2010-04-25 jet 投下
■[二木佳奈多SS短編集]jet
これは、リトルバスターズ!エクスタシーのSSで、
jet
落花の風情とは言うけれど、寮の管理をするものとしては、
葉の混じる桜を見上げて途方に暮れる。
いっそのこと、いっぺんに散ってくれるのなら、
有難いというのに。
「暦と気候があってないのは、
人間が一年の区切り方を、毎年変えてないせいね。
怠惰だわ」
面倒がりの私が言っても滑稽だけど、
季節や、地球に文句を言っても仕方が無い。
はるか昔の人間に難癖をつけるほうが、まだ精神に健康的だ。
「春って感じはなかなかしないよね」
直枝が、やけに細い箒を立てて笑う。
きりが無い作業に、時間ばかりが消費している。
学校に多いソメイヨシノは、
山桜がさいてしまわいないうちに散って、葉桜になる。
今年は長く耐えた。それは、墜ちるとあっという間に散る。
後に残る葉は夏への陽射しを弾いて若くある。
環境の美化というのなら、
桜ほど手のかかる鑑賞物もないだろう。
勝手に咲くのは良い。
跡には、乱れて地面を汚す。
「校舎のあたりだったらなぁ」
直枝が愚痴を零す。
寮周りはあくまで生徒の生活空間で、
毛虫の駆除ならともかく、特別な技術を要さないところには、
自主性という名の便利な言葉が宛がわれる。
「人の相手だけしていればいい、
とは甘かったわね」
人との折衝なら割と得意だ。
誰しも、妥協というのはあって、譲れる範囲を見極めればいい。
しかし、自然との闘いは、
自分との戦いであり、どこに折り合いをつけられるかが勝負になる。
溜息をついたところで、このゴミが飛んで行ってくれるわけではない。
「手が悴んできたし、少し休憩を入れる?」
「まだまだ、はじめたばかりよ」
今でも十分に冷静だが、休憩などとって客観的に状況を見てしまうと、
面倒臭さが増す。
「なるほどね」
ふっと、ひとつ置くように笑って、直枝は手を動かし始める。
なんとなく、直枝の考えていることがわかってしまった。
「みんなに、手伝ってもらったほうがよかったと思ってるわね」
そう、助けの申し出はあったのだ。
何が楽しいのか知らないが、人を助けるのに熱心な神北さん。
そして、私の同室のクドリャフカ。
私に直接手伝いを買って出たのはこの二人で、
直枝のほうでも何人か集まっていたらしい。
でも、私は断った。
寮会の仕事は、あくまで私と直枝のやることであって、
一般生徒の手を借りるのは何か違う。
という建前を並べ立てた。
「いや、まあ。
僕らで終らせられるなら、それがいいんだし」
「そうよね」
視界が、翳って来た気がする。
直枝に背を向けて、しゃがむ。
ああ、駄目だ。
皮肉のようなものをぶつけて、謝りもせずに逃げた。
汚れた花びらを一つ摘み上げて、半透明のゴミ袋に入れようとするが、
風がそれを持っていく。
桜の木の元に帰るように墜ちたそれは、
何故か他の汚れた花びらと違って、くっきりと解った。
ごめんなさい、というべきだ。
私は、直枝と過ごして、この言葉をよく使うようになった。
訂正することで、素直でない私を過去に立ち返らせてくれる頼もしい言葉。
立ち上がる。
「ごめんね」
「なんでっ!?」
先に謝らないで欲しかった。
反射的に振り返って、叫んでしまったことに、
直枝が驚いていることに気がつく。
「ここは、私が謝る場面だわ」
まったく、おかしい。
「どうして?」
直枝は、純粋に疑問をかざしている。
それはそうだ。
吹っ掛けたのは私で、それよりももっと前に、告白する嘘があるのだ。
神北さんやクドリャフカを拒んだ理由は、
まったく私のわがままでしかないのに。
きっと、直枝は生真面目に私が寮会の仕事に誇りをもっていると、
勘違いをしているのだ。
間違っている。
「私が、あなたと二人でいたかっただけなのに」
/
ぽかんとした。
多分、その瞬間に僕は間抜けに口をあけていた。
背を向けた佳奈多さんが無表情なのが見えて、
怒っていると思っていたのだ。
今日の仕事は、かなり前から決めていたもので、
僕は、それとなく真人たちに話していたのだ。
真人たちは、僕らがふたりしかいないのを知っているから、
手伝おうとしてくれた。
でも、佳奈多さんはクドたちを断った。
だから、僕も遠慮をしてもらった。
墜ちた桜を見ても、何とかなるだろうって考えていたけど、
やり始めてみるとなかなか上手く集まらない。
だから、つい疲れた姿勢を見せた。
僕は、甘えてしまったんだ。
だから、
佳奈多さんが恥かしそうに、赤くなっているの見て、
わからなくなった。
/
私には、その間抜けな直枝の表情はわからなかったけど、
自分の顔が赤くなっているのがよくわかった。
俯いて、時間が何とかしてくれないかと祈る。
「いいや、ぼくのほうが謝るよ」
まだ、言うか。
何度、私を辱めるつもりかこの男は。
ぱっと、顔を上げる。
「なに、笑ってるのよ?」
何かを言おうとして、直枝を顔を見たのに、
直枝は微笑んでいる。
「いや、もうどうでもよくなってきちゃってさ。
そのことについて謝ってるんだよ」
くすくすと笑いながら、直枝は手を動かし始める。
「この後さ、部屋でお茶でも飲もうよ。
のんびりして」
直枝はずっと笑い続ける。
私は恥かしさが止まらない。
でも、これでいいかとも思えた。
読んでくださった方に多謝。
長くブログをあけて、コメントの返信もできずに、
真に申し訳ありませんでした。
短いですが、まずは一つ投下。
GWがわりと長いので、その間にべビプリのSSを一つ上げます。
あとは、気分次第ですが、オリジナルもできたらと思います。
タイトルは、スネオヘアーの「Jet」
音楽の話。
このブログ、「反射の顛末」の元ネタは、
Grapevineの「作家の顛末」と、
nujabesの「reflection eternal」です。
何故、いまさらこんな事を説明するかというと、
nujabes氏が先日、亡くなられてしまったからです。
私は、彼の曲をそれほど知っていませんし、
皆様も、彼の名前すら知らないかもしれません。
それでも、私は「reflection eternal」をタイトルに使うくらい、
彼の曲を美しいと思いました。
そのことを、忘れたくないと思います。
今年に入って、gang starrのguruも死んで、
hiphopには悪い年なのかも知れません。
でも、今のバンドミュージックには無い、日本のhiphopから、
音楽ジャンル自体の初期衝動はまだ失われていないと思います。
以上、Yasuyでした。
