新小児科医のつぶやき

2007-11-28 病院経営の真の実態はどっちだ

財政制度等審議会 財政制度分科会 財政構造改革部会に提出された財務省主計局の資料からのお話です。資料の43ページの表をまず引用します。



この表は「一般病院の収支の状況(2007年6月医療経済実態調査:10月26日発表)」として出されています。この表の解説は次の通りです。

  • 一般病院の収支差額比率をみると、稼働日数の違い(※)を勘案すれば、

    • 一般病院(国公立を除く)は概ね前回調査と同様、その6割を占める医療法人は改善。
    • 国立病院も前回調査とほぼ同様であるが、公立病院は悪化しており、経営効率化等の公立病院改革が急務となっていると考えられる。

      ※稼働日数の減少(平日1日が土曜日に振替)により、医療費総額(≒医業収入)は▲1.2%程度の影響がある見込み。一方、医業費用の中には稼働日数が減少しても大きく変動しないもの(給与費・減価償却費)が多い。

  • なお、収支差額比率が悪化している公立病院を中心に給与費比率の上昇幅が大きいことに留意する必要。

財務省の主張は、

  1. 医療法人の経営は経営は改善、国立病院は横ばい、公立病院のみ悪化
  2. 公立病院は経営悪化にも関わらず給与費(人件費)が上昇している

この二つを指摘し、医療費削減の余地は十分あると結論付けています。それにしても医療は経営努力をして黒字を出せば目の仇にされる職業である事がよくわかります。どことも放漫経営で赤字なら医療費は増額されそうな主張である事がおもしろいところです。

これに対する反論のデータは無いかと探していたら、中央社会保険医療協議会 調査実施小委員会(第23回) 議事次第日本病院団体協議会提出資料がありました。

実態調査と提出資料ではサンプルの分類に若干の相違があるのですが、


開設主体 医療経済実態調査 日本病院団体協議会
国立 33 130
公立 154 404
公的 59 292
医療法人 609 1602
社会保険関係法人 18
その他 102 317
個人 63 69
合計 1038 2814


サンプル数が多いほうが必ずしも実態を正確に反映しているとは言えないかもしれませんが、提出資料もそれなりに信憑性が置ける調査であるぐらいには考えても良いかと考えます。

提出資料には開設主体別の赤字病院と黒字病院の比率が示されており、平成17年度から平成18年度でどう推移したかが書かれています。


開設主体 平成17年度赤字率 平成18年度赤字率 年間赤字増加
国立 66.14 69.29 3.15
公立 89.28 92.73 3.45
公的 45.89 58.90 13.01
医療法人 19.68 25.33 5.65
個人 14.93 21.21 6.28
その他 42.19 47.67 5.48


公立病院の赤字の絶対数は圧倒的ですが、赤字の増加率は国立病院と大差はありません。一方で財務省調査で改善しているとされた医療法人は赤字病院が国公立の2倍近い勢いで増加し、医療法人では1/4、個人病院でも1/5は赤字となっています。全体では37.11%から43.02%と5.91%も赤字病院が増加しています。

もう少し詳しい医療収入の増減ですが、これは調査の概要から引用します。

    平成17年度と比較した増減率は、「-1%以上」が51.14%であった。中小規模には「-10%以上」の病院が多かった。病床種別では、医療療養病床において「-1%以上」が72.5%、「-10%以上」が25.42%と著しく高率であった。

ここから分かる事は病院でも大規模病院は比較的経営は安定しているところが多いが、中小規模の病院の経営悪化は深刻化し、二極分化していると考えられます。また療養病床の経営が非常に悪化しているのもわかります。

もう一つ財務省が指摘している公立病院の経営悪化の要因である

    収支差額比率が悪化している公立病院を中心に給与費比率の上昇幅が大きいことに留意する必要

財務省の主張には原因分析が記載されていないので、これだけ読むと公立病院の放漫経営が経営悪化の原因であると受け取れそうですが、提出資料には人件費高騰の原因が記載されています。

  • 平成15年末と比較した医師数は、31.88%の病院で減少し、平成17年度末と比較した看護師数は、33.12%の病院で減少していた。
  • 平成18年度中の医師募集は72.51%の病院が行い、そのうち「採用予定数より少なかった」50.28%、「全く採用できなかった」25.60%と、医師の採用は極めて困難な状況であった。
  • 看護師募集は90.08%の病院が行ない、そのうち「採用予定数より少なかった」64.36%、「全く採用できなかった」2.41%と、看護師の採用も極めて困難な状況であった。

病院から医師も看護師も減り続け、補充を行なおうとしても集まらない状況が示されています。これは地方公立病院にいてより深刻であるのは間違い無く、給与費が上ったのは、

  • 募集のための待遇改善
  • 現存職員確保のための待遇改善

大都市の大病院と給与待遇が同じでは競争にならず、ましてや低いなんて事になれば話になりません。売り手市場で人材を確保するには待遇改善しかなく、待遇改善は現存職員の流出予防対策になっていると言う事です。病院の医師や看護師の定員確保は非常に厳しいものがあり、定員を割り込むとペナルティが下されます。ペナルティは病院の死命を制しますから、サバイバルのために給与費を上げている状況がよくわかります。つまりドカ貧を避けるために出血覚悟のジリ貧対策を行っていると言う事です。

実態調査と配布資料のどちらがより「実態」をあらわしているかは根拠をもって断言できませんが、私は配布資料の方がより実態を反映しているように感じます。それでも政府が使う資料は実態調査でしょう。医師不足を認め始めても、「医師は足りている」の医師の需給に関する検討会報告書のデータを基に対策を考えるように。

Med_LawMed_Law 2007/11/28 09:42
今、気付いたのですが、Yosyan先生のブログは大前研一氏と並ぶところまで引き上げられているのですね。

凄いですぅ!!!

nutyycellistnutyycellist 2007/11/28 11:19 サンプル数が、病院団体協議会のデータでも32%、財務省のそれは、そのまた1/3程度ですね。前者は一応全病院にアンケート依頼をだしていますが、後者は特に財務省データでは、どのような母集団から、このわずかな数のデータを得たのか、全体を現しているのか、大きな疑義が残ります。

nutyycellistnutyycellist 2007/11/28 11:21 訂正です;

後者は特に財務省データでは>>特に財務省データでは

physicianphysician 2007/11/28 12:07 地方公立病院での人件費高騰は、『募集のための待遇改善』『現存職員確保のための待遇改善』が原因という分析は本当に正しいのでしょうか?
『給与費比率の上昇幅が大きい』というのは比率の問題なので、他の支出、収入が減って、そこだけ残ったということはないのでしょうか?

YosyanYosyan 2007/11/28 12:14 nutyycellist様

診療所分の収支差分布はデータとして実態調査は挙げていましたが、病院分は私の見る限りありません。病院団体協議会のデータと実態調査のデータから考えられるのは、診療所の収支差分布と同様かそれ以上の分布の偏りがある可能性を考えています。それこそ統計として表に出せないぐらいにです。

病院団体協議会のデータは示唆的なところがあり、大規模病院で収支が改善しているところが確実にあるようです。7:1の影響も考慮してよいでしょう。ここのプラスと、中小病院のマイナスのトータルがデータの取り様により、実態調査のへ金地として反映されている可能性を考えます。

YosyanYosyan 2007/11/28 12:31 physician様

そうかもしれません。収入が減ってもそう簡単に人件費は下がりませんから、相対的に増加した可能性はあります。検証するには前回調査分も必要ですから、給与の額が上ったかどうかの結論はやや勇み足だったかもしれません。

ただ、収入が減った分の相対的なものであったとしても、給与削減(給与比率の引き下げ)により経営改善をせよなら完全に机上の空論です。数字の上では辻褄が合うかもしれませんが、医師も看護師もいなくなります。求人状況の厳しさは病院団体協議会のデータは信じても良いかと考えます。

tadano-rytadano-ry 2007/11/28 13:05
nutyycellist様

 統計学の立場から言えば、全体の1%くらいの標本集団であっても母集団をうまく反映させることは十分可能です。実際には0.1%とか0.01%の抽出で議論することも稀ではありません。むしろ全体にアンケート依頼を出して低い回収率にしてしまうより、きっちりと層化抽出してある程度少ない標本にし、アンケート郵送でなく人を派遣し聞き取り調査にするなどで回収率を上げた方が信頼性が高くなります。だから財務省がどのような標本選別を行い、調査方法がどうであったかの方が重要であると私は考えますので、数だけを見て信頼性を議論するのは難しいところです。

 信頼性のある標本の確保は統計実務の最大のツボでして、これを実現するためにみんな色々工夫することになります。ところが数学科の統計学者は式やプログラムをいじくるのが好きな方が多く、私のいた研究室のようにフィールドワーク重視の研究をしているところは少ないのが現状です。むしろ医学部の公衆衛生の方がいろんなノウハウを持っておられます。

nuttycellistnuttycellist 2007/11/28 13:19 皆様、ご教示ありがとうございます。

私の疑問も、財務省がデータを得るときに、標本の抽出過程にバイアスがかかっていないのかということでした。

以前、Yosyan様も仰っておられたと思いますが、中医協から、経営状態のアンケート依頼が私のところにも来たことがあります。アンケート内容が詳細を極めるもので、私の手には負えず、お断りしたことがありました。会計事務所にお願いすることを念頭においてのアンケートだったのかもしれませんが、それには当然エキストラの出費が必要になるので、そこまでして協力する気にはなれませんでした。こうしたことだけでも、結構なバイアスになることでしょう。

総医療費は、国際比較せず、その公的部分だけは国際比較を持ち出すなど、きわめて恣意的な提示を、財務省はやっていると思います。

YosyanYosyan 2007/11/28 13:22 tadano-ry様

統計調査の基本は御指摘の通りで、数だけで信憑性を評価できません。実態調査の問題点はどういう基準でサンプルを選んだかが全く不明である事です。また当然の事ながら、調査依頼を行なった医療機関がすべて協力したのでもありません。実態調査のサンプル抽出方が統計学的に相応しいものであったとしても、未回収発生によるバイアスまで考慮しているかどうかは不明です。それは病院団体協議会も同様の欠点があると考えます。

バイアスの一つとしてありうるのが、赤字病院の中には、こういう調査であっても赤字経営の実態を公表したくないところもあると考えます。またかなりの赤字が累積していればかなり複雑な会計処理を行い、その事により実態としての赤字額を小さくしているところがあるとも考えています。会計処理もまた様々な手法、ときに違法まがいの事も横行しますし、そういう事は赤字のところの方が多いと考えています。

黒字のところもまた同様の操作を施す事があるので、それで相殺と見れないこともありませんが、そこから先は私ではなんとも言えません。

僻地外科医僻地外科医 2007/11/28 14:26  確保の問題だけじゃなく、公的病院ではそう簡単に給与を増減出来ないという問題もありますね。民間の小病院なら「収入が減ったで給与を下げます」と言うこともあるいは可能かも知れませんが(現実的には論外ですけど)、公的病院における給与は条例によって決められています。仮に実際に給与を下げようとしても、特別不適切な行為もない公務員の給与を下げるためには条例改正しかありません。そんなものの審議を1年やそこらで出来ると財務省では考えてるんですかね?また、給与の高いベテランの職員をリストラしようとしても、よほど問題でも起こさない限りクビに出来るものじゃないです。

 2005年度前期と2007年度前期の比較をしてますが、平成18年度改正の内容が各病院に公示されたのは18年3月も半ば過ぎのことでした。これから各病院が対策を取ったとしても給与に手を付けるのは一番最後の話で(平成18年度改正は人集めが診療報酬を大きく左右するから)、それ以外の支出をいかに減らすかに各病院は頭を悩ましたのです。当然人件費率は上昇するはずでしょう。

 そもそもこのような無茶な改訂を主導した厚労省・財務省が「人件費率の上昇があるから公立病院は放漫経営だ」なんて言う論調は盗っ人猛々しいというものでしょう。

ssd666ssd666 2007/11/28 15:56 給与比率って、結局、医師不足で、医業収入が減ると鰻登りに上昇しますよ。
なんで、あんな頭悪いベンチマークを使うのか、理解できません。

僻地外科医僻地外科医 2007/11/28 16:13  だいたい、こういうデータ出すならそもそも病床規模をきちんと分けて考えないと無意味ですよ。18年度改正は20〜100床規模の小規模自治体病院をねらい打ちにしたような改正で(特別入院基本料が端的な例)、国立病院が公立病院に比べて人件費率の上昇が少ないのも、もともと大規模病院が主体で入院基本料改正の影響を受ける率が低かったからですし。小規模病院ではいまだに特別入院基本料のところもありますからね。

麻酔科医麻酔科医 2007/11/28 17:07 http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20071128AT3S2800J28112007.html
薬価約1%引き下げへ・08年度改定で厚労省方針<見出しはあやまりで
薬剤費は4.5%、医療費ベースに換算すると1%程度の引き下げ
中医協では「本体部分」について「さらなるマイナス改定を行う状況にはない」とする意見書をまとめる。近く舛添要一厚労相に提出する予定。らしいです。
増やすという考えはないみたいですね。

BugsyBugsy 2007/11/28 17:44 医療収支差額比率は国立病院が公立病院よりも良好で しかも給与費比率が低いという統計に生暖かく感じてます。
かくいうオイラは国立病院に医員として勤務していたからです。自分よりもかなり年上の医員の先生方が毎年年度末になると解雇されて翌年度再度雇用されるのを見ていました。おかげで給与はちっとも上がらず、夏の賞与もスズメの涙でしたねえ。
効率化とは医者を奴隷扱いすることなんでしょねえ。
今はどうなっているのかわかりませんが、国立病院に働いている医官としてのプライドと言われても限度はあるでしょうねえ。

TMTM 2007/11/28 17:48 physician様
先生の読み通り病院の医業収入が減少し給与費の割合が上がっているようです.
給与費自体も減少していますね.
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/10/dl/s1031-3b.pdf

YosyanYosyan 2007/11/28 18:22 TM様

そうなると公立病院は給与費を下げても財務省に噛み付かれるほど収入が減っている事になります。今回使った資料は基礎知識無しで読むと、病院の収支差は総体的に安泰、ただ公立病院のみが経営努力が足りないと解釈でき、○をいれてまで強調している給与比率が公立病院改革の焦点になります。

これをそのまま財政審議会が「その通り」と認めてしまえば、さらに公立病院の給与は下がり・・・これさえも病院減らしの政策で織り込み済みなんでしょうか。呉越同舟の感じですが、病院削減、病床削減に通じるので、厚労省も「痛み」を伴う改革として了承ですかね。

tadano-rytadano-ry 2007/11/28 18:22
 私のつたない経験から話をします。私は数学科で統計学を専攻し卒業後、日本でもそれなりに有名な経営コンサルティング会社に籍を置いていました。なんとか中小企業診断士の資格も取り、再受験のため辞職するときには、それほど経営状況の厳しくない企業のコンサルティングを任されるようになっていました。

 そこでの経験で言えることですが、民間企業であっても人件費はそう簡単に減らせるものではありません。大企業では労組の力も強いですし、中小企業は社員全員が家族のような企業も多いので、人件費の削減はなかなか経営者の同意が得られないのが普通です。ですから、それこそ業務の効率化を図って他の経費から減らしていき、他に削るところがなくなってようやく人件費にたどり着いた例が多かったと思います。こんな若造の案に何日を迷われ、涙を流しながら同意された経営者の方を何人も見てきました。労組や社員の方にも納得してもらえるまで何度も面談しましたし、最後は「確かに苦しいけどみんな頑張ろう」と言って頂きひたすら恐縮することもありました。

 派遣という新しい業態が定着した昨今では少し様相が異なりますが、当時の同僚に聞けば、現場は私がいたころと今もそんなに変わらないようです。

 つまり人件比率の増加は民間であっても経営が苦しくなって一杯一杯である証左である(家計のエンゲル係数みたいなものです)のに、それを淡々と「経営改善の余地あり」と切って捨てる財務省の姿勢には大きな疑問を感じます。泣いて馬謖を斬ると言うと大袈裟ですが、もう少し医師の側にも配慮した書き方があるように思います。

ssd666ssd666 2007/11/28 20:31 こういっちゃ失礼なんですが、病院の経営学って、企業のマネジメントという分野全体でみたら、相当、特殊な世界なんじゃないですかね。
いや医療崩壊マニアとして、崩壊のメカニズムを理解しようと、病院経営関係の経済学を理解しようと勉強するじゃないですか。
はっきりいって病院経営なんて、他人事なので、マルクス経済学や、ミクロ経済学などの他の経済学分野や、趣味の軍事学などと同様の教養でしかありません。
その上で、自治体病院の経営に関する論説はもうさっぱり理解できない。
いや難しくて、ではなくて、まったく非論理的で。
総務省系の資料も読んでみましたが、果たして、彼らは本当にこの内容を信じているのか、それとも結論ありきで、欺瞞情報だらけの作文をしているだけなのかわかりません。(嘘。後者だと思ってる)
ま、一番の問題は、真に受けてる人間のクオリティの方なんですけどね。

Dr. IDr. I 2007/11/28 21:50
出たー!
都合の良い時だけ、比で出す、常套手段ですね。
財務省の。

単純計算で。
診療報酬が3.16%削減されているから。
分母が3%減って。
そいで、だいたい公立病院なんか、医師の数が減っていますから。
それに伴って、患者も減って、医業収入も減っていますから。
合わせたら、収入は5%位減っていますよね。

そしたら、比はで見たら、相対的に比が5%位上がるのは当たり前だと思いますが。

nanashinanashi 2007/11/28 22:10 http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071126/141531/?P=3
>ワイドショー型複合不況で沈む日本経済
>テレビが業界の息の根を止め消費者を排除する
>レビ自体が捏造と偽装を行い、虚偽の報道をしてきたことも明らかになりました。
>ところがテレビだけは不問に付されます。そうして、正義の味方のテレビに後押し
>されて、思いっきり厳しい法律やルールができ業界の息の根が止まっても、切実に
>利用したい消費者が排除されても、今度は誰も責任は取らないのです。

tadano-rytadano-ry 2007/11/29 04:43
Dr.I様

>都合の良い時だけ、比で出す、常套手段

 ご指摘の通りです。一般論としてですが、統計学の世界では比だけで表を作ることはタブーとされていまして、可能な限り数値A,数値B,A/B比の3点を同じ表に表記するよう指導されます。


ssd666様

>病院の経営学って、企業のマネジメントという分野全体でみたら、相当、特殊な世界

 収入に保険診療による国家統制が入っていること、病床数など一部の設備投資に制限がかけられていること、構成員に専門職が多いことなど、確かに色々と特殊な面がありますが、B/SやP/Lといった基本的な財務諸表は一応作成できるので、そういう特殊性を踏まえ一般的な経営学の分析手法で議論していくことは十分可能であると私は思っています。

 ところが病院経営の本や資料を見ると、そういった一般的な経営学上の議論を忌避しようとしているものがほとんどです。こういう姿勢が病院経営学を複雑なものと思わせているのだと私は考えています。

 その理由は色々考えられますが、例えば過去数年分のB/SやP/Lを前面に出せば企業の経理レベルを扱っている人なら簡単に病院経営の不健全性の理由が看破でき、国の医療行政に対する失政に多くの国民が気づくことになるから、というのはなかなか魅力的な仮説です。学者にしても病院経営は複雑なものだと世間に認知させておけば自分たちの存在価値を高めることが出来ます。自分たちの研究が如何に価値の高いものかを認知させるのも学者の大切な仕事の一つです。

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