新小児科医のつぶやき

2007-02-24 続横浜の事件

福島事件の第2回公判が行われ、ネラーの鑑「いのげ」氏が1000kmを越えて傍聴に行かれています。今朝は某巨大掲示板で速報部分だけとりあえず読みましたが、詳しくは紫色の顔の友達を助けたいのコメント欄にレポートしてくるそうです。今のぞいたところではまだ無いようですので楽しみにしておきます。

こちらはずっとマイナーな横浜の事件の続編です。マイナーなんですがもう1回ぐらいは続けても良さそうなので、情報整理しながらエントリーします。まず報道からの事件のポイントです。

  • 53歳の女性の脳出血患者であった。
  • 横浜市立脳血管医療センターで起こった
  • 執刀医は38歳とあるので、事件当時は35歳であったと考えられる。また頭部内視鏡手術は初めてであった。
  • 手術法は頭部内視鏡手術であった。
  • 手術後に左半身まひなどの重度の障害が残った。
  • 外部有識者による調査委員会が「内視鏡操作と止血手技に関する技術レベルの低さ」などとして事故と断定した。
  • 家族は業務上過失傷害と傷害容疑で刑事告訴していた。

これに追加情報として昨日望んだのが、

  1. 脳内視鏡手術の難易度
  2. 当該病院の診療体制

難易度については脳外科医(留学中)様からコメントを頂きました。

  1. 脳内視鏡手術の適応:定位脳装置や開頭脳内血腫除去術の適応に順ずると思います(40-50ml以上、被殻出血または皮質下出血)。
  2. 個人的に、内視鏡による血腫除去術の方が、開頭手術と比較して、手技として簡単と思います。だから、経験10年目で専門医の資格があるのであれば、やってもいいのではと思います。

ちなみに脳内血腫除去の手術目的は、「神経症状を改善させること」ではなく、「生命の危機を脱すること」です。

生命の維持を目的として行われるので、術後に神経症状が改善しないことは念入りに説明します。また、術後出血も一定の確率でありえます(何せ、一旦出血したわけですから)。

外部調査委員会の結果を見たいものですね。

反論があればまたコメントを寄せていただければ良いのですが、脳内視鏡手術は手技としてそんなに難しくなく、適応も開頭手術に準じるほどのものがあるそうです。後は患者の出血部位、程度によるのでしょうが、経験10年目の専門医であれば選択しても良い手技としています。専門外なので「そんなものか」ぐらいしか分かりませんが、この情報から経験10年目の医師が脳内視鏡手術を選択してもさほどの問題とはされないと考えられます。

それとコメントにはもう一つ大事な事が書かれています。

    脳内血腫除去の手術目的は、「神経症状を改善させること」ではなく、「生命の危機を脱すること」です。

これは大事な事で、そもそも脳出血を起した時点で出血部位の脳の機能は大きなダメージを受けているわけであり、血腫を除去したからと言って「ハイ、元通り」とはなかなかならないと言う事です。放置すれば死亡するから「死なないように」血腫を除去するのが真の目的なのです。もちろん救命させるだけでなく、その後の機能回復が良好であって欲しいと言うのは誰しも願う事であり、医師も当然そうなのですが、脳出血と言う重大な病変ではまず生命を救うことが第一義の命題である基本を踏まえておく必要があります。

次に事件の舞台となった横浜市立脳血管医療センターの内情です。これについてはstarpoint様から有力な情報を頂きました。参照にした情報は、脳卒中から助かる会の人事委員会の概略からです。この人事委員会がどこの人事委員会か文中からは確定できないのですが、おそらく横浜市の人事委員会のものと考えています。そこでは脳出血の治療の両輪とも言うべき脳神経外科と脳神経内科の間に相当な軋轢があった事をうかがわせる内容となっています。参照にさせて頂いた情報は脳神経内科側の情報に偏っていますから、割り引いて考える必要はありますが、外科と内科が犬猿の仲であったことだけはよくわかります。

いちおうこの情報に基づく脳神経内科側の主張をまとめると、

  • 脳神経外科は腕が悪い

    1. 高血圧や発熱、尿量が少なさ等に対して、原因も調べず機械的に処置し、指摘をしても間違った指示を出し続けた。
    2. 検査や看護体制が整っているのに、金曜の午後に入院した患者は月曜になってから手術するなど考えられないようなことをやっていた。
    3. くも膜下出血に対する脳血管内コイル塞栓術の成績は極めて悪く、12例中7例が後遺症(うち死亡2例)。実に60%以上。血管内治療学会に報告されている合併症発症率は4.2%程度である。
    4. 術後の症例研究会、検討会をやるよう神経内科から何度も要請したが、2002年4月に1回やっただけ。

  • 亀田さんの事件(おそらくこの事件)

    1. 内視鏡を使ったと聞いて驚いた。開頭血腫除去手術を行えば、普通そこまでは悪くならない。
    2. センターで初めての内視鏡手術だったにもかかわらず、倫理委員会にかけていない。
    3. クリアシースの内視鏡手術は初めてだった。学会の研修も受けず、実物(動物など)を使っての訓練もやっていない。

  • 隠蔽へ(おそらく外部調査委員会の報告に至るまでのゴタゴタ)

    1. 畑先生はインシデントレポ一トが出された直後に調査を始めようとしたが、センター長は、「藤井に任せろ。お手並み拝見」と止められ、調査が遅れた。
    2. 3月末にセンター長から聞いた内容の書類を配った。そこには「小委員会が意見を聞いた外部の脳外科専門医が”青戸病院と同じ”と書いてきたので、衛生局が”マズイ。何があっても削れ”と言った。」と書いてあった。
    3. 5月、衛生局が、小委員会の外部の有識者2人の意見が分かれたので、外部調査委員会を立ち上げたと記者発表したことを新聞記事で知った。
    4. 9月、外部調査委員会の報告書が出る。「総合的に見て医療過誤と言わざるを得ない。インフォームドコンセントが足りなかった。院内での対立が発表を遅らせた。主治医は家族に説明していた(ウソ)。」というもの。センターの責任にすり替えられた。

  • 米国籍男性の血管内治療(これは略します)
  • 看護部について

    1. 脳卒中の専門知識を持つ看護師が少なく、毎日の教育が大変だった。
    2. 言葉使いや環境整備(ベッドを調える等〉がひどかった。
    3. 松岡先生を非難する文書が院内に出回ったが、衛生局から頼まれて看護部がねつ造した文書だった。

  • 以下略

いやはや凄い状態です。迫害されたと感じている脳神経内科側の報告なので、正義の脳神経内科、悪の脳神経外科及びセンターという構図です。これもまた真相がどうであるかが問題ですが、脳神経外科側の情報が無いので公平な判断は出来ません。ただ外部調査委員会の調査報告を民事訴訟において否定している経過の一端だけを窺う事はできます。調査報告を蹴って民事訴訟に対応している不思議さをYUNYUN様が御指摘され、私も確かに不可解と思いましたが、この人事委員会の証言を読めば、横浜市は「問題なし」が基本姿勢のようです。

調査報告の内容はほんの一端しか示されていませんが、

    「総合的に見て医療過誤と言わざるを得ない。インフォームドコンセントが足りなかった。院内での対立が発表を遅らせた。主治医は家族に説明していた(ウソ)。」

となっており、こんな短い言葉ではどこが力点なのかわからないのですが、個人的にはインフォームドコンセントが不十分である事が重そうな気がします。やや似たようなケースで防衛医大コイル塞栓術訴訟のインフォームドコンセントがありますが、強いて言えばそれに近い内容のような気がします。神経内科側の証言でもその程度しか表現されていませんから、報道にあるような未熟な手技に力点を置いた内容では無い可能性も考えられます。

昨日頂いた情報をできるだけまとめてみましたが、焦点は外部委員会の調査報告書になってきそうです。これもstarpoint様からの情報ですが、

時期から見てこれでしょうか。

http://www.city.yokohama.jp/me/shimin/joho/kokai/koh2.html

横浜市立脳血管医療センター問題に関する調査委員会 報告書2004.12.21行政運営調整局 職務公正調査課671-2111 センターで閲覧

市民情報センター  http://www.city.yokohama.jp/me/shimin/joho/pamph/guide2.html

近くの方が見て来るって手はあるのかな。>どなたか

横浜は遠いな〜。

774氏774氏 2007/02/24 10:18
 昨日Yosyan様に匹敵する長文を書きましたが、指がつっています。よく毎日これだけ書けるなあと不思議です。しかも私のパクリ小説と違って内容は高度ですし。

詳しい事情は分かりませんが、エントリーの中にある、
>検査や看護体制が整っているのに、金曜の午後に入院した患者は月曜になってから手術するなど考えられないようなことをやっていた。

>脳卒中の専門知識を持つ看護師が少なく、毎日の教育が大変だった。
は矛盾していますね。私も手術を入れる時は土日の当直医やNSをみて、金曜日にオペを入れるかどうか考えます。そういう団体からは緊急手術は別だといわれるのでしょうが、「いちかばちかでやってもらっては困る」「救急病院では相応の技術を持った医師が対応すべきである」と言われているので、じゃあどうしたらいいの? となってしまいます。

 つい一年前まで脳外科は手術数に対して人余りといわれていたのに、数週で産科に次ぐ絶滅危惧種となりそうな悪寒がします。脳外科は手術だけでなく、高齢者の脳血管性疾患の入院を一手に引き受けていたわけで、もともと非常に不足していたというのが、私の認識なのですが。そう考えると人余りの科なんてないですね。余っていると揶揄されることが多い眼科ですら、当のじぎく県では完全に勤務医・開業医とも人手不足で、基幹病院からの引き上げが相次ぎ、開業医は4〜5時間待ちが当たり前で、くすのき大学病院の看護実習生が午後に網膜剥離を起こし、なんと医師不足で岡山に運ばれたというのを、目の前で見た事があります。のじぎく県は、「ああ播磨だな」の模式図のように、くすのき大病院 本土決戦間近なので特殊かもしれません。

774氏774氏 2007/02/24 10:57
 連投で申し訳ありません。最近、脳動脈クリッピング術の裁判が相次いでいると思います。医療業界にいると、自己責任で手術を受けるというのが常識かと思っていましたが、テレビ・新聞の影響もあってか、手術を受けて治って当然、失敗したら医師のミスというのが、世間の常識となっていると感じられます。今回の書類送検は、脳外科医にとっては、福島事件に匹敵する大事件と受け取られているのではないでしょうか。これにより防衛医療が蔓延する方が国民にとって不利益なのは明白なのですが、巨大掲示板のニュース板では、せっかく国民・患者側に立つ医師を攻撃する論調が普遍化し、医師側も国民を啓蒙するのは諦めたような雰囲気が強くなってきました。産科と脳外は全く同じ理由で崩壊してしまうのではないかと危惧しています。

 なお、wikiPediaを論文の参考文献にしてはいけない大学がアメリカで現われたそうです。この前起こった「医療事故」の定義のごとく、日本史に関する記述が余りに間違っているとの理由だそうです(なんとなく分かる気がする・・・)。政治家に対する記載も結構偏見が入っていますし、やはり従来からの紙の辞書まず見るのが王道かなと思いました。

YosyanYosyan 2007/02/24 12:05 774氏様

脳神経内科の主張ですが、多分に感情と思い込みが入っており割り引く必要があると考えています。そのまま受け取れば脳神経外科は悪者そのままなんですが、そう額面通り受け取って果たしてよいのかどうかです。

774氏様御指摘の通り、脳神経内科の主張にも矛盾があります。たとえば金曜入院の月曜手術ですが、土日は休診でしょうから私には妥当なスケジュールに見えます。土曜とか日曜に入院する方がどうかと思いますが、外科的にはどんなものなのでしょうか。まさか金曜入院で土曜手術とか、月曜は手術しない方が良いとかの主張と勘ぐりたくなります。

くも膜下出血の手術成績の悪さですが、全12例で評価しているのも気になります。nが少なすぎるる評価と考えます。12例程度では予後不良のものを偏って扱った可能性を十分考慮に入れるべきかと考えますが、それでは甘いのでしょうか。

それとこれは最近の病院のシステムになってしまうので、私には分からないところなのですが、脳内視鏡手術は院内の倫理委員会の承認を経なければ行なえない治療手技なんでしょうか。これは3年前の脳内視鏡手術の普及率というか一般化の程度で変わるかも知れませんが、どの程度の線引きで倫理委員会の承認を必要とするかの情報も欲しいところです。

なにより一番欲しいのは、私では見ても読んでも分からないかもしれませんが、患者の脳出血の部位・程度です。この肝心の情報が全く無く、これなしで後遺症の程度の妥当性を論じる事はほとんど不可能です。

報道部分を批判すれば、読んだ者の印象として脳出血は後遺症もなく治る病気であるを抱くと思います。治るはずの病気が医師の過誤により後遺症が残ったと感じるのではないかと思います。実際はそうではなく、脳出血が起こった時点でマイナス状態であり、そこからマイナス部分をどれだけ増やさずに済むかが治療の目的と考えるのですが、そういう観点が余り無いように感じます。

どうも肝心の部分がまだ良く分からない事件です。

お弟子お弟子 2007/02/24 12:41 wikiの件ですが、間違ったレポート答案が多数見られたことがきっかけではありますが、偏向や間違っていることそのものが禁止の理由ではないようですよ。
(以下下記リンクから抜粋して引用)
http://www.asahi.com/international/update/0223/002.html
http://news22.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1172243930/
> 米バーモント州にある名門ミドルベリー大学の史学部が、オンラインで一定の
>利用者が書き込んだり修正したりできる百科事典「ウィキペディア」を学生がテ
>ストやリポートで引用することを認めない措置を1月に決めた。
>「大変便利で、調べごとの導入に使うことに全く異存はないが、一部の学生は書
>いてあることをそのまま信じてしまう」と教授は言う。
> 同大史学部では1月、「学生は自らの提供する情報の正確さに責任をもつべき
>で、ウィキペディアや同様の情報源を誤りの言い逃れにできない」として引用禁
>止を通知した。ドン・ワイアット学部長によると、「同様の情報源」とはウェブ
>上にあって多数の人間が編集することができ、記述の正確さが担保できない情報
>源を指すという。
> ウィキペディアの創始者のジミー・ウェルズさん(40)は「慈善的に人間の
>知識を集める事業であり、ブリタニカと同様以上の質をめざして努力している。
>ただ、百科事典の引用は学術研究の文書には適切でないと言い続けてきた」と話す。


横浜市立脳血管医療センターは過去にこの報道がなされており、こちらの意味で2ch医師板では横浜が聖地扱いされてきた過去があります。私が知る範囲では続報は今までありませんでした。ゴタゴタしている割りには判断に足る情報に乏しくコメントしづらいです。
ドロップアウトした医者って結構いるもの? 5人目 http://society3.2ch.net/test/read.cgi/hosp/1107415830/468 (2005/05/16 20:02:21)
>★審査請求:事務職への異動は不当 女医が横浜市人事委に
> 横浜市立脳血管医療センターで03年に起きた内視鏡手術に伴う医療過誤に関連し、
>前同センター神経内科副医長の松岡慈子さん(45)が11日、医師から市の事務職に
>異動させられたのは、医療過誤を積極的に追及したことなどへの報復人事で不当だ
>として、市人事委員会に異動の撤回を求め審査請求した。
> 請求によると、松岡さんは99年、同センターに赴任し脳血管疾患の治療を担当してきた。
>センターでは03年7月から8月に内視鏡手術で患者が意識障害に陥るなど2件の
>医療過誤が発生。松岡さんは院内の会議で、内部手続きを経ずに手術が実施されたことを
>指摘したり、市が調査委員会の報告内容と異なる発表をするようセンターに指示した
>として批判した。
> 松岡さんは今年4月1日付で市保健政策課係長に異動となった。地方公務員法に
>基づき市に理由説明を求めたが「説明できない」との回答だったという。松岡さんは
>「未経験の事務職への異動に合理的な理由はなく、手続きも違反だ」と主張している。
> 市人事課は「不利益処分ではなく通常の異動で、理由を答える義務はない」としている。
>毎日新聞 http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20050512k0000m040121000c.html

某勤務医某勤務医 2007/02/24 12:42
今回の事案については、総体的にみると医療過誤と言わざるを得ない。手術手技に関して、決定的なミスはないが、内視鏡操作と止血手技に関する技術レベルの低さは否めず、新しい手技に臨む準備、手術適応の議論、術者の決定などについて、客観性をもった組織としての活動が見られないこと、さらに術中術後の合併症の発生に対する認識の甘さ、などが原因となったと考えられるので、脳神経外科医師には認識を改めるよう猛省を促したい。
横浜市立脳血管センター内視鏡手術調査委員会報告書
http://www.geocities.jp/shinzogeka/YokohamaCityNoKekkannIryoucenter.pdf

YosyanYosyan 2007/02/24 14:38 >某勤務医様

報告書の情報ありがとうございます。さっそく読ませていただきました。ここ2日間で巡っていた疑問の多くの答えと新たな問題点がわかった気がします。できれば明日、遅くとも明後日には話をまとめてエントリーします。これはかなり根っ子は深そうな問題だと思います。

座位座位 2007/02/24 14:57
調査委員会の報告書に添付されている二人の院外の脳外科専門家の参考意見書では、概ね手術手技の妥当性を認められているように理解しました。特に本件症例の血腫が通常より硬く、出血点の血管の止血困難性を指摘するものと、超音波メスによる血管損傷の可能性があるが、意見書作成者である専門家にも経験がないことなど、治療困難性のほうが目に付き、報告書のサマリーにある『手術手技に関して、決定的なミスはないが、内視鏡操作と止血手技に関する技術レベルの低さは否めず』とする内容とは齟齬があるように感じました。神経内科側の脳外科医師への引継ぎ時の態度も、脳外科へ単に対診を依頼したのか、診療の主導権を明け渡したのか不明で、後出しジャンケン的に脳外科の診療を非難するのであれば、神経内科としての明確な診療方針の提示を前もってすべきであった責任を回避している点で納得できません。但し、新しい診療手技への準備が万端ではない現実とそのリスクを患者家族にしなかった点は、反省材料と思いました。私はもともと内科系ですので、外科の先生方へやや批判的に成りがちであることをご了承下さい。

starpointstarpoint 2007/02/24 15:06 同じ報告書に参考人意見書があります。「手術手技に関して、決定的なミスはないが」との記載に対応する部分です。

内視鏡手術調査委員会
参考人意見書

以上のような改善すべき点は散見されますが、今回の症例は通常よりも出血点の血管がi卜柿困難なこともあり、不幸な結果となりましたが医療過謀を疑うような手技的な問題点は見出せないと思われます。

この報告書本文部分の「 総体的にみると医療過誤 」とする結論は、大野病院の場合と同じように、無理やり過誤ありに持っていこうとしたもののようにも見えます。

座位座位 2007/02/24 15:14
刑事での立件相当として書類送検された現時点で重要なことは、
1 我々匿名コメンターによる事案の検討自体が検察等に悪用されかねないこと。
2 内視鏡手術調査委員会報告書が、今後の安全管理推進に向けた提言の為の資料であるにもかかわらず、又も立件の根拠にされたのではないかという疑念
です。
やはり、警察検察には、個別の案件の立件を地方レベルで決定するのではなく中央レベルで判断してもらいたいし、更に言えば、犯罪要件を予め定めていて欲しい。救命の為の診療行為を非犯罪化(いわゆる免責)としないのであれば、最低限、診療行為の犯罪要件を定式化一般化し宣言することが、医療従事者に対する警察検察側の義務であると思います。

YosyanYosyan 2007/02/24 15:31 座位様、starpoint様

次回のエントリーのポイントを先に書かれてしまってチョット悔しいのですが、報告書で強調している「良好な視野を得るためのシース操作」、「出血に対する止血法」が未熟である点について、参考人意見では特別問題視しているとは私も読み取れません。やや不慣れな点が見れる程度の表現で、「レベルが低すぎる」とは解釈するのは難しいかと考えます。

「良好な視野を得るためのシース操作」も最初の参考意見で穿頭術の穴が9mmよりもう少し大きい方がシース操作が容易だったのではないかが、即「あまりにもレベルが低い」は短絡過ぎます。またモノポーラのワット数がやや高いが「レベルが低すぎるも」誇張の嫌いはあります。

どちらの参考意見も術中操作は「指摘して指導したいところもあるが、概ね問題なし」と解釈するのがもっとも適切だと考えます。昨今の風潮で微妙なインフォームドコンセントのニュアンスで民事に持ち込まれるのは致し方ないとしても、参考意見を無視して医療過誤があると明言すれば、これもまた刑事に何故か持ち込みたい風潮があるので大きな問題だと考えます。

内科と外科の紛争が妙に絡むので話がややこしくなりますが、それを取っ払えば内視鏡手術の適応のある症例に適用し、術中操作も神の手レベルで無くとも並みの技量で行い、状態急変時には開頭手術に遅れず移行し、開頭手術は成功したのであれば、医学的には問題なしとするのが妥当かと考えています。

774氏774氏 2007/02/24 16:56
 この裁判で公判維持の材料として使われるのかどうか不明ですが、症例検討会やCPCはやはり危険ですね。なお、福島事件以降、検察からの鑑定書依頼に応じる医師が激減、応じても医師側有利の文章しか書かれず、患者にちょっとだけお金が出るように「あえて医療ミスと、こじつけてあげる」鑑定書はほぼ消滅したそうです。しかし、一部にまだ生息しているのが残念。患者側弁護士も苦労しているそうで・・・これはまたの機会に。

この裁判官も藤山級の有名人だそうですが、また物議をかもしそうです

>「虚偽診断で薬投与推認」医療法人に210万円支払い命じる判決…福岡地裁
> 会話も困難な呼吸困難になる「気管支ぜんそく重積発作」などと診断され、ステロイド剤の投薬治療を受けた福岡市の女性(47)が、「診断は根拠がなく、副作用が強い投薬の必要はなかった」として、福岡県筑紫野市の医療法人愛心会と医師に、慰謝料など約360万円を求めた訴訟の判決が23日、福岡地裁で言い渡された。一志泰滋裁判長は「ステロイド剤を投与するためにあえて虚偽の診断を行ったと推認できる」として、被告側に約210万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性は2002年6月、筑紫野市の愛心会二日市病院で、当時院長だった医師の診断を受けた。同病院に約10日間入院し、ステロイド剤を点滴投与された。診断と治療に疑問を感じた女性は退院後、別の病院を受診し、ぜんそくと積極的に診断する根拠はないと診察された。

 女性は「不必要なステロイド剤の投与で、めまい、手足の震えなどが起こり、体調が悪化した」と主張。一志裁判長は「女性には(気管支ぜんそく重積発作の)症状はなかった。診断、投薬は故意で行われた」と認定した。

 愛心会二日市病院の話「判決文を確認した上で、今後の対応を検討したい」
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_07022404.htm

YosyanYosyan 2007/02/24 17:24 774氏様

基本的な疑問ですが喘息重責発作なんてそう簡単に誤診するものですかね。とりあえず最低限確認される事実としては、呼吸困難で入院したのは間違いないでしょうし、ステロイド投与で軽快退院したのも事実してあるかと思います。

入院なら、採血、胸部X-p、ECG、成人ならピークフロー検査ぐらいはするでしょうから、肺炎、気管支炎の類も否定できるでしょうし、心臓喘息も鑑別はしているかと考えます。あくまでも常識的にはですが。

その上でステロイド投与で治る呼吸困難の原疾患は何かという事になります。思いつくのはヒステリーぐらいですが、他にもあるのでしょうか。恥ずかしながらすぐには思い浮かびません。それと別の病院で喘息で無いとした根拠も知りたいところです。本当に一過性の喘息発作なら軽快してしまえばわからないと思うのですが、その辺も謎です。

成人は詳しくないのですが、10日間もステロイド投与されるとはかなりの重症のような気がします。それと虚偽の診断をしてまでステロイドは使いたい薬剤では無いかと思います。そんなに利益が上がるわけでもなく、副作用の危険性もありますから、どうせ虚偽であるなら肺炎の診断でもして抗生剤投与をした方が余程無難です。

重積発作でなければいったい何が原因で入院するほどの呼吸困難を来たし、それがステロイド投与で治る原疾患だったかに関心が向けられます。情報が少なすぎていつもの通りよく分かりません。

774氏774氏 2007/02/24 20:05
 法曹界で医学に明るく、鑑定書を読んで判断できる人材はそうはいないのでしょうね。仕方がないと思います。難関国家試験の双璧が、医師と司法試験なのですから、両方に精通するなんて無理です。今、法曹界がロースクール卒の准弁護士の大量育成で就職が大変だそうですが、医療訴訟大量発生時代に向け、医師・医学部出身の准弁護士は非常に重宝されるでしょうね。できれば判事にもなれたらいいのですが。

 喘息発作の救急処置は、何科であってもとりあえず応急処置程度は出来るようにポリクリ時代からカリキュラムが組まれていましたが、それすらも専門医を呼ぶのがJBM、専門医を呼ばなかったと訴訟される時代が来るのかと思うと、嫌な気がします。

お弟子お弟子 2007/02/24 20:29 喘息の診断基準を知らないヘタレ専門医ですが(ォィ)、喘鳴があったら喘息とされている例は結構見かけます(COPDや心不全ならまだいいほう)。それはさておき重責発作は人工呼吸器の使用も念頭に置くレベルの発作を言いますので、入院期間10日のそれはちょっと病名が大げさじゃないかと推定。ただ中発作以上だと検査による発作誘発のため、入院時には肺機能検査出来ない(ピークフローも吹けるかあやしい)ですね。退院までやらないのは専門医だったら仕事さぼってるといっても良いかもしれませんが、一般内科医にまでそれを求めていいのかはちょっと判断しかねます。少なくとも注目度のあるこのblogでそこまで言い切る自信が私にはありません。

774氏774氏 2007/02/24 21:22
 薬剤の副作用という避けようの無い地雷まで賠償の対象か。どんな薬剤でも副作用が起こりうるのは、薬剤師から必ず説明を受けるはず。これからは内服薬の処方も同意書がいるようですね。なお、数年前にも薬剤の副作用検査でどっかの医師が訴えられていたと思いますし、歯科で局麻後にアナフィラキシーショックを起こし、歯科には救急救命処置が禁止されていたので、基幹病院に送るも死亡、歯科で救急救命処置が行われなかったからと理不尽な判決が出たという記憶があります。

 抗生物質や造影剤の皮内反応検査が事実上禁止となった今、患者本人の正確な問診票記載だけが頼りの、頼りない状況です。おそらく入院して、原因薬剤特定のために実際に1種類づつ飲ませていたのかと思います。他科である私からみたら、アナフィラキシーですぐ挿管できる体制になかった皮膚科は、隙があったのかもしれません。おそらく喉頭浮腫でしょうが、怖いですよ。感染症が原因であってもステロイド大量投与しないといけないという、かなり勇気のいる治療です。おまけに、私もそこで挿管できる技量はありません。

>1 名前:四苦八苦φ ★ 本日の投稿:2007/02/24(土) 19:50:52 ID:???0
 県立中央病院(出雲市)皮膚科で検査後に植物人間になったのは、医師の不適切な治療が原因だとして出雲市内の男性(06年に死去)と家族が起こした損害賠償請求の控訴審判決が23日、広島高裁松江支部であった。赤西芳文裁判長(古川行男裁判長代読)は、医師の過失状況を考慮し、同病院側に約4000万円の賠償を命じた1審・松江地裁出雲支部判決を変更し、賠償額を約3300万円にした。

 判決文によると、男性は体の発疹などで97年に入院。医師の診察を受けたが病気は気道まで及んだ。また、腹部エコー検査などを受けた際に呼吸不全を疑うべき症状があったが、適切な処置がなされず、呼吸不全で心肺停止状態になった。

 赤西裁判長は「医師は適切な呼吸管理を怠った」と過失を認めたが、「皮膚症状から心肺停止を予測するのは難しく、呼吸管理を怠ったのも、専門家でない医師にとって初歩的な注意義務違反とも言えない」などとして賠償額を見直した。【久野洋】
2月24日朝刊
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070224-00000239-mailo-l32

座位座位 2007/02/24 21:24 現役の呼吸器内科のベテラン医師の発言を聞きたいところです。私自身の経験でも、喘息の中等度発作として緊急入院させた女性患者で、外来でも喘息患者として呼吸器内科の先生に掛かっていましたし、喘息患者であることに何の疑問も持てない症例がありました。入院するような発作も年に1−2回あるのですが、不思議なことは、夫婦喧嘩のようなストレス時に発作が誘発されることで、発作の最中は喘息発作としか思えない症状なのですが、ストレス要因が消えると症状が消退するヒステリー性の喘息でした。そのような患者は、正確には喘息ではないといえるかもしれませんが、まさに発作中は喘息そのものなので、発作に対応した治療をせざるをえません。係わり合いたくないタイプの患者でした。私の拙い経験ですが、そのような患者の診療にかかわって嫌われた場合はと想像するとぞーっとしますし、そのことを非医療者にどうやって説明すればよいか検討がつきません。心療内科領域の先生なら、正確に診断可能かもしれません。

774氏774氏 2007/02/24 21:49
 例の奈良県の症例を受けてのNICU記事です。設置場所の問題とされていますが、根本的には医師・看護師不足のように思えます。NICUには、以前いた病院でたびたび往診にいっていた時代がありますが、ベッド増やして終了という発想では、絶対無理というのは、小児科医では無い私でも直感で分かります。看護師も母親も必至というのがビシビシ伝わってきます。おまけに、NICU当番医が、小児科輪番も診ないといけないという違法?状態が黙認されている理不尽な状況に憤りを感じます。

>1 名前:四苦八苦φ ★ 本日の投稿:2007/02/24(土) 19:35:54 ID:???0
 ◇移転工事困難で
 県立医大付属病院(橿原市)で07年度中の指定を目指す「総合周産期母子医療センター」について、
 県はNICU(新生児集中治療管理室)の後方病床計画を、当初の30床増設から10床増設へ縮小することを決めた。
 県によると、当初はNICUを別の病棟へ一時的に移転して工事をする予定だった。しかし検討委員会の協議で、「工事中も患者は受け入れざるを得ず、部分的な工事しかできない」という話になったという。米田雅博・健康安全局次長は「開設時の後方病床は10床だが、引き続き30床を目指したい」と話した。
 県は昨年11月、県周産期医療対策ワーキンググループの提言通り、同病院の新生児科(NICU21床、後方病床0床)と産科(MFICU3床、後方病床0床)を07年1月までに整備し、3月までにセンターとしての指定を受けると発表。新生児科は後方病床30床増設、産科はMFICU(母体・胎児の集中管理治療室)3床、後方病床12床を増設する計画だった。【松本博子】
2月24日朝刊 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070224-00000286-mailo-l29

774氏774氏 2007/02/24 22:18
 ニュース速報+の記事ですが、さっそく素人から日本も導入せよとの意見が。日本は皆保険制度なので無意味どころか、僻地医療の壊滅も予想されるのですが。領収書を詳細にすることで儲かったのはレセコンメーカーですし。所詮、擬古牛がピックアップした記事と言ってしまえば、終わってしまいますが。

>1 名前:丑幕φ ★ 本日の投稿:2007/02/24(土) 14:23:33 ID:???0
 シンガポールの厚生省は、03年から医療機関の情報開示を始めた。患者側が病院を比較検討できるようにとスタートした制度で、入院費、治療費、手術費などの費用が公開されたのだ。それ以降、多くの病院が競争意識に目覚め、大幅な医療費の値下げを実施。患者への対応も良くなり、負の側面はほとんどない。肺炎患者の治療費は04年〜05年の間になんと20%も下がったという。
ストレーツ・タイムズ(シンガポール)より クーリエ・ジャポン http://blog.moura.jp/courrier_news/2007/02/down_1bb5.html

ex_inakaDrex_inakaDr 2007/02/25 02:34
モトケンさんところがSNSを作ったようですね。

●モトケンのSNS計画
http://www.yabelab.net/blog/2007/02/24-231722.php

physicianphysician 2007/02/25 02:51 ステロイド投与の判決は、色々微妙な感じです。m3を参照してみて下さい。

physicianphysician 2007/02/25 02:53 2chではプロ市民系の患者さんだった、という話も書かれてます。

しかし、重篤な感染症が起こっていた訳ではなく、不眠程度の副作用で刑事告訴までしますかね?

physicianphysician 2007/02/25 02:58 座位先生、呼吸器専門ではありませんが、気管支喘息はstress inducedでおこりますし、意図的に発作を起こすことのできる患者さんも結構いますよ。

座位座位 2007/02/25 03:12 physician先生、ありがとうございます。私は臨床に関して古びていますので、その線より先は、勉強しなおさねば駄目ですね。それにしても意図的に喘息を起こす患者とはびっくりですね。

ズボンはズボンズボンはズボン 2007/02/25 11:42 いつもROMしている者ですがお弟子先生の名誉のために一言。喘息の治療ガイドラインはありますし、歴史的に少しずつ変わってきた病態の定義もありますが、診断基準はついぞ知りません。グレーゾーンをどう取り扱うかが見解まとまらないのではないかと個人的には考えております。あとphysician先生も触れられていますが、意図的に発作を起こしたり、それどころか意図的に喘鳴だけ起こすことができる患者様もおられます。どこでどうやったらそんな技を身につけることができるやら。

physicianphysician 2007/02/25 13:33 今更ですが、内視鏡手術というのがいまいち想像がつかないのです...。腹腔鏡の様に気腹できるわけでもなく、VATSみたいな感じでもなさそうですし。

お出しお出し 2007/02/25 22:37 ズボンはズボンさん、気を使って頂いてありがとうございます。なんか最近いろんな方にフォローばっかしてもらってる気がします。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20070224