最後はやっぱり政治か・・・

医療問題の根っこらしきものを触っていますが、それなりに見えてきた気がします。ここ何日かの話と重複しますが、まとめ的な話を。

医者側の不満の一つに患者側の権利意識のあまりの肥大があります。これは随所に語られています。そのため医者と患者の距離が年々遠くなっているように感じますし、なぜそうなっているのかを明快に解説したものもありません。私の結論は医療が充実したから患者の権利意識が高まったと言うものです。中国春秋時代の斉の名宰相である菅仲の言葉に「衣食足りて礼節を知る」があります。医療の場合は「医療足りて要求高まる」とでもすればよいでしょうか。

患者の要求が高まるのは、医療と言う業種が充実した必然と見なければならないと考えます。となればその要求を満たす方向で医療充実を行なう必要があります。医者サイドの中には御納得し難いところがあるでしょうが、今やサービス業の一種としてとらえられている医療ですから、ある一定までサービスが充実したら、客はより以上のサービスを求めるのを容易な事では拒否できません。また声の大きさとして、患者の数と医療者の数では圧倒的な差があり、闘っても勝ち目はありません。

患者の要求は何か。多岐にわたるいろんな要求はありますが、24時間365日いつでも、どこでも、丁寧な医療を受ける事ではないかと考えます。現状の医療体制では逆立ちしても無理ですし、上からの強制命令で無理やり施行したら瞬く間に医者は逃散していなくなります。

一遍には無理としても患者の望む医療に近づくためには、必要なものがあります。24時間365日診療体制を安定して築くための医者の数の確保です。24時間と言う事ならもはや救急医療ではなく夜間勤務ですから、イビツな労働体系である宿日直業務を完全な交代勤務制にする必要があります。それを余裕をもって行なうだけの医師の数をそろえないといけないのは言うまでもありません。

またそんな病院を全国各地に十分な数を確保する必要があります。二次診療圏という区分法があり、これが全国で360ほどあるそうです。そこに一ヶ所づつでは足りないでしょう。少なくと数ヶ所はないと充足できません。1000ヶ所もあればそれなりに充足すると考えます。

前に24時間365日で労働基準法に則っての勤務での小児救急病院を試算した事があります。二次救急の規模ですが、一病院に10人の小児科スタッフがいれば計算上は可能です。それが1000ヶ所と言う事になれば、1万人の小児科医が必要です。現在の小児科勤務医の数はおよそ6500人、そのうち二次救急輪番病院で勤務している小児科医が1000人あまりとなっています。

そうなれば1000ヶ所の24時間365日病院に必要な小児科医の数をそろえるためには、どう少なく見積もっても3倍以上に小児科医の数を増やす必要があります。実際には5倍以上必要なような気がします。これはある程度全診療科に共通しますから、医者の数を全体で3倍以上もしくはそれ以上にする事が前提条件になります。

ただし増やせば増やしただけの問題は必然的に生じます。当然それに伴う医療費が必要です。医者の数が増えた分ぐらいはどう考えても必要でしょうから、やはり医療費は3倍以上もしくはそれ以上の負担が必要です。これを払うのは国民です。直接自己負担で払うなり、保険料として徴収されるなり、税金として転用されようが国民の負担です。

患者の要求を満たすためにはそれだけの費用が必要です。高いサービスを満たすためには高い料金を必要とすると言う単純至極な理屈です。もちろん患者の要求はできれば負担はもっと低くして、サービスだけ上げろでしょうが、そんな事は不可能です。高いサービスには高い料金が必要です。

現在の状況は患者は医者にはまだ余力があり、患者の望むサービスを実現できるだけの余地があるとしています。一方で医者は現状の過酷さにうちひしがれ崩壊寸前です。そのうえ両者は現状を冷静に分析してどうしようと言う接点をもちません。

となれば患者の要求と医者の現状をとりもち、両者の顔をたてながら「それなり」の線に落ち着かせるのは政治と言う事になります。私は医療は国が国民に責任をもって提供するものと考えていますから、最後の仲裁者は政治しかないと考えています。国と言う考えもありますが、国は現政権が続く限り、医療費削減と医療サービスの充実と言う二律背反の政策を断行すると宣言しており、その路線がどんなに無茶苦茶なものかは書いたつもりです。

小沢氏に過大な期待はまったく無いですが、せめて政権が変わるぐらいの政治変化がないと、医療危機は崩壊の日まで誰も聞こえないカウントダウンのみが進行するような気がします。