新小児科医のつぶやき

2007-09-24 産科休止率一覧表

昨日は当分表は作らないと固く心に誓ったはずなのですが、性懲りもなく今日も表とマップに悪戦苦闘します。産科休止施設は勤務医開業 つれづれ日記■【産科 休止一覧 5 】 日本全国 今後の崩壊予定からで、このうち休止施設と縮小・休診予定施設を対象に一覧表を作ります。元の施設数は2005.12.1での分娩施設を調査した全国周産期医療データベースに関する実態調査の結果報告にある分娩取り扱い施設数及び常勤医師数のデータです。

ここでお断りしておかないといけないのは、診療所数については増減の情報が無く、基本的に2005.12.1情報のままです。またどこかで病院産科が増えたケースもあるかもしれませんが、これについても情報不足で不明です。さらに病院と言っても基幹病院から一人医長でホソボソまであるでしょうし、病院数と診療所数のバランスも都道府県ごとに事情が違います。それでも病院産科は一般に地域の基幹病院の性格が強いことが多く、休止の影響はかなり大きいと考えます。

まず全国の減少率ですが2005.12.1時点で1280病院あったのが、現時点で141病院の休止が確認されており、休止率は11%になります。これだけでも大きい数字ですが、地域ごとにこれも偏りがあります。平均以上の病院産科休止率は、


県名 2005.12.1時点 現在
出生数/産科医 病院数 休止施設数 休止率
山梨 139 11 5 45%
静岡 194 29 13 45%
長野 178 33 11 33%
大分 147 13 4 31%
熊本 147 20 6 30%
北海道 172 66 16 24%
奈良 210 14 3 21%
岩手 175 14 3 21%
岐阜 119 24 5 21%
栃木 153 17 3 18%
福島 175 31 5 16%
石川 175 20 3 15%
鳥取 96 7 1 14%
宮城 191 22 3 14%
兵庫 192 56 7 13%
滋賀 176 15 2 13%
千葉 221 40 5 13%
新潟 162 34 4 12%
三重 185 19 2 11%
茨城 220 27 3 11%


表の色分けは「出生数/産科医」で、150以上のもを黄色地で、180以上のもを赤地で示しています。平均以上の休止率の県は全部で20なんですが、180以上の10県のうち7県が入っています。これらの県の産科事情がより悪化したのはまず間違いないでしょう。もちろん第1位の山梨の事情が2年間で極度に悪化しているだろう事は容易に想像がつきますし、長野や北海道や岩手も深刻になっていると考えられます。これをmapにしてみます。



参考までに「出生数/産科医」の全国マップを出しておけば、



重ね合わせればどう見たって深刻です。

私は関西の人間なので東京の事は詳しいとは言えません。ただマスコミで見聞する限り、東京の危機感はかなり薄そうだと感じています。産科危機と言ってもどこかい遠い地方のお話で、花のお江戸は「関係ない」と言うところでしょうか。本当に安泰か東京に絞って考えてみます。

2年前の東京の産科医あたりの出生数は148です。この数字自体は全国平均151を下回っています。2年間の間に休止となった産科施設は4ヵ所で分娩制限になっているのも3ヶ所です。これももともと94ヶ所もありますから、十分吸収できる休止数とも見ることは出来ます。しかし東京周辺の県は全国有数の産科危機地域です。

北にはぶっちぎりで全国一である埼玉があり、東は全国2位の千葉、南は全国5位の神奈川です。西の山梨は2005.12.1時点では余力がありましたが、ここ2年の病院産科休止率全国1位で45%も減っています。さらに東京を取り囲む県のさらに外縁も厳しい状態になっています。産科医辺りの出生数が3位の茨城、6位の静岡、11位の群馬、長野も病院産科休止率33%です。

つまり東京を取り巻く県は確実に産科危機が進行しており、取り巻く県のさらに周辺も産科危機は進行しています。行き場の無い妊婦が目指すところは「花のお江戸」になります。148はあくまでも2年前の数字であり、周辺各県からの流入は厳しさを増していると誰でも考えつきます。東京が溢れたら関東は崩壊します。もう溢れていると言う話も耳にします。東京の産科パニックが表面化するのは時間の問題とも言われています。いい加減、対岸の火事ではなく、足許に火が付いている事に気が付いてほしいものです。

youriyouri 2007/09/24 13:28  連日の表・地図作り、お疲れさまです。
「たらい回し」が「受け入れ先無し」に変わる日も近いですね。

YosyanYosyan 2007/09/24 13:44 youri様

麻酔科情報をたくさん頂いて活用したいのはヤマヤマなんですが、正直なところ手が回らずに申し訳ありません。だいぶん前に産科集約化の算数をしたときに、産科医も足りなかったのですが、集約化した施設への麻酔科配置もほとんど無理に等しい事がわかり驚いた事を覚えています。

小児科、産科、麻酔科は三大絶滅危惧種と呼ばれていますが、一番進行しているのは麻酔科かもしれませんし、一方で産科、小児科より注目されていません。麻酔科危機が表面化すると産科だけではなく外科系全般が危機になるのですが、これを目に見える形で表現する方法に苦慮しています。

BugsyBugsy 2007/09/24 15:50
思わず血液が沸騰するような数字が提示されています。
ところで静岡県は休止率は45%とありますが、休止施設数は130でいいのでしょうか?

YosyanYosyan 2007/09/24 15:58 Bugsy様

申し訳ありません、打ち込みミスで13病院です。謹んで訂正させて頂きます。御指摘ありがとうございました。

メタボメタボ 2007/09/24 16:03 とっても見やすくて素晴らしいです。
一目で良く解る危機的状況って感じですかね(^^;

僻地の産科医僻地の産科医 2007/09/24 16:25 Yosyan先生!ありがとうございます(>▽<)!!!!素晴らしい地図です〜。
もうどれだけの手間がかかったことか。感謝しています。

guriguri 2007/09/24 16:35 >Yosyan先生、素晴らしいです。こういう統計のまとめ方はだれもやっていないと思います。paperにしてどこかに投稿しても良いんじゃないでしょうか。

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/09/24 17:16
いや、医者はすぐ学術雑誌に投稿したがりますが、こういうのは、もう少しまとめて掘り下げて、雑誌に売り込んだほうがいいですよ。
国会議員とかの情報源は、意外と、新幹線の中で読む週刊誌の類です。グリーン車においてある、なんていったっけな?ああいう雑誌に持ち込むのがいちばん社会的影響力及ぼす可能性あります。

BugsyBugsy 2007/09/24 17:19
こちらこそ失礼しました。
45%という数字には度肝を抜かれますね。もっと怖いのは病院の産科が新たに増えた、或いは再開したという話はついぞ聞こえてこない点にあります。埼玉県草加市民病院が唯一でしょうかね。
仮に2年後にもう一度45%の減少になれば、2005年度のおよそ4分の1になっちまうじゃないですか。
茨城県と千葉県は利根川が境界になります。茨城県の南部は洒落にならないくらい産科が壊滅していて、利根川を渡って成田や印旛沼の病院へ妊婦がよく来るそうです。
http://obgy.typepad.jp/blog/2007/09/post_a133.html
>県産婦人科医会によると、県下の44市町村中、半数の22市町村で分娩施設がゼロ。1995年に97(病院37、診療所60)あった分娩施設は、昨年4月時点で50施設(病院24、診療所26)に半減した。お産を扱う産婦人科医も全体の65%にとどまっている。県内で医学部を持つ大学も筑波大学だけだ。

大学の医師引き揚げや医師退職などで、水戸協同病院(水戸市)、水戸総合病院(ひたちなか市)、水戸医療センター(茨木町)、県立中央病院(笠間市)、筑西市民病院(筑西市)、古河赤十字病院(古河市)など総合病院の産科閉鎖・休診が相次ぎ、周産期母子医療センターと単科病院・診療所への二極化が進んでいる。」とのことです。

これって県庁所在地の話です。

http://mytown.asahi.com/chiba/news.php?k_id=12000000709150004
一方で千葉県柏市とはほとんど東京と埼玉寄りの近郊ベッドタウンですが、妊婦が「複数回要請した医療機関もあり、拒否された回数は、延べ42回。救急車到着から約2時間20分後、24カ所43回目の要請で茨城県取手市の病院に運ぶことができた。」となるわけです。

ことさらに関東地方の状態を誇張するつもりはありません。
ただし いつ奈良県のような悲惨な出来事がおこってもおかしくないと感じています。
東京都でもちょっとしたきっかけで「たらい回し」とやらが起きても不思議ではないでしょう。産科医のみなさんの超人的な努力で首の皮一枚がつながっているのでしょう。死亡でもしようもんなら 火のついたような騒ぎになることは確実です。

moto-tclinicmoto-tclinic 2007/09/24 19:01
ちょっと思いついて、別の日本地図作ってみました。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/jitsuryoku/0603_2/list01.htm
の妊娠総数を、県別に合計したものです。
http://megalodon.jp/?url=http://www.vipper.org/vip626083.png&date=20070924185536
まあ、あたりまえですが、都市部の数が多いですね。。
産科医の逃散先需要マップとみれば、やはり、都市部の非お産型診療になるんでしょうね。

Dr. IDr. I 2007/09/24 20:05
連日の地図作り、お疲れ様です。
もう、だいぶ慣れたかなw

関東周辺がやばそうだ、ってのはうすうす感じてはいたのですが。
実際に地図にすると、よりはっきりしますね。

これ、どっかのマスコミで報道しないかなー。

中間管理職中間管理職 2007/09/24 22:13 引用ありがとうございます。遅くなってすみません。当直明けにまたコール。
だんだん厳しくなってきました(苦笑)。
またよろしくお願いいたします。

中間管理職中間管理職 2007/09/24 22:17
追記です。
みなさま、休止、分娩制限の病院がありましたら、ご連絡下さい。
なんだかブログの紹介みたいで申し訳ありませんが(笑)、一目で分かる基礎データになるんじゃないかと思います。
精度を上げられたら、さらに信憑性が増しますので、よろしくお願いいたします。
「勤務医 開業つれづれ日記」
■【産科 休止一覧 5 】 日本全国 今後の崩壊予定
http://ameblo.jp/med/entry-10046000797.html
コメント欄に情報お願いいたします。

koumekoume 2007/09/24 23:07 Dr.I先生のところで見たのですが、私が住んでいる石川県は一人産科の割合が全国一だそうでびっくり。そして休止率も高いんですね。本当にこの地図はわかりやすいです。

NHKには重大な問題を重大であるがゆえに報道しない癖がある、と言った人がいます。関東の産科事情を報道しないのはNHKに限りませんが、政府が何か報道にストップでもかけているんじゃないかと思えるほど凄い状況ですね。

tadano-rytadano-ry 2007/09/25 02:34 金曜の朝日の夕刊に載っていた記事です。どこを探しても貼っていないようなので(伊関先生のところにもありませんでした。asahi.comは既に削除orz)、貼っておきます。

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救急患者拒否が急増 都市部の病院 堺7倍、神戸2.6倍

 救急搬送された患者が医療機関から受け入れを拒否されるケースが、この数年間で都市部を中心に激増していることがわかった。深刻化する医師不足などを背景に、調査データがある主な自治体だけを見ても、堺市周辺や兵庫県の尼崎、西宮両市などで数倍にのぼっている。奈良県橿原市の妊婦が相次いで受け入れを拒否された末、死産した問題などで浮かび上がった救急医療体制の脆弱さが、改めて鮮明になった。(八田智代、島脇健史、和田充)

--医師不足、周囲から搬送--

 堺市高石市消防組合の場合、5回以上の拒否件数は04年に65件だったが、06年は4、76件と7倍以上に急増した。10回以上の拒否になると、3件から58件と約20倍にも達する。
 救急搬送にかかった時間は、全国平均では02年の28.8分から06年の29.8分(速報値)と1分増なのに、同組合の管内は20.5分から24.57分と4分以上延びた。担当者は「拒否惑由の大半はベッドの満床。やむを得ず大阪市内に搬送することも多い」と打ち明ける。
 こうした傾向は兵庫県内でも顕著だ。06年の実績を04年と比べると、5回以上の拒否は伊丹市で4.3倍、尼崎市と西宮市で3.6倍、神戸市で2.6倍。尼崎市では、10回以上だと3件から48件に膨れ上がる。今年に入っても状況の悪化は続き、神戸市の場合、5回以上の拒否は1〜8月で312件。すでに昨年1年間(176件)を大幅に上回った。
 消防庁によると、全国の救急搬送人員は97年の約334万人が06年には約489万人(速報値)に増えた。核家族化や高齢世帯の増加に伴い、どの医療機関も救急愚者の対応に追われているが、より深刻なのが医療機関のスタッフ不足。産科と同様、24時間態勢を強いられる救急医寮が研修医らに敬遠され、人手が足りなくなった大学の医局が医師を次々に引き揚げている現状がある。
 尼崎市消防局は「大学病院でも専門の医師がいない、との理由で断られる」。神戸市消防局の担当者は「医師が少ない周辺都市からの搬入が多く、市内の患者が拒否されてしまう」と嘆く。
 関東地方も例外ではない。川崎市でも04年に5回以上の拒否が679件だったが、06年は1269件に増えた。

--「自治体連携へ スタッフ必要」--

 通報から収容までの平均搬送時間が32.6分(05年)と全国最低レベルの奈良県。5回以上の拒否で比較すると、02年度の683件が06年度は1778件と急増している。死産した妊婦を搬送した中和広域消防組合(橿原市)では、10回以上断られたケースが今年1〜8月ですでに127件あり、昨年1年間(129件)に迫る。
 県内の公立病院に勤務する救急医は「訴訟リスクなどを考え、処置が難しい患者の受け入れを拒む病院が増えている」と話し、一部の医療機関に救急患者が集中する実情を懸念する。一方で、大阪府内の民間病院幹部は「健康保険に入っていない救急患者も多く、治療費を払ってもらえない例も目立つ。できることなら断りたい気持ちもある」と漏らす。
消防側の体制改善を求める声もある。杉本侃・大阪大名誉教授(救急医学)は「町村単位で消防本部がある場合、隣の自治体の病院に搬送しなければならない時に、受け入れ可能なのか判断できなかったり、コミュニケーションがうまく取れなかったりするケースが見られる。医療機関のネットワーク作りと並行して、自治体同士が連携して広域をカバーする搬送依頼の専門スタッフを置く必要がある」と指摘する。

(9月21日 朝日新聞 大阪夕刊)

tadano-rytadano-ry 2007/09/25 02:40
訂正です。OCRを使ったので…

堺市高石市消防組合の場合、5回以上の拒否件数は04年に65件だったが、06年は
4、76件と7倍以上に急増した。

→476件と7倍以上に急増した。

tadano-rytadano-ry 2007/09/25 02:54 ついでにもう一つです。

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奈良・妊婦死産 --県の防止策案 医師確保課題--

 奈良県橿原市の妊婦が10ヵ所以上の医療機関に受け入れを断られて死産した問題で、県が約10項目にのぼる再発防止策の原案をまとめたことがわかった。県が設置した「妊婦救急搬送事案調査委員会」(委員長・荒井正吾知事)に21日午後、提案する。軽症患者を受け入れる1次救急病院に県立2病院を指定することなどが主な柱だが、担当医師の確保ができていないなど対策が不十分で、お産の現場からは早くも不満の声が上がっている。

 開係者によると、原案には、来年5月にリスクの高い妊婦に対応できる「総合周産期母子医療センター」を暫定的に開設することを盛り込んだほか、二つの改善策が柱。

 まず、県内では1次救急病院が事実上機能しておらず、本来重篤な妊婦を受け入れる県立医大に多くの患者が集中している状態を解消するため、県北部は県立奈良病院、県中南部は県立医大を1次救急病院に指定し、開業医らに交代で病院に応援に来てもらうことでスタッフを確保する。さらに、県内のどの病院が妊婦の受け入れが可能かを示す県のシステムが機能しなかったことなどを踏まえ、県立医大に妊婦の受け入れ先を決める専任職員を配置する。

 いずれの経費も今年度の補正予算に計上する方針。ただ、1次救急病院に来てもらう予定の開業医らの確保について、ある県幹部は「地元の医師会などに申し入れをしておらず、医師の確保はできていない」、別の県関係者も「看護師をどうするかなど問題が山積みだ」と漏らす。

 妊婦の受け入れ病院を決める専任職員について、県は今月中にも事務職員1人を配置する意向だが、県内の産科医は「産科医のOBなど、専門知識がなければ妊婦の容体を正確に判断できないのではないか」と懸念を示している。(島脇健史、石田貴子)

youriyouri 2007/09/25 05:46 Yosyan先生

 レス有難うございます。最近、同時多発緊急攻撃が頻発しているので、かなり鬱が入っていました。
 実感でも伝聞でも、明らかに激務になってきており、基幹病院の麻酔科医は減ってきていると思うのですが、その論拠となるデータを見つけられずにいます。
 Wikiにもメッセージを送りましたので、またお読みいただけると嬉しいです。