125ccのスクーター

私のベスパは125ccです。だからどうしたと言われそうですが、第2種原付と分類されるこのクラスのスクーター論を今朝は少しばかり。

私はバイクも乗りますが、クルマも大好きです。どちらかを選べと言われればクルマを選びます。それぐらいバイクにはクルマに較べて構造的にデメリットが多いからです。夏は暑いし、冬は寒い、雨でも降ろうものなら悲惨の一言に尽きます。そのうえ荷物は載らないし、他人を乗せるのは大変です。

高速でタンデム解禁になったと言うものの、バイクは基本的にひとりで走る乗り物で、後ろに乗られるとバイクの楽しみの最大のメリットである走る楽しさが相当損なわれる事は間違いありません。

もちろん本当のバイク好きのバイク狂の人間なら「クルマにないロマンがある」と言われそうですが、普通に「バイクも乗ります」程度の人間で実用プラスαでバイクを使っている人間にはなかなかつらいところです。

かつてのラビットの時代はもう神話時代ですから置いておいて、スクーターが日本で爆発的な普及をしたのはちょうど私が大学生の頃でした。今でも続くブランドであるタクトやリード、ジョグ、スペーシーなどが発売され、数年間のうちに街中にスクーターがウヨウヨするようになりました。

あれから20年、確実に日本のスクーターは進歩しています。性能的な面はさておくとして、ユーティリティの面で長足の進化を遂げています。とくに今では当たり前の装備であるメットインスペースの設置は利便性の面で画期的な発明であると考えます。

これのおかげでバイクを停めた後のメットの収納場所に困らなくなり、長尺物は無理ですが、細々した物は相当量まで積み込める荷物室となります。もちろんクルマとは比較になりませんが、荷物を安定して収納できる場所が確保出来た事はスクーターの不便さの解消の有力手段となっています。

先にバイクのデメリットを列挙しましたが、クルマに対して絶対的なメリットが存在しています。車も良くなったとはいえ燃費の有利さ、駐車場も含めた維持費の安さ、さらに税金も格段に安いです。保険も原付ならファミリー特約で本当に格安です。

保険料は50cc未満の第1種でも125cc未満の第2種でも同じですので、どうせ買うなら125ccの方がいろいろと優位な点が多いです。50ccも性能の良い物は多いですが、頑としてある30kmの速度規制のためにネズミ捕りの格好の餌食になりやすく、また性能上の速度制限がかけられてあり、ダッシュは猛烈ですがトップスピードは60kmを超えず、街中でも交通の流れに完全に乗ることは難しいことがあります。大きな交差点では二段階右折を強いられる事もデメリットと言えるでしょう。

一方で125ccは高速道路こそ走れませんが、一般道ではクルマと規制は同等であり、最高速も80km程度までなら楽々と加速します。街中であれば十分交通の流れに沿って走ることは余裕です。車体は50ccよりやや大型ですが、一クラス上の250ccに較べると大きさ、重量とも取り回しでは比較にならず、50ccに毛が生えた程度の負担です。

これだけ有利さがあるにもかかわらず日本では125ccクラスのスクーターはあまり普及しているとはいえません。見かけるスクーターは50ccと250cc以上のものに二分されていると言えます。

理由には乗り出し費用が50ccに較べて倍近くかかることもあるでしょうが、それより何より免許制度が普及を阻んでいると考えます。昔とは変わっているかもしれませんが、50ccは普通免許のオマケでもらえます。一方で125ccに乗りたければ二輪免許が必要です。二輪免許の取得は普通免許を持っていて125ccまでの小型二輪でも10時間の教習と8万円以上の費用がかかります。

バイク好きでもない限り、それだけの手間とヒマをかけてまで免許を取得する人間が多いわけも無く、また逆にバイク好きならもう一クラス上の中型免許(普通二輪免許)を取得するでしょうし、取得すれば保険料を犠牲にしてもより大型のスクーターを買おうとするのも人間の心理です。

そんなわけで本来メリットがふんだんにあるはずの125ccクラスはなかなか普及しません。それでも実際に走らせると快適ですよ。私も以前250ccのバイクに乗っていましたが、それは大変でした。走っているうちはたしかに快適でしたが、信号にでも停まると重量がもろに足にかかります。駐輪場からの出し入れもそれこそウントコドッコイの世界で少しでもバランスを崩すと立ちゴケの恐怖が絶えず付きまといます。

今のベスパも100kgぐらいはありますが、それでも体力的に取り回しは十分可能な範囲であり、スタンドも楽々と立てられます。またスクーターのメリットで別にトップケースをつけたらといって、普通のバイクがいきなりバイク宅配便風になってしまうのに較べ、それほど違和感はありませんし、つけることによって積載量は飛躍的に増えます。ワインが好きで良く飲むのですが、7本ぐらいは余裕で買って帰れます。

ベスパを買ったバイク屋も言っていましたが、日本のバイク産業は斜陽傾向になっているそうです。売れるのは50ccのバイクばかりで、これを買う若年層の人口が先細りで構造不況は目前との事です。大型バイクを売り出したくても二輪免許人口の飛躍的増加は望みようが無く、またスクーターも台湾などの後発組が値段は完全に日本に勝り、性能も日進月歩で近い将来追いつかれるのは時間の問題とされています。

日本のバイク文化は暴走族対策のために変形し衰えてしまったとベスパ屋は嘆いていました。私も同感です。世界一のバイクを作っている日本が足許でバイク普及をかさにかかって押さえ込み、衰退滅亡していくひとつの象徴が125ccバイクが普及しない事ひとつにも現されているじゃないでしょうか。