2008-05-26 福島VBAC訴訟 報道編
この訴訟に関しては既に他のブログで十分に解説されていますし、今日のお話もさして新味があるものではありません。それでもあえて「報道編」として上げたのは、近日中に判決文が入手できそうだからです。判決文編を書く前に全体像と言うか周辺情報を確認してもらうつもりでお読みください。なお判決文は手に入る「予定」ですから、今後に判決文編がいつまで経っても出てこなければ、「予定」通りいかなかったと御理解ください。
VBACとはVaginal birth after cesarean sectionの略で、帝王切開の既往がある妊婦の出産を経腟分娩で行なう事を指します。古典的には一度帝王切開で出産した女性は次回も帝王切開が当然とされて来ました。これはなんと1916年に提唱されたそうで、VBACでもっとも怖ろしい合併症である子宮破裂が10%にも達していたとの事ですから、当時としてはもっともな事かと考えます。
VBACの方が子宮破裂をなぜ起こしやすいかですが、小児科医なので非常に単純に書きます。女性の子宮は一つしかありません。ある種の袋みたいなものですが、帝王切開の場合にはこの袋を切り開いて胎児を取り出します。もちろん切った後は塞ぐのですが、一度切ったところはどうしても子宮の弱点部になります。妊娠すると子宮は大きく膨らむのですが、前回切ったところが他の部位より弱く、そこから破裂しやすくなるとされます。
ところが1980年代からVBACがアメリカで推奨されるようになります。古典的時代に較べて帝王切開手術法が進歩して、VBACの成功率が上がったことと、保険会社が帝王切開よりVBACの方が安上がりのために広まったと言われています。ところがアメリカでもデータを蓄積させ分析すると、思われていたほどVBACの安全性が高くないことが分かるようになり、1996年をピークとしてVBACは減少に転じているとされます。
現在どれぐらいの子宮破裂の頻度があるかですが、VBACは帝王切開の手術法が子宮下部横切開という方法を取る事によって安全性が高まったとされます。この子宮下部横切開後の帝王切開で約0.6〜0.8%とアメリカでは報告されています。だいたい150件に1回ぐらいでしょうか。一方で全妊娠の子宮破裂の頻度は1000〜3000人に1人とされていますから、約10倍の危険性があるとしても良いでしょう。
子宮破裂が起こるとどうなるかですが、これは想像がつくとは思いますが、データにムラはありますが母体死亡率は1〜2%、胎児死亡率は20〜80%とされています。胎児死亡率に関しては完全に施設依存性が高く、子宮破裂から緊急帝王切開から娩出するまでの速度、新生児科医およびNICUの充実度が大きく左右しますが、生存しても重篤な後遺症がほぼ全員に残るとされます。
荒っぽいですがVBACのほんの基礎知識です。VBACの危険性は良識ある産科医なら十分認識しており、VBACにトライするなら家族への十分な説明と納得、緊急帝王切開及び麻酔科や新生児科の万全なバックアップの下に行なうべきものとしています。もちろん無謀にも条件を整えずトライする産科医もいるようですが、その辺は産科事情で「ヤブでもカルトでも貴重な戦力」時代に突入していますから、これは致し方ないところかと考えます。そう言えばVBACを請け負う助産師もおられるそうです。
ここからは僻地の産科医様の裁判は公正? ― VBACと30分ルールをめぐって 現場との乖離から御友人が経験されたVBACによる子宮破裂の10年前の経験談です。舞台は福島県立医科大学付属病院、おそらく福島県内でここ以上にVBACを行なえる条件が整っている病院はないかと考えられます。
排臨のタイミングで人工破膜後、突然の心音低下、
吸引を即準備し、人手を集め、隣のNICU医師立会いで、
吸引するも滑脱して胎頭が急上昇してカップ届かず。
胎児は横位で児心拍が臍上で除脈でした。
子宮破裂かも?と直感し、当直医師に患者を任せ、
患者さんに「今すぐ切るよ!」と許可をいただき、
上司に電話して 「破裂です!今すぐ来てください!」
家族に電話し緊急オペの許可、
オペ室からの入室許可を待たずに、
ストレッチャーでそのままオペ室に走ったら、
オペ室の鍵がまだ開いていなくて前で
「早く開けろ〜!!!」とドアをたたきました。
そこに虫垂炎の緊急オペのために、
たまたま起きてきた麻酔科医が通りかかり、
捕まえて「こっちが先!!」と叫び、
鍵を開けてもらい、
アッペの手術準備のために電話に出られず、
緊急帝王切開を知らなかったオペ室の看護師に、
ストレッチャーの患者を押し付け、
駆けつけた医師に後は任せ、着替えて手洗いし、
全身麻酔で
イソジンぶっ掛けて緊急帝王切開。
麻酔科医2名、産婦人科4名、NICU2名で立会いでした。
前回創部がバックリ裂け、
頚から下が腹腔内にあり、
頭が子宮内で臍帯圧迫していたのが、胎児虚血の原因だったようです。
深夜2時の事件で、子宮破裂後42分で胎児娩出で
(NICU2名立会いの帝王切開)です!!
これ以上のタイミングのC/Sはありえないし、
日中でも普通は許可なしでは
絶対入室できない大学ですから新記録なのです。
患者の目の前で、「鍵開けろ〜」と叫んだのが、
手順ミスのようで心象悪かったのだと思うけど、
正式のルートで連絡していたら30分はかかるし、
アッペが入っていたら1時間では済まなかったでしょう。
凄い臨場感がある話ですし、医師を始め医療スタッフが救命のために努力を行なったかがよく伝わります。しかし母児とも救命が出来ましたが、子供には重い脳障害が残り4年9ヵ月後に死亡しています。さらに家族は子供の死後に病院を訴えました。訴訟に関しては5/20付のAsahi.comを読んで頂ければと思いますが判決の概要は、
過去に帝王切開した妊婦が自然分娩(ぶんべん)するのは危険性があるのに十分な監視を怠り、子どもに重度の障害を負わせたとして、福島市内の夫婦が福島県立医科大学付属病院(福島市)に1億円の損害賠償を求めた裁判の判決が20日、福島地裁であった。病院側の過失を認め、同大に約7300万円の支払いを命じた。
また理由部分は、
森高裁判長は、帝王切開した女性が自然分娩する危険性について「当時、具体的な指針はなかったが、病院側は説明義務を果たしていないと言わざるを得ない」と判断。「美江さんが痛みを訴えた時点で診察していれば、子宮破裂が迫っていると診断できた可能性があった」と、監視の不十分さを指摘した。
そのうえで、胎児も大きめで美江さんには自然分娩の経験がなかったことなどから「緊急の帝王切開に至る可能性は高かった」とした。しかし、手術室に鍵がかかっていてすぐに使える状態になっていなかったことなどから、病院側は緊急事態への準備をしていなかったと判断した。
そうなんです、VBACによる子宮破裂はこの程度の対応では病院側に注意責任義務が課せられます。これは10年前の事件ですが、VBACで胎児を無事救命するには、1993年にLeung ASらがAm J Obstet Gynecol 169:945,1993に、
瘢痕性子宮破裂による胎児機能不全が生じてからの児の安全限界は最短17分と報告
私の調べた範囲ではどこもこの数字をVBACによる胎児を無事救出できる目安時間として引用しているようです。「最短17分」ですが日本の医療訴訟で重きを成している「30分ルール」は最低限満たさないと難しいかと思います。10年前の事件より医師の注意責任義務は格段に重くなっていると考えるのが妥当です。
最後に事件に関った産科医の言葉を紹介しておきます。
これで
「慎重に経過を見て、
緊急C/Sの準備をすべし」
と言われたら、
10年後の今でもそんな施設はないとおもいます!

この文書に残っていない行間の患者や患者家族とのやり取りの記憶も 5年近くたって遠いかなたに消えています。
相手側弁護士から「あの時あなたはこう云ったでしょう。」と断定的に言われたら、「うーん、そうだったかな?」なんて言下に否定出来ません。原告もきちんと説明を受けたはずが、咄嗟の事で記憶にないと言い張ることもあるはずです。
退院後5年以上たったカルテはサマリーとキーフィルムを除いて破棄されますが、そうなった時点で訴訟を起こされたらどうするんでしょうね。言った、言わなかったの水掛け論を延々とやらかすんでしょうか。
VBACやれる施設はこの県にはありませんね。
個人的にはVBACはリスクが容認できないと考えているので
家族がやると言ったら反対致します。
そこは、詳細不明なのでおいておいて、一般論としておもったことですが、病院と患者との間である程度心情的に和解に近い場合でも、損保からの保険金支払いによる患者救済目的で、病院があえて負ける、なんてのは、これから出てきそうですね。じっさい、関西の心筋梗塞の例で・・いや、これいったらいけないんだったか(^^;。
そうすると、事故調は、損保会社にとっては、過度な民事を抑制する機能として働きそうですか。
ていうより、医者が刑事である程度訴えられたほうが、民事でも病院が妥協しない空気をつくってくれるから、損保会社にとってはいいのかな?
>退院後5年以上たったカルテはサマリーとキーフィルムを除いて破棄されますが、そうなった時点で訴訟を起こされたらどうするんでしょうね
医療過誤を不法行為として損害賠償するなら、時効は3年。
(ただし、不作為として訴えると、時効が延びます)
Bugsy先生の不安は杞憂だろうと思いますが、患者さんの安全、次の治療の参考のため、できるだけ治療の資料は残したいのに、裁判沙汰を考えると利益相反してしまいます。
いやな世の中です
ところが裁判官は、「大事な事だからきっちり覚えている筈。記憶が曖昧っていう事は虚偽の陳述だ」」と素で見做すんですよ。だから実は記憶が曖昧でも、「確かにこう言った!」と言い切るのは訴訟戦略の基本中の基本です。
と、1回本人訴訟やっただけの法曹でもないド素人が言い切ってみるてすつ。
>言った、言わなかったの水掛け論を延々とやらかすんでしょうか。
その通りですね。で、そうなった時、裁判官がミスを隠す極悪医療機関と可哀想な患者サマのどちらの肩を持つか、言うまでもありません。
他でも書いたけど、「これから」なんかないんだよオマエラ産科医には!!
これが出てしまうと話は終わってしまいます。終わってしまうと判決文がもし手に入っても読解する気力が失われますから、現場レポートと記事情報から少し分析してみます。まず神奈川帝王切開賠償訴訟で教えられた「30分ルール」が満たされていたかが訴訟的には一つの鍵になります。現場レポートによると、
>子宮破裂後42分で胎児娩出
「30分ルール」は緊急帝王切開開始までが「30分」ですから、42分は微妙な数字です。もちろんこの「42分」は病院側が子宮破裂と診断してからの時間ですから、記事情報による、
>美江さんが痛みを訴えた時点で診察していれば
子宮破裂が起こった時間の事実認定がもっと繰り上がっている事を示唆すると考えます。42分でも微妙ですから、ものの10分でも事実認定が繰り上がれば満たされなくなると考えます。もう一つ訴訟に大きな影を落としているのが、
>手術室に鍵
どれぐらい待たされたかは現場レポートでも不明ですが、5年近く経ってから訴訟に踏み切ったのはここにも原因があると考えます。つまり誰かが「もう少し早かったら」を家族に話した可能性です。「もう少し」を当日の経過から思い起こすと「手術室の鍵」に結びつき、「あれさえ無ければ」の思いがふくらみ、子供の死をキッカケに出てきたという考え方です。
判決文とは言え、そこまで分かるかは疑問ですが、入手できれば注目しておきたい点です。
不思議なのは自由診療であるための出産費用が安価で抑えられていることです。
保険金や訴訟費用くらい上乗せしても良いのではないかといつも思うのですが。
それに訴訟費用の増加の医療費に対する影響も分かりやすいでしょう。
17分ルールなんて何年も前から商業雑誌にも和文で載っている話です。
中核施設でも麻酔科・小児科オンコールなのに『VBACしてます。好評です。エッヘン!』なんて地方部会で発表するところもあります。みんな”たまたま”無事故なだけ。
既往創がほんの数センチ裂けただけで(『エッ!これで!?』って程小さな創でも)子宮の血流が変わるからなのか?胎児は死亡しますよ。
ベターな最低限の対応:『17分ルールを説明。当院では対応無理と断言。どうしても希望ならやってるところへ御自分で。』→上記のようにやっている施設はもはや自己責任。
ベストの対応:『お産?ナニソレ??』
「後で考えたときに、もしあの時こうしていたなら・・・」の繰り返しで人類の歴史は進歩してきました。失敗は成功のもとという言葉がありますが、反省なくしては発展も成長もありません。医学は未知の部分が多いまま臨床応用されている学問であり、結果を反省し改善する繰り返しは避けられません。
その反省において訴訟が入り込むと、反省点=ミスとされ、それをもとに多額の賠償請求、刑事罰が科そうとします。それを回避しようと当事者しか知らない反省材料が闇に葬られかねないため、世界の多くの国は免責までして医療の質の向上を求めているのですが、日本は専門家でさえ過失になるかどうか意見が分かれる内容を、裁判で過失と断定して追求し医療を崩壊させる方向で動いていますね。
コスト積み上げしたら、絶対に採算の取れない価格体系でダンピングし、
訴訟の賠償金は税金で賄う。
産科医療が、今の麻酔科のような変化をすれば、再生がもしかしたらあるかもしれませんが。
>これが出てしまうと話は終わってしまいます。
大変申し訳ありません。と言いつつも、
uchitama 様ご指摘の通りで、
>保険金や訴訟費用くらい上乗せ
程度の事すらやろうとしない時点で私は産科医ドモは実のところ産科医療を守り抜く気概なんかない、と断定せざるを得ません。いやないならないでいいんですよでもそれならなんでだらだら産科医続けてるんです?お産一回200万取れ!勝手にダンピングする公立産科医は専門医剥奪しる!話はそれからだ!!!
お産の需要が産科医でまかなえなくなる事は自明ですから(笑)
実際はその暫く前に過重労働、過労死、老人産科医逃散 >> ドミノ減少
となると思っています。
「民事はこれから増えるから、医者は保険料が高くなるのを覚悟してればいい」てなことを、わたし、ときどき書きますが、最悪、損保会社が、医療、それも特定の分野から撤退してしまう、っていうのは、ありうる話です。
とくに産科。保険掛け金のアップだけでまかなえるのだろうか?
少なくとも、訴えられ敗訴した産科医に対しては、保険料はとんでもなく高くなるか、保険契約拒否されかねません。
そうすると、別の意味で、貴重な産科医先生が現場から去らざるを得ないわけで・・
でまた、そういう産科医先生、DQNな方もいるかもしれないが、危険地帯で本当に頑張っていらっしゃった方かもしれないですからね。
日本医師会の医賠責は診療科による保険料の差はない(はず)です。たしか7,8年前に保険料を診療科別にしてはどうかとの意見が出ましたが、「特定の診療科(当時から、もちろん産科)の負担が大きくなりすぎる」という執行部の答弁でボツになったのを記憶しています。現在は産科のリスクを私も負担していることになりますが、今後保険料上昇となれば(昨年度か今年度も値上げがあったはず)診療科別保険料が再浮上するでしょうね。
後期高齢者制度のように全体に負担がかかるものは痛みとして感じるのでしょうが、療養病床の削減による介護地獄や救急崩壊など、数人か数十人に1人にしか負担がかからないものは実感がわかず、世論へと広がらないのです。本来それらを調整するのが政治家や官僚の役割なのでしょうが、政治家は利権と票のため、官僚は省益のためにしか動かないのです。(日本の官僚制度は天下りどころか、入省後30年以上も続く関係で、他の会社や大学などとは比べものにならないほど強固なもののようです。)
>最悪、損保会社が、医療、それも特定の分野から撤退してしまう、っていうのは、ありうる話です。
ネヴァダ州でしたっけ?
>少なくとも、訴えられ敗訴した産科医に対しては、保険料はとんでもなく高くなるか、保険契約拒否されかねません。
そうすると、別の意味で、貴重な産科医先生が現場から去らざるを得ないわけで・・
いくら産科医でもそうなってまで産科に踏み止まろうとするほどヴァカでは…ワカランなぁなんせ産科医だからなあ…。
元ライダー様、
私ドロッポの分際で実は医師会会員で会費も保険料も払っているのですが、
>現在は産科のリスクを私も負担していることになります
…なんか無茶苦茶腹立ってきたなw。
あんまり顔を出さない医師会情報ですが、医師会の自賠責の収支も芳しくないようです。産科の先生を責める気はありませんが、やはり支出は小さくないとの事でした。当然のようにこれ以上増えると保険料はもっと上げざるを得なくなるのでしょうが、診療科別にするのは抵抗があるようです。
ただ医師会員なら知っている事ですが、医賠責の基本料は医師会費にコミになっています。診療科別にすると医師会費を診療科ごとに変えるか、医師会費と保険料を完全に分離する必要があります。簡単といえば簡単ですが、いざやるとなれば産科を始めとして保険料が上るリスク診療科の抵抗は必至で、執行部も及び腰と見ています。またそんな事をすれば、ますます産科離れ、リスク診療科離れを加速しますからね。
背に腹は変えられなくなるまで問題は先送りされるかと考えています。
自動車保険で、事故をよく起こす人の保険料が増える、というのとはわけが違い、むしろ自動車自賠責保険と同じ考え方ですね。もちろん、任意保険の分は特に外資系が低リスクの人を大幅に安くして、高リスクの人を加入させない「リスク細分型」という名の囲い込みをして、昔からの保険会社がその分を引き受けて値上げせざるを得ず、無保険車増加などのトラブルが年々増加しているのは周知の事実ですが。
もし、こういったリスク細分型の医賠責となったら、自動車保険の任意保険と同様、高リスク高負担の産科医なんか、保険料が払えないせいで無保険の医師が増え、トラブルがさらに拡大する可能性が出てきます。
ま、そうなったら、ますます産科医が減るだけでしょうね。
医療崩壊にしてもこれまでの日本の医師の献身的な努力が、崩壊をかえって助長させているように、そのあたりの責任転嫁が問題をうやむやにしていると思います。
要するに医療崩壊の一番の原因が医療訴訟であるということをはっきりと公言すべきです。
本当に医療がカモにされているのが分かり不愉快ですね。
「産婦人科医不足は弁護士数が増えたためだった!」
http://legal-economic.blog.ocn.ne.jp/umemura/2008/03/post_5103.html
「法曹人口は毎年3000人ずつ増えるため、医療訴訟は3000億円の市場になる」
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/15985.html;jsessionid=29E9063FA8A01403539E34E9E2BB52F3
そうじゃなくて、民間損保へ丸投げですよね?みなさん入っていらっしゃるの。わたしも昔入ってたけど。
保険ってのは、賭けですから、民間ビジネスの保険会社としては、賭けが成立して、自分の取り分が多いと思うから、やってるわけです。日本の医療がよくなるようになんて保険会社はこれっぽっちも思ってないはず。
それで今は、「日本美容外科医師会共済」てのがあるんですが、これを発足させるにあたって、皮肉なことですが、対立していた形成外科系・チェーン系のふたつの「美容外科学会」が、協力することになりました。
加入者絶対数増やさないことには、共済も成立しないですからね。
しかし、それでも、1億円プランで、院長月額3万2千円。で、すべての損害が補償されるわけではなくて、死亡または後遺障害(労災での1〜3級)といった大きな事故に限っての保障です。さらに、共済ですから、加入時に一人一律10万円払い込む必要があります。
で、わたしとしては、毎月3万2千円づつ取られるよりも、万が一の1億円は覚悟して、あんまりリスクの高い施術には手を出さない。
共済をかけてないから、無責任だということではなくて、単純に、「共済をかけずに済ます」ほうに賭け(bet)してるわけです。
飛行機搭乗保険なんてあるでしょう?あんなの。
保険会社が介入してきてくれると、手術のリスクのムンテラもやりやすくなるかもですよ。患者は、保険掛け金と、保証金・補償範囲との比率でもって、自分の受ける施術のリスクを、測ることができる。
お産なんかには向いてると思うのだがなあ。
>日本の医療がよくなるようになんて保険会社はこれっぽっちも思ってないはず。
アメリカのHMOを持ち出すまでも無く、お説のとおりなんですが、今の医師会に自律で共済を持つ力は無いでしょう。なぜ医師会だけの共済にしなかったかは歴史的な経緯でしょうが、おそらくですが美容外科にくらべると遥かに会員が多く、会員に対する全国ネットワークを作る手間と経費を天秤に掛けたのだと思っています。それと長くなれば様々なメリットを受ける方々も出てくるでしょうし、そういう方々の声は末端会員1万人より遥かに大きいですから、行き着くところまで行かないと何も変わらないと考えています。
保険料を診療費に上乗せすれば実質変わらないのですが、患者が保険会社と契約するのはリスクを自覚してもらえるメリットありですね。
「38歳初産双胎ですかあ。ちょっと保険料が高くなりますねぇ」とか
「VBAC希望ですか!うちでは、お引き受けできませんなぁ」とか
まえに話題になりましたが、現行民事賠償は、医療やお産においては、それ自体「共済」として機能してるんじゃないか?判事も、そういう意識で判決書いてるんじゃないかというところがあります。
この状況を民間損保(資本は外国)が看過するわけがありません。撤退ですよ、撤退。民間ビジネスの撤退は速いですよ〜。医者の逃散の比じゃありません。
患者への施術前保険ができれば、その保険に加入してなかったのは、患者の自己責任だから、日本型の「共済」的民事賠償判決はおりにくくなる。
医師会は動きはどうせ鈍重でしょうが、日本全国の医者が一律10万円ずつ出資して、患者向けの保険会社つくれば、配当出せるくらいの利が上がるんじゃないかな。
http://ssd.dyndns.info/Diary/2008/03/post_576.html
だって訴訟を起こすのはまだごく一部の人でしょうから。
訴訟なんて起こす気無しの人にとっても救済になるいい保険だと思います。
ただしこの先生のオペだったら掛け金は多く頂かないととか保険会社に言われたらトホホでしょうが。(笑
産科手術に関しては誰がやってもなるようにしかならんから、それはないなw
血液センターからの距離とかは掛け金に影響すると思うけど。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/134/index2.html
医師の数を増やして医療コストを削減せよ
なぜ、医療コストが下がらないのか。その理由は明らかである。需要が爆発的に増えているのに、供給を増やしていないからだ。高齢者が増えて患者は増大しているのに、医師の数が絶対的に足りない。
実際、この10年間の医師国家試験合格者数をみると、2001年の8374人を除いて、ずっと7000人台で推移している。医師の供給はまったく増えていないのだ。その最大の理由は、政府が医学部の定員を増やさないことにある。
では、なぜ医学部の定員を増やそうとしないのか。
ある政治家は、「医者の数がどんどん増えると、それに比例して医療費が増えてしまうからよくない」と述べている。だが、そんなことはありえない。供給が増えれば値段が下がるのは必然であり、国民が支払う医療費を抑えることができるはずだ。
また、厚生労働省によれば、高度な知識をともなう医療分野の人材を医学部で養成するためには大きなコストがかかり、人数を増やすことは容易ではないという。
だが、それなら、なんとか頭をひねって対策を考えるのが役人や政治家の務めだろう。医療制度の危機は待ったなしなのである。
例えば、こうしてみたらどうだろうか。建築士と同じように、医師の資格も1級と2級に分けて仕事を分担するのである。
確かに、先端医療の場合には、高度な知識や技術が必要なことはわかる。しかし、中高年やお年寄りに多い慢性疾患の場合は、さほど高度な医療判断が必要だとは思えない。極端なことを言えば、医者は話の聞き役にまわればよく、出す答えもほぼ決まりきったもののことが多い。もし、手に負えない症状であったり、急性疾患の疑いがあれば大病院にまわせばいい。
そこで重要になってくるのは、先端医療技術よりもコミュニケーション能力である。そうした技能の優れた人を養成して、2級医師にするわけだ。2級医師は4年制で卒業可能として、とりあえず大量に育成する。
最近の若者には、福祉の分野で働きたいという意欲を持つ人が多いから、人は集まるだろう。病院が彼らを年収300万円ほどで雇えば、若年層の失業対策にもなる。
病院としても、そうした2級医師を採用して「早い、安い」を売り物にすれば人気が出るだろう。高齢者にとっては、待ち時間が減って、話をじっくり聞いてくれるので喜ばしい。こうした医療機関が普及すれば全体の医療費を下げられる。みんなハッピーになるのではないか。
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もう、森永氏は全く何も分っていませんね。
>医師の数を増やすもう一つの裏技がある。これは、ある医療経済学者の主張なのだが、歯科医に医療活動をさせるというものだ。(中略)なかでも麻酔ならばお手のものだ。病院での麻酔医の不足が大きな問題となっているなか、日常的に麻酔を使っている歯科医は貴重な存在である。麻酔医を増やすためのコストがほとんどかからないので、確実に医療費の削減につながる。
でもって、これです。
>もちろん、勤務医で劣悪な労働条件で働く医師もいるが、法外な報酬を得ている開業医も少なくない。そうした利権に切り込まなければ、医療費の抑制はありえない。
これでもアナリストやっていけるんですねぇ…
こちら方面に専念していただき、医療にはタッチして欲しくはないと個人的には思うのですが・・・。
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/morinaga.cfm?i=20070921c5000c5&p=3
ワープア相手に耳触りのいい、テキトーなことを言ってるに過ぎません。
少なくともネットで誹謗中傷する医師が問題なのではなく、高額な賠償金目当ての訴訟に医療崩壊の原因があることが良く分かるはずです。
産科崩壊が叫ばれ、その原因の最大のものが訴訟であるから、今ならできるように思うんだけどなぁ。
これはその通りだと思うんですが、それで訴訟関連費を上乗せして医療費が高騰すると、ますますインチキアナリストとか自称評論家とかが沸いて出て、「医者はこの機に乗じて儲けようとしている!」とあおり立て、「素直」な国民はそれを信じちゃう。よって、
>国民全体の恨みの矛先の少なくとも半分が医療訴訟の乱発やトンデモ判決に向かう
のは無理じゃないかなぁと思います。ま、ずばり言えば意識の低い人には何やっても無駄、という事なんで、絶望的未来しか浮かんでこないんですけどね。
一番のリスクヘッジは、「(症例としてでなく、人間的に)リスクの高い患者は診ない」ではないかと思います。患者向けの施術前保険、その意味でも面白いです。保険入ってない人≒将来を考えてない、または保険入る余裕がない人≒高リスク って言えそうだし。民間保険会社もその方が多分持ち出し少ないし。うーん、するとやっぱり、応召義務撤廃が全てのカギですか。
http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20080523/p1
http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20080526/p2
主にトリアージに関わる議論ですが白熱しています。
医療の専門家の皆様はどうお考えになりますでしょうか。
急患を診ないことでしょう。出来んもんは出来ん。
なじみの懸かりつけの患者やったら診察する。
>するとやっぱり、応召義務撤廃が全てのカギですか。
応召義務に罰則はありまっしぇーん。オイラが診てナンかあったらどげんするとねっと吠えるのも手です。
別に医師の方々に入院患者さんのEndoとか形成とかしてもらおうとか思わないので
こっちに医師の仕事を振れるとか思わないでいただきたい感じでした^^;
もう、医療系つったって、分野違いすぎですからっ
そりゃたまには往診先の病院で、抜歯なら外科分野でも…いあ、抜糸くらいなら、
せめて消毒なら…わざわざ呼ばなくても、血管腫の診断くらい(私は診断はできるが対応は不可)してくれてもっと思いつつちみちみ出ばっていますが。
義歯の調整だって、多少のDulならあの辺をちょちょいのちょいとでもすれば応急処置になるけどな、なんて。
往診に割いてる時間に来院患者さんみてるほうがよほど黒がとかとか。
このところの医療崩壊の記事を見るにつけ、ああ、通ってきた道だよなあなどと思うこともありますが(もー、初診やリコールの患者さんにはみんな3枚くらい書類渡してる…。書類書いてる時間があったら、手技に使いたひ。手を洗うだけでも時間がーっ)、医科と歯科はかぶってる部分はそりゃあありましょうが、かぶってない部分のほうがさらに多いと思われます。
それくらいならNSをランクアップしたほうがなんぼか使えるんではないでしょうか。大体こちとらの麻酔は100ぱーせんと局所麻酔でっせ…。麻酔科で修業した方がアゲられたこともありましたのう…
静脈も筋肉(まあ、舌くらいなら)も対象外。粘膜な浸潤麻酔と仲良くしております。伝麻は一般的に一系統のみ。それに私だって衛生師分野に口出す自信は我が身が可愛くあったりしてありません。
こういう単純な流用ができるんじゃ…と考える方々の仕事ぶりが気になる今日この頃です
ちなみに、もしかして私手より口のほうがうまい気がする…と悩みがちな10(数)年選手の歯科医です。
>「医者はこの機に乗じて儲けようとしている!」とあおり立て、
>「素直」な国民はそれを信じちゃう。
それが事実になれば、腹も立ちませんぜ。
どうせ現時点でもそう思っているし、否定しても信じないのだから、
期待に答えてやるのも良いんじゃないかな。
それから、産科の訴訟対策ですけど、もう一つ戦法はあります。無保険・無資産で対応する方法です。今の日本の法律では、金のない人からは金をとることはできません。強制労働に従事させることもできませんので、いくら何億円の勝訴を勝ち取ったところで、払う相手に金がなければ空証文です。なまじ金があるから、遺族も民事訴訟で金を取ろうと思うし、裁判官も医者に金出させて和解に持ち込ちこもうとか、遺族の救済を医者の負担でと思うわけです。民事訴訟で、何億という請求であれば訴状に貼る印紙の額でもばかにならないですから、相手に金がなければ、訴えても無駄なので、普通、弁護士も訴えることをやめさせようとするはずですし、裁判官も安易に「とりあえず医者の責任に・・」という思考をしなくなりますから。
だから、親が金持ちでなくて、本人も資産がほとんどない医師の場合、保険も入らないという方法もありかなと思います。
医賠責保険とはやはり切り離して考えるのがよいのではないのでしょうか?
以前、どこかのblogで記載されてましたが、
空港登場口にある掛け捨て保険自販機みたいに
分娩室前に自販機置くしか無いんじゃないですかねえ。
オールプラン、脳性麻痺のみカヴァープランで30歳未満、35歳未満で分けてとか…
まあ、そこまでやっても注意義務違反でやられそうな気はしますが。
保険金支払い側も、支払額を減らしたいでしょうから脳性麻痺は別にしても、福島事件のような場合は、全力で対応してくれるんじゃないかな。
>最高のリスクヘッジは逃散でしょう(笑)
バリバリのメジャー臨床医であったと思われる先生ほかお歴々方が悪戦苦闘の末ここ、ここに至って得た結論が最初から戦いを放棄して逃亡したヘタレが10年前に得たソレと同一ってのは…なんつーかオワッテルよなあ。
一事務員様、
>2chのひろゆき氏のような対応ですが、現実的に社会的地位を伴った人にはやはり厳しいでしょうねえ。
そんな妙な見得とゆーか世間体を気にするから食い物にされるんですよ。
でも、最初から、家族と一緒の時間少ないから、変わんないか・・・。
人口構成が高齢化していくと医療費が増加するのは一般的な現象です。
これは有病率が増し、複数疾病の罹患が日常的となるためです。
神戸市国民健康保険の年齢別医療費を見てみますと(2006年資料)
75歳以上の一人当たり医療費(医療費総額をその年齢層の人口で除したもの)は
年間89.7万円であるのに対し74歳以下は23.6万円です。
一方、ひとつの医療機関での医療費をあらわすレセプト1枚あたりの医療費は
75歳以上2.78万円に対し、75歳以下は1.96万円です。
すなわち、高齢者は複数医療機関(例えば、内科と整形外科と眼科)に受診し
総額としては人口一人あたりに換算して3.8倍の医療費を必要とする。
高齢化がすすむと人口や患者数は増えなくても医療費が増加するのはこのあたりの
事情によるものと考えられます。