという意味では気が重かったりする。その気の重さを普段は相手に感じさせないのがイエスマンだ。しかし相手に強いているという負債意識が消えるわけではない。今まで色々してくれて悪いなあ、という感情だ。相手を引き上げる、出世させるというのは、その負債をチャラにするためにうってつけの機会だ。本人としては「あいつはまだまだかもしれないけど、頑張ってるし将来性もあるから引き上げてやろう」という意識になる。


 基本的にみんな「自分は正しいことをしている」と思い込みたい、自分を否定するより肯定したいと思ってる。だから傍から見ておかしくても、当事者はそれをそれなりの理屈で正当化している。

 それで、自分の頭で考えることをやめてしまった事実を曖昧に忘れて「あの人は本当に正しいから、自分はそれを肯定しているだけだ」とイエスマンになれるし、相手から考えることを奪って自分が気持ちよくなっている事実を曖昧に忘れて「あいつは勉強熱心だから」とイエスマンを受け入れられる。そうやって両方向に依存している後ろめたさを無意識に解消させる儀式として、そのイエスマンを出世させる。「お前は向上心があるから期待している」という言い訳を、お互いがそれぞれを正当化させるために信じてしまう。

 傍からは「ただのお追従じゃないか」とどれだけ馬鹿馬鹿しく見えても、本人たちとしては全くまじめにそうしているんじゃないか。


 自分の後輩との関係を考えていた時に、3年目にしては良くやってくれてるんだよなあ、頑張ってくれてるなあ、とプラス方向で後輩のことを考えているのは、ひょっとしたら、本当は後出しのダメ出しはしてはいけないと思っている(以前「組織内の権限移譲が成立する条件 - やしお」で書いた通り)のに、ダメ出ししちゃって申し訳ないなあ、みたいな罪悪感がそう思わせてる面もあるのかもしれない、と疑いを抱いて、その延長線上、もっとエスカレートさせたらどんな景色が見られるのかなと思って考えてみたら、そうか、イエスマンってそういう感じかもしれないと思って。

 幸い(?)その後輩はすぐ嫌そうな顔をしてくれるので大丈夫だけど。

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