積読日記

新旧東西マイナー/メジャーの区別のない映画レビューと同人小説のブログ

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Age 40

 そんなわけで、もう間もなく、日付が変われば40歳です。
 メンタル面では高校生ぐらいから大して成長できている気がしないんですが、体力だけは年相応になってきているみたいで、ぼちぼち健康にも気を遣わないといけないのかなと思う今日この頃。
 
 とは言いつつ、ふと振り返ると作品創りでは10代の少年少女より30代くらいのキャラの方が動かしやすくなってきている気もします。
 それなりの経験とキャリアを積んで社会人として実力も得て、人格も固まりつつ人生の葛藤を抱えていて、それでいて何か自分から行動を起こす意欲や野心もある年代として、お話創りをしていてもキャラが自分から動いてくれるような感触があります。
 今構想中のお話でも、ヒロインは社会人一年生の22歳くらいですが、本質的にお話を廻しているのは30代後半の世代だったりします。
 そうした彼ら彼女らの生きざまを、20代のヒロインの視線でどう評価しなおすのか、というお話になりそうです。
 
 でも、これを書き終わったら『棺のクロエ3』で改めて「少年マンガ」をやらなくちゃいけないんですけどね……。
 そう考えると、30〜40代でジュヴナイル向けの作品を書いてる作家さんなんて、本当に凄いなぁと思ってしまいます。
 

義忠『棺のクロエ1.5 0〔lav〕』第9&10回:まえがき

 
 連載第5回目。
 テレサとの対話、その後編と旅先で事故に遭ったカオ皇子を追ってフェリアとテレサが辺境地域へ向かうお話。
 
 この辺からお話のトーンが転調するキーポイントとなるエピソードです。
 フェリアがカオ皇子への自分の感情に気づき、カオ皇子の事故と軍の登場で舞台の構造がひっくり返る、「どんでん」の章とも言えるでしょう。
 自分はどうもこう基本的に堪え性のない方なので、同じ舞台だけで話を進めているのが耐えられなくなるんですね。
 なので、ここらで舞台を変えてみた、というか。
 飛行船のシーンなんかも、こう視覚的なパースペクティブを変えるシーンを入れたかったからという理由もあったりします。
 自分の場合、結構、こういう「視覚的快楽」への欲求がストーリーに影響してたりするのです。
 
 次回はいよいよクライマックス突入、フェリアとカオ皇子の対話のはじまりのエピソードです。
 乞うご期待。

義忠『棺のクロエ1.5 0〔lav〕』第9回

0-9

 
 あの日、あの瞬間のカオが浮かべた一瞬の表情に意識を引き戻され、フェリアは表情を強ばらせた。
 すべてが幻(まぼろし)と知っているかのような、ひどく老い、枯れ果てた表情。
 だが、あの場で何故そんなものが、彼の表情によぎったのか?
 カオと過ごしたこの数ヶ月の時間、交わした会話のひとつひとつを取り出して、その時の彼の表情を思い返してみても、それだけが判らない。
 それがあの年上の青年の本質に迫る何かだと直感が告げている。
 それをこのまま見過ごすことは、取り返しのつかない過ちを招くことだと告げている。
 それなのに、何も判らない。何も届かない。
 その絶望が、浮かれ上がっていた自分に冷水を浴びせかけ、すべてを不安の渦へと引きずり込む。
「姫様……?」
「ダメよ……」いつしか泣きそうな表情でフェリアは呟いた。
「彼はたぶん、ウソをウソのままだと思ってる。いずれすべてウソに戻って、何もかも失われてしまうものだと思ってる」
「ならば、姫様がそうでないと伝えて差し上げればよろしのでは?」
 テレサの問いに、フェリアは首を横に振った。
「そうではないわ。そうではないの。
 あの人がウソだと思ってるのは、きっと『婚約』のことだけではないわ。
 もっと、ずっと心の奥底にあるもの。その何かが、すべてをいずれ失われるものと決めつけている。
 でも、私では、そこに触れることができない。彼は何も話してくれないし、心を開いてくれない。
 だから、たとえ『婚約』が本当になっても、私はこのまま本当の彼にずっと触れられないまま──」
 ぽろぽろと涙をこぼしながら話すフェリアを、いつの間にかすぐそばまで近寄ってきていたテレサがそっと抱きしめた。

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義忠『棺のクロエ1.5 0〔lav〕』第10回

0-10

 
 現地に向かう飛行船に乗るため、最寄りの空軍基地に全速力で向かうリムジンの車内で、フェリアは向かい合って座る中尉の襟章をつけた青年士官に喰ってかかった。
「それで殿下の容体は?」
「申し訳ありませんが、私の口からはお答えできません」
「何でです?」
「私達も情報を得てないんです」申し訳なさそうに中尉は口にした。
「それだけ奥地だということです。〈帝都〉から列車を乗り継いで、一週間掛けてやっと辿り着いた終着駅から、車と徒歩で更に数日掛かるという僻地ですからね。現地との通信も、必ずしも整備されていないんです」
「そんな……」
 絶望的な距離と空間の隔たりに、気が遠くなる。
 絶句するフェリアの代わりに、テレサが訊ねた。
「それで、私たちはどうやって現地まで……?」
「軍の輸送用の飛行船を使います」中尉は頷いて言った。
「これから向かう空軍の停泊所(ステーション)で乗継用の連絡艇(シャトル)に乗っていただき、上空で待機する貨物用の飛行船に移乗します。その飛行船で現地近くの停泊所(ステーション)まで丸一昼夜。そこから先は輸送機を乗り継いで、最後は地上部隊と合流してトラックで現地に向かっていただきます。
 全部の行程で三日間ほどですか」
「待ってください、そんな無茶な強行軍に何の準備もなくいきなり──」
「構いません」フェリアはきっぱりと言い放った。
「このままカオ殿下の元へ連れて行ってください」

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