魚柄仁之助

http://www.ruralnet.or.jp/fuki/vodka/index.html
黄変した新聞記事が出て来た。ガス代の節約、二酸化炭素の排出削減、手軽で美味い煮物の作り方、魚柄仁之助さん提唱『保温調理法』についての記事だ。

『保温調理法』
水から煮た人参を沸騰したら弱火で2分、火から降ろしタオルケット(新聞紙でも可)で包む、約15分後完成。

一度やってみた記憶があるのだが、旨味が逃げていなくて大変美味しかった。節約料理は材料ばかりに目が行きがちだが、光熱費問題も環境問題もフォローしているこの方法、魚柄さんの容貌そのままに最高にヒッピーでケンタロウ嫌いの私として早く、今日の料理で教鞭を執って欲しい。その際は岩井小百合を助手でお願いしたい。
6年くらい前のどこかの新聞記事より*1

  • 保温調理法には幾つか流儀があるが、一番簡単な方法を実践しているのは『めしのチカラ』(ネスコ)などの著書がある食生活研究家の魚柄仁之助(うおつか・じんのすけ)さん。「安くてうまくて手軽で体にいい食事」を研究し、1人当りひと月九千円という驚異的な食費を実現している。東京都港区に魚柄さんを訊ねた。

  • 「論より証拠。ごまかしが利かない単純な料理で比べてみましょう」。
    魚柄さんは近所のスーパーでニンジンと鶏レバーを買って来た。一番太い部で直径約三㌢のニンジンを二本づつ、皮付きのまま二つの鍋に別々の入れて蓋をし、自ら煮る。沸騰したら弱火にし、一方はそのまま煮続け、もう一方は二分後に火から降ろして、タオルケットですき間なく包む。後者が保温調理だ。約十五分後、両者のニンジンを取り出す。
    「甘い。果物みたいだ」。保温調理した方を食べたイラストレーターの向井田さんんが思わず声を上げた。同感だ。甘味と香が口の中に広がる。少々硬めだが、火は十分通っている。次に煮続けた方を齧る。味はなく、生臭い。凄い違いだ。
  • 続いて鶏レバー。
    一口大に切って数十分水に浸し、血抜きする。血の塊などは洗い落とす。鍋にたっぷりの水を沸騰させ、レバーを入れる。片方はそのまま二十秒だけ火にかけた後、十五分保温。もう一方は弱火で同じ時間煮続ける。
    またも結果は歴然。煮続けた方は臭みが強く、味が抜け、ぼそぼそしている。保温調理した方は味が深く、とろけるように軟らかい。「おいしいでしょ。これがニンジンやレバー本来の味なんです」と魚柄さん。
  • 保温調理の応用範囲は広い。中でも絶品なのは角煮だ。
    鍋に半分程度の水と数㌢角の昆布、酒と醤油少々を入れ、沸騰したら魚を加える。再び沸騰させて弱火で一分煮たら、二十分保温して完成。切り身でも丸ごとでもいいが、丸ごとなら内臓は除く。おでん作りにも便利だ。出勤前に準備して保温しておけば、夕方にはできている。
    素材の大きさや煮えやすさ、料理の種類などによって、煮汁の量や加熱の仕方、保温時間は変わるが、通常、沸騰は5分内におさえるのがコツ。秋や冬はタオルを二重にしたり、座布団を敷いたりして保温力を増す。火の通りが不十分なら、再加熱して保温し直せばいい。「いろいろ試して、好みのやりかたを見つけてください。味付けも既成のレシピよりずっと薄くできる。自分の舌を信じて工夫しましょう」と魚柄さん。
  • でもなんでこんなにうまいのだろう。
    保温調理法の原理を発見した早大理工学部の小林寛教授は「理にかなった調理法だからです」と語る。小林さんの実験によると、肉や魚は75-80度、野菜は85度前後が、煮えるのに最適の温度だという。沸騰を続けると、味を左右する香り成分が蒸発し、肉や魚は硬くなってしまうが、適温で煮ればそれが防げる、保温調理では短い沸騰の後、徐々に冷めていくので、理想的な条件に近い。煮汁の味は冷めるときに具にしみ込むから、おいしさは一段と増す。専門家の検査では殺菌も十分だったという。
  • 「料理人の間では、この方法は一部経験的にしられていたようです」と魚柄さん。
    例えば直径1㍍近い大鍋で作る煮物はうまいとされてきた。大鍋は激しい沸騰が起きにくく、冷めるのもゆっくりで、保温調理に近い。ヨーロッパでも沸点以下で煮る手の込んだ魚料理がある。
    省エネ効果も大きい。小林さんは理想的な保温ができる「はかせ鍋*2」という専門なべを開発、普及を図っている。「保温調理が全国の家庭に広まれば、年間6千億円分のガス代を節約できる。二酸化炭素も減らせます」(丹治 吉順)
基本の極意

  1. 沸騰は短く。弱火で5分以内
  2. 味付けは薄めで素材の味を生かす
  3. 料理によって加熱法や保温時間を工夫
これでこのちゃいろい紙捨てられる。日本語うつときは英詩の方がはかどることも判明。

*1:江戸の植物学裏はこの本の書評、多分朝日新聞だな。

*2:http://www.saitama-j.or.jp/~ami/hakase/hksnabe.htm