新小児科医のつぶやき

2007-07-31 加古川心筋梗塞訴訟・法廷の実相

加古川心筋梗塞事件の判決文が入手できました。残念ながら判決文そのままではないのですが、判決文を直接読まれた方が要旨を出来るだけ書き出してまとめて頂いたもののようです。判決原文が入手できれば話は別ですが、そうでなければ現時点でもっとも詳細な情報かと考えます。公表許可は得ていますので、html化してupしています。できるだけ引用しながら解説しますが、原文も目を通されればと思います。

まず判決結果なのですが、

    原告の請求額がすべて認められている

原告完勝の訴訟であった事がわかります。

話題になった経過ですが、判決文は内部情報としてDr.I様が提供された情報とやや異なるものになっています。真相がどうであったかとは別問題になるかもしれませんが、訴訟で認定された内容ですので、それを踏まえて御理解ください。

まず前提認定事実として被告、原告とも争い無く認めた事実経過があります。

被告病院(以下,「Y病院」という)には,PCIをするための医療設備及び医療スタッフが存在せず,PCIをすることができない。

Y病院からPCIをすることができる近医(T市民病院等,SK病院)まではは20分程度。このほかHJ病院もあった(以下,「三病院」という)。

事件の舞台となったY病院とは加古川市民病院であり、この病院ではPCIが出来なかった事を改めて前提として認めています。またPCIができる搬送病院としてT市民病院、SK病院、HJ病院とありますが、これも高砂市民病院、神鋼加古川病院、姫路循環器病院と考えてもよいかと考えます。判決では内部情報で上がっていた三木市民病院、神戸大学病院は触れられていないようで、以後は搬送先の候補として三病院という表現を使っています。

続いて当直医と患者情報が書かれています。

Z医師は,非常勤医の日直で,消化器内科が専門。医師資格取得から約5年目。

当日の日直医は4名。内科はZ医師のみ。内科の外来担当看護師は2名。Z医師は,同日,内科における約100名の入院患者と緊急外来患者の診療をしており,多忙であった。

本件患者は64才男性。軽度の肝機能障害,痛風,高脂血症,糖尿病のため,Y病院を掛かり付け医として利用していた。

問題の当直医は漠然と循環器医と考えていたフシもありましたが、5年目の消化器内科医であった事がわかります。患者も普段から加古川市民病院がかかりつけであったようです。事件は平成15年3月30日(日曜日)に起こっていますが、時系列に沿ってまとめてみます。

時刻
病院側対応
12時ごろ自宅で発作。家族がY病院に電話し,Y病院看護師が「心筋梗塞と思われるのですぐに来院するように」と指示。
12:15病院に到着
12:30この時間までに心電図検査がなされ,心電図上,II,III,aVfにST上昇が見られた。さらにZ医師は,本件患者を問診し,11時30分ころから胸痛が持続していることを聞いた。
12:39Z医師は,心筋梗塞を強く疑い,採血オーダーを出した。Z医師は,本件患者が急性心筋梗塞であると判断したが,直ちに上記三病院の一つに転送するための行動はとらなかった。
12:45ソリタT3 500mlを点滴してルート確保
13:03ミリスロールを点滴開始。本件患者の血圧は150/96で,胸部圧迫痛は持続していた。
13:10血液検査オーダーとは別途,Z医師自らトロポニン検査を実施したところ,心筋梗塞陰性との結果を得た。
13:40血液検査の結果が出て,心筋梗塞陰性だった。
13:50Z医師は,転送を決定し,高砂市民病院に転院の受入れを要請した。
14:15高砂市民病院から受入了承の連絡を受けた。
14:21救急車の出動を要請した。
14:25救急車到着。本件患者は,内科処置室の被告病院のストレッチャーの上で点滴を受けており,意識は清明。
14:30救急車のストレッチャーに移す際に意識喪失,呼吸不安定。ストレッチャーに移された直後に徐脳硬直が見られた。それまでモニターは装着されていなかったし,容態急変の直後にもモニターは装着されていなかった。

Z医師は,これをみて,脳梗塞を合併したと疑い,救急隊にCT室に運ぶように指示したが,CT室に着く前に自発呼吸まで消失したので,蘇生のため処置室に戻した。
14:47エピネフリン投与。援助を求められた別医師が気管挿管
15:36死亡確認。なお電気的除細動は一度も行われていない。

2つほど補足情報を挙げておきます。14:30に搬送のためストレッチャーに移したときにモニター装着が無かったと認定されていますが、被告側は装着していたと主張されていますが、これは認定されていません。その理由は、

 「Z医師は,問診後,継続的なモニタリングをしていたと主張し,Z医師の証言,診療録の記録および診療報酬請求書にも,その主張に沿う部分がある。

 しかしながら,診療報酬請求書の記録によると,・・・・これは本件患者来院時間から死亡時間までの時間すべてに相当するものであって,実際に装着していた時間を記録したものとは考えにくく,後になって来院した時刻と死亡した時刻をもとに算定した時間を記録したものとみられ,その間に継続的なモニタ装着がなされていたとの事実を裏付ける証拠としての証明力は低いものといわざるを得ない。

 また,診療録の記録を見ても,Z医師が行った処置や本件患者の容態を記載した部分には,モニタを装着したことやモニタから得られた結果は記載されていない。診療録には,Z医師が本件患者の死亡後,家族に対し,モニタを装着していたが安定状態であった旨の説明をしたとの記載があるだけで,モニタ装着の有無及び時間を直接示す書証は見当たらない。

 さらに,本当に継続的にモニタリングがされていたなら,容態急変時にモニタを再装着することは極めて簡単な作業であったと思われるし,急性心筋梗塞の患者が突然意識を失う場合,心室細動がもっとも疑われるのであるから,心室細動の有無を確かめるためにもモニター再装着は不可欠であったと思われる。

 ところが本件では,モニターの再装着は一度も行われていないのであって,この点からも継続的なモニタリングがなされていたという点には疑問が生じるところである。

 こうしてみると,証拠によって,いつからいつまでモニタ装着がされていたかを認定することは困難であって,前記認定の事実経過では,その点の事実を認定していない。

心筋梗塞を疑い搬送までしようとしているのなら、モニター装着は必須かと考えるのですが、モニター装着の記載が無いので認定しないと解釈するのが良さそうです。

もう一つ同じく14:30に

    脳梗塞を合併したと疑い,救急隊にCT室に運ぶように指示した

この行為も裁判所はこう認定しています。

裁判所から「理由は不明である」,「不可解な行動」と評されている

どうも前提認定事実しての死因として裁判所は次のように認定しています。

急性心筋梗塞の合併症として発症した心室細動

この死亡原因が絶対の前提になったようで、被告側が主張した、心破裂、脳梗塞、急性大動脈解離等の可能性を否定されています。どうも裁判所がモニター装着も、CT検査の必要性も、認定ないし否定的に解釈したのは、急性心筋梗塞からの心室細動が死因と認定したからだと考えます。だからモニターを装着していれば「心室細動」は発見されたはずだからモニター装着はしていなかったと認定され、心室細動の患者に対し脳梗塞を疑ってCT検査を行なおうとしたのは「不可解な行動」と認定されたと考えるのが妥当なようです。

それとおそらくですが、解剖は行なわれていないと考えて良さそうです。解剖が行なわれていれば、被告側が死亡原因として可能性があると主張した、心破裂、脳梗塞、急性大動脈解離は有無が確認されたはずであり、それが可能性があるの主張に留まったのは証拠が無いからだと考えます。証拠が無いというレベルの話になると、裁判所が死亡原因について認定した心筋梗塞からの心室細動も推測レベルになるかとは思うのですが、そこまで断言した根拠はやはり鑑定書でしょうね。

ここまでが前提認定事実です。次に原告側が主張した加古川市民病院の過失です。

  1. 転送義務違反

      急性心筋梗塞の最善の治療法はPCIである。Z医師が心電図検査の結果を得たのは12時35分ころであり,直ちに近隣の専門病院であるT市民病院,SK病院に転送すべき義務があった。しかしZ医師が転送受け入れを要請したのは13時50分で,その後の転送手配も緩慢であったため,14時25分に救急車が到着した。

  2. 不整脈管理義務の懈怠

      心電図モニタによる持続的な不整脈関し,またはCCUに準じた看護師による持続的な血行動態の監視をし,期外収縮が発生すれば,抗不整脈薬リドカインを静注しなければならず,心室細動が生じるに至った場合は,直ちに電気的除細動をしなければならない。

この訴訟においては1.のみ事実認定が行われ、そこで過失が認定されたために2.についての判断は行なわれていません。ですから前提認定事実でモニターやCTについてのきわどい記述がありましたが、これは直接には判決に影響していません。しかし2.に関連する死亡原因が急性心筋梗塞からの心室細動に認定された事は間接的には大きな影響を及ぼしています。。

原告側の主張に対する被告側の反論の要旨です。

 SK病院,T市民病院に転送要請するためには,心電図検査のほか,血液検査の結果を備えることが事実上求められていた。Z医師が血液検査の結果が出るまで転送措置を開始しなかったことはやむを得ない。

「原告らは,Z医師が心電図検査の実施直後に転送義務を負っていたと主張する。

 しかしながら,当日は日曜日であり,被告病院近隣の専門病院はいずれも休診日で,転送を受け入れるためには,休息中の多数のスタッフを緊急に呼び出さなければならない事情があったから,被告病院としては,それら病院に配慮し,自己の施設で可能な基本的検査を実施すること,すなわち心電図検査及び血液検査の結果を添えた上で転送要請することが事実上求められていた。そして,同地域において病院間の協力態勢は確立されていなかった。

 そこでZ医師は,血液検査の結果を得てからでないと転送要請することはできなかったのであり,心電図検査実施直後に近隣の専門病院に転送要請することは困難であった。

読めばそのままなんですが、この裁判のある意味キモになる部分です。あえてまとめると、

    この地区の暗黙のローカルルールとして、休日時間外の心筋梗塞の転送のためには、心電図検査及び血液検査の結果を添えた上でなければできなかった。

上の時刻経過表を見てもらえばわかるのですが、12:30に心電図結果が得られ、12:39に当直医師は心筋梗塞を診断しています。ところが搬送要請を行なったのは13:40に採血結果が得られ、13:50に決定となっています。これが新聞報道にあった「70分の放置」かと考えます。この70分間に医師は何をしていたかといえば、ローカルルールの採血結果がそろうのを待っていたという事になります。

これに対する裁判所の認定は、

SK病院,T市民病院から,転送要請するため血液検査が要求されていた」との事実を認めるための証拠がない。

 なお,平成15年3月30日午前1時30分(本件前夜),Y病院に来院した患者(本件患者とは違う患者)がおり,Y病院の当直医は心筋梗塞を疑ってSK病院に転送要請したが,SK病院は,知らされた所見・症状から心筋梗塞と認めず,これを断ったことがある(この患者は,当直医によってミリスロール点滴が続けられたが症状は改善せず,同日4時30分ころHJ病院に救急搬送された)。しかし,この患者は,ST上昇があったが,心筋梗塞に典型的な症状ではなかったのであって,血液検査の未了を理由として転送が断られたものではない。

 また,本件でも,Z医師は13時50分ころ,血液検査において陽性の結果を得ることなくT市民病院に転送の受け入れを要請し,その承諾を得ていることからみても,血液検査の実施が必須であったと考えることは困難である。

(以下,判決文のまま)

「そもそも急性心筋梗塞の治療において最重要なことは,できるだけ早期にPCIを実施することであり,SK病院やT市民病院が24時間の急性心筋梗塞患者の救急受入れを実施しているのもそのためである。そして,心筋梗塞の急性期における血液検査が無意味であることくらい,そのような専門病院はよく理解しているはずであって,そのような専門病院が,心筋梗塞に典型的な心電図所見や臨床症状がみられる患者について,さらに血液検査の実施を要求するとはにわかに考えられないし,そのような要求が常態化しているとの不可解な地域医療の実情があるとも考えられない。

 上記両病院とも調査嘱託(※注 訴訟当事者からの申し出により,裁判所から両病院に対して質問を送り,両病院がそれに対して回答したもの)に対する回答書で血液検査の実施を要求していないと回答しているが,これを不可解な地域医療の実情を隠ぺいするための嘘と考える必要は何もなく,医学的見地から当然に導き出される取扱いを素直に述べたまでと受けとめるべきである。

 

 以上要するに,被告の上記主張は理由がない。

本当の真相はわかりませんが、姫路循環器も高砂市民病院も暗黙のローカルルールを公式には否定したために、加古川市民病院の主張は根拠を失い宙に浮いてしまったと考えたら良さそうです。問題の暗黙のローカルルールがあったかどうかですが、これは実際にこの地区で勤務された循環器の医師の御意見を聞きたいところです。個人的には被告がこれだけ主張しているのですから、本当はあったような気はするのですが、どうでしょうか。

とにもかくにも暗黙のローカルルールの存在を否定されてしまった被告側ですが、重ねて抵抗はしています。

 臨床の現場では急性心筋梗塞の疑いのある患者に対して全例において血液検査を実施している実情があるから,Z医師が血液検査の結果も添えて,近隣の専門病院に転送要請しようとしたことは自然であり,非難することはできない。

言っている事はわかります。搬送前であっても後であっても、PCIを行なうには血液検査が必要とされますし、その結果が出るまでは搬送後であっても治療は開始されないわけですから、搬送前の病院で検査を行っても時間的はそれほど変わらないとの主張かと考えます。これに対する裁判所の認定は、

 心筋梗塞発症2,3時間内においては血液検査の診断は無意味。「仮に,そのような臨床現場の実情があったとしても,患者の救命を第一に考えなければならない立場にある医師の転送義務を検討するに当たって,そのような実情を考慮することは相当でない。」

素直に読めば問答無用でトットと搬送せよの認定かと読み取れます。私は循環器医ではないのでなんとも言えないのですが、血液検査ではトロポニン検査でも陰性だったので、被告側が死因として可能性があると主張した大動脈解離はどうだったんだろうなと感じています。心電図の所見は私程度が読めば心筋梗塞を一も二も無く疑いますが、他に考える余地は本当に無かったのだろうかの疑問です。しかし裁判所の前提認定事実は心筋梗塞ですから、その前提からすると血液検査は無意味であるとの論理構成になっていると考えています。

判決文関係を読み出してからいつもドキドキするようになったのですが、因果関係の裁判所判断を引用します。

・・・・Y病院からT市民病院に転送要請の電話がされた後,受入れ了承の連絡がされ,実際に救急車が到着するまでの時間が35分であったと認められるところ,仮にZ医師が本件注意義務を果たし,12時39分ころに,転送措置に着手したならば,救急車が13時15分ころ,Y病院に到着していたと推認することができる。

 そして,前記第2の1に認定したとおり,Y病院からT市民病院又はSK病院まで患者を救急車で搬送し,処置室に運び込まれるまでの時間は,約20分であると認められるから,本件患者が処置室に運び込まれるのは13時35分ころであると認められる。

 前記・・・・認定の医学的知見及び調査嘱託の結果によれば,急性心筋梗塞患者を受け入れた専門病院としては,PCIが実施されるまでの間,CCUにおいて効果的な不整脈管理がされ,致死的不整脈が発生すれば,速やかに除細動などの救急措置が行われたであろうということができる。すなわち,本件注意義務が尽くされていれば,14時25分に心室細動が発生したのに電気的除細動さえもされないという最悪の事態を避けることができたはずである。

 次に,・・・・認定の事実によれば,SK病院が平成15年2月から4月までの間の休日に他院から急性心筋梗塞の転送を受け入れ,PCIを実施した症例(4例)のうち,入室から退室するまでもっとも長く要したのは3時間10分であったことが認められ,これら事実によれば,専門病院において,他院から転送を受け入れた場合,患者が来院してから,PCIの処置を完了するまでの時間は,特段の事情がなければ,長くても3時間程度であると推認することができる。

 これらから,本件患者が13時35分ころにT市民病院又はSK病院の処置室に運び込まれていれば,PCIの処置を終えるのは,遅くとも16時35分ころであったとみるのが相当であり,仮にZ医師が本件注意義務を果たしたならば,本件患者は,11時30分に心筋梗塞発症後,約5時間後である16時35分ころには,PCIの治療を完了していたと推認することができる。

 前記・・・・認定の医学的知見(※後述)によれば,再灌流療法は,発症から再疎通までの時間が短いほど効果が大きく,特に,発症12時間以内のST波上昇型の心筋梗塞であれば,再灌流療法のよい適応であるとされるから,Z医師が本件注意義務を果たしていたならば,本件患者は有効な再灌流療法を受けることができたといえる。

 そして,前記・・・・認定の医学的知見(※後述)を総合すれば,急性期再灌流療法が積極的に施行されるようになってからは,病院に到着した急性期心筋梗塞患者の死亡率は10パーセント以下であるとみるのが相当である。

 このようにしてみると,本件注意義務が果たされていたならば,本件患者は,併発する心室細動で死亡することはなく,無事,再灌流療法(PCI)を受けることができ,90パーセント程度の確率で生存していたと推認することができるから,Z医師の本件注意義務の懈怠と本件患者との死亡との間には因果関係が肯定される。

これは12:39に当直医が急性心筋梗塞の診断を下していた時点で「直ちに」搬送を行なったらどうなっていたのかのシミュレーションと考えれば良いかと思います。裁判所のシミュレーションをまとめると、

裁判所想定時刻
裁判所想定治療
12:39搬送作業開始
13:15救急車が加古川市民病院到着
13:35高砂市民病院到着
14:25心室細動が発生してもCCU内のはずだから、電気的除細動等で速やかに救命
16:35PCI無事完了

つまり心筋梗塞を診断した時点で素早く搬送に着手していたら、心室細動もCCU内で問題なく治療され、その後のPCIもごく普通のリスクの心筋梗塞治療であるから死亡率は10%未満となり、そうなれば90%は患者は生存していたはずである。それもこれも前提認定事実で患者に起こった除脳硬直が心室細動によるものと認定され、脳梗塞等の可能性を完全に否定しているので、一応は成り立つとしておかなければならないのでしょうか。どうも医学的には口の中がジャリジャリするような裁判所の「そうなるはず」の構図ですが、判決では「そうなるはず」と断定されています。

最後の最後に非常に興味深い一言が書かれています。

    なお,原告側からは,森功医師の意見書が提出されている。

この訴訟を担当した裁判長はあの橋詰均氏ですから、不吉なコンビネーションが神戸地裁で蠢動したとも考えられます。

前にもお知らせしたとおり、この訴訟は控訴断念で確定しております

774氏774氏 2007/07/31 08:24
 裁判官と鑑定医が黄金コンビであることは負けと決定したようなものですが、なぜ控訴しないのかが非専門には不思議です。

 それと、市加古から循環器2名が引き上げたのは平成16年の夏だったと思いますが、Z医師は循環器医と連絡を取っていなかったのでしょうか。私はてっきり循環器医が加療にあたっていたと思っていました。今まで勤めた神大系列基幹病院では、循環器疾患は普通オンコール担当医が決まっていて、当直医は専門医が来るまでの応急処置(しかも丁寧にレジメが書いてある)というのが当たり前でしたので。

 それに市加古の当直体制は、内科系、外科系の救急外来、病棟医の3人体制で、播磨ではもう望めない、恵まれた体制です。それと法医学の友人は、解剖しとけよと(よく分かりませんが、このケースは司法解剖が妥当だそうで、家族の任意ですが「解剖は家族が拒否」と書くとだいぶ違ってくるとか)

774氏774氏 2007/07/31 08:45
 循環器医2名の病院で心カテまでせよといっているのではなく、連絡を取っていれば循環器医通しのネットワークが使えたのにな、という意味です。ただし門戸外なので、高度に専門化したため細分化された内科医の中で、どこまでがお互いカバーしあえる範囲なのかは存じ上げません。ひょっとしたら私の意見は暴論かもしれませんが、それは専門外としてお許し下さいませ。

YosyanYosyan 2007/07/31 08:56 774氏様

774氏様の情報であれば、事件が起こった時にはまだ加古川市民には循環器科があったわけですね。循環器医との連絡については入手した判決要旨には書かれていませんでしたが、連絡を取った可能性はあるんじゃないかと考えます。

あくまでも推測ですが、被告医師が主張したローカルルールを消化器内科の非常勤医、つまりバイト医が知っているとは考え難いですからです。すなわち心電図所見が出来てから、心筋梗塞の診断を下すまでの約10分間は循環器医のオンコールに問い合わせた時間とも考えられます。

循環器医のアドバイスに従い、搬送のために必要な血液検査を待ったという考え方は出来ないでしょうか。そうでないと以後の被告医師の行動、訴訟での主張が説明しにくいように感じます。

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 09:34
こちらのブログをみると、あちこち連絡をとる時間だったようですね。
http://kenkoubyoukinashi.blog36.fc2.com/blog-entry-182.html
--------
まず神鋼加古川に電話。
しかし、神鋼の当直医師も循環器医師に
連絡して確認しないといけません。
一旦電話を切ってその返事待ちです。
結果は受け入れ出来ない、との事。
その後同じ事を繰り返しました。
一件につき10分〜15分はかかります。
高砂市民病院、姫路循環器病センター、
三木市民病院、神戸大学病院にあたりましたが全てダメ。
結局、高砂市民病院(神鋼加古川?記憶があいまい)
に転院する事になったそうです。
--------
奈良大淀のケースにちょっと似てると思いました。
医師が、一生懸命連絡をとっているところを、もっと患者に「見せる」べきだった?
ACLSの講習を受けたときに、ACSのセッションで、「この地域でPCIに対応できる施設といえばどこなんでしょうか?」と質問してみたのですが、明確には答えてもらえませんでした。その日の体制にもよるだろうから、どこに送ればいいのかは、問い合わせるしかないのでしょう。
関係学会に音頭を取ってもらって「STEMIであれば速攻でこちらへ」という病院リストを、毎日faxしてもらうようにするしかないんじゃないかなあ。
大変なのはじゅうじゅう承知ですが、そういう方向に整えないと、医者は逃散するしかないでしょう。

YosyanYosyan 2007/07/31 09:40 moto-tclinic様

Dr.I様のエントリーは私も引用してエントリーを立てましたが、少なくとも法廷内ではそういう事実は争われなかったという事です。この情報の提供者は判決文中の記載として、

『このような事情は,被告側の主張にも見あたりません。
 被告側の主張でも,13時50分の高砂市民病院への転送要請が最初のようです。
 (被告側が提出した専門医の意見書では,「そうではなかったか」というような記載がありますが,
 裁判所からは「そのような事情は認められない」とされており,これについての被告の主張もないようです)』

もちろん法廷内で認められた事実の認定と実際の事実が必ずしも合致しませんから、あくまでも判決文中の認定事実と御理解ください。

774氏774氏 2007/07/31 09:49
 Yosyan先生のおっしゃるとおりです。ちょっと前までマイナー1人当直ですら当たり前の時代でしたから、胸痛患者が来たらとりあえず心電図、自分で確認したり、オンコールの循環器医にFax等で診てもらうか、心電図機器の自動診断を当てにして、循環器医に電話、その間はレジメか循環器医の指示通り、ルート確保、検査や薬剤投与をして、循環器医の到着を待つというのが、どこの病院でも決まっていました。

 なお、レジメは大切に保管しています。勉強のため自分でガンマ計算もしたりしましたが、播磨から循環器医がほとんどいなくなり、失われた知識となっていましたが、改めてレジメを読み直していて思い出しました。Z先生、レジメどおりじゃないですか。しかも救急隊到着時は意識清明なわけですし、どこに落ち度があるのでしょう。控訴断念した理由も分かりません。専門外なので間違っている点はご容赦ならびに、ご指摘ください。

 なお、司法解剖ですが、神戸市内(北区と西区を除く・・・神戸じゃないのね)は兵庫県観察医務室(神大内。ただし常勤監察医は1人のみだそうで・・・)、兵庫県は阪神間は兵庫医科大法医学、その他県下全域が神大法医学担当となっているそうです。

 病理解剖は死因が明らかでそれを確定するためのものであり、このケースは死因が明らかでないため(AMIの他に脳梗塞も疑われたりしていますから)異状死体に相当し、司法解剖が妥当と聞きました。

ssdssd 2007/07/31 09:50 モニタ装着なんて、指示は出しても、カルテに記載したことはないな・・・。
たぶん気の利いた看護師なら、看護記録に書いてくれたんだろうけど。

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 09:59
Dr.I様のブログですが、そのほかの情報はおおむね当たってますよね?
なぜ、転送先探しで時間をとられた、という主張を裁判でしなかったのだろうか?絶対してるはずだと思うのですが。
・・循内医に連絡をとって、そちらから転送先探してもらおうと待ってたのかな?通さないと顔つぶすことになるでしょうからね。

HekichinHekichin 2007/07/31 10:09 ハートモニターの算定要件って酷いんですよね...
-----------------------------
(呼吸心拍監視について)
(1)呼吸心拍監視は,重篤な心機能障害若しくは呼吸機能障害を有する患者又はそのおそれのある患者に対して,常時監視を行っている場合に算定されるものである。この際,呼吸曲線の観察の有無に関わらず,心電曲線,心拍数の観察を行った場合は,所定点数を算定する。(平16.2.27保医発0227001)
(2)呼吸心拍監視は,観察した呼吸曲線,心電曲線,心拍数のそれぞれの観察結果の要点を診療録に記載した場合に算定できる。(平16.2.27保医発0227001)
-----------------------------
脳血管障害のみ病名記載では確実に査定、レセ病名を要します。
観察の要点が記載されていないと請求できません。
-----------------------------
1時間以内又は1時間につき50点
3時間を超えた場合(1日につき)150点(7日以内の場合)
-----------------------------
3時間超えれば1500円/日上限です。装着時間もキチンと記載しないとダメなんですよね。実際のところカルテ確認はないので問題ありませんが、裁判の証拠となるとモニターをつけた時間、外した時間、ポータブルXPを撮る時に外した時間、再装着した時間等々細々と記録しないといけないという認定です...誰が書くかボケ!>裁判長

一通り想定される処置をしていると思われる本件の控訴断念した奴は死刑に相当する重過失です(でも功名心の鑑定にかかれば敗訴確実でありますが...)

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 10:14
バイト医だし、ほかの緊急外来患者も診ないといけないだろうから、「循内医の先生に連絡とって転送先さがしてもらってください」で済ませたのかな?Dr.I様のところで書かれている転送先探しは、循内医の先生がしたことだったのかもしれないですね。・・それにしても裁判で主張してもよさそうなものですが。

YosyanYosyan 2007/07/31 10:15 moto-tclinic様

Dr.I様の入手した情報は現場の緊迫した様子が伝えられており、信憑性は高そうに思います。しかし判決文中では争った事実がないようです。考えられるのは

 a.実は搬送先さがしの事実はなかった
 b.搬送先探しを争点にする事が法廷内で封じ込められた

可能性としてはb.の方が高そうな気がするのですが、これについては判決文中からは分かりません。もう一つ、疑問といえば疑問なんですが、おそらくオンコールが敷かれていたと考えられる循環器医の動向です。循環器医はこの事件に際し、電話指示だけであったのか、それとも現場に呼び出されたかです。経過を読む限り、現場にはいなかったような気配が濃厚です。

「いなかったんじゃないか」と考えるのは、採血結果がでてから搬送決定までやはり10分間を要しています。この時間もオンコールの循環器医に電話連絡を取っていた時間と考えるのが妥当とも解釈できるからですが、どんなものでしょうか。

774氏774氏 2007/07/31 10:21
重要な訂正

 加古川市議会議事録を調べてみましたが、循環器科はどうもH16年から始まったらしく(http://www.city.kakogawa.hyogo.jp/index.cfm/9,1610,c,html/1610/160602.pdfの56ページ目、「次に、「診療科目の新設について」ですが、診療科については、これまでニーズの高かった皮膚科・泌尿器科・循環器科及び小児外科を開設するとともに、既存診療科の充実に努めてまいってきたところでございます。今後は呼吸器内科をはじめ、内科の専門分化に伴う内科医療を充実していくことが必要であると考えております。」)で、平成15年6月の段階ではまだ循環器科はなかったようです(http://www.city.kakogawa.hyogo.jp/index.cfm/9,1610,c,html/1610/160602.pdfの108ページ目、「診療科目に循環器科及び呼吸器内科、放射線科、人工透析などの新設や充実及び最先端医療機器の導入や機器の充実が必要です。」)

 循環器科撤退はH18.8.20(病院HP の循環器科の項目より http://www.hospital-kakogawa.jp/etc/junkanki.htm )でした。

 大変重要な所で、記憶に頼ったとんでもない大間違いをしてしまい、本当に申し訳ありません。オンコール循環器医がいるという大前提が崩れてしまいました(となると、今後は循環器医がいない病院では胸痛は絶対受けられませんね)

YosyanYosyan 2007/07/31 10:35 774氏様

事件当時は加古川市民に循環器科がなかったということですね。ではでは、私の展開したオンコールの循環器医がいるという前提での推測も取り消させて頂きます。そうなると何らかの確信を持って、被告医師は暗黙のローカルルールの存在をあらかじめ知っていた事になります。少し言い換えれば消化器内科の医師でも常識として知っていた暗黙のローカルルールだった事になります。

あえて推測すれば知人の循環器医に問い合わせた可能性はありますね。たとえば勤務元の循環器医のオンコールとかに対して問い合わせても不自然とは言えない様な気がしますし、知人の医師であれば電話指示だけで現場にいなくとも不思議ではありません。

7年目内科医7年目内科医 2007/07/31 10:47 以前に神奈川西部僻地にて、夜中に飲酒後の気分不快感を訴える患者を受けたことがあります。ちなみにこの病院は検査技師・放射線技師はオンコールでした。点滴中に胸部不快感が出現したので念のため心電図を施行したら下壁梗塞で、すぐに採血・検査技師をコールしたのですが、技師の到着が45分かかると言われたので結果を待たずに50分かかる三次病院に搬送しました。この時は搬送先に「血液の結果は出てないが、症状と心電図からはかなり可能性が高い」と伝えたら「バイアスピリンを飲ませて搬送してくれ」とのことでしたので、事なきを得たのですが・・危なかったなあ。
ちなみにトロポニンTは陰性でした。結構偽陰性もあるので、結局確定には至らないんですよね。

LTLT 2007/07/31 10:52
「PCIをしていたら90%は助かるのだから、PCI施設にさえ搬送すれば助かったはずだ!」この論法で裁判をされたらかないませんね。PCI施設ではAMIによる死亡が認められなくなります。
しかし心電図モニターを装着していなかったとしたら、やはり痛いですね。ただAMI時の不整脈については、「期外収縮が発生すればリドカインを静注しなければならない」は間違いです。期外収縮の発生自体が心室細動を予知するものではなく、血行動態にたいした影響がなければ不必要な使用は死亡率を上昇させる可能性があります。

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 10:53
わたしの個人的な思い込みかもしれないのですが、消化器科の先生は、内科でも体育会系で、上下関係、連絡のしきたりのようなものを、遵守する傾向があるように思います。そのへん、過度にこだわって、データを添付すべきとか遅れたのかも。・・という推理はいかがでしょうか?

みみみみ 2007/07/31 10:58 これもひどいですねえええ。。。

宮崎大側に2400万円の支払い命令
http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20070730-234776.html
 宮崎医大病院(現宮崎大病院)で2003年、研修医の未熟な採血の結果、心臓病の長女(当時2)が呼吸困難で死亡したとして、宮崎県清武町に住む父親(42)が、大学に損害賠償を求めた訴訟の判決で、宮崎地裁は30日、約2400万円の支払いを命じた。

 判決理由で高橋善久裁判長は「研修医に経験を積ませることよりも、呼吸困難を起こす危険性を低下させることを優先すべきだった」と指摘した上で「注射針を刺す回数を最小限に抑える義務を怠った」と病院側の過失を全面的に認めた。

 判決によると、長女は03年9月12日、心臓病手術の輸血準備のため採血をされた際、研修医が2回失敗するなどして計4回の注射を受けた。長女は痛みや恐怖で号泣、その後も2回激しく泣いて呼吸困難に陥り、同日死亡した。

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 11:13 >みみ様
それ、Hekichin様が、昨日のコメント欄に既に貼ってくれてますよ。

774氏774氏 2007/07/31 11:34
 そうですね、今日はエントリーからズレて欲しくないです。最近恒例ですので・・・私もその一端を担いでいますが・・・なにせ神大1内は横山教授が定年退職したこともあり、戦略的撤退を重ねていますし、事実上、市加古は播磨や但馬の一部の3次救病院と化していますので、小児科が疲弊しているとか産科がオーバーワークとか、播磨や但馬の医師は同病院の動向に注目しています。

 しかし、一番重要なとんでもない間違いを書いてしまって大ショックですが、自分でもオンコール医はどうしていたのだろうと早めに調べてよかったです。
m(__)m

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 11:45
(続き)この「ローカルルール」ってあたりが、なんだか上下関係・しきたり重視する消化器内科的な発想っぽくないですか?循環器科はもっとさばけてるっていうか、STEMI即有無いわざす転送、でOKだと思うんですが・・
べつに消化器科の先生にいちゃもんつけてるわけじゃないですよ。科の個性みたいなものが多少なりとも影響した可能性ないかな?と思いまして。

循環器内科医循環器内科医 2007/07/31 11:59 血行動態の安定した下壁梗塞なら、クレアチニン値みてから緊急カテするかを考えるという裁量権はほしいです。だいたいばたばたカテ室を立ち上げている間に小一時間はたってしまい、dataはでるので問題ないのですが。 とはいえ、生化学の結果を待つのがそんなにいけないのか理解できないです。 高次の施設で働くものとしては、保存的治療しか選択できないような、CCUを焦げ付かせるような症例はお断りしたい気持ちは何となくわかります。それが採血の暗黙ルールなんでしょう。 特に医療資源に限界のある地域では仕方がない様に思います。 無駄遣いしないためのトリアージかと。

北海道の循環器医北海道の循環器医 2007/07/31 12:15 みなさんに、責められるかもしれませんが感想をひとつ。Yosan先生が言うとおり解離性大動脈瘤は完全に否定できません。しかし経過を見ると裁判所が判断した経過がもっとも考えられるストーリーでほとんどその通りだと思います。また意識が無くなったときに適切な処置をしなかったというのは今後も攻められると思います。(ちょっと脈を確認したらおそらく心停止と判断でき脳梗塞を疑ってCTをとる前にモニターつけて除細動で着たのではと思います。ましてやモニターがついていたなどとは絶対ないでしょう。もしあったら逆にVFかそうでなかったかは判断ついたでしょうし。今後、内科領域ではBLS,ACLS必須になってくるのでますますこのような事態は許されなくなってしまうでしょう。しかし平成16年の段階ではだからといって訴訟で負けるほど内科医にとって必須の知識化といえばそうではないようにも思います。
すみません、循環器医から見ればもったいない症例で感覚的には助けられた症例と思ってしまうので。でも、僕も他科の疾患で常識的なことをやれるかといえば自信がないので当直医はかわいそうだと思います。以上田舎循環器医の意見でした。

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 12:38 >北海道の循環器医様
いや、わたしですら、判決文読んだかぎりにおいては、僭越ながらそんな感想いだいてしまいましたので、専門の先生からズバリとそう言って頂けると、なんだかほっとします。ACLSで習ったコア・ケースそのもの、って感じですよね。突っ込みどころ満載、実技なら再試験間違いなしではないでしょうか。
ただ、それとはべつに、5年目の内科の先生で、STEMI見落としは無かったわけですから、能力は十分あったと思われます。どこかにこのケースのキモみたいなものがあるはずで、それを探そうと思うと、結果的にこの先生を擁護する方向性の妄想になってしまうということではないでしょうか?

YosyanYosyan 2007/07/31 12:57 ストレッチャーに移すときにモニターを装着していたかどうかですが、考えてみれば装着していなかった可能性はありそうです。とりあえず状態は安定したのですから、ストレッチャーに移すときに病院のモニターを外し、救急車に乗せた後、救急車のモニターに付け替えようとしたのはありえる事です。患者は処置室にいたと考えるのが妥当ですから、救急車までモニター本体を引っ張っていくとは考え難いからです。

モニターを外したのがストレッチャーに乗せる前だったのか、乗せた後だったかはわかりませんが、とにかくモニターが無い状態で「除脳硬直」が起こった。被告医師は直感的に脳梗塞の可能性を考えストレッチャーのままCT室に行こうとした。ところが行く途中で呼吸停止まで起こり処置室に逆戻りとなり、その時点でモニターを再装着したら心停止状態であったと。

電気的除細動を行なわなかった理由もわかりませんが、とにかく心停止状態だったので心マにまず関心が傾いた可能性と、これも長崎の除細動事件で議論になったかと思いますが、被告医師が電気的除細動の経験が無かったから、しようと思わなかったはありえると思います。さらに応援に駆けつけた医師も、電気的除細動の経験が無く思いつかなかったか、やろうとは思わなかったは可能性としてあります。

判決文を見る限り、心室細動が確認された記載が無さそうなので、こういうストーリーもありえそうと一応書いておきます。

岡山の内科医岡山の内科医 2007/07/31 13:12 Yosyan先生
このローカルルールですけど、救急外来の看護師の認識だった可能性は無いですか?
ネーベンで各地の病院の非常勤医をしていた経験からすると、その病院の常勤医に休日に連絡をとるのは、心理的にかなりハードルが高いです。
医療状況のわからないネーベン先で転送先などの情報が欲しいと思ったら、ついてくれている看護師に相談すると思います。前夜のことなどがあって、救急外来の看護師の認識がローカルルールのような形になることは十分ありえます。
この件のネーベン医師もおそらく、相談する医師も無く、一人で頭を抱えていた状況にあったのではないでしょうか。心電図上はAMIが疑わしいが、トロポニンTは陰性で(添付文書上は発症後2時間で感度20%程度ですが)、他の逸脱酵素も陰性。すぐ他院に送るかどうかも(ローカルルールを耳にすると)、悩んだと思います。採血の結果を見た後の10分の時間も、自分の中での踏ん切りをつけるのに必要な時間だったのでしょう。後だしジャンケンで、この担当医をけなすのは簡単ですが、時間経過からは、彼の逡巡は十分に理解できます。
医療事故の8割は担当医の能力不足という、他に類をみない異常な調査報告書を出す森医師の本領発揮といったところでしょう。

YosyanYosyan 2007/07/31 13:43 岡山の内科医様

10分の意味合いを外来をしながら考えていたのですが、データを見ながら悩んでいた可能性も十分ありえますが、もっと単純に他の外来患者の診察を行なっていたとも考えています。この日の救急外来は「多忙」とされていますので、被告医師は事件の患者にかかりきりでいられるとは思えないからです。

ローカルルールの存在ですが看護師伝達説はいかにもありそうな話ですし、そうであった可能性も否定しませんが、被告が自らの立場を法廷で守る主張ですから、ある程度の根拠があったものと考えています。あやふやな伝聞系であるなら主張しないと考える方が自然です。何らかの強い根拠なり、さらに裏付ける証言なりがあったので、法廷の場でローカルルールの存在を持ち出したと考える方が自然です。

僻地外科医僻地外科医 2007/07/31 14:42 >北海道の循環器医先生、循環器内科医先生

 除脳硬直様のけいれんって、心筋梗塞時の心停止の時に起きますかね?
 II、III、aVfの上昇もA型解離で説明できなくはないですし・・・。
血管外科系の人間としては単純なACSよりそっちを考えたい気がするんですが・・・。

YosyanYosyan 2007/07/31 15:00 僻地外科医様

私もそれを聞きたかったのです。除脳硬直様のけいれんだから被告医師が脳梗塞を頭に浮かべたというのは、恥ずかしながら私も似たようなことを考えそうだったからです。AMIからvfはごく自然の予想かと思いますが、vfから除脳硬直様のけいれんもありふれた症状なのでしょうか。

BugsyBugsy 2007/07/31 15:34
>僻地外科医様、Yosyan様

確かに除脳硬直とくれば 脳出血やくも膜出血の際の脳ヘルニアを思い浮かべるのが、一般的です。今回は時間経過から 出血が起こったのかははっきりしません。

一方で脳塞栓は中大脳動脈領域におこる頻度が高いのですが、今回の激烈な転帰を推測すれば、椎骨脳底動脈領域にemboliが飛んで、延髄より中枢側の障害を突如引き起こして除脳硬直などの重篤な脳幹部症状が突如出現したのだと考えて 何ら矛盾しないと思われます。
この脳幹梗塞が発症直後にCTで診断可能というのは少々無理があると思います。CTだとbone artifactが強くて脳幹部は出血ならともかく、梗塞だと見づらい部位です。

循環器内科医循環器内科医 2007/07/31 15:42 僻地外科医先生
今回の除脳硬直様の痙攣がどんなものだったかはわかりませんが、フィブった時の症状とは違うのではと思います。このような表現の痙攣をVf(記録もないのに)と断定するのには違和感を感じます。

北海道の循環器医北海道の循環器医 2007/07/31 15:54 >僻地外科医様
たしかに、ValsalvaからArchを超えての広範囲の解離は十分に考えられます。(実際AMIだと思い冠動脈を巻き込んだ解離だった経験もあります。)
また除脳硬直様の痙攣というのが実際その現場にいないのでわかりませんが、Vfのときに白目をむいて痙攣を起こし意識消失といった現場は何度も遭遇しています。もちろん、何らかの脳疾患が起こったことは否定できません。ですから逆に発症時にBLSを行う。つまり脈が触知できたかどうかを確認して欲しかったのです。VFを先にルールアウトして欲しかったのです。(一瞬でできることですから。)
そうすれば、こんなにもめるようにはならなかったはずですから。

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 16:53
専門外で、経験も少ないので、変なこと言ってたらすみません・・
「除脳硬直様のけいれん」っていうのは、GCSのM2、背中や首を反らすような感じがいきなり起こって、一瞬けいれん発作のように見えた、っていうことですよね?
DCショックをかけたときに体全体が筋収縮するような感じににたイメージでよいのでしょうか?

黒潮黒潮 2007/07/31 17:00 私も北海道の循環器医先生に賛成です。12時に電話を受けたNsが、「うちではみられません。一刻を争います。今すぐ救急隊を要請して、直接、救急センターにかかってください。」と対応していてもいいくらいです。
採血の結果まちも意味なし。どうせ救急センターでとりなおします。センターではエコー・採血・Xp等、ベルトコンベアー式に手順がシステム化されていますから、送り込めばいいんです。循環器科医もいつでも呼び出されるつもりで勤務しています。

ただ、この5年目の非常勤の先生がかわいそうなのは「高次施設への転送が当直医の個人的努力(電話による要請。断られることもある)に依存しており、システム化されていない。しかし、転送に手間取り不幸な結果になった場合には、当直医個人が転医義務違反の過失を負わされる。」点です。

BugsyBugsy 2007/07/31 17:18
moto-tclinic様

けいれんといえば 癲癇の間代性痙攣のように動きを繰り返すのではなくて、必ず意識は昏睡状態となり、両上肢は肘で伸展、前腕回内、手関節軽度屈曲、両下肢は各関節で伸展、足関節は底屈となります。このようなぎゅっと強張って強直した姿勢は、連続的に出現することもありますが、痛み刺激などに応じて それまで柔らかかった姿勢が今述べたような姿勢に、筋肉をスッと動かして硬直したように出現する事が多いです。
まずは特徴的な硬直であり、振戦やfibrillation、或いは不随意運動のような動きは見られません。いずれにせよ、今回主治医の方が「除脳硬直」と判断したのは、よほど特徴的な 硬直した肢位をとったんでしょうね。
憶測でしか過ぎなく申し訳ありません。

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 17:35 >Bugsy様
ご教示ありがとうございます。エントリーの元htmlには、「除脳硬直」となっていて、議論の途中から「除脳硬直様の痙攣」になってるんで、同じことを意味するのだろうとは思いながらも、専門外で気になったものですから質問させていただきました。・・私のような専門外または素人にとっては、語感がずいぶん違って聞こえるものです。
たぶん、カルテに「除脳硬直」と書いてあったんじゃないかな?

774氏774氏 2007/07/31 17:56 完全に話についていけなくなっていますが、法医の友人の「司法解剖しとけよ」と言うのはやはり正しかったようですね。というより、実はそちらのルートからも裁判に負けたり游などの情報を入手していましたので。

774氏774氏 2007/07/31 18:04 黒潮 様

 播磨がDQNといわれる理由のひとつに、「なぜ○市の患者を△市立病院が診ないといけないのか」というのがいまだに残っているんです。現場医師・看護師も経験しますが、むしろ救急隊の方が経験する事が多いようです。播磨でも内陸に行くほど顕著ですね。ですので全国に名を知られた「北播」というのが存在するわけです。今回の現場は瀬戸内沿岸に近く、そういうこともないはずなんですが・・・

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 19:41
>774氏様
平成15年時に5年めの内科医ということは、平成10年(1998)卒(国試合格)なわけですが、このころですと、ストレート入局で、教授が消化器専門なら消化器の患者ばかりのナンバー内科で育った、っていうことは考えられますでしょうか?ACLSの普及なんてほんのここ数年ですし。

YosyanYosyan 2007/07/31 19:41 基本的な疑問があって、うちの看護師にちょっと確認していました。今回のケースのような場合に外来看護記録みたいなものはあるかどうかです。一人はあると言い、もう一人はどうも記憶に薄いとの返事でした。一人は神戸でも屈指の大病院出身で、もう一人は中小規模の病院経験者です。私は恥ずかしながら見た事がありません。

あるのはあるというのはわかりましたが、加古川市民病院の救急外来にもあったのでしょうか。基本的にしっかりした病院なのであっても不思議はありませんが、どうも無かったような気配があります。判決のモニター装着の認定のところを読んで欲しいのですが、

『診療録の記録を見ても,Z医師が行った処置や本件患者の容態を記載した部分には,モニタを装着したことやモニタから得られた結果は記載されていない。診療録には,Z医師が本件患者の死亡後,家族に対し,モニタを装着していたが安定状態であった旨の説明をしたとの記載があるだけで,モニタ装着の有無及び時間を直接示す書証は見当たらない。』

診療録に看護記録を含むどうかの扱いは時により変わりますが、もし外来看護記録があれば、少なくともモニター情報の脈拍数、呼吸数ぐらいの経時記録は残されているはずです。それが無かったのでモニター装着の事実認定はできないと言う事は、外来看護記録が取られていなかった傍証になるかと考えます。

私の偏見もあるかもしれませんが、この手の訴訟では、医療側の主張でカルテに無い事の事実認定は非常に辛い印象があります。一方で原告側の記憶に頼った証言は、逆にカルテに記録が無い限り甘い印象があります。

こんな事にこだわったのは、DR.I様のところの内部情報と較べての最大の相違点である、搬送先さがしの騒ぎが訴訟の焦点としてあがっていない理由を考えたからです。もし内部情報が正しいとすれば、経過は大幅に異なるはずです。当然訴訟の焦点は様相を変えますし、被告がローカルルールなんて苦しい言い訳をあえて持ち出す必要も無いはずです。

何らかの理由で封じ込められたとすれば、カルテに無かったから「無い事」にされた可能性が出てきます。同様にではないかもしれませんが、ストレッチャー後の除脳硬直騒ぎも看護記録があれば、北海道の循環器医様が指摘された脈の確認も記録として残されていた可能性があります。あくまでも可能性ですが、原告側の戦術がカルテ記録に無い事を最大限有効に活かし、不利になりそうな事実を戦術として巧妙に封じ込んだ可能性を考えます。

もっとも憶測に過ぎないですけどね。

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 20:00
12誘導とってミリスロール点滴開始した時点で、モニター装着していない状況のほうが不自然な気がしますね・・
774氏先生によれば、循内はまだなかったようですが、内科の常勤医の先生はいらっしゃったはずですから、何らかの連絡なり上申なり行ってたのじゃないかなあ。
まさか看護師までバイトだったというわけでもないでしょうし。

774氏774氏 2007/07/31 20:13
moto 先生

 神大病院は全国に先駆けて新研修医制度前にスーパーローテを独自に始めたのですが(守殿院長時代)、平成10年にはまだありませんでした。ただし大学病院内研修では内科と外科はそれぞれナンバー内科、ナンバー外科を回ります。救急は全研修医に1ヶ月義務付けがありました。私は1年目大学でそのあと出ちゃったので、1年目に関連病院で研修を受けて2年目以後に大学に戻された研修医の扱いは分かりません。あの頃は、神大卒業生+若干の他大学出身者が神大病院で1年目の研修、そして2年間関連病院を回った後、大学院というのがメジャーでは普通でした(マイナーは規模が小さく、また別です)

774氏774氏 2007/07/31 20:31
 当時、大学内では内科の中でローテートでしたが、実は関連病院での研修の方が、専攻関係なくごっちゃに全ての疾患を勉強できると人気だったようです。そして、同期の内科医に聞いても、関連病院に出たら専門なんて関係ないよと。今とはずいぶん違うようですね。もちろん今は関連病院も大学の細分化に習って細分化され、後期研修からすでに専攻分野がありますが、あの頃は何でも(小児患者すら)診ていた最後ぐらいかと思います。他科の事なので、これ以上の事は分かりません。

 それと、救急車内に担ぎ込まれるまで意識清明であったため、常勤医に連絡は行ってなかった可能性もあります。モニターの件は確かに不思議ですね。

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 22:05
うちの近所(名古屋)で、どこでPCIしてくれるんだろう?と調べていて、各地にハートセンターが出来てきているのを知りました。
草津ハートセンターと滋賀銀行頭取との対談↓
http://cgi2.biwa.ne.jp/~keibun2/data/kake_200604_04_07.pdf
銀行が医療、とくに将来的に自由診療化しておいしそうなところ、取り込んでいく過程じゃないかなあ。
豊橋・三重にはハートセンターあるけど、名古屋にはなさそうですね〜。
関西は阪大にできるみたいです。もうできたのかな?
http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/40045.html

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/07/31 22:08
おっと、名古屋は徳州会にありました。
http://www.nagoya.tokushukai.or.jp/seiseki01.htm
しかし春日井かあ。救急車で30分で行けるかなあ・・

なんちゃって救急医なんちゃって救急医 2007/07/31 22:45 僻地外科医先生も、徐脳硬直の件で、解離の可能性を言われていますが、私もそれに同意します。 ST上昇の部位からは合います。
あるいは、プライマリが実はSAHで、心電図変化はその二次性変化に過ぎなかったかもしれません。 解剖していない以上、いろいろ言うことはできますね。

774氏774氏 2007/08/01 00:32 なんちゃって救急医 様

>解剖していない以上、いろいろ言うことはできますね。
 その通りらしくて、法医のダチは「病院で亡くなっても、主病名以外の併発症が死因なら異状死、司法解剖にまわせ」なんて極論をいってます(異状死の定義ぐらい、厚労省がはっきりして欲しいものです。福島も逮捕容疑は「異状死体届出義務違反」だそうですから)。検事も判事も法医の鑑定には頭が上がらないらしく、ありがたい話ですが、全部まわしたら法医は過労死するでしょうね(笑)。司法解剖も任意だそうですが「遺族の拒否により施行不能」と法医が書くと裁判では絶大だとか。

神経内科医神経内科医 2007/08/01 01:03 心室細動時には急速に脳全体の還流が低下しAdams stokes発作が生じます。このときには全般性けいれんがみられることがあります。強直性の発作なら除脳硬直様に見えてもおかしくありません。実際に目撃したこともあります。
胸部大動脈解離はあり得る状況です。解離の進行により急性に血圧低下を来した場合Adams stokes発作を生じてもおかしくないでしょう。
この事例では意識障害発症後ごく早期に心停止にいたっていますから、“結果を後から見れば”脳梗塞ということはほとんど考えられません。また、除脳硬直様発作発生時に血圧が保たれていたとすれば、“脳源性”の発作でしょうし、発作と同時にショック状態であれば“心源性”の発作と考えてよいでしょう。

774氏774氏 2007/08/01 06:10  無知な門戸外が勝手にまとめて申し訳ないですが、大筋は「裁判は妥当で、カルテはもっとしっかり書くべき、ただ非循環器医だしなあ・・・」というあたりでしょうか?

兵庫内科医兵庫内科医 2007/08/02 20:30 消化器専門というところはよく分かりませんが、どうやら心電図に関しては
以前とった波形と非常に似通っており、またその(以前の)時は軽快していた為
少し迷いが生じていたようです。
また、色々転送の電話をした事は間違いないとの事。
時間の経過は何が本当なのかは分かりません。
モニターは付けていたが、救急隊が担架に移動させる時に外した。
ただ、そのあとのCTの指示はマズいでしょう。
かなり慌てた事は容易に想像でき、気持ちは察せますが。
前面敗訴が妥当かどうか、やや疑問が残ります。
このような場合、看護師が後から書く記事も事実かどうか
きっちりチェックする必要があるでしょう。

REXREX 2008/09/23 11:37 重箱の隅かも知れませんが、時系列表の13:10と13:40の「心筋梗塞陰性」って、陰性なんですか?

YosyanYosyan 2008/09/23 12:34 REX様

この時系列表は元の判決文を読まれて、さらにその要旨をピックアップしたものを頂いて作成したものです。私もそこからコピペして作ったもので、元の判決文がそういう表現であったのか、要旨を作成された方の誤表記なのかは判別できません。個人的には要旨を作成してくれた方は医師ではありませんので、判決文がそういう表現であったと考えています。