新小児科医のつぶやき

2006-10-21 真相を考える

奈良事件で警察が絞り込んでいる焦点は次の2点のようです。

  1. 病院での医療過誤
  2. 搬送を断った病院の違法性

とくに1点目の医療過誤の可能性について力を入れそうな情勢です。そうなるとその日病院で何が起こったかの情報を分析してみる必要があります。とは言え第3者の立場にあるものでは入手できる情報源は限られています。具体的にはマスコミ報道とネット経由の情報です。現時点ではこの2つ以上のものは入手しようがありません。さらに厄介なのは入手した情報の信憑性を客観的に裏付ける方法が無いのです。

マスコミ報道の情報源をまず考えてみます。マスコミは強力な情報収集能力を持っています。そんなマスコミが今回の事件で情報源としたものは何でしょうか。まずは警察発表、警察が動き出したからこの事件は始まったのですから、警察サイドからの情報提供は記者クラブを通じて行なわれているはずです。次は遺族への取材、遺族はこの事件で悲しい思いをしたので取材に協力的であったろう事は推測がつきます。私でも同じ立場なら記憶している事を出来るだけ話すと思います。そして最後は病院関係者への取材です。

病院関係者への取材が一番重要でこの事件の核心部分なんですが、ここへの取材は十分出来たとは思えません。いろいろ物議を醸した院長の記者会見でしたが、弁護士も同席していたようで、病院としてはマスコミによるガードをある程度行なってから記者会見を行なったと思います。具体的には事件に関わる窓口を一本化し、記者が個々の関係者に取材する体制を許さなかったのではないかと考えます。取り様によっては「卑怯」だとか、「またもや医者の隠蔽体質」の批判も出てきそうですが、これは病院だけではなく他の企業でもこういう事件に直面した時の常識的対応です。

そうなればマスコミは病院関係者への取材は院長記者会見+アルファぐらいしか出来ていないと考えるのが妥当です。情報管制が敷かれた病院から病院から情報を引き出すには匿名の協力者が必要です。現時点で知る限り、マスコミはそういう情報を引き出した形跡はありません。ただ病院側はカルテのコピーを取材陣に渡したとされています。

とするとマスコミが事件の夜の様子を探る最大の情報源は遺族からの可能性が大きいと考えます。この情報源の貴重さは言うまでもありませんが、遺族とは言え、病院内部の動きをすべて知るわけではありません。医師や看護師など病院関係者の目に見える動き、断片的な情報を知らされただけです。修羅場の中心に常にいて、それをすべて見聞きしたとは考えられません。そういう状態に遺族が置かれる事は、類似の体験をされた人ならある程度理解していただけると思います。

マスコミ報道の主たる部分は遺族の記憶と印象によるものの可能性が高いと考えます。この情報はある意味信憑性が置けます。現場に確実に居合わせ、格別の虚偽の情報を流す必要の無い立場の人間の情報だからです。遺族は間違い無くそういう言動を見聞きしたでしょうし、それをつなぎ合わせて感じた印象を正直に話したと考えるからです。つまり事実という事です。マスコミ報道で伝えられた内容の骨格をピックアップしてみます。

  1. 痙攣発作が起こった時に家族は脳出血の可能性を疑った。
  2. 痙攣発生から転送判断までの間、有効な治療を施してくれなかった。
  3. 経過中に産科医が仮眠を取った事実があった。
  4. 脳出血の可能性からCT検査の必要性を申し入れたが拒否された。
  5. 内科当直医もCT検査を勧めたが、産科当直医は拒否した。
  6. 入院ベッドが無いなら廊下に寝かせても良いから病院を捜してくれの要請も無視された。
  7. 病院にはCT検査も常勤の脳外科医がいたのに、これを呼び出さずに治療をしてくれなかった。

私が読む限りこれぐらいが遺族が実際に見て体験した事実かと思います。これらの事は今回の事件で遺族の目の前で起こった信憑性のある事実であると考えてよいかと思います。事実ではありますがこれが真相ではありません。真相はまだ半分は闇の中です。真相と思われる情報が出現していますが、これに対する絶対の信憑性はまだありません。ただ真相と思われる情報が、この事実とある程度適合していれば信憑性が裏付けられるかと思います。

真相と思われる情報源はm3.com医者専用掲示板。私もROMして追っかけているのですが、詳細に追加情報も含めてまとめて下さっているphysician先生のブログから引用してまとめてみます。

当夜の当直は外科系は整形外科医、内科系は内科医、産婦人科は奈良医大から派遣の当直医。

    m3.comの原文はこうなのですが、physician先生が調べたところ、当日の産婦人科当直はこの病院の産婦人科部長(60代、産婦人科常勤医は彼一人)で間違いないそうです。奈良医大からの応援は平日の火曜と水曜のみであり、この事件の夜に当直していたのは常勤の産婦人科部長であることは、この病院では常識であるとの事です。

患者さんは午前0時に頭痛を訴えて失神、ただ痛みに対する反応(顔をしかめる)はあった。産婦人科当直医は念のため内科当直医に対診を依頼、内科医は「陣痛による失神でしょう、経過を見ましょう」ということになった。

しかしその後強直性の痙攣発作が出現し、血圧も収縮期が200mmHgになったので、子癇発作と判断、マグネゾールを投与しながら産婦人科部長に連絡した。部長は午前1時37分、連絡してから約15分程で病院に到着。

    この記述も上記の産婦人科当直医が奈良医大派遣医との誤解から発生したものと考えられます。この記述から考えられる事態の真相は、午前0時に失神を陣痛によるものと判断した後、まず産科医は仮眠に入ったと考えられます。これが報道にあった仮眠の事ではないかと考えます。約15分で到着とは仮眠を起こされ、報告を受け、着替えて当直室から病室に駆けつけた時間であると考えられます。到着時刻が午前1時37分、痙攣発生直後に産科医に連絡が行なわれているはずですので、痙攣発作は午前1時20分頃に発生したと推定されます。

    また当夜、産婦人科医が派遣医と駆けつけた産婦人科部長の二人いるとの誤解を元にしていますので、産婦人科部長到着前に架空の派遣医が治療を開始したように書かれていますが、実際は電話指示によりマグネゾール投与を開始していたか、産婦人科部長到着後に指示により開始した可能性が高いと考えます。一番考えられるのは産婦人科部長が電話連絡でマグネゾール投与準備の指示を出し、到着後診察してから治療を開始したのが一番可能性が高そうです。

以後二人で治療にあたったが、状態が改善みられないため、午前1時50分、母体搬送の決断を下し、奈良医大へ電話連絡を始めた。

    この二人はm3.comの情報では架空の派遣医がいた前提となっているため、産婦人科医が2人で行なっている記述となっていますが、実際は部長のみか内科当直医の応援を求めた可能性が考えられます。もっとも妥当な解釈は産婦人科部長が一人で治療に当たっていたのではないかと考えます。病室到着が午前1時37分、母体搬送の決断が午前1時50分、約10分の後の決断です。これは10分間様子を見たというより、子癇発作を認めた時点で産婦人科部長は母体搬送の決断を下しており、この10分は患者の痙攣発作が収まり、患者の側を離れて奈良医大に連絡するまでの時間と考えます。

    ちなみにマグネゾール投与後は痙攣は収まり、以後痙攣の再発は無かったそうです。

午前2時、瞳孔散大を認めるも痛覚反応あり。血圧は148/70と安定してきた。この時点で頭部CTも考慮したが、放射線技師は当直していないし、CT室が分娩室よりかなり離れたところにあること、患者の移動の刺激による子癇の重積発作を恐れ、それよりも早く高次医療機関をさがして搬送するほうがよいと判断、

    この記述が一つの焦点かと考えます。これもphysician先生の調査の結果ですが、内科当直医もいずれかの時点からこの事件に参加しています。病院上げての大騒ぎだったので出てきたのか、子癇発作に伴う脳出血の可能性の対診を依頼されて呼び出されたのかは不明ですが、どうも途中からは一緒に治療に当たっていたようです。

    問題の内科医がCT検査を進言して産婦人科医がこれを退けた事実ですが、この内科医から直接話を聞いたという医師の話によれば

      「CTについては、当日当直だった内科医は、自分が担当医に撮影を勧めたことはないと断言し、担当医も、内科医からCTに関して助言を受けたことは記憶にない。今回の新聞記事の中でこれが一番腑に落ちないところだと言ったそうです。」

    CT検査の話は、現場にいた家族の一人(祖母だという説があり)が脳出血の可能性があるから検査をすべきではないかと主張したとの話があります。この家族は奈良医大の総婦長を勤めた事がある看護師だそうで、症状からそれを疑ったとの事です。それがどの時点で行なわれたかは現在手許に確認する情報がありませんが、そういう家族とのやり取りはあったようです。またこの後、地獄のように続く搬送要請の電話やり取りの間にCTの話があり、その話を家族が聞いた可能性を指摘する情報はあります。いずれにせよ、内科当直医のCT検査要請を産婦人科部長が強硬に蹴り続けた事実は無さそうです。

電話をかけ続けたが、なかなか 搬送先がみつからない。午前2時30分、産婦人科部長が家族に状況を説明、そのあいだにも大淀病院の当直医や奈良医大の当直医は大阪府をふくめて心当たりの病院に受け入れ依頼の電話をかけつづけた。

家族はここで「ベビーはあきらめるので、なんとか母体をたすけてほしい。ICUだけがある病院でもいい」と言ったので、NICUを持たない病院にまで搬送先の候補をひろげ、電話連絡をとろうとした。家族も消防署の知り合いを通じ、大阪府下の心当たりの病院に連絡をとって、受け入れを依頼した。この頃には産科病棟婦長 (助産師)も来院、手伝いはじめてくれた。

大淀病院看護師OGで患者さんの親戚も来院し、多くの人が集まり始めた。けれども受け入れてくれる施設が見つからない。担当医は当直室(仮眠室)から絶望的な気分になりながら電話をかけ続けたし、大学の当直医は大学の救命救急部門にまで交渉に行ったが子癇は産婦人科の担当で、我々は対処できないと言うことで受け入れ拒否された。

    その夜の奈良医大の産婦人科の状況を当直医がこう証言しています。

      地獄のような熱い熱い夜の当直でした。(熱帯夜ということもありましたが)緊急帝王切開の最中に大淀病院から連絡が入りました。ただでさえ少ないスタッフのうち、何人かが夏休みの最中で、夜間呼び出し電話をかけたがなかなかつかまらない。搬送先を探すのと同時にスタッフの呼び出しも行いました。

    連絡が入った時、緊急帝王切開の真っ最中であり、また24週の早産児が分娩進行中で、NICUもこれ以上の重症児を受け入れる余力はなかったとされています。

午前4時30分、呼吸困難となり、内科医が挿管したが、その後自発呼吸ももどり、サチュレーションは98%と回復した。その後すぐに国立循環器病センターが受け入れOKと連絡してきたので、直ちに救急車で搬送した。患者さんは循セン到着後CT検査等で脳内出血と診断され、直ちに帝王切開術と開頭術をうけたが、生児は得られたも のの脳出血部位が深く、結局意識が戻らないまま術後8日目の8月16日死亡された。

黒字はm3.comの原文の経過部分です。青字部分はphysician先生が*1m3に書き込まれていた奈良県立医大産婦人科同門の産婦人科医の先生の調査を見つけられ、それに私が補足した物です。私には非常にリアリティがあると感じられました。長い引用でしたが、遺族の証言と照らし合わせたいと思います。もういちど再掲しながら検証します。

  1. 痙攣発作が起こった時に家族は脳出血の可能性を疑った。

    家族が疑ったのは親族の元総婦長の主張からかと思います。脳出血自体がどの時点で発生したのかは今となっては確認しようがありませんし、元総婦長がどの時点で主張したのかも現時点では不明です。推測するに遅くとも搬送要請が始まる頃にはそれがなされ、結果的には搬送先が見つかるまで2時間もあったのですから、その間にという願いがあったかと思います。しかしこの病院に脳外科医はいましたが麻酔科医はおらず、脳外科医も分娩進行中の産婦への手術を一人でするのは困難です。

  2. 痙攣発生から転送判断までの間、有効な治療を施してくれなかった。

    痙攣出現から搬送判断までの間は10分程度であり、痙攣発作についてはマグネゾール投与により成功しています。またその後の経過で一過性に呼吸困難を起こしていますが、これも挿管により改善しています。また子癇発作では患者への刺激を極力控えるのが原則であり、容態に変化が無ければ見た目上は何もしないのが治療です。

  3. 経過中に産科医が仮眠を取った事実があった。

    仮眠ですが、午前0時の失神を陣痛の痛みによるものと診断したのであれば60代の産婦人科部長は仮眠を取るのは当然でしょう。またこの確認の為に内科医の協力を求め確認しています。この時点から脳出血を疑うかどうかが問題ですが、32歳のという年齢、他の症状を二人の医師で診察した結果、それを疑う徴候がなかったのであれば、当然仮眠を取るでしょう。

  4. 脳出血の可能性からCT検査の必要性を申し入れたが拒否された。

    a.であげた理由でよいかと思います。また午前0時の時点でもし主張されていても、産婦を確たる証拠も無しに被爆の危険性に曝す事は難しいかと思います。

  5. 内科当直医もCT検査を勧めたが、産科当直医は拒否した。

    これは家族の証言と全く異なります。どちらが真相かはわかりません。ただ一連の流れを見ると、午前0時の時点では内科当直医も脳出血を疑っていません。次の痙攣発作が起こった時点では即座に母体搬送の決断を行なっています。この間に内科医がCT検査を勧める時間はほぼ無く、あるとすれば結果的に2時間もかかった搬送先探しの間ぐらいです。産婦人科部長と内科当直医がCT検査で対立する時間はありそうな気がしません。

  6. 入院ベッドが無いなら廊下に寝かせても良いから病院を捜してくれの要請も無視された。

    家族の心情として良く分かりますが、野戦病院ではありませんので、そんな事はしません。もしやれば後で大問題になります。

  7. 病院にはCT検査も常勤の脳外科医がいたのに、これを呼び出さずに治療をしてくれなかった。

    これもa.であげた麻酔科医もなしで、脳外科医が一人で分娩進行中の脳出血の手術は行なえません。またこの場合もまず出来るだけ早く分娩を完了させないと取り掛かれません。子癇発作が起こしている産婦を麻酔科医も無しで一人で分娩させる事はまず不可能であり、さらに生まれてくる新生児もリスクが考えられるのに、NICUどころか小児科医もいない状況でこれを行なうのは無謀です。

理由もつけてしまいましたが、家族の証言ともCTの話を除いて合致します。私の心証は真相に近いと考えます。これだけのストーリーを創作で作るのはかなりの才能が必要です。もし作ったとすれば当事者である産婦人科部長という事になりますが、このストーリーに大嘘があるとするなら、証言する関係者は多岐に渡り、そのすべての口裏をあわせる必要があります。まさしく病院上げての隠蔽工作です。

それでも悲しいかな医者ならやりかねないとの疑惑が持たれる昨今ですが、それだけの隠蔽工作を施しているのなら、あの院長記者会見はお粗末過ぎるような気がします。私はやはり真相に近いと考えます。また新たな情報が手に入りましたら再考したいと思います。

*1:「人脈などを介してかき集めた情報」と当初エントリーしていましたが謹んで訂正させて頂きます。

aquila2664aquila2664 2006/10/21 16:10 搬送を断った病院に関する記事が出始めました。

>>県立奈良病院、ベッドあるのに「満床」
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20061021p101.htm

記事の書き方から見るに、ネタ元は捜査関係者の可能性が濃厚です。最初の報道からほぼ一週間が経過し、議論が一巡したためここで燃料投下をしておこう、ということでしょうか。
 記事の内容はNICUが一床空いていたことを指摘するナンセンスもいいところのものです。本件の場合、NICUだけ空いていても母体の救命は不可能でしょう。

道標主人道標主人 2006/10/21 16:13 こんにちは
報道機関はこういう事実が見えないのでしょうね。
私も先生のご意見と同じです。
http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2006/10/_5_1ebe.html

774774 2006/10/21 16:53
NICUが1床空いていたとしても、翌日には埋まる事が決定していたようですので、その赤ちゃんをどうすればいいのでしょうか。私の科なら外来でも何とか診られると判断した患者には事情を説明して、急遽退院してもらっていただいてますが(「仕方ないですね」と、快く受けてくださる患者さんが多くて助かります)、NICUですとそうは簡単には行かないと思います。空床とは単にベッドが空いているだけではないというのが、医療関係者のコンセンサスと思えますがいかがでしょうか。これで、断った病院の医師に刑事罰が下るようでしたら、日本の救急医療体制は崩壊し、焼け野原になります。先日からしつこく書き込みをしていますが、それを心底心配しています。

元内科医元内科医 2006/10/21 17:34 散々調べてリークできた情報がNICU一床空床の病院の情報のみ、という点はかえって安心すべき点ではないかと感じます。NICUが空いているだけでは今回どうしようもなかったことは非医療者の方にもさすがに理解できるでしょうし、他の病院もそれ以上に本当に手一杯だったのではないかと想像されますが、どうでしょうか。

管理人様の情報収集能力と分析力とその量に頭が下がります。
他のNetの情報も見ていきますと、Netがテレビ・新聞など大手マスコミの情報を質・量ともに凌駕していきつつある時代であると感じます。

774774 2006/10/21 17:38
ついに、産科医からの反撃が始まったようですね。この事件はいったいどうなっていくのでしょうか。その間にも勤務医を辞めるという雰囲気が強くなってきているようで、当院でも今度はマイナー科ではなく、病院の中隔である循環器・呼吸器科の動向がいきなり怪しくなってきました(複数の断片的な話を総合して判断)。ここがなくなると病院として機能しなくなります。当科も半分業務遂行ができなくなります。

「過酷な当直」、産科医5人が超勤手当1億円要求 奈良 2006年10月21日
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200610210041.html
 奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医5人が04、05年の超過勤務手当の未払い分として計約1億円の支払いと、医療設備の改善を求める申入書を県に提出したことがわかった。医師らは「報酬に見合わない過酷な勤務を強いられている」と訴えており、要求が拒否された場合は、提訴も検討する方針。

nsikunsiku 2006/10/21 20:10
yosyan先生の情報量と考察,勉強になります.
亡くなられた妊婦の夫の祖母が,元ナースのようですね.この元ナースが何科で仕事をしてきたかによって,CT申し出の発言の妥当性も判断するべきではないかと思いました.産科勤務が長かったのか,それとも産科にいたことはなく,子癇を1度も経験したことはなかったのか.それによっても,この元ナースの言葉を鵜呑みにして良いのか,どうか,決まると思いますが,それには,マスコミはノータッチです.

私自身,呼吸器・循環器外科の病棟の経験しかないので,呼吸・循環器症状がなく血圧が高めの意識消失や痙攣の患者さんを見たら脳出血を疑うので,もしこれが,産科病棟を経験したナースだったら,何の可能性を考えるのかという疑問が残りました.

また,fの発言をテレビで見ましたが,身内の元ナースがあの発言を許しているのなら,なんだか,同じ職種として,ヘコみます.
そんなことしたら,搬送先のICU患者の誰かが,玉突きみたく押し出されて,それがどういう結果を招くのか,考えが及ばないのでしょうかね.

今回の経験から,今の現状では多少不便でも,高度産科医療は集約化する必要があるということが,他の妊婦さんにも理解してもらえればいいなと思いました.

内科5年目内科5年目 2006/10/21 20:21 「過酷な当直」、産科医5人が超勤手当1億円要求 奈良 2006年10月21日
ついに、反撃開始ですね。

どこかの国のように、救急患者だけは診察するけど、あとはストライキ、みたいなことは今の日本の医者の団結力では難しそうですから、皆で労働の正当な対価を求めるということで、反撃のノロシをあげたいものです。

看護師検査技師薬剤師放射線技師介護福祉士救急救命士ソーシャルワーカーケアマネージャー全ての業務を兼務できるだけの能力を持った高付加価値集団を支配下におきたい官僚と、高付加価値集団を妬んでいる国民に、これ以上付き合うのは御免です。

yamadayamada 2006/10/21 21:31 >内科5年目さん
最後の発言部分に少しドキッとしましたが、医師の人権侵害が激しすぎる現状では、確かにそんな人達と付き合うのは御免だろうと思います。
感謝されて然るべき命を救ってくれる医師達を、妬みの対象にする神経はどうかしています。
ただ、妬んでいるのは国民というより多くがマスコミ関係者だと思います。
国民の大半は無知で、単にマスコミが作ったイメージに乗せられてるだけと思います。

サブマリン投法サブマリン投法 2006/10/22 00:00 管理人様、初めまして。現在海外逃散中の元小児科勤務医です。福島の事件以来、日本の医療ニュースが心配で、拝見しています。私も今回の事件に関する一連の記事を見て、元内科医先生の「Netが既存マスコミの情報を質・量ともに凌駕していきつつある時代である」という感想と同じことを感じています。もちろん、正しくない情報を見分ける能力は要求されるでしょうが。そういう点でも、先生のこのブログの果たされている役割は、とてもとても大きいと思います。これだけの記事を毎日書かれるのは本当に大変だと思います。敬服するとともに感謝しています。

physician(出先)physician(出先) 2006/10/22 00:00 あ、すみません。私が調査したわけではなくて、m3のコピペです。おそらく奈良の同門の産婦人科医の先生です。

physician(出先)physician(出先) 2006/10/22 00:02 2chのモノもあります。両方を確認してますので。

775775 2006/10/22 06:18
 以前は、救命し切れなかった症例、期待どうりの治療効果が得られなかった症例に対しては、病理解剖させてもらって、入院前からのデータも全部集め、時間をかけて症例検討会を開いて、今後にいかそうと医師・看護婦ともに勉強するのが当たり前でした。しかし、ここ5年ぐらい(ちょうど内科5年目さんが医師になられる頃でしょうか)症例検討会は院内では事実上禁止されています。理由は、もちろん裁判の証拠として不利に利用される恐れがある、というものです。これでは進歩は止まってしまいますし、今後に生かされることはなくなりますね。

 当院ではYosyanさんのあげられた2点の内、当科は手術・術前術後管理をする関係で,気になっているのですが、マイナー科を中心に△もっぱらの関心事です。

774774 2006/10/22 13:34 直前の”775”は”774”の間違いです。お詫びして訂正します。ネットでは些細なこと(いや、名前は重要ですね)で荒れてしまいますので、あえてお詫び申し上げます。

TsubakiyaTsubakiya 2006/10/22 16:16 はじめまして。診療放射線技師やってます。立場上気になった記述がありましたので少しばかし。
>また午前0時の時点でもし主張されていても、産婦を確たる証拠も無しに被爆の危険性に曝す事は難しいかと思います。
妊娠初期の腹部CTでしたら確かに問題はありますが(ただし腹部単純CTによる被曝では「しきい値」は超えないのが普通ですが)、今回の場合胎児は十分育っていますし、撮影部位も頭部ですので、被曝という観点ではCT施行は問題ないと考えます。(腹部には軽量のプロテクターを掛けておけばいいでしょう)
放射線技師は当直体制にはなっていなかったとの事ですが、「呼び出し当番」の体制はあったと思うんですが。たとえ体制がなくても、技師がこの場にいないから、なんてのは言い訳にもなりません。電話一本入れて呼び出せばいいだけの話です。件の病院の技師はきっと「2時間の間にCTくらいちゃちゃっと撮って、移送時に写真持たせればよかったろうが!」と思ってるんじゃないかなあ、と。

匿名希・望匿名希・望 2006/10/22 19:02 >Tsubakiya様

CT検査の問題は被爆よりも下手に刺激を与えて状態が悪化した場合、対処できない点では無いかと。
何か起こっても対応可能な搬送先で検査する方が、搬送先での検査時間のロスと天秤にかけて良いかは微妙です。

匿名希・望匿名希・望 2006/10/22 19:15 ちょっと文章が前後してしまいましたが、「必ずしも検査するメリットが勝るかわからない」というのが文意です

元田舎医元田舎医 2006/10/22 23:48
>>Tsubakiyaさん
前段の被曝の件については異論はありません。

後段についてもおっしゃりたいことはよくわかります。
ただ、実際に呼び出すかどうかは患者と呼び出しシステムと呼び出される人間の3つの要因が複雑に絡み合った末での判断です。

また、結果として数時間経っているものの、いつ「受け入れ可能」の返事がもらえるかわからず、その電話さえあれば1分1秒でも早く搬送したい状況であれば、おいそれとは撮りに行けなかったことと思います。
撮って戻ってくるまでの10分前後の時間さえ惜しかったわけです。
振り返ってみれば撮る暇などいくらでもあったのが悲しいです。

妊婦としては妊婦としては 2006/10/23 09:43 この事件、たいへん興味深く見ています。奈良県の産婦人科の状況や、先生方の激務等、初めて理解できました。
では、私たち妊婦はどうすればいいのでしょうか?
緊急時には搬送すると言われている提携先の病院からも断られかもしれない、それも覚悟の上で出産しなさいということでしょうか?
出産は命がけ・・・なんて、今まで聞いたこともありませんでした。それを常識のように言われても、困惑します。

子持ち女医子持ち女医 2006/10/23 10:04 >>妊婦としてはさん
産科専門医ではありませんが、気になったので横レスさせて頂きます。
まさしく仰る通り「出産は命がけ」なのです。今はまるで出産で死亡するなんて、医者のミスでもなければありえないかにマスコミが誘導して、誤った認識が広がっておりますが、古来、妊娠出産は命がけであり、周産期死亡率を下げるべく医療は進んでおりますが、完全に防ぐことが出来るわけではありません。
もし聞いたことがなかったのでしたら、その常識の方が誤っていると思われます。昔からお産で女性が亡くなるというのは、とても多いことだったのです。
そして、搬送を断られる危険については、ただでさえOECD水準より遙かに少ない医師しかいないのに、更に医師を減らそうとしている国家、行政の責任であり、個々の限られた時間の中で必死に仕事をしている、するしかない医師には、患者さんだけでなく、自分達にとっても辛く悲しく不安だらけではありますが、どうしようもないのです。

妊婦としては妊婦としては 2006/10/23 10:54 子持ち女医さん、早々のレスありがとうございます。
>もし聞いたことがなかったのでしたら、その常識の方が誤っていると思われます。
そうですね。私は聞いたことがありません。では、私が常識のない特別な人間なのでしょうか?
私はそうは思いません。今の妊娠中の女性、小さい子どものいる女性たち、どれぐらいの人が、その意味をきちんと理解して、それでも出産しようと決めた人がどれくらいいるのでしょうか?
私は以前にも出産経験がありますが、妊娠についての情報誌、本にもそんな記載はなく、産婦人科医、助産士からもそんな説明を受けたことがありません。
(搬送を断られる危険性の説明もありません)
もしそうなら、今は妊娠継続しなかったかもしれません。なぜなら、私は今、絶対に死ぬわけにはいかないのです。

今回の件も、遺族の方は訴訟はしないとの話でしたね。医療ミスかどうかは、私たちにはわかりません。ただただ、人が亡くなっているのに、誠実でない対応、配慮のない対応が続いたのが原因なのではないでしょうか。

・・・で、私たち妊婦はどうすればいいのでしょう?分娩先を大学病院に変更するべきでしょうか?

ななしさんななしさん 2006/10/23 11:37 「あなたには常識が無い」じゃなくて
「みんなが持ってる常識が間違ってる」って意味でしょ

NylonNylon 2006/10/23 11:47 >妊婦としては様
私は医師ですが、貴女のおっしゃる事にも真摯に耳を傾けたいと思います。医療側から提供できる情報の少なさに問題があった可能性も否定できません。医師たち個人の責任を追及することの是非はおいといて、少なくとも今回のように搬送先が無いという状況を把握できていなかった奈良県の地域医療システムについてはよく検討されるべきだと思います。「今夜、万が一あなたの分娩中に重篤な合併症が生じた場合、転送先の候補がいくつか存在し、先方のベッドの空き状況もネットワークで随時把握しています」くらいの事を将来的には告げられるような情報システムの整備と、有事対応のマニュアルの完成を望みたいと思います。私たち医療提供者側も、妊婦さんの指摘を真摯に受け止めて、努力してゆく必要があると思っています。

通りすがり通りすがり 2006/10/23 13:44 >妊婦としては様
常識って言葉は難しいですよね。場所、業態、業種で常識は違いますし、時代によって変化もしますし…。
出産という行為が比較的安全になったのは、この20〜30年位の間ではないでしょうか。
出産が安全になればなるほど、出生率は下がり、また出産に係るリスクの認知度が下がってきているのは皮肉としか言いようがありません。
出産に係るリスクは転嫁できず、軽減が受容しか道はありません(回避=中絶と言う選択肢はありませんよね)。私は妊婦向けの情報誌や書籍など拝見していませんが、そういったことは書かれているのでしょうか。純粋に疑問に思います。
仮に現在の医療技術の平均をもって出産すれば、その成功率が90%とした場合、社会通念上「安全」と考えられますが、Yosyan先生もお書きになっているように、不成功率10%ということは、10人に1人、若しくは10回に1回は問題が発生すると言うことです。少なくとも現に問題は発生する(リスクが存在する)ということを認識し、それに対する対処(リスクの軽減)を医師だけではなく、妊婦自身やご主人、両親などのご家族全員で行なう必要があると考えます。しかし、医師を含めた全員で対処しても、受容せざるを得ないリスクが出産にはあると思います。
「出産は命がけ…なんて、今まで聞いたこともありませんでした。それを常識のように言われても、困惑します。」とのことですが、出産すると決めたのであれば、最悪は受容するしか選択肢がありません。
ただ、この「最悪」は、医師の技量や妊婦の心がけとは別の次元の問題(医師不足、設備不足等)も含んでいますので、その別の次元の問題までも妊婦が受容する必要があるのかは疑義があると考えております。
今回の報道は、医師だけではなく出産を控えた妊婦にも要らぬ不安を抱かせるようで、大変不愉快なものと考えております。

スポンタスポンタ 2006/10/23 14:04 極論をいえば、真相解明は必要ありません。

もし、事実が、当該病院の過失や地域医療の腐敗によるものだったとしても、その情報をどう扱うかは、地域医療全体の利益(すべての地域住民の利益)に資するかどうかで判断されるべきです。

たとえ真実が貫かれても、コミュニティー全体が崩壊していいはずはない。

もっとも、今回のケースはあまりに感情的・感傷的で、真実とは程遠いレポートのようですね。

antonianantonian 2006/10/23 14:07 Yosyan様>
はじめまして。最近産婦人科にかかったことから興味を持ってこの事件を追っておりました。拙ブログでも紹介させていただきましたが、現場医師たちの苛酷な環境はうすうす感じておりましたがこれほどお医者さんたちに不安感があるとは。改めて実感しております。今回のこのケースでは患者、医師共に辛いことだと思っています。

妊婦としては様>
私は医者でもないし、寧ろ患者側の立場なのでそこからの視点で申し上げますが、「出産は命がけ」は昔から言われてきたことでわが母の世代にはそれは一般的な常識でした。母自身がそのような現実に直面しています。
それがたったひと世代が過ぎただけで「出産は命がけではない」というのが当たり前の感覚になったとするなら、それは現代医療に携わる方々の日々の努力の結果に他ならないと思います。しかし本来そのような「術」を施さない限り、命に関わる行為でもあることは未だ現実なのだと思います。
マスメディアという存在は滅多に起こらないことを記事にするのですから、多くの妊婦さんがこのような危険な事態に直面するわけではなく、寧ろ例としては少ないことなのだと思います。統計をぐぐればわが国の妊婦死亡率が世界でも類を見ない低さであることに気づくでしょう。(しかも私が生まれた1960年代に比べると劇的に減っています)
メディアに煽られず、安心してお医者様に委ねるのがいいと思います。

福岡の小児科開業医福岡の小児科開業医 2006/10/23 15:27 これで妊婦さんの不安な気持ちが解決してるはずもないので、一言。明らかなハイリスク分娩でなくても、そこまで来ている赤ちゃんが、なかなか出てこないことを多く経験した小児科医としては、やはり危険性の認識はして欲しいし(せめて妊婦さんと夫には)積極的に婦人科の先生にも伺うことも必要。もう現在では悪くなったときの搬送先、新生児の受け入れ先まで伺って良いと思いますよ。答えになってない様だけど

physicianphysician 2006/10/23 19:58 すみません。
『physician先生が人脈などを介してかき集めた情報』
という部分訂正していただけませんか?
もともとはm3に書き込まれていた奈良県立医大産婦人科同門の産婦人科医の先生の調査によるものですので。

私も妊婦です私も妊婦です 2006/10/24 00:28 >妊婦としては様
私も、お産とは無事産まれて当たり前、だとほんの数週間前までは思っていました。今回で二人目の出産ですが、お産自体に危険があることなど本や雑誌、本当にどこにも載ってないですよね。10人に一人が危ないのですよ!イノチに危険があるかもしれないのですよ!と知っている妊婦が日本にいったいどれだけいるでしょう。搬送予定とされている病院が搬送を受け入れてくれない、なんて想像もできないことでした。
でもこれらはみんな事実です。事実を事実と受け止め、今、自分に何ができるか向かい合っています。調べていくと、産婦人科だけではありません。小児科は同じか上回るくらいかなり深刻な状況です。大事な自分の子どもが・・・と思うと、問題は確実に身近なところで起きています。私は1児のママ(もうすぐ二児)、偉そうなことはいえません。が、守らなくてはならない命があります。そのために何ができるか、真剣に考えて、今はただ日本の医療の現状を、あまりに危うい現状を周囲のママ友に伝えています。
妊婦としては様は、この問題を契機に第二子を産む前にこの大きく深刻な問題に気づかれて、逆に言えば幸いだったと私は思います。知らないで、ことが起きてからでは遅いから。私たち一般の人も、今までのように無知ではいられない、と思います。そしてマスコミに踊らされないように、真実を追っていかないといけないと思います。ご自分でよく調べてください。きっと真実は見えてくると思います。
そしてお互い、これは決して当たり前なんかじゃないことですが、無事にお産がすみますように。

>Yosyan様
コメントは初めてですが、いつも拝読しております。
これからもご教示ください。

通りすがり通りすがり 2006/10/24 10:36 妊婦としては 様、私も妊婦です様
核家族化も進み、医療も完備され、ここ、50年程で私達の生活は恐ろしく変化しています。病院で産まれ病院で死ぬ。それが病院で殺されたと報道されているなら、哀しい現実ですよね。一時ではありますが、病院へ入院させる事は、家族によるケアより劣るとされている時代もあったのですよ。赤毛のアン、お読みになったと思いますが、しょうこう熱の子供を治療する場面があります、昔は経験に基づく知恵で対応したりしていました。今は救急車を呼び駆け込む状態です。昼間熱がある子供がいても、夜病院へ行けばいいと。ある意味コンビニエンスですね。それが医療従事者の負担になる事もあります。マスコミは病気の不安を訴える報道をよくしますが、税金による健康保険、抑制された医師数、その皺寄せがどこにくるか、冷静に考えてみる必要がありそうですね。

Dr. IDr. I 2006/10/26 00:52 更に詳細がわかったようなので、m3.comのネタ元の先生に許可を頂いて、自分のブログに書いてみました。
TBもさせて頂きました。
今後ともよろしくお願い致します。

2ちゃんより2ちゃんより 2006/12/21 15:03 病院・医者版「産科医絶滅史24巻〜産科崩壊促進罪の被害を考える会」スレッドより
554 :卵の名無しさん :2006/12/21(木) 14:19:01 ID:JSZ2+Wyw0
> 例の脳出血妊婦死亡で捏造報道された奈良県の町立大淀病院、
> 来年3月で分娩取り扱いを辞めるらしいですな。
> (報道はまだですが、職員向けに発表があったようです)

> これで奈良県の南地区の産科は崩壊ですな〜

しゃれ頭しゃれ頭 2006/12/22 00:27 そらあんだけマスコミに叩かれたらしゃーないわな。俺やったら即刻辞めるんやけど。あっこら辺て個人の参加医院ってあったかな。なかったら悲惨やなって前に書かれとったと思うで。

しゃれ頭しゃれ頭 2006/12/22 12:52 テレビで報道されとったな。年間170例どないするんやろ。県立に行くまで2、3時間かかるゆうて言われとったしなあ。県立に青木たんがいるてほんま?

ハーフドロッポハーフドロッポ 2006/12/22 13:08
大淀が崩壊したのも一つのJBMでしょうね。
judgeしたのはマスコミであり、世間です。
今回の教訓もまた「No doctor, No error」です。