2009-08-12
■[book]『経済成長って何で必要なんだろう』のamazon書評

日経ビジネスオンラインで経済学の入り口 or 入り口の手前の話をしてみました.
毎度の芹沢一也氏仕切りなので,その効果あってかamazonで『経済成長って何で必要なんだろう』がいきなり品切れになりました(お盆なので配本が遅いだけかもしれませんが^^).そこであらためてアマゾンレビューを見てみると……
「うっわ〜.見事に評価がバラバラ」
レビュー数はまだ少ないですが☆2から☆5まで1人づつ.もっとも,著者の一人としては納得.だって元々論争をはじめるとっかかりの本ですから.
そのなかでなかなかおもしろかった書評が一番評価が低い,以下の書評.
地球の有限性を、視野に入れていない, 2009/7/28
By hope
1)地球環境・資源が有限であるという認識が欠如しているのではないか?
2)しかも、60年代からこれまでのようにG8のような数カ国だけが、他国を「大消費地」=マーケットと位置づけて経済成長を謳歌してきた時代ではないことの認識も見られない。
上記2点を視野にいれたうえでも、「2パーセント台の”右肩上がり”を維持していく」というのだろうか。
むしろ、右肩下がりでもどのように持続していけるのか?ということに向き合わなければならないのが「今」なのではないか?
あとは「コミュニティ」への冷笑的態度は、どうしてなのだろう?
そこに暮らす人たちの声を反映したビジネスを立ち上げることで、雇用機会が生まれたり、新しい技術の萌芽になっていくと思うのだが、情報の循環の基盤としての人のつながりというものをあまりにも捨象しすぎているきらいがあります。
コミュニティについての言説は、「昔に帰れ」的な懐古趣味ばかりではないと思いますが。
本書をすでに読んでくださった方,そしてそのごく一部でも納得・賛同いただけた方が周りの誰かに語り始めたとき,第一にぶつかるのが以上のようなテンプレ的な経済成長批判かと思います.そこで,その際の「反論テンプレ」も用意しておきましょう.
- 地球の有限性がどうのこうの
少なからぬ人は経済成長というと量的な拡大ばかり想起してしまうようです.例えば鉄鋼生産が倍になるとか自動車生産台数がX%伸びるとかそういうの.この種の成長余地は先進国内では少ない.同じような商品を大量生産してもうける……なんてビジネスモデルは先進国ではすでに30年前におわっています.
経済成長=付加価値生産の拡大であることを忘れてはいけません.先進国の経済成長は「給料が2倍になって米を2倍食うようになる」という成長ではない.「マクドナルドではなく自然食レストランでランチを食べるようになる」「パイプ椅子じゃなくてディーティカなりなんなりの椅子に座るようになる」……あくまで質の向上です.パイプ椅子から腰痛にいい椅子に変えた,PCの利便性が上がったことによって石油消費が増えたりCO2が排出されたりしません.また,いままでより少ないエネルギーで同じ商品を生産できるようになると(同じ価格で売れるなら)付加価値部分が大きくなって付加価値は成長(つまりは経済成長)します.
もちろんエネルギー消費量が全く増えないわけでもないでしょうが,百年・二百年のスパンで考えるならあんまりまじめに考えてもしょうがない問題です.環境云々について心配した方がいいのは途上国の成長の問題でしょう(これでさえ僕は少々騒ぎすぎだと思う).むしろ小飼弾氏的な成長の限界(全員が豊かになりすぎて経済成長が止まる)の方があり得るくらいなんではないかと思います.
- 他国を「大消費地」=マーケットと位置づけて経済成長
これは全然データの裏付けがない印象論.貿易依存度をちゃんと調べないと行けない.基本的に日米の経済は国内需要が9割以上というきわめて閉鎖的な経済です.また英・西欧は貿易依存度こそ高いもののそのかなりの部分はヨーロッパ内での(国境を越えた)取引だったりする.ちなみに他国(というか中国)をマーケットと位置づける(というか位置づけられる)ようになったのはここ10年の話です.
- 右肩下がりでもどのように持続していけるのか
なぜ右肩下がりじゃなきゃいけないのかな?
多くの国際機関・シンクタンクの予想では再来年には日本以外の先進国は2%成長に回帰すると予想されているのになぜ日本だけゼロ成長やマイナス成長に耐えなければいけないのでしょう?
このように書くと第一の反論は人口が減少に転じるからというものになるでしょうが……人口はあまり関係がありません.本書で繰り返し言及する2%成長は「一人当たりGDP」の2%成長の話です.むしろ一人当たりの資本装備率が上がる分,経済成長には追い風が吹いているとさえ言えます.あくまでまともな競争政策・安定化政策・再分配政策あっての話ですが.
- 「コミュニティ」への冷笑的態度
これもよく言われるけれども僕個人としては心外.昔から地元団体から学校行事,OB会,NPOまで僕はわりとコミュニティ活動の参加頻度高いし,すごく好きなんだけどなぁ.僕が嫌いなのは他人にコミュニティへの帰属やコミュニティの称揚を押しつける態度.その意味で「コミュニティ」に冷笑的なんではなくて,「コミュニティの強要(?)」に冷笑(or嘲笑)的というわけ.
仕事の合間にさっと書いただけなので少々荒っぽい話になってしまいましたが,コメント等で「反論テンプレ」のブラッシュアップにご協力いただければ幸いです.
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本の狙いのせいか、インタゲ・リフレのようなパイを大きくする議論ではなく、パイをどうわけるかという議論をされていたのかなあという感想を持ちました。
で、質問ですが、雁行形態論って言うんですかね?欧米へのキャッチアップが終わったので高い経済成長は望めないという話についてですが、先駆者=欧米、後発=日本っていう図式は成り立つんでしょうか。
この20年振り返ってみればGDPの寄与率はともかく、不況下でも消費者金融、パチンコ、人材ビジネス、アウトソーシングと新たに発展・成長した分野はあったし(人材ビジネスは基は海外発祥でかつ規制緩和の影響もあったでしょうが。アニメはジブリの出来に左右されるそうですね。)、携帯電話や半導体産業もそもそもデフレで国内メーカーが構造調整に追われていなければ世界市場に打って出られたのではないかなあと妄想してます。単純にインフレ率さえ安定させれば後は勝手に何か産業が勃発するのではないでしょうか。
個人的にこの手の話は、これからは農業だ、いやバイオだ、ITだと、変な産業育成論につながってきて好きになれません。
>先駆者=欧米、後発=日本
この図式でいけたのは70年頃まででしょうね.産業の中身はともかく工業化すればそれだけでどんどん成長.そしてこれからの経済成長については,
>インフレ率さえ安定させれば後は勝手に何か産業が勃発
だと僕も思います.
確かに金融政策を一般の人に理解させるのは難しいですね。大学が経済学部でとりあえず真面目に勉強してた人や公務員試験で経済勉強した人でも、やっとおぼろげにわかるかなあって程度で、クルーグマンの論文を反論含めて一から十まで理解しようと思ったら、それこそ大学院いかないといけないんじゃないでしょうか。普段仕事で忙しいうえ持ってる知識もバラッバラな一般の人に伝えるのはなかなか難しいでしょうね。
とはいえ構造改革論の理論的バックボーンである(だと私が勝手に思っている。少なくとも竹中や吉川、林文夫はそうでしょう)RBCなんて、それこそとてつもない勉強時間と数学的素養が必要な議論のはずなのに、反経済学なマルクスな人も含めて、「構造改革の必要性」がすんなり受け入れられてるのは何なのよとも思うのですが。
雨宮さんとの共著も購入する予定です。時間のない社会人や経済学を勉強したことのない人でも,知識的に(値段・分量的にも)とっつきやすい本をこれからもよろしくお願いします。間違いだらけとはいえ、なんだかんだで木村剛がうけた理由の一つが、「なんか直感に合って、かつ何かわかりやすかった」ってとこだと思うので。一昔は論壇含め一般メディアで広く活躍してる経済学者って、金子勝や松原聡みたいなので、きちんとした経済学についてしゃべれる人はそれこそ森永卓郎位しかいなかったのに、いい時代になったなあと思います。
僕はマクロ偏差値38程度の馬鹿ですが、世間一般にリフレひいては金融政策の重要性を知ってもらうべく方々で書き散らかしております・・・
ここ1〜2週間ほどの傾向ですが、こちらが拙いマクロ知識を披露していると、相手のほうから「調整インフレ」「インフレターゲット」「財政ファイナンス」という単語を出してくることが増えました。しかも、理論的には正しいが・・・と理論面では基本には賛成する方が多い。
ただし、日本国民の完全主義指向ゆえでしょうか。まだ政策の安全性についてイロイロと不安に思うフシが強いようです。そこで一般の方々から出された不安材料を「反論テンプレ」の補強に加えて頂けたら幸いです。
?インフレ率が制御不能になる可能性はないのか。
…これが最も多く示された懸念です。インフレ率を精密に制御できるようにしてほしい、という声が強いです。
?国債金利が上がって財政破綻する可能性、ホントに無いの?
…わが国の公債はほとんど国内でファイナンスされている訳ですが、これにより国債金利が無問題になる事の上手な説明がまだまだ足りないようです・・・
?資本移動自由化したまま更なる金融緩和したら、資本流出してヤバいことになるのでは?
…為替が固定なら同額だけ海外から流入し、為替が変動で減価するなら輸出が増えて外需が増え国内がインフレ気味になり内需が刺激される。という事の上手な説明が必要なようです。
?プラザ合意後の円高に対応した金融緩和で、物価・賃金が上がらず資産価格ばかりが上がったバブル景気には懲りている。リフレ派は「デフレよりバブルのほうがマシ。バブルは後にならないと分からないから気にするな」を合言葉にしているようだが、バブルは正直イヤだ。バブルを防ぐ方法、せめて適正価格らしきものの推計ができるようにしろ。
…近頃調整インフレに理解を示すようになった方の殆どはバブルを容認しません。バブルを防ぐ努力も一緒にしてくれないとリフレ政策への賛同には踏み切り難い、とのこと。
以上、報告です。
そうなんです.その意味で構造改革への賛意は理論的支柱とは無関係だと行って良いでしょう.理論的なバックボーンと無関係だからたった一年で資本主義批判まですっとんでしまえるわけです.
リフレFAQについては,なんといってもこれでしょう.
http://bewaad.sakura.ne.jp/archives/themebased/reflationfaq.html
>http://bewaad.sakura.ne.jp/archives/themebased/reflationfaq.html
bewaad氏の努力には敬意を表するのですが、bewaad氏のリフレFAQは「十数年前のPC取扱説明書」状態だと思います。
十数年前のPC取扱説明書は素人が読んで余計にわからなくなるシロモノで、コールセンターにかけてもずっと話中でした。技術的な知識のあるPC製作チーム周辺が取扱説明書を作成したために、無意識に専門知識を前提とした説明書となった為です。素人ユーザーさんは「クリック」という言葉さえ理解できなかったのです。
同じく素人さん達や、ナショナリズム戦争平和論に熱中する右翼・左翼さん達は、bewaad氏のリフレFAQの最初で挫折してしまうようです。
少し賢い中学生なら何とか理解できるレベルのFAQへリライトしないと普及は困難でしょう・・・
読書メモを書き続けているので、読んでもらえたら幸いです。
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