積読日記

新旧東西マイナー/メジャーの区別のない映画レビューと同人小説のブログ

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謹賀新年&新連載

 新年、明けましておめでとうございます。
 旧年中は休みがちの本ブログにお付き合いいただき、ありがとうございました。
 本年もよろしくお願いいたします。
 
 とは言うものの、今年はちょっと活動方針が変わります。
 諸事情あってちょっとまじめに社長業をやらないといけなくなりまして、まずはそちら優先。
 同人活動はイベント参加をコミケのみに絞ります。
 ただ、執筆量についてはそれでも維持できるんじゃないかとタカを括ってまして、夏までに某方面より参加指令の出ているアンソロジー用作品を1本、それと『棺のクロエ3』を予定しています。どちらも弾丸数大幅増量の派手な銃撃戦作品となる予定。
 本にはしなくても、こちらでは公開してゆく予定です。
 おたのしみに。
 
 世の中いろいろ流動的で、今年はいっそうあれこれ決断を強いられる状況になりそうです。
 ただ、自分のような臆病者は、そんな状況でもなければ踏み出せないのも事実で、その意味で前に踏み出すための絶好のチャンスにしなければとも感じています。
 周囲の方々に協力を求めることも多くなるかもしれませんが、今年も何卒、よろしくお願いいたします。

義忠『棺のクロエ1.5 0〔lav〕』第1&2回:まえがき

 
 新連載第1回目。
 念願の<帝国>への留学を実現した<王国>第1王女フェリアだったが、実はそれは<帝国>皇族との婚約のカモフラージュだった……。
 
 昨年の夏コミにて初出の作品。
『花嫁強奪』の前日譚でフェリア王女とカオ皇子の馴れ初めのお話です。
 今回は銃撃戦もハッキングもなし。純愛ロマンスです。たぶん。きっと。
 こっちでも早く公開しようとは思ってたんですが、ずるずる年明けまで延びてしまいました。
 すみません。
 
 で、元々このお話は、とある方の結婚お祝い本用に書かれたお話です。
 というか、本当はそれは前作『花嫁強奪』の方だったんですが、結婚式をぶち壊す話をお祝い本に入れるのはさすがにまずかろう、と思いまして(はは)。
 ……しかし、考えてみると、その意味で昨年一年間はそのお祝い本関連の企画しかやってなかったのかorz。
 
 次回は問題のカオ皇子に会いに行くエピソードです。
 乞うご期待。

義忠『棺のクロエ1.5 0〔lav〕』第1回

0-1

 
「婚約者?」
 侍女のテレサからその話を聞かされた時、フェリアが発した第一声はそれだった。
「誰の?」
「勿論、姫様の、です」
 幼い頃からフェリアのそばに仕えるテレサの態度は、落ち着き払っていた。
「いや、ほら、テレサのって可能性だってあるじゃない。仕事熱心に私の面倒をみてくれてるのは本当にありがたいって思ってるけど、自分の幸せだって求めていいはずよ。だから、そろそろそんな話があったって不思議じゃないわ。だってあなた、もうすぐ四──」
「私(わたくし)の話など、どうでもよいのです」ばっさりとフェリアの言葉を切り捨て、テレサは細身の眼鏡の下から冷たく睨みつける。
「そんなことでごまかせると思ったら大間違いですよ、姫様」
「………………」
 市井の娘なら舌打ちのひとつもしているところかしら、とフェリアは胸でぼやく。勿論、一国の王女としてこのテレサによって厳格に仕付けられた身としては、そんなはしたない真似はできないが。

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義忠『棺のクロエ1.5 0〔lav〕』第2回

0-2

 
「おはようございます、フェリア王女殿下!」
「……どなた?」
 翌朝、ペントハウスのテーブルで朝食を摂っていたフェリアは、目の前に勢い込んで現れた眼鏡の少女に向かって、とっさに率直すぎる疑問を口にしていた。
 まるでカウンターをもろに喰らったボクサーのように表情を崩す少女を見兼ねてか、テレサが横から助け舟をだす。
「今日から御学友となられますミリア・ドリュアス様──現外務大臣のお孫さんです」
「ああ、思い出したわ。確か去年の組閣後のパーティーで、ご挨拶をいただいて──」
「覚えていてくださったんですか!?」瞳を輝かせてミリアがテーブルに身を乗り出す。
 うわぁ、立ち直るの早っ、と呆れて見る内に、ミリアは円形のテーブルを素早く廻り込み、気が付けばすぐそばで潤んだ瞳をこちらに向けていた。
「私、小さい頃からフェリア様のファ──もとい、憧れてて、〈帝国〉で行われたスキーと乗馬の国際大会にも追っかけ──いえ、会場まで応援に行かせていただきました! それが一緒の学校に通えるだなんて、もう本当に、本当に──」
 そのまま鼻息荒くフェリアに襲い掛かりかねない勢いで近づけるその顔を、テレサが手にしたバインダーの表紙で音を立てて制する。
「落ち着かれなさいませ、ドリュアス様」
「……す、すみません」
 ぶつけた鼻の頭を赤く腫らしながら、ミリアが泣きそうな顔で長身のテレサを見上げる。
「ごめんなさい、殿下。あぁ、もう本当、私ってば、すぐに頭に血が昇ってしまって……。本当にダメだわ、私……」
 今度はテーブルの下に納まりそうな勢いで小さくなって落ち込みだす。
 フェリアは声を顰めてテレサに訊ねた。
「何なの、この娘……?」
「面接の時にはまともだったんですが……。本人目の前にしていろいろ限界越えてしまったようですね」
「面接って、その辺、見抜くためのものじゃないの?」
「今後はストレステストも面接のメニューに入れましょう」
「今後じゃ遅いでしょ。当座どうすんのよ、これ?」
「御不快なようでしたら、つまみ出しますが?」
 仮にも現役外務大臣の孫娘に対して、一片の容赦もなくテレサが言い放つ。
「何もそこまで言って──」
「待ってください!」見事なフットワークでフェリアの手を掴んだミリアが、縋るように訴える。
「私、何でもやりますから! 皿洗いでも、ベッドメイキングでも!」
「え? あ、そう──」
「メイドとして採用したわけではありません」
 再びバインダーでミリアの後頭部をはたき、テレサはそっけなく告げた。
「姫様のご学友として、相応しい振る舞いをしていただければ充分です」
「……すみません」
「で……」フェリアは軽く眉間を揉みながら訊ねた。
「落ち着いたところで、改めて何がどうなってるのか、誰か説明してくださらない?」

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