新小児科医のつぶやき

2008-04-15 神奈川帝王切開賠償訴訟・二審判決文 後編

前編は胎児ジストレスの診断からの帝王切開手術開始までの事実認定・注意責任義務を、ほぼ一審通り踏襲したところまで解説しました。「30分ルール」に含みを持たせるぐらいの変化はありましたが、そこまでの事実認定なら一審と同様の判決が下っても不思議ありません。なんと言っても、もともと実質審理無しの二審だからです。しかし結果は賠償額を約4割削減しています。どこが4割削減の根拠になったかですが、根拠になった一審判決文部分をまず引用します。

  1. 病理組織診断の結果では、確かに胎盤に臍帯炎があり血管内皮肥厚により血管腔が狭窄していたことが認められるが、妊娠経過中に原告妊婦及び胎児に特段の異常は認められておらず、本件全証拠によっても胎盤異常の原因及び発生時期等に関する具体的な事実は不明であり、分娩前から胎盤に異常が発生していたと確定的に認めることは困難である。
  2. 胎盤異常の原因・発生時期は不明であって、胎児期に原告児に中枢神経異常があったことを認めるに足りる証拠はないし、原告児が分娩時に母体内で低酸素状態に置かれていた事は認定したとおりである。

胎盤の病理学的感染所見は無関係と切って捨てられた部分です。ところが二審ではここが新たな焦点になります。焦点になった理由はこの点に関する新たな意見書を病院が提出したからです。意見書が主張したのは、

 そもそも, 胎児は, 被控訴入母親の入院当初から, 子宮内細菌感染と臍帯胎盤の血管病変に起因して低酸素状態やアシドーシス状態にあったたものであり, 本件においては, それによって胎児に重篤な後遺障害(低酸素性虚血性脳症による痙性四肢麻痺) が発生したものであって, 控訴人病院医師の帝王切開の開始の遅れ等によって胎児に上記のような重篤な後遺障害が生じるに至ったものではない.

上記の主張は一審で切り捨てられた病理所見において十分証明できるとしたものです。これが二審の判断に大きな影響をもたらします。もたらすぐらいなら審理を行なっても良さそうなものですが、しつこいようですが実質審理は行なわれておりません。

判決文は延々と意見書からの引用の列挙がされており、これをここでも引用するのは長くなって困るのですが、判決文が直接読んでもらえないので我慢して引用していきます。

まず意見書は、

胎盤組織報告書は,著名な臍帯炎と絨毛血管炎の存在を示している。図1に示すように3度の臍帯炎とは, 胎児血から発した炎症細胞が臍帯血管の壁を越えて周辺の組織にまで浸潤した状態を意味している。すなわちこの所見は胎児白身の体内で炎症が存在していることの証拠である. 絨毛血管についても, これは絨毛内に存在する胎児側の血管を意味しており, 絨毛血管炎の存在は, 胎児側に炎症が存在していたことを明確に示すものである

病理はお世辞にも得意と言えないので、私では「なんとなく分かる」程度なんですが、わかる範囲で補足しておきます。胎児は子宮内で胎盤から伸びる臍帯でつながっています。胎盤は子宮内に付着しているのですが、胎盤内には絨毛血管と呼ばれる血管が豊富に存在し、この働きによって母体から栄養補給、ガス交換(呼吸)を行なっています。

胎盤内の絨毛血管に炎症があり、胎盤と胎児をつなぐ臍帯にも炎症があるという事は胎児に炎症が及んでいると事を示す所見であり、臍帯炎が「3度」である事がこれを証明していると解釈して良さそうです。この「3度」ですが、医学的表現では慣習的に症状の程度を4段階で分類する事が多く、「かなり強い」と解釈すれば良いかと思います。間違っていたら訂正お願いします。

本件の胎盤では, 臍動脈・絨毛血管・臍静脈のすべてに3度の亜急性ないし慢性の炎症を認めており, 臍帯から胎盤に入りまた臍帯にもどるすべての血管で中等度の炎症が存在していたことが明瞭に示されている。

これは上記所見のさらに解説で、胎児と胎盤に関連する

    臍動脈 → 絨毛血管 → 臍静脈

これのすべてに炎症所見すなわち感染所見があり胎児に感染があった事は病理所見として間違いないと進みます。

本件では生後72時間以内の児の血中IgMが38であるので, 子宮内感染は存在したことになる

新生児の感染でのIgMの基準は感染から5日後で20mg/dl以上であり、72時間以内で38mg/dlなら当然ことですが子宮内で感染を起していた証拠になります。病理所見とIgM所見を合わせて、

胎盤臍帯の血管病変が亜急性ないし慢性の変化であったという所見こそ, 「分娩前から胎盤に異常が発生していた」と考えることに極めて高い蓋然性を与えるものである

分娩前から感染があればどうなるかですが、

本件胎児は子宮内感染発症していること, そしてその臍帯胎盤の血管には分娩前から存在していた広汎な炎症所見が認められていることが明瞭に示されており, また臍帯胎盤の血管病変は児の神経学的後遺症と高率に合併するという報告があることから, 本件の児の神経学的予後と胎盤病変の存在が関係する合理的な根拠が存在すると考えられ

つまりと力むほどの事ではないですが、子宮内感染が患児の重篤な後遺障害に大きな影響を間違い無く及ぼしていると結論付けています。これは日本産婦人科学会誌からの引用ですが、

一般に,子宮内細菌感染症は絨毛羊膜炎, 羊水感染, 臍帯炎一胎児感染の三つに分類される. 絨毛羊膜炎は絨毛から羊膜にかけて細菌が侵入した状態で, 炎症反応の主体は母体である. 羊水感染になると細菌は羊水内にまで侵入し, 炎症反応の主体は母体のみならず胎児も含まれる. 臍帯炎にまで進行すると炎症反応の主体は胎児となる

これもまた臍帯炎まで進行すると感染の主体は胎児であるとの記述です。さらにさらにアメリカ産婦人科医会・アメリカ小児科学会編「脳性麻痺と新生児脳症」も引用し、

  • 子宮内感染症および炎症性サイトカインの分泌は, 未熟児および正期産児の双方において脳性麻癌発症のリスク増大と関連している。
  • 「特定のFHR パターンは子宮胎盤機能不全や臍帯圧迫と関連している. どのような原因による場合でも急性で深刻な低酸索症は遷延性徐脈をもたらす。どのような原因による場合でも高度な胎児低酸素症は新生児脳症をもたらすことがある

実は判決文に引用されている文献は網羅しきれていないのですが、これらの事から、

 上記によれば, 本件において, 胎児(被控訴入患児) は被控訴人妊婦の入院当初から子宮内細菌感染と臍帯胎盤の血管病変に起因して相当程度の低酸素状態及びアシドーシス状態にあったものと認めざるを得ないものである。

 そして, そうである以上は, 上記の状態は, 控訴入の前記アの「本件分娩監視装置の胎児心拍パターン(乙A6) の検討から, 胎児(被控訴人患児) が平成9年2月24日午後7時30分の本件分娩監視装置の装着時から既に低酸素状熊とアシドーシス状態にあったことが推測できる。」との主張について判断するまでもなく,平成9年2月24日の本件分娩監視装置の装着時においても継続していたものと推認することができる。

引用ばかりなんですが、一審判決で「無関係」と断定された胎盤病理所見との因果関係をある程度認める展開となっています。ここからも事実認定は二転三転していき、まず、

 しかしながら検査結果報告書によれば, 臍帯炎はSNF(亜急性壊死性臍帯炎) までには至っておらず, 絨毛膜羊膜炎もなく, そして, 本件において被控訴人患児に残存した後遺障害である痙性四肢麻痺はジスキネジア型脳性麻痺と並んで分娩中の急性低酸素症による脳性麻痺の2つの典型例の1 であること(乙B9の136頁), などを考慮すると, 本件において, 上記のとおり, 胎児は被控訴人妊婦の入院当初から相当程度の低酸素状熊及びアシドーシス状態にあったものと認められるものの, それのみが原因となって胎児に実際に生じた現在のような重篤な後遺障害(低酸素性虚血性脳症による痙性四肢麻痺) が残存するに至ったもの, 換言すれば, 胎児に実際に生じた現在のような重篤な後遺障害の全面的なあるいは専らの原因となるほどの慢性的な低酸素状態及びアシドーシス状態が入院当初から胎児に存在していたもの, とは認め難いものというべきである。

子宮内感染の影響は認めるが、感染の程度が裁判所の事実認定として重篤な後遺障害のすべての原因であるとは認定できないとまずしています。では否定したかと言えばもう一度「しかしながら」が重ねられます。

 しかしながら, 上記のとおり, 本件において, 胎児(被控訴人患児)は, 被控訴人妊婦の入院当初から子宮内細菌感染と臍帯胎盤の血管病変に起因して相当程度の低酸素状態及びアシドーシス状態にあったものである. そして, これが胎児に実際に生じた現在のような重篤な後遺障害(低酸素性虚血性脳症による痙性四肢麻痺) と無関係であるとは認められない。

「しかしながら」が2回重ねられた結果、子宮内感染は重篤な後遺障害のすべての原因ではないが、原因の一つであるとようやく事実認定されることになります。ここで判決文はもう一度引用文献を列挙し直した後に、

被控訴入妊婦の入院当初から胎児(被控訴人患児) に存在していた子宮内細菌感染と臍帯胎盤の血管病変に起因する相当程度の低酸素状態及びアシドーシス状態が素因として存在し, これが寄与して胎児に現在のような重篤な後遺障害(低酸素性虚血性脳症による痙性四肢麻庫) が残存したものと認めるのが相当である。

グルグル話が回った感じがしますが、裁判所の重篤な後遺障害に関係すると認定したものは、

  1. 急速遂娩術(帝王切開術)施行の遅れ
  2. 子宮内感染症

この二つの因子がいずれも関係しているとなります。グルグル回るうちに子宮内感染症だけではないとする結論部分の説明として、

 仮に上記の点をしばらくおくとしても(すなわち, 被控訴人妊婦の入院当初から胎児(被控訴人患児) に存在していた相当程度の低酸素状態及びアシドーシス状態が胎児に実際に生じた現在のような重篤な後遺障害に全く寄与していなかったとしても), あるいは, 上記の点に加えて(すなわち, 被控訴入妊婦の入院当初から胎児(被控訴人患児)に存在していた相当程度の低酸素状態及びアシドーシス状態が胎児に実際に生じた現在のような重篤な後遺障害に寄与したことに加えて), 本件においては, 控訴人病院医師が前記4(2]の注意義務の履行を怠ることなく帝王切開術の準備を具体的に開始していたとしても, 少なくとも帝王切開術自体の開始はそれを行う事を決定した午後9時45分ころまでは行われなかったのであり, 仮に前記4(2)に述べたところにより帝王切開術を行うことを決定してから30分以内である午後10時8分ころに帝王切開術を開始したとしても, 既にその時点では, 胎児に実際に生じた現在のような重篤な後遺障害(低酸素性虚血性脳症による痙性四肢麻療) を残存させるような深刻な低酸素状態及びアシドーシス状態には至っていなかったにしても, かなり強い低酸素状態及びアシドーシス状態に陥っていたと認めることができるものである。

かなり持って回った言い方なので解説が要りますが、ここでの「仮に」はまず2点です。

  1. 被控訴人妊婦の入院当初から胎児(被控訴人患児) に存在していた相当程度の低酸素状態及びアシドーシス状態が胎児に実際に生じた現在のような重篤な後遺障害に全く寄与していなかったにしても
  2. 被控訴入妊婦の入院当初から胎児(被控訴人患児)に存在していた相当程度の低酸素状態及びアシドーシス状態が胎児に実際に生じた現在のような重篤な後遺障害に寄与したことにしても

何回読んでもわかりにくい前提なんですが、

    子宮内感染による影響があっても無くても

こういう風に読み解けば良いかと思います。さらにこの前提の上に前提が重ねられます。

  1. 控訴人病院医師が前記4(2]の注意義務の履行を怠ることなく帝王切開術の準備を具体的に開始していたとしても
  2. 30分以内である午後10時8分ころに帝王切開術を開始したとしても

自分で解説しながら本当にそういう解釈で良いのか自信がなくなりそうな文章構造ですが、書いてある前提をすべて足すと、

    子宮内感染による影響ががあっても無くても、さらに30分以内に帝王切開を行ったとしても

こういう仮定の前提を設定しているだと考えます。その仮定の前提の上で、

既にその時点では, 胎児に実際に生じた現在のような重篤な後遺障害(低酸素性虚血性脳症による痙性四肢麻療) を残存させるような深刻な低酸素状態及びアシドーシス状態には至っていなかったにしても, かなり強い低酸素状態及びアシドーシス状態に陥っていたと認めることができるものである。

ここは病院側の注意管理義務についての部分ですが、正直なところ自分の読解に自信がもてません。あえて読み取るならば、

  1. 子宮内感染の影響で胎児は低酸素状態及びアシドーシス状態はあった
  2. そういう状態も影響して21:40に2回目の遅発性一過性徐脈があり胎児ジストレスの診断が下った
  3. そこからたとえ30分以内に急速遂娩を行なっても状態は良くなかった可能性は認められる
  4. 良くない可能性はあるが子宮内感染の影響は決定的でなく(そういう風に事実認定)、30分以内であればここまで悪くなかったとも考えられる
  5. だからやはり被告産科医が21:00でなく21:45に帝王切開術の開始を決定したのは遅すぎ注意責任義務は生じる
  6. しかし30分以内であれば後遺症が残らなかったとは言い切れない

この解釈で大きくは間違っていないと思います。30分以内でも子宮内感染の影響で後遺症が残る可能は認定する一方で、残らない「相当程度の可能性」も考慮し、

上記のア及びイの事情を総合考慮すると, 被控訴人らはその損害の4割を自己において負担すべきであり、残額6割を控訴人に請求することができるものというべきである。

つまり患者側の子宮内感染の責任を4割認めている判決という事になります。産科医サイドとしては「6割も助かる根拠は?」との声も出そうですが、そういう判決だから仕方がありません。

CP訴訟はあんまりと言うか殆んど読んだ事は無いのですが、子宮内感染の影響の事実認定はこれまでどうだったのでしょう。もしこれまで余り事実認定されていなかったのなら「画期的」とも言えない事はありません。一方で「30分ルール」がここまで持ち出されたことは今後に悪影響は必至です。僻地の産科医様のコメントですが、

このような論文があります。

「緊急帝王切開術に要する時間の実態一大阪府下病院調査より−」

(産婦人科治療 2007 vol.94 No.2 p197-200)

http://obgy.typepad.jp/blog/2007/12/post_1341_9.html

あの大阪府でさえ所謂30分ルールの実施できる施設は,56施設中わずか2施設に過ぎなかったという論文です。

また近々、神奈川県内での同様の調査結果が出る予定で、そちらのほうは資料を手に入れ次第、ブログにてあげさせていただく予定ではありますが、30分以内で帝王切開できる施設は1施設も存在しなかった、という結果だったと漏れ聞いております。

「30分ルール」が実施できない施設においては、遅発性一過性徐脈の疑いが出た時点で緊急帝王切開手術の準備に奔走しなくてはならなくなります。もちろん時刻に関係なしです。スタッフが招集されスタンバイされても2回目の遅発性一過性徐脈が現れず回復したなら、そのまま待ちぼうけです。準備のための人件費その他はどこにも転嫁できませんから、そのまま病院負担です。召集されたスタッフも分娩終了までひたすら待機で一晩中なんて事も十分ありえます。

まだそれでも今回の胎児ジストレスは通常2回目は30分後以降に起こる事が多いらしいので、スタッフの負担を除けばまだ対応は物理的に不可能ではありません。しかし他の急速遂娩を必要とする急変にまで「30分ルール」を持ち出されたら撃沈です。また物理的に可能と言っても現実として乏しくなる一方の医療資源では可能なのは「机上では」「精神論では」になります。

いずれにしても実質審理無しで下された判決にしては物凄い内容だと改めて感じます。

元臨床医元臨床医 2008/04/15 08:47 絨毛膜羊膜炎及び臍帯炎のステージ分類は、私の知っている文献ではI度からIII度までで、III度は最も進んだ状態を表します。
絨毛膜羊膜炎がない臍帯炎というのは経験がなく、多くの場合は両方、少なくとも絨毛膜羊膜炎と同じステージかより高いことが多いと思います。ただし、切片にする部位を適切に選ばなければ、臍帯炎しかわからないということもあり得るかもしれません。
臍帯炎によって血管内皮が肥厚して血管腔が狭窄するということは理解できません。血栓の存在を意味しているのでしょうか?
是非、病理組織を拝見したいものです(笑)

元臨床医元臨床医 2008/04/15 08:52 訂正します。
誤:少なくとも絨毛膜羊膜炎と同じステージかより高い
正:少なくとも絨毛膜羊膜炎と同じステージか絨毛膜羊膜炎の方がより高いステージである

YosyanYosyan 2008/04/15 08:54 元臨床医様

正直なところ病理所見の事はよくわからなくて申し訳ありません。書きながら砂を噛むような思いでしたし、引用したところが要点を把握しているかの判断も怪しげなんです。本当に勉強不足でゴメンナサイ。

うらぶれ内科うらぶれ内科 2008/04/15 08:58 6割り助かるなら6割払え、ならば3割助かる可能性があるなら3割払え、1割助かる可能性があるなら1割払え、弁護士費用くらいは簡単に出る。こりゃ訴訟を起こさなけりゃ損ですね。

元臨床医元臨床医 2008/04/15 09:02 Yosyan様
病理診断は私の本業ですし、胎盤も時々診断するので書かせて頂きました。
臨床のことはほとんどわかりませんので…
追加ですが、絨毛血管炎があるのに絨毛膜羊膜炎がないとしている点は矛盾していると思いました。

YosyanYosyan 2008/04/15 09:23 ちなみにですが、病理鑑定書の所見は、

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肉眼所見:

胎盤重量は530g、凍結標本であり大きさは20cm×17cm×2.5cm。臍帯は56cm、直径は最大2.0cm、最小1.5cm。胎盤の胎児面には羊膜結節が認められるとともに胎便(メコニウム)が付着していた。臍帯はややかたく、臍帯表面及び(胎盤の)胎児面の一部に島状に点状隆起あり。Squamous metaplasiaか。

顕微鏡所見:

1.羊膜にはびまん性の羊膜壊死を認め、胎便の付着を認める。
2.絨毛膜羊膜炎:認めない
3.臍帯炎:認める。臍動脈・静脈ともに亜急性の3度の中等度の炎症所見を認める。
4.絨毛血管炎:認める。亜急性及び慢性の3度の中等度の炎症所見を認める。
5.膜の炎症:認めない。
6.絨毛炎:認めない。
7.梗塞・虚血性変化:認めない。
8.コメント:SNF(subacute necrotizing funisitis 亜急性壊死性臍帯炎)までいかないが、胎児血管の著明な臍帯炎がある。胎児面では血管内皮肥厚により血管腔の狭窄を来たしている。児に血小板減少や遷延性肺高血圧症はあったでしょうか?

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以上、御参考までに。

BugsyBugsy 2008/04/15 09:25 ここまで裁判官の心証をころっと行かせる意見書を書いた医師が医師側にいたということですか。感服しました。
一審と異なる判決となったのはこの意見書のフデヂカラ(筆力)なんですね。文章とはすべて説得力だとはよく言ったモンです。
意見書できちんと触れない限り 裁判官は自らアメリカ産婦人科医会・アメリカ小児科学会編「脳性麻痺と新生児脳症」など文献を渉猟しないと思います。

やっぱし医師といえども文章がきちんと書けんといけんね。
意見書を御願いするとすれば、実体験もさることながら文章力のある相手を選べということでしょうね。

YosyanYosyan 2008/04/15 09:59 これも内部情報なんですが、審理は書類提出だけで終わってしまったようです。この意見書に対して患者側は「時期に遅れた防御」と主張したそうですが、それは退けられています。

ただしどうも裁判官はこの意見書を結審してから読んだ気配が濃厚です。おそらく早期結審のココロは一審踏襲で終わらす算段であったのは間違いありません。しかし読んでその内容に心証が動いたようですが、裁判は自分が結審させてしまったので内容についての追加情報も得ようがありません。

判決の時期が予定より半年以上遅れたのは、裁判官が泥縄で意見書の内容と格闘したためではないかと憶測されています。意見書の原文なるものを初めて読ませていただきましたが、非常によくできた内容と私は感じました。だから裁判官も心証が動いたのでしょう。

元臨床医元臨床医 2008/04/15 10:29 病理鑑定書の所見に少し確認したい点がありますが、重度の臍帯炎があったことは間違いないようですし、ここは公の場ですので自重しておきます。

YosyanYosyan 2008/04/15 10:41 元臨床医様

確認も何もあれですべてです。専門家からは「???」の部分もあるかもしれませんが、私が手にしている病理所見は他にありません。もっともこれも鑑定書の原文ではなく、原文を全文引用している個所の引き写しですから、何か足りない部分があるかもしれませんが、これ以上の情報はありません。

通りすがりの産科医通りすがりの産科医 2008/04/15 11:03 みなさまのお話がこの論文(産科医の中ではもはや主流となりつつある)で片付くと思われます。

日々のたわごと・医療問題資料館
http://symposium.b-r.under.jp/?eid=566757

解説:脳性麻痺児の異常は胎内で生じている
高橋孝雄 慶応義塾大学医学部小児科教授 より
『脳性麻痺の原因の重要な候補として胎内感染、特に以前から知られているサイトメガロウイルス、風疹ウイルス以外のウイルス感染が注目されている。今回行われた脳性麻痺児の頭部MRIによる障害部位別検討では、大脳白質病変を認める可能性は34週未満児において高いことが判明した。脳性麻痺と診断され、MRI検査で白質に病変が認められた場合、出生時に何かが起こったのではなく胎内ですでに異常が生じていたことが想定される。遺伝子異常、栄養状態、感染などが原因で胎盤が機能不全をおこし、その結果、低酸素状態になりやすい環境が惹起され、ある状況下で白質病変をきたすのではないかと筆者らは推測している。』

rijinrijin 2008/04/15 11:21  時折見かける「シュレディンガーの猫」判決ですね。

 箱を開ける前に判決を書いています。

 それでも、医療経済学的には、医学的な発症率・死亡率からリスクの現在価値を算出することが可能となりますので、使えます。

 主たる問題は、保険者はその費用を負担するつもりが全くないというところでしょう。分娩医療が崩壊しようとも、保険者は我関せずです。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/04/15 11:41 やはり、訴訟で負けて賠償金がかさむということなら、それに応じて、妊婦の分娩費用の負担を、業界全体として(産科学会主導の下で)、増やしていくべくよう呼びかけるのが、筋なんじゃないでしょうか?自由診療部分なわけですし。
さもないと、ビジネスモデルとして破綻します。
変なはなし、訴訟額が高くなっても分娩費用がそのままであれば、産科と言うのはまだ収益的に体力あるんだな、と、国民や司法に邪推させることになるような気がします。

BugsyBugsy 2008/04/15 11:43 患者さんにもそうですが、医師も平易な言い回しで相手の理解を求めることが必要です。
ただし100%理解してもらえると言う程 個人的には患者さんの理解度には楽観的ではありません。

同時に裁判においても裁判官が分かりやすい内容で陳述すべきで 同時に医師も理論武装が必要だとつくづく感じました。言葉の揚げ足取りよりも ズドンと骨太のevidenceを示すべきですねえ。
日頃医療とは無縁の司法関係者にCPCの内容を噛み砕いて説明するようなもんでしょうか。通りすがりの産科医様の提示された論文一つ示すだけで 心証は随分異なるはずです。一般的に脳性麻痺が分娩の際に限った低酸素や何らかのストレスに貴院するといった通念はあるものの そこまで思いは及びませんからね。

とはいうものの
控訴が全面的に認められたわけじゃないんですよね。
何らかの患者家族への慰謝料と言った部分は 臍の緒のように無くす訳にはいかんのでしょう。

やっぱりこの案件では 訴えたらそれなりにお金は取れると踏む奴は出てくるなあ。
刑事事件で訴えれば社会的な反感を買うかもしれないが ちょろっとふんだくる分には問題ない、なんてかい?

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/04/15 11:55 >訴えたらそれなりにお金は取れると踏む奴は出てくるなあ。
で、取られたら、その分を分娩費に上乗せして取り返していけばいいと思うんですよ。いや、そうするべきです。
安全なシステムの維持にはお金がかかります。
分娩ってのは、多少の費用の増減では、変化しにくいマーケットですから。
国民や妊婦の不満は、産科ではなく、国へと向かうべきだと、学会として声明を出す。
そうすれば、産科の収益率は維持されます。
収益率が下がれば、当然、産科医の逃散加速します。・・まあ、それもひとつの方向ではありますが。

BugsyBugsy 2008/04/15 11:59 続いて失礼します。

>moto-tclinic様

知り合いの米国の外科医や産婦人科医は訴訟費用を考慮して 年間10-20万ドル近く掛け捨ての保険を病院側から強制的にかけさせられています。その保険に入らないと雇用してもらえないそうです。
当然そのコストは最終的に患者の診療費に乗っかっています。

米国の医療事情を賞賛するつもりは毛頭ありませんが、まあ少なくとも日本の病院は医師を守る気はこれぽっちもありませんねえ。
同時に医療訴訟が増え 億単位の損害賠償が乱発されれば 患者側のコストがうなぎ上りにあがる仕組みにならなければ社会的な規制が働かんでしょう。
いや アメリカでは働かんかった。日本はどうなるんですかね。

ssd666ssd666 2008/04/15 12:32 アメリカの外科医は、年収数千万円で、保険料1000万円って世界でしょ。
訴訟がアメリカを超えているのに、料金は共産主義国並みというのは
経済原則に反していますよね。

YosyanYosyan 2008/04/15 12:37 rijin様

「シュレディンガーの猫」とはうまい例えですね。

今回の事件でもいつの時点で胎児がCPになっていたかは本来誰にも分からないところです。子宮内感染が大きな影響を及ぼしたのは分かるとしても、いつから始まり、どの時点で不可逆性の状態になっていたかもわかりません。通りすがりの産科医様が御提示された論文のように遥か以前の可能性もありますし、もっと遅い時期の可能性もあります。感染時期自体の特定が不可能に近いからです。

判決では分刻みの時間の判断を必死に追いかけていましたが、極論すれば事件の前日に帝切を行なったとしても後遺障害が残らなかった保証はどこにもありません。分娩後の検査でも「いつまで」問題が無かったかさえも調べようがないと思います。前日帝切であれば「高度の蓋然性」で問題無しとさえ言えないはずです。

この辺は詳しくないので間違いもあるでしょうが、胎内で既にCP症状が完成しても胎外からの検査では調べようがなく、分娩と言うイベントさえなければ結構順調そうに見える気がします。分娩と言うイベントに近づいてCPの影響が表面化し、分娩トラブルに発展しただけと考えるのもおかしくありません。どこかでそういう風な説明を読んだことがあります。

こういう話は既に産科医の常識でしょうし、産科医以外でも医療訴訟に関心のある医師なら知られていますが、それでもシュレディンガーの猫を訴訟では調べ続けるのだと思います。

10年ドロッポ10年ドロッポ 2008/04/15 15:00 moto-tclinic先生、
>で、取られたら、その分を分娩費に上乗せして取り返していけばいいと思うんですよ。いや、そうするべきです。
激しく同意であります!
…つーか、私、飲み会の席でリアルで隣席の産科医に提言した事があります。お産一回200万取るべきだ。それ以外産科を存続する方法はない、と。曖昧に笑っておられましたが。

今こそ千歳一隅のチャンスではないですか。何やってんだ産科医!?
…おまいら実は産科守る気ないんだろ!?。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/04/15 15:06 どうも今すすめられている無過失保障制度が、医療者への民事訴訟を通じて、現状機能しているような気がします。
日本に西洋型の裁判は馴染まない(少なくとも今までは)と思うのですが、今回の判決などは、産婦が、皆で産院を通じて共済をかけていて、運悪く胎児ジストレスに当たった産婦に、共済金を支払われたようなものではないでしょうか?
裁判所も、裁くと言うより、この場合の共済金はいくら、というきわめて日本型の判断をしているように思えます。
当事者であるはずの個人(産科医)は、奇妙に取り残された感じですね。
無過失保障制度が成立して、共済的な判決が減ればいいのですが、果たしてどうなりますことやら・・

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/04/15 15:18 >今こそ千歳一隅のチャンスではないですか。
ほんと、そうですよね。
産科学会の会長が、こういった判決が出るたびに悲しそうな顔をして、「残念だが、また分娩費を上げざるを得ない・・」と会見すればいいんです。よほど国民に訴えますよ。
10年ドロッポ様とわたしは、語り口は違いますが、感性はけっこう似てると思います。
どちらも、医者の世界からはみ出て、一般人の実社会に片足突っ込んでるからなんだろうな。
分娩一件30万円として、1000件に一件、5000万円の訴訟リスクを見込むとすれば、総額3億円のうちの5000万円ですから、分娩一件は35万円に値上がりするべきです。1000件当たりの訴訟リスクが1000万円増えるごとに1万円上乗せ。
実経済では、ごくごく当たり前の計算だと思うんですが・・

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/04/15 15:23 例によって連投ばかりでスミマセン。
それで、無過失保障制度っていうのは、きれいごと抜きにしてぶっちゃけ言うと、医者がこういった共済的な民事訴訟に係わりたくない、デリケートな心を荒らされたくない、っていう気持ちの産物だと思うんですね。
しかし、経済的に考えて、ほんとうに医療側に利のある話なのか?・・
ちょうど、開業するときの煩雑なことを、コンサルタントに丸投げして、結果、負担が増えてしまうだけだとしたら、実につまらない話です。

BugsyBugsy 2008/04/15 15:34 オイラも連投です。

学会の損害保険で医療裁判の費用を賄うことになってる医師は多いんじゃないですか?
自分もそうだけど連日連夜身も心も捧げるようにして治療にあたった患者の家族から
民事でも訴えられるかもしれないと感じた時 心がささくれだつ思いというのは拭いようがありません。

損保に加入しているからそれで問題解決とも思えないけど ビジネスライクに割り切るしかないんですかね。しかし雇用している医師の損保くらい雇用側がカバーしろよという気持ちはどこかにあります。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/04/15 15:44 >連日連夜身も心も捧げるようにして治療にあたった
う〜ん、「そこがいかんのですよ」って誰か突っ込んでくれ、って餌か?(笑

わたしの場合、損保にも入っていません。
美容の場合、補償範囲が掛け金に比して狭いので、かわりに1億円を自分の中に想定して、それだけ分のお金は、自分のものではない、と、言い聞かせることにして万一に備えています。
これだと、掛け金も払わなくてもいい。
勤務医のときは損保入っていましたが、今の時代、意外と損保に入らないほうが、勤務医、得なのかもしれないですよ。

YosyanYosyan 2008/04/15 16:05  >今の時代、意外と損保に入らないほうが、勤務医、得なのかもしれないですよ。

これはちょっと極論で、年間1000万程度の収入の勤務医ではリスクが高すぎると思います。美容も賠償額は凄いでしょうが、他の診療科の賠償も安いと言うわけではありませんからね。

nyamajunyamaju 2008/04/15 16:15 医者も患者さんを見習って
踏み倒しますか。
負けたら自己破産。
医療界以外では、よくある話ですよね。

nyamajunyamaju 2008/04/15 16:18 医者が訴えられるのは
勝てば確実に取れるという点もありますから、
そこを変えるのも一興かと。

10年ドロッポ10年ドロッポ 2008/04/15 17:57 moto-tclinic様、
>10年ドロッポ様とわたしは、語り口は違いますが、感性はけっこう似てると思います。
光栄、というか、面映いっす。

Bugsy様、
>損保に加入しているからそれで問題解決とも思えないけど ビジネスライクに割り切るしかないんですかね。
金で済む事なら謝らんぞワシはぁ!ってことで。…まあ逃散しちまえば済む事なんですがw。
nyamaju様、
>負けたら自己破産。
裁判の賠償金は自己破産しても免責にはならん筈ですが…。まあ「ない袖はふれない」ですからねw。罰則もないし、ひろゆき氏戦法はアリかも。
…まあ逃散しちまえば(ry

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/04/15 18:07 あ、誤解招いているような気がしますが、勤務医が保険に入っていなければ、病院が保険に入らざるを得ないでしょう?
そういう意味ですよ。
病院に「勤務医賠償保険に入っていますか?」と聞かれたら、「入っていません!いざというときは、ヨロシク。」と日頃から言っておいたほうが得かと。
入っていても内緒にして、「俺は入っていない〜!」と事務方には叫んでおくといいですよ。

R・Y・UR・Y・U 2008/04/15 18:15 病院側は控訴しない方針だそうですが、こんな判決で納得しちゃうんですかね。公立病院だからですかね。

元外科医元外科医 2008/04/15 18:18 うちの病院は学会の保険に医師個人で加入してます。通常は損害賠償は病院負担だし私立なので不誠実なことをしなければ求償されることはありません。自分の所属機関だけで診療するなら保険は不要だと思います。というか勤務医に入らせる方がおかしい。

YosyanYosyan 2008/04/15 18:19 R・Y・U様

保険内に収まったから、市税からの持ち出しが無くなり、祝杯を挙げたそうですよ。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/04/15 18:19 続き)
自分は、国立病院勤務医長かったですが、国立病院勤務医向けの民間損保に入っていたような気がする・・たしか、国立病院の事務が、手続き代行してたような・・
これって、今考えると、ほんとに馬鹿げた話だったと思います。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/04/15 18:23 だいたい、民事のときは、お金が目的だから、勤務医の場合、病院と連帯で訴えるでしょう?
だから、勤務医個人が、自分の給与から損保なんかに入ってる必要ないんですよ。
なんか、怪しいバイトでもしてるひとは別ですが。

YosyanYosyan 2008/04/15 18:29 ちなみにですが徳島乳房温存術訴訟では、

『被控訴人徳島大学,同国立病院機構,同乙原及び同丙山は,連帯して,控訴人に対し,金240万円及びこれに対する被控訴人徳島大学及び同国立病院機構は平成11年1月19日から,被控訴人乙原及び同丙山は同月16日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。』

こういう場合、医師個人は支払う必要は生じないのでしょうか?

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/04/15 18:40 わかりにくい文章ですが、とにかく連帯だから、みんなで相談してとにかく支払え、ってことじゃないかなあ。
仮に内輪で揉めて支払われなかったら、債権者である患者は、個人の勤務医じゃなくて大学か病院に差し押さえにいくでしょう。

元外科医元外科医 2008/04/15 18:47 連帯債務だと債務者の誰にでも満額の請求が出来るので債権者にとり都合がいいのです。
連帯した債務者間の求償関係は債権者にとっては関係ない話なので。

YosyanYosyan 2008/04/15 19:28 あくまでも推測ですが、病院と医師が連帯で賠償金を支払う場合を考えてみます。

 1.病院は当然ですが保険で払います。
 2.保険屋は医師の分を支払う義理は無いので等分負担しか支払わないと考えます。
 3.病院が医師の分を支払うとしても保険からでなく病院負担になります。
 4.病院負担となると公立病院なら税金からとなり市議会を通す必要が生じます。

債権者にとっては誰から支払われても文句はありませんが、連帯した債務者同士の話し合いなら、こういう段取りになりそうな気がします。医師が払わなかったら債権者である患者側は病院に支払いを求めるでしょうが、医師個人の負担は生じると考えるのが妥当のように思えます。

ここりんここりん 2008/04/15 20:44 私も、今度、病院に勤務するときは、看護師の賠償制度に入ろうと思います。医師もですが、看護師も訴えられますし。
話は変わります。もう一人子供がほしいとも思いますが、産科のいろいろな事情を聞くと怖いです。妊娠して、病院にいっても、予約いっぱいですと断られたらどうしよーとか思います。妊娠する前に予約できないし。
10年前ぐらいは、一般病院でさえ、豪華なディナーなどして、お客さん集めしてたのに。。。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/04/15 23:27 >Yosyan様
いや、病院からの求償になど、応じなければいいんですよ。
給与との相殺ってのは、できない筈です、確か。
そもそも、連帯だから、1:1の負担割合、なんて道理はないはずで、そんなものは当事者間の協議なんですから、そもそも踏み倒したことにもならないんじゃないかなあ。

Med_LawMed_Law 2008/04/15 23:29
”連帯で支払え”とは、
原告側が誰に対して全額賠償を求めてもOKということです
(連帯保証人と同じ)
連帯とは、責任割合とかいう観念と異なるものです。

まず指定された責任者が全額支払え、あとは被告人の中で勝手に賠償割合を決めろ!という方式です

もちろん恨みを晴らすという意味で、全額を被告人医師に求めて破綻させることも可能
報復感情からいえば、この筋が見えてきます

公立病院であれば”賠償金を個人の医師に求償せよ!!!”という議員が現われてくることでしょう

賠償金支払いゲームの目的が何か、ルールは何かを考えると、答えは幾通りもあります
医師にとって最悪のシナリオまで。。。。。。

Med_LawMed_Law 2008/04/15 23:31
× 被告人医師 →(訂正)→ ○ 被告医師

被告人は刑事裁判における用語でした。訂正します

uchitamauchitama 2008/04/16 00:02 門外漢なので、医学的理解は乏しいのですが、こういうトンデモ判決を目にする度に、医療崩壊(特に産科崩壊)における産婦人科学会の責任は大きいものと思います。大野病院の刑事事件になって初めて学会声明を出したものの時すでに遅しという感があります。民事であれ刑事であれ法曹の医療過誤訴訟における論法は同じなのだから、それぞれに関し検討し、医学的見解を発表しても良いものだと思う。さらに鑑定医であれ、原告側協力医であれ、とんでもない鑑定を行った医師に対して(専門医取り消しや学会員から抹消くらいの)処分は行うべきだと思います。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/04/16 00:24 補足です。
勤務医が個人で損保に入っていると、病院は「先生の損保から(も)出してもらってくださいよ」と持ちかけてくると思いますが、損保に入っていないと、通常は諦めると思います。

こうやって色々考えてみると、勤務医って、つくづく使われ放題だったんだなあ。。もっと、自分たちは、弱いんだ、って自覚すべきなのかも。
大同団結ってのは、自分が個では弱い、と自覚するところから始まるわけですから。

しろふくろうしろふくろう 2008/04/16 08:56 うらぶれ内科医様の

>6割助かるなら6割払え、ならば3割助かる可能性があるなら3割払え、1割助かる可能性があるなら1割払え

とどのつまりは100%完璧な結果がでなければ、注意義務なり説明義務違反の過失が存在しその結果医療ミスとして罪を問われ賠償を請求されるということですね。機械でさえ一定の確率でミス(不良品)を出すわけで人間のやることで常に100%はありえないのでJBM医療では逃散決定の判決です。6割とかの数字はたくさんの all or none の統計的数字であるというのはどの業界でも常識的にわかると思っていましたが、司法はそういう常識が存在しない世界のようです。

法曹関係者(法曹関係者( 2008/04/16 19:02 法曹関係者です。

取り急ぎ、神奈川帝王切開賠償訴訟・二審判決
についての意見を述べさせて頂きます。

これは、「トンデモ判決」です。
間違いなく。しかし、これには医療訴訟の問題点が
よく出ていると思います。

ブログ主が推察なさっているように、
高裁裁判官は、結審後に意見書を読んで
非常に迷われたのだと思われます。

そして、心証としては、限りなく、
「因果関係を否定し、請求棄却(1審破棄)する」という
方向に傾いたのではないかと思います。

しかし、高裁で実質審理(患者側に反論の機会)を
与えないまま、請求棄却することは、患者側にとって
不意打ちとなることから大変な勇気と決断がいるのですが、
残念ながら、悩んだ末、今回の玉虫色の判決になったというのが
実態なのかと思います。

だからこそ、判決文の論理は非常に難解なものになっている
のです。自分の判断に自信がないときこそ、文章構造を難解にして
ごまかすというのは、裁判官も例外ではありませんので。

私も判決全文を読んでいないため、確信めいたことは言えません。
しかし、本判決については、今のところ、次のように考えています。

(以下、続く)

法曹関係者法曹関係者 2008/04/16 19:03 (続き)

1 「高度の蓋然性」(CSの遅れとCPとの間に法的な因果関係)は認められない 

本件は、仮に帝王切開の準備が遅れたことの過失が認められる
にしても因果関係がなしとして請求が棄却
されるべき事案です。
(もちろん、このCSが遅れたという過失を認めていることには
非常に問題がありますがここでは論じません)

高裁裁判官は、意見書を読んだ結果として、
30分ルールにしたがって帝王切開を早めていたとしても、CSを開始する時点で
「かなり強い低酸素状態及びアシドーシス状態に陥っていた」
ことは認めざるを得ないとしています。

ここまで認定しておきながら、どうして帝王切開の(僅かな)遅れ
によってCPとなった「高度の蓋然性」があるといえるのでしょうか。

どう考えても、そんなことは言えないはずです。

たしかに、少しでもCPが早まっていれば、CPにならなかった
可能性はあり得ます。しかし、これは単なる可能性に過ぎません。
最高裁判決(最判昭和50年10月24日[ルンバール判決])では、
「高度の蓋然性」と認められるには、
「通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるもので足る」
とされていますが、「はたして帝王切開の時間の差によって、CPが
生じた」という因果性について、「通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信」
を持てるでしょうか。医師でなくとも、多くの人は「No!」というのではないでしょうか。

このように、本件は、上記判例に抵触するので、
上告(受理申立てが)できます(民事訴訟法318条1項)。

そして、当然上告すべきです。
医療訴訟において安易な因果関係(「高度の蓋然性」)の認定に
歯止めを掛ける絶好の機会であるからです。


2 減額したのは、過失相殺(民法722条類推適用)をしたから?

この点についても、判決文全文を読んでいない以上、分かりませんが、
過失相殺をして損害額を調整したのではないかというような判決の言い回し
があります。

民法722条2項には、
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
とあります。

これは、
損害賠償請求ができることを前提に、損害の公平な分担という見地から
被害者(本件でいう患者)側にも過失(損害への寄与)がある場合には、
その寄与分は減額するという規定です。

判決文には、

「子宮内細菌感染と臍帯胎盤の血管病変に起因する相当程度の低酸素状態及びアシドーシス状態が素因として存在し, これが寄与して胎児に現在のような重篤な後遺障害(低酸素性虚血性脳症による痙性四肢麻庫) が残存した」

とありますが、「素因」「寄与」といったタームは、
過失相殺をする際に用いられる用語です。
本件では、「被害者に過失があったとき」の「過失」に
上記の素因が該当します。

おそらく、高裁裁判官は、
「帝王切開の時間の差によって、CPが生じた」
と認めるものの、その因果性の中には、
「子宮内細菌感染と臍帯胎盤の血管病変に起因する
低酸素状態及びアシドーシス状態」(以下、『本件素因』といいます)もあり、これが寄与した分は、
減額すべきという法律構成を取ろうとしたと推察できます。

なぜ過失相殺をしたと考えるのか?

本件のように、過失とされる行為(本件でいうところのCSの遅れ)
と本件素因があわさって、損害に影響(因果性)を与えたと考えられる場合に
たとえば、裁判官が本件過失行為のCPへの影響度は「6割」くらいと考えたとしましょう。

重要なことは、
6割については因果関係を肯定するという判断はできないということです。

これは、民法学でいう「割合的認定」と呼ばれる理論であり、
以前民法学会で大いに議論されたところでありますが、
ついに裁判実務で採用されるには至りませんでした。

そのため、因果性は、前述してきた通り、高度の蓋然性が必要である以上、
「本件過失行為によってCPが生じた」といえなければなりません。
つまり「6割」程度の影響度では、「本件過失行為によってCPが生じた」
とは言えないということです。
あえていえば、高度の蓋然性という以上、
影響度としては「8割」は必要なのです。

しかし、本件では、「8割」という壁を越えられないことが
明らかになってしまった。そうである以上、原則として請求棄却しなければ
ならないのです。

ただ、請求棄却も決断がいる。

となれば・・・。

そこで、高裁裁判官は損害賠償請求は認めたうえで、CPへの影響度が低い分については
額で調整しようと考えたのではないでしょうか。
そうした場合の、民法上の法律構成は、
過失相殺しかありません。
私が、過失相殺構成をとったと推測する理由は
ここにあります。

しかし、この判断過程に問題があることは、明らかです。
高度の蓋然性のハードルを下げているからです。

(以下、続く)

法曹関係者法曹関係者 2008/04/16 19:06 4 無過失保障制度の先取り?

moto-tclinic氏のコメント欄での指摘にありますように、
無過失保障制度的な発想があるのはたしかだと思います。

こうした因果性が不明な事案において、リスク分散的発想に
立って、「過失」概念や、「高度の蓋然性」概念をいじるという
手法は、以前から採用されています。
しかし、この手法は、法的根拠がないので判決文に明示されません。
これが民事実務の実情ですが、黙認するべきではありません。
医療訴訟において無過失を過失とすることは、すなわち、
業務上過失致死罪における「過失」があることにもなるので、
福島事件のようなリスクが増幅するからです。

安易に過失認定のハードルを下げようとする判決には
上訴してでも争うべきと思います。

まして、本件のように、高度の蓋然性のハードルを下げたことの後ろめたさを
過失相殺でごまかす手法など、けして認められるものではありません。

5 おわりに

医師の皆さんにとっては、またも納得のいかない
判決が出たと思います。私もまったく承服できません。 

ただ、これが現実です。
まだ闘う余地は残されています。

大事なことは、いい加減な、過失・因果関係の判断については
徹底的に争うことではないかと思います。

裁判所というところは、世間から遠いところではありますが、
世間(メディア)の批判に敏感なところもあります。

現在の医療崩壊の実情(惨状)について訴えていけば、
幾分理解を示し,判決の考慮に入れる裁判官も出てくるものと
思います。

医療の不確実性に理解を示す判決を求めます。

以 上

法曹関係者法曹関係者 2008/04/16 19:11 (一部抜けていました。読みにくくなって、すいませんm(_ _)m)

3 高裁裁判官の胸の内は、主文にも出ている

上記で述べたようなことは、当然に高裁裁判官も考えたのだと思います。
しかし、無碍に一審判決を破棄する勇気もなく、また、
患者側への救済的観点をも考慮して、請求額を減額するという
玉虫色の判決にしたのだと思います。
その実態は、「病院側の責任とは断定できないし、
かといって請求棄却というわけにもいかないので、
よく分からないので、原告と被告で痛み分けしてほしい。」
というものです。

高裁判決の主文をもう一度見てみてください。

1. 原告患児に8125万2506円
2. 原告父親に170万
3. 原告母親に170万円
4. 訴訟費用は等分

第4項を見てください。訴訟費用は等分負担となっています。
一審は、被告(病院)が75%負担でした。

通常、訴訟費用の分担には、裁判所の心証が表れます。
高裁裁判官の「どちらとも判断できない」という逡巡が
ここに見て取れるのではないかと思います。

しかし、東京高裁の判事ともあろう者が、事後の事例に
多大な影響を与えることも分かっていながら、
ここまで曖昧な判決を出すというところに、愕然とさせられます。

YosyanYosyan 2008/04/16 19:39 法曹関係者様

的確なご意見ありがとうございます。

判決原文は当然手許にあるのですが、本物の原文のコピーであり、そのままではWebに上げる事はできません。被告原告などの個人名を置き換えての公開となると手間とヒマがかかり、すぐには公開は不可能な状態であることは御理解いただきたいと思います。

御指摘の通り論理構成は相当難解で、「である」と一度事実認定した側から、なんども「しかしながら」とか「仮に」が用いられ、論旨と言うかどういう結論に持っていくのか追いかけるのに難渋させられる文章です。さらに結論としている部分と考えられるところも、明快な断定は避け、合わせ技その他まで合わせて一本と言うか優勢みたいな表現に感じられます。

最後の賠償額の決定部分も唐突と言うか見慣れない表現で、賠償金の4割カットを決定しています。判決文にも個性はあるのでしょうが、通常は過失部分のコレコレは認めるが、コレコレは認定しないから○○万円みたいな表現が多いのですが、言っては悪いですが至極大雑把な決定のように感じています。

残念ながら病院側は上告をしないことを決定しています。原告側の動きはまだ把握していませんが、高裁判決に多大な影響を及ぼした意見書を論駁できないと最悪さらに賠償額が減額される危険性があり、上告断念するのではないかと観測されています。

最後にこの判決文の論理構成は非常に違和感の強いものでしたが、やはり法律的というか法解釈的にも違和感の強いものであることが分かり、大変感謝しております。これまで医療のトンデモ判決は幾つもありましたが、基本的にトンデモなのは裁判官の認定した事実が医学常識とかけ離れていた点がトンデモであり、それ以外の法的適用は「正しい」ものであったと考えています。

ところが今回は医学常識と反した事実認定だけではなく、高裁判事の法運用に大きな問題があったことは別の問題として残ると考えています。

続・法曹関係者続・法曹関係者 2008/04/17 00:41 もちろん、判決文をそのままの公開するのは問題があることは
理解しております。気になさらないでください。

後に法律雑誌等で掲載されたときに、じっくり検討
しようと思っております。
ただ、同種の医療訴訟事件は、現在もあちこちで
進行中です。

本件のような(良くも悪くも)影響の大きい事件の判決については、
すぐに情報共有することが望まれます。
タイムリーな判決文公開システムが整っていないので、仕方ありませんが、。
病院側及び病院側代理人の情報共有システムがもっと進めば良いなと
思います。(このようななかで、本ブログの意義はきわめて高いものがあり、
あらためて感謝申し上げます。)

本件は、法運用に問題があると言えますが、
実は、法適用と事実認定は、そんなにはっきりと区別できない
ことは、法実務における常識でもあります。

本判決文を一読しても、多くの法律実務家は、
トンデモ判決というほどの誤りはないと考えると思います。
判決文では、形(つまり、論理)がそれなりには整えられているように
見えるからです。(たまに、こえさえもあやしい判決もありますが・・・。)

本判決の問題は、やはりレトロスペクティブ(後方視的)な視点で
判断していることだと思います。

「〜の時点で、帝王切開をできた可能性がある」
「帝王切開していれば、CPにならなかった可能性がある」
「とすれば、(今から考えると)CPを防げた可能性がある以上、
損賠責任を免れないはずだ」
「過失も認められなくもないし、因果関係もなくはない」

このような後方視的な考え方をするのは、(衡平といった)正義にかなうという
発想が裁判官にあるからだと思います。
結果として、「過失」「因果関係」という
法適用も緩くなり、事実認定も医療現場から乖離した
強引な認定が導かれていくのではないかと思います。

衡平・正義(つまり、落としどころの良い解決)のためには、
ある程度、強引な法解釈、実情と離れた事実認定をしても
許されるという考えがあると思えるのです。

たしかに、薬害肝炎訴訟などのように国が相手で、
被害が甚大な事案では、
上記のような発想をとるべきという考え方もあり得るとは
思います。
しかし、医療は、治療のために行われ、かつ、不確実性を伴う行為です。
医療行為に、上記のような法適用・事実認定をすべきで
はありません。恣意的な法適用・事実認定の操作は、予測可能性を失わせ、
医療行為の萎縮を招くからです。

ところが、裁判所は、前述したように
それなりに形式(論理)が整っていれば、
判決内容の問題が(裁判所内で)認識されにくいような
傾向があります。
上訴審で破棄されないように、論理を固くしようとするからです。
ちなみに、下級審裁判官が最も気にするのは、上訴審で破棄されることです。
(出世に響くからです。)

細かなエビデンスを積み重ねた結果、一つの結論に辿り着けば
適正な判決ということになるのでしょうが、そういう場合ばかりでは
ありません。おおざっぱな結論を見据えてから、
そこに辿り着くために細かなエビデンスを探すという逆向きの作業をも
同時に行うのが通常の法律家の思考です。

本件は、おおざっぱな結論が、(医療現場を知り得ないため)
そもそも間違った方向を向いており、それに引っ張られた
認定をしてしまったという印象を受けます。

どこかで、医療現場を考慮する機会が与えられれば、
最初の結論を再度修正できたのかもしれません。

裁判官の上記のようなごまかしを見抜いたうえで、
そこに逃げ込ませないような方法で、主張していく
必要があるのかなと思います(できるかどうか自信はありませんが)。

いずれにせよ、一度徹底的なJBMを考えるべき段階に
来ているような気がします。

実は、、実は、、 2008/04/17 10:26 この裁判のウラの教訓はもう一つありまして、、、。
例えば、緊急C/Sを決定した時点で他科(例えば整形外科が交通事故の患者を緊急オペ中)がオペ中で物理的余裕が無ければ、緊急C/Sのために、そのオペを中断させるか、執刀直前ならそのまま待機させなければ裁判に負けるというものです。
夜間当直帯でオペが一列しかできないなら他科の患者も排除しつつ緊急C/Sを捻じ込まなければならんというものです。この裁判開始当初頃?同じ県内で若手だった自分は口うるさく上司に言われたものです。この裁判のウラの教訓として、、、。
『こっちは1分1秒単位で命がかかっている。死ぬぞ!裁判負けるぞ!こちらは何度も提言したがオペ室が断ったんだからね!裁判!裁判!!』