新小児科医のつぶやき

2008-05-30 福島VBAC訴訟 判決文編

平成14年(ワ)第114号損害賠償請求事件とされ全45ページの分量で、エントリーも相当長いので覚悟して読んで欲しいと思います。争点は妊娠が判明した時点の分娩方法の選択まであるのですが、まず分娩当日であるH.7.5.17の前提事実から紹介します。


時刻 経過
0:15 原告産婦がタクシーにて来院し入院
0:25〜1:09 K助産婦は原告妊婦の体重等を測定し(体重67Kg, 子宮底40cm), 分娩監視装置によるモニタリングを施行した。モニタリングの結果,間欠5から6分,発作20から30秒であり, 分娩に有効と考えられる陣痛があった。また児心音(FUR)は130bpm であった。
1:09 W医師が原告産婦にエコー検査と内診を行い, その際分娩監視装置を外した。
1:20 W医師は生理食塩水300mlによる浣腸を指示したが, グリセリン浣腸110ml が実施され,反応便があった。このころ原告産婦は初めて出血した。
1:42〜2:15 K助産婦が原告産婦に分娩監視装置によるモニタリングを施行した。児心音は130bpmであった。
2:20 K助産婦は, 分娩監視装置をはずして原告産婦を歩行で陣痛室へ移動させた。
3:00 K助産婦が陣痛室に戻って来た際に, 原告産婦は下腹部の痛みを訴えたので, K助産婦は原告産婦の内診を施行した。
3:10 K助産婦の内診の結果, すでに子宮口が全開大となっていたことが判明した。原告産婦には性器出血がみられた。
3:20 原告産婦は車椅子で分娩室へ移動
3:23 モニタリングを施行した時点での児心音は140bpmであり、明瞭に聴取された。
3:32 K助産婦が人工破膜を施行したところ, その直後の児心音は140bpm であった
3:35〜3:40 陣痛と同時に児心音が80 から50bpm まで低下した. 同助産婦が原告産婦に酸索を投与し、体位変換をさせたが,児心音は回復しなかった。そのころK助産婦から連絡を受けて現れたW医師は, 原告産婦に対し,2回吸引分娩を試み,いずれも児頭に吸引圧がかかったが, 滑脱して児を取り出すことはできなかった。さらに,3回目の吸引分娩を施行しようと試みたが,児頭が上昇しており, 吸引カップが児頭にかからなかった。なお, この間, 一度もエコー検査による診察は行っていない。
3:40 S医師 が呼ばれ, 原告産婦に対しエコー検査を実施し, 子宮破裂を確認し,帝王切開手術を行うことを決定した
3:40〜4:12 原告産婦はストレッチャーで手術室へと移されたが, 手術室は鍵がかかっており, 原告産婦は, 麻酔科の医師が来るまで, 手術室の前で, ストレッチャーの上で待たされた. 原告産婦の血管確保はそこで行われた。
呼び出されたY医師は帝王切開手術を行ったが。手術所見記録表によれば, 「皮膚の消毒時には既に正常な妊娠子宮の形態を認めず,胎児が直接触れるような印象を受けた。正中切開で腹膜を開くと同時に胎児の体が直視できた。頭部は下方,頸管内に存在していた。胎児をすぐに引き出したが, 特に抵抗もなく娩出できたが,仮死は相当のものと考えられた」とのことであった。

そして, 子宮の裂傷は前回の帝王切開創がそのまま開いている状態であり, 通常の帝王切開で児娩出後に縫合を開始する直前の状態と同様であった。
4:12 出生

ここで争点なんですが全部で9つになります。

  • (争点1) 分娩方法の説明義務違反

      被告病院の医師が本件出産を帝王切開後経膣分娩(VBAC) の試験分娩でする危険性について説明をしたか。

  • (争点2) 分娩方法選択義務違反

      本件出産がVBACであることを前提に, 被告病院は, 原告産婦が入院する平成7年5月17日以前に, 経膣分娩を断念し予定帝王切開を選択すべきであったか。

  • (争点3 ないし7) 分娩監視上の注意義務違反

      被告病院の医師らは分娩時である以下の争点3〜ないし争点7の各時点において切迫子宮破裂(子宮破裂の前駆症状ともいうべき状態) であることを認識し, 帝王切開手術を実施すぺきであったか。

        (争点3) 午前2時30分ころ, 切迫子宮破裂と診断して, 帝王切開に移行すべきであったか。
        (争点4) 午前3時ころ, 帝王切開に移行すぺきであったか。
        (争点5) 午前3時10分, 帝王切開に移行すべきであったか。
        (争点6) 午前3時32分, 人工破膜を行わずに帝王切開に移行すぺきであったか。
        (争点7) 人工破膜後、児心音が低下した段階で, 帝王切開に移行すべきであったか。

  • (争点8) 帝王切開移行準備義務違反

      直ちに帝王切開を行える準備(いわゆるダブルセットアップ) につき, 被告病院はそのような準備をしていたか, また, すぺきであったか。

  • (争点9) 被告病院の医師らに過失が認められる場合には, 原告らに生じた損害額

このうち争点1及び争点2については因果関係無しとまずなっておりこれは省略します。後は順次、原告被告の主張と裁判所の判断を並べていきます。


(争点3)

原告側主張

 午前1時41分ころから2時15分にかけて, 分娩監視記録(乙A2) からしても子宮内圧は少なくとも80mmHg 程度を超えていたはずであり過強陣痛の傾向が明確になっている. 原告産婦は, 午前2時30分以降, 下腹部の限局した痛みを訴えている。

 午前2時30分より前の段階で, 助産婦は原告産婦が過強陣痛であることを認識していた。

 このような過強陣痛や強い痛みなどからして, 遅くとも午前2時30分ころには切迫子官破裂と診断し, その時点で帝王切開に移行すべきである。

 産科婦人科用語間題委員会報告(乙B9) を根拠に過強陣痛を定義づけることには問題があり, 過強陣痛が異常に強い陣痛であるとすれば, 胎児仮死を起こしたり, 子宮破裂を来した場合には, その時あるいは破裂直前の陣痛は過強陣痛と定義されるぺきである。確かに, 外測法では, 子宮内圧空絶対値を厳密に測定できないが, 相対的に陣痛の強さを比較することは可能であり, それゆえ, 被告病院助産婦も, 午前1時41分から2時15分にかけての陣痛の増強について「過強っぽいね」と答えたのである。

被告側主張

 午前2時30分ころの時点で, 原告産婦は切迫子宮破裂の状態ではなかった。上記時点で, 原告産婦には, 切迫子宮破裂の症状が認められず, また痛みも訴えていなかった.

 切迫子宮破裂の特有の所見にはエコー検査により確認可能なものはないので, エコー検査を施行しても切迫子宮破裂を診断することまできない。

 原告らは, 同時刻ころ原告産婦は過強陣痛であったと主張するが, 午前2時から2時15分ころの陣痛周期は4,5分、持続時間は60秒くらいであり, 子宮口が4から8cmくらいの時点での陣痛として決して過強陣痛ではなかった(産科婦人科用語間題委員会報告(乙B9) による基準) 。また,午前2時15分ころ, 原告産婦が歩行して陣痛室に移動した直後, 間欠が2分程度と一時短くなったが, 原告産婦が陣痛室にて臥床した後,3分間欠となった。

 よって, 午前2時30分ころの時点で, 切迫子宮破裂と診断して帝王切開に移行すべき義務は認ぬられない。

裁判所の判断

 原告産婦には, 午前2時5分を経過したころから, 子宮収縮時は100mmHg以上の子宮内圧が記録されている。

 過強陣痛については, 一般的にも子宮破裂の危険性があるとされており(甲B11],VBAC においては、なおさら注意を要することは当然であるa

 過強陣痛については, 子宮口開大度4〜6cmで70mmHg以上(子宮内圧),1分30秒以内(陣痛周期),7〜8cmで80mmHg以上,1分以内、9cmから第2期で55mmHg以上,1分以内をいうとされており、また, 外測法ではピークの5分の1点を計り, 子宮口開大度4〜8cmで2分以上,9cmから第2期までで1分30秒以上のものをいう。(6,63 資料30 乙B9)

 原告産婦については, 上記のように強い圧力が記録されており,この測定値は必ずしも子宮内圧を示すものではない(M鑑定書) としても、通常より強い陣痛があった事が認められる。

 この点についてK助産婦は, 陳述書(乙A3) 及び証言において, 過強陣痛ではない、ゼロリセットがずれているので正確な数値ではないと述べるが, 過強陣痛かどうかは別としても, 原告産婦に強い陣痛があったことは知りえたものと認められる。VBACにおいては分娩監視が必要であるとされていたことからすれば, この点において分娩監視を怠っていたといわざるをえない。

過強陣痛と言われても定義が良く分からないのですが、裁判所が採用した定義は、


子宮口開大度 子宮内圧 陣痛周期
4〜6cm 70mmHg以上 1分30秒以内
7〜8cm 80mmHg以上 1分以内
9〜第2期 55mmHg以上 1分以内


原告側の主張は子宮内圧が80mmHgを越えていたであり、被告側の主張は陣痛周期が条件を満たしていないの主張のようです。ここで過強陣痛とは、子宮内圧と陣痛周期の2つの条件を満たしてのものなのか、それともどちらかを満たせば認められるかが分かりませんでした。ただ裁判所の判断は子宮内圧の条件を満たせば過強陣痛としたようで、ここに被告の注意責任義務を認定しています。


(争点4)

原告側主張

 原告産婦は, 午前3時ころも下腹部の限局した痛みを訴えていた。

 分娩記録表(乙A2 ・53 枚胃) の午前3時ころの記載には「発作強いです」 という記載とともに、腹緊時「下の奥の方が痛い」との記載があり, 原告産婦が下腹部の強い痛みを訴えていたことを裏付けている。

 K助産婦は, 原告産婦が下腹部の限局した痛みを訴えていたことを認識していたのであるから, その時点で帝王切開に移行すべきであった。

被告側主張

 午前3時ころ、原告産婦は下腹部の限局した痛みを訴えていない。

 牛前3時過ぎころ, 原告産婦はK助産婦に対し, 「発作が強い」と訴えたが, 間欠がやや長くなった時には, 原告産婦はうとうとした状態であり,リラックスしている状態であった。

 原告産婦が「下の奥の方が痛い」と訴えたのは午前3時10分ころである。分娩記録表に午前3時ころとして記載されていることすべてが午前3時に生じたわけでなく, 一定の時間の状態の変化をまとめて記載したものである。午前3時10分, 子宮口全開大であり, そのときに妊婦が下腹部痛を訴えることはしばしば認められるものであり, 子宮口全開大の時点で下腹部痛があったことが子宮破裂の徴候であるとはいえない.

 よって, 午前3時ころの時点で, 被告病院に、原告産婦が切迫子宮破裂であると診断して帝王切開に移行すぺき義務は認められない。

実は争点4と争点5について裁判所はまとめて判断していますので、争点5も続いて紹介します。


(争点5)

原告側主張

 午前3時lO分, 原告産婦が着けていたガードル型の下着が血液でかなり汚染され、それをどうするか尋ねられ, 原告産婦が「捨てて下さい」と答えるほどの出血があった。

 子宮破裂切迫症状には性器出血があげられており(甲B1 の1 ・表'2),また, 子官破裂の徴侯としても, 「外出血は概して少量であり, 内出血によるショックが惹起される」(甲B12 ・354 頁), 「出血は内出血が主であり, 全子宮破裂では腹腔内に大量出血を認める。また, 少量の外出血が持続的に見られることもある」(甲B9 ・1493 頁) などとされており, 出血は出産に伴い当然に生じるものであり, 切迫子宮破裂又は子宮破裂の症状とは考えられないとの被告の主張は明らかに誤りである。

 午前3時10分, 原告産婦のガードル型の下着が血液でかなり汚染されるほど出血していたから, その時点で帝王切開に移行すぺきであった。

被告側主張

 このときの出血パットの出血は, 少量から中等量程度であり, 大量、異常なものではなく, 持続性の出血でもなく, 分娩経遺の一部として何ら異常ではなかった。

 そもそも, 出血は出産に伴い当然に生じるものであり, 切迫子宮破裂又は子宮破裂の症状とは考えられないものである。

 よって, 午前3時10分ころの時点で, 被告病院に, 原告産婦が切迫子宮破裂であると診断して帝王切開に移行すべき義務は認められない。

裁判所の争点4及び5への判断です。

 この間は原告産婦はモニタリングがされていないが, 原告産婦はK助産婦に対して, 発作が強い, 下腹部の奥が痛いと訴え, また, 少量ないし中等量程度の性器出血がみられた時期である。K助産婦は, いずれも正常な出産に伴う痛みや出血であると判断し, 内診をして子官口が全開大であることを確認したが, 特に医師の診察を求めることはしていない。

 少量ないし中等量の性器出血は, 何らかの異常の徴侯であり, 子宮破裂においてもみられるが, 子宮破裂は内出血が重大なことが多く, 外出血は少ないかみられないこともある'( 甲B55 の10, 同14,74) 。本件出産において, 原告産婦の出血がどのようなものであったかは, 分娩経過表に少量から中等量程度との記載があるほか, K助産婦の証言は明確でないが, 原告産婦は「下着が染まるほど」の出血で, それを処分してもらったと述ぺている。この点は原告産婦の供述等の信用性は高いというぺきであるが, K助産婦は特に異常を感じなかったことからすると, それが通常の出産に伴う以上の出血であったとはいえない。

 しかし, 午前3時10分ころには, 原告産婦は, K助産婦に対し,「下の奥の方が痛い」と訴えているのであり, それまでにも陣痛が強いとも訴え, 分娩監視装置の記録でも100mmHg を超える記録がされていたのであって, それが実際の値と合致するとは限らないとしても, かような記録があり, 出血, 局所的な痛みを原告産婦が訴えている以上, 同人がVBAC であること, しかも胎児の大きさや子宮壁の厚さに鑑みれば, この時点で医師の診察を仰ぐのが相当であった(間欠期は「リラックス上手」との記載もあるが, その際に原告産婦が訴えていた痛みが生じていなかったかについては不明である。)。

 後の分娩監視装置の記録からみても, この時点では胎児に異常はみられず, 原告産婦は子宮破裂に至ってはいなかったが。K助産婦により原告産婦の人工破膜が行われた午前3時32分ころから数分後(午前3時35分ころ) に児心音が低下し, 持続性除脈が現れている。

 持続性除脈の原因は, 後の帝王切開時の所見によれば, 子宮破裂により臍帯が圧迫されたためであるa

 児心音が低下した時点では臍帯圧迫が起こっていたとみられるところ,酸素投与や体位変換によっても改善しなかったことからすれば, このころには既に子宮破裂に至っていたと認めることができる.

 そうすると, 破裂部位の菲薄化はそれ以前から生じていたことになり、切迫子官破裂の状態にあったというべきであるから, 原告産婦が一定の部位の痛みを訴えたころに医師が診察をしていれぼ, 切迫子宮破裂の診断ができた可能性があったと考えられるのであって,被告病院の医師等により慎重に原告産婦の分娩経過を観察すべき注意義務があったことからすれば,原告産婦の訴え等により医師による内診や検査をして確認すべきであったといえる。

 この点について,鑑定結果では, 子宮破裂の機序には触れず,原告産婦が訴えた痛みや出血は正常な出産において頻回にみられるもので, 同人及び胎児に特に異常はみられないから, このころに帝王切開に移行すべきであったとはいえないとし, 児頭が上方に移動し吸引分娩が困難であると判断され, 続く超音波検査にて子宮破裂が強く疑われた時点, 午前3時40分ころに帝王切開に切り替えるべき状態になったする。しかし,前期のとおり, 被告病院の医師らは, より注意深く分娩監視をする義務を負っていたのであって, その義務を果たしていないのに, 異常を示す徴侯がないことを前提とずる鑑定結果は採用することができない。

争点4および5の原告側の主張は、

  1. 下腹部に限局した痛みを訴えていたから子宮破裂の前兆であった
  2. 性器出血があったのは子宮破裂の前兆であった

この二つの主張です。これに対し裁判所の判断は、後の経過から考えて子宮破裂の前兆症状であったとし、この時期に助産婦が医師に適切に報告していれば

    切迫子宮破裂の診断ができた可能性があった

だから注意責任義務を果たしていないと認定しています。


(争点6)

これについては裁判所判断のみ記載します。

 人工破膜は, 通常の分娩においては, 分娩を促達させるために行われるものであって, 特別な手法ではないが, 仮に人工破膜が陣痛(子官収縮)を促進するものではないとしても, 人工破膜により子宮内の圧力の方向に変動が生じるのであり, 菲薄化していた子宮壁がそれによって破裂に至る可能性はあるものと考えられる. 人工破膜が陣痛を促進するものではないとしても, 上記及び人工破膜と児心音低下の時的経過からすれば, 人工破膜が本件出産において子宮破裂の原因ではないものの, いずれ切迫子宮破裂から子宮破裂に至る過程のきっかけとなったということができる。K助産婦が行った人工破膜は, 本件の事情の下では適切とはいえないが, それがいずれ生じたであろう子宮破裂の直接の原因とは認められない以上, 人工破膜をしたこと自体に本件の結果との因果関係があるとはいえない。

ぎりぎりセーフの判定ですが、VBACでの人工破膜は非常に高度な判断が要求される事になります。


(争点7)

原告側主張

 人工破膜後, 児心音が低下した段階で, W医師は吸引分娩を施行し, A助産婦は原告産婦の上に跨がり腹部を思い切り押して児を取り出そうとした(クリステレル胎児圧出法) が, これらは予宮破裂の危険について全く顧慮していない行為である。

 子宮破裂が起こると胎児の体(形) が直接に腹壁上からよくわかり, 胎児が腹腔内に脱出すると腹部の片側に偏在した胎児を腹壁直下に触知できるところ, A助産婦が腹部を押した行為により, かかる状態を原告産婦は認識した。

 切迫子宮破裂を認めた場合, 経腟分娩は禁忌であるから, 人工破膜後, 児心音が低下した段階で, 吸引分娩を施行し, 腹部を思い切り押すことなく,帝王切開に移行すべきであった。

被告側主張

 吸引分娩にっいては, 原告産婦の子宮口が全開大で, 破膜しており, 児頭が十分下降していた状態において, 児心音が低下したことから, 時間を要す

る帝王切開の方法によるよりも, 早急に娩出することが可能な吸引分娩の方法によって, 児を早急に娩出させることが最善であると判断して行ったもの

であり, 緊急時の判断及び処置として医学的に間違ったものではない。

 A助産婦が原告産婦の上に跨がって腹部を思い切り押したことはない。1回目の吸引分娩の際, 吸引分娩を補助するため, 原告産婦の横に立ち, 子宮底圧迫を行ったが, この行為は吸引分娩の補助として不適切な行為ではない。

 よって, 人工破膜後, 児心音が低下した段階で, 帝王切開に移行すべき義務は認められない.

裁判所の判断です。

 前記判示の事実によれば, 原告産婦が子宮破裂に陥ったのは, 児心音が低下した午前3時35分ころと認められる(なお, M鑑定書も同旨であるが, 補充鑑定の結果は, 児心音低下の原因は複数あるからこの時点ではまだ子官破裂の確定診断には至らないという。) ところ, 酸素投与や体位変換をしても児心音が改善しなかったのに, W医師は3 回にわたって吸引分娩を試みたが失敗し, 児頭が上昇したことから, 子宮破裂を疑ってS医師を呼んでいる。

 原告産婦はこのころ子宮口全開であり、児頭の位置はsp+1であった。吸引分娩により初産婦が容易に娩出できるのは児頭の位置がsp+3以下のときであり, 胎児仮死の場合はsp+3以下に下がって初回の吸引分娩で娩出できないときは直ちに帝王切開に移行すべきであるとの見解がある(甲B43) が, 妊婦の状態によっては, 児頭がそこまで至らない場合でも有効な場合があり, 本件出産では, 子官口が全開大であるごとや胎児の位置から吸引分娩は行うべきでないとはいえず、胎児仮死が疑われ緊急に娩出することが求められていたこと, 成功ずれぼ帝王切開よりも早くかつ侵襲なく娩出を終えることができる(鑑定結果) のであるから1、上記のように児頭がやや高かったとはいえ, 吸引分娩を試みたことは被告病院医師の過失とはいえない。

 児心音が低下し, 持続性除脈が発生した午前3時35分ころには既に子宮破裂が生じていたのであるから, 助産婦が行ったクリステレル胎児圧出術は, 原告産婦の子宮破裂の原因ではない。

 鑑定結果は, 早期に胎児を娩出する方法として不適切ではないというのであるが, その当時, 吸引分娩により直ちに娩出ができると考え, それを補助する方法として行われたものであるところ, 繰り返し行われたのものではなく, 手法としては不適切なものと断定できない。

 しかし, 同圧出術は胎盤の血流を悪化させるものであるし, 吸引分娩と同圧出術を試みた際に, 児頭の上昇がみられるなど胎児が子宮内から脱出した徴侯がみられたのであるから, 同圧出術を用いたことは事態をより悪化させたものというぺきである

原告側の主張は

  1. 子宮破裂が疑われるのにクリステレルを行なった。
  2. 子宮破裂が疑われるのに吸引分娩を行なった

これに対し裁判所判断は吸引分娩の方が早く娩出できる可能性があったので、これを試みた事について過失を認めていません。また吸引分娩の補助としてクリステレルを行った事も不適切でないとしています。それでもこれを行った事は「結果として」事態をより悪化させたとして、どうやら注意責任義務をほのめかすような判断をしています。


(争点8)

原告側主張

 VBACを実施するに当たっては, 子官破裂の危険をも顧慮し, ダブルセットアップすなわち直ちに帝王切開を行える準備をして臨むことが不可欠である。そして, 子宮破裂の徴侯など危険を感じたなら, 直ちに帝王切開に切り替えるべきであり, 異常発生時には15分以内に児を娩出することが障害を残さないためには必要である。

 被告病院が子宮破裂に備えて, ダブルセットアップ体制をとっていなかったため, 子官破裂を認識すぺき時期(午前3時32分ころ) から午前4時10分帝王切開手術開始まで, 少なくとも35分以上かかってしまった。

 S医師がエコー検査を実施し, 子宮破裂を確認して, 帝王切開の準備を告げるまで, 帝王切開の準備はされておらず, 結局帝王切開により児を娩出したのは, 午前4時12分であった。被告病院の診療録によれば, 児の娩出まで, 子宮口全開大から1時間以上, 人工破膜から40分経過して持り, 直ちに帝王切開を行える準備をしていなかったことは明らかである。

 母児の状態をモニターできる器具が整っていても使用しなければ意味はなく, 陣痛発来時には血管が確保されていなければならない. 緊急手術赤できるように器具が消毒されていても手術室の鍵をあけるのに時間がかかっていたのでは意味がなく, 麻酔医及び新生児専門医が待機していても, 執刀したY医師は自宅から呼び出されたのであって, 緊急帝王切開手術を担当する医師が病院内にいなかったのでは論外である。

 被告病院がダブルセットアップ体制をとっていなかったことは明白である。

被告側主張

 米国の産婦人科学会の勧告によれば, 緊急帝王切開決定から30分以内に執刀することが望ましいとされている。

 被告病院では母児の状態をモニターできる機器が整っており, 輸血もいつでも可能であり, 緊急手術ができるように器具は消毒されて用意できており,麻酔医及び新生児専門医も待機して, 緊急時に帝王切開に切り替える準備はされていた。

 子宮破裂が起こったのは午前3時40分ころであり, それを速やかに把握し, 速やかに手術室に搬送している。執刀したのは午前4時10分とその30分後であり, その2分後には児を娩出している。

 前記のとおり, 被告病院において, 原告産婦について子宮破裂であると疑ったのは, W医師が3 回目の吸引分娩を施行しようと試みた時点(午前3時37分ころ) であり, この時点まで原告産婦について子宮破裂が生じたと判断されるような状況はなかった。その直後, S医師は, 確認のためエコー検査を施行して腹壁下に胎児を認めたため, 午前3時40分, 子官破裂であると診断して帝王切開手術を施行することを決定したものである。

 本件の帝王切開決定から実際に娩出するまでに要した時間は平成7年5月17日当時の一般的医療水準にかなったものであった。

裁判所判断です。

 VBACの試験分娩にあたり, 帝王切開を決定してから手術に着手するまでの時間については, 緊急を要する場合が多く, 短時間であれぱあるほど望ましい。1988年のACOGの報告では,30分以内が望ましいとされていたが, その後,18分以上になると障害を残す場合があることが報告(この事例は平成7年当時でも日本における各文献にも多く紹介されており, 産科の医師の間では知られていたものと認められる。) されるなどし, また, 日本においても, 上記の時間を10分ないし15分であるとすべき意見や, 実施している医療機関の報告がされるなどしており, より短時間であるほど望ましいとされていたのであって, 上記30分は医療機関が遵守すぺき基準として扱われていたものではなかった。

 VBACを含め経膣出産において, 帝王切開に移行するのは, 胎児仮死が見られる場合であるが、その原因として陣痛微弱等による分娩遷延, 臍帯巻絡, 臍帯下垂や子宮破裂等による臍帯脱出等が挙げられる。胎児仮死の徴候として, 遅発一過性除脈, 変動一過性除脈があるが, それらは子官収縮に遅れて胎児に除脈が認められる場合であり, 体位の変換,酸素投与により改善がみられる場合がある。しかし, そのような処置をしても改善がみられない場合や, 本件のように持統性除脈が継続する場合においては, 胎児仮死は重度であることが予想され, 緊急に帝王切開が行われるべきである。

 そうすると, 胎児に影響が出ないための帝王切開が行われるまでの時間は, 胎児の状態により緊急性の程度が異なることは当然であり, 一律に基準として定めることができるものではない。前記報告は,VBACを推進する中で, 起こりうる緊急帝王切開が必要となる胎児の状態などを考えて,帝王切開を行うとの判断から30分以内に手術に着手することができれば,概ねそれに対処することができるから, そのような準備のできる医療機関ではVBACを試みてよい(すなわち, それ以上の時間がかかる医療機関ではVBAC を行うぺきでない) とするものであって, VBACの試験分娩をする際の医療水準を示したものとはいえない。

 持続性除脈の場合は, 遅発一過性除脈や変動一過性除脈がみられる場合よりも, 短時間のうちに胎児に重大な影響が生じることが予想されるから、胎児の障害を避けるためにはより迅速に帝王切開により娩出されるぺきであり, 緊急性は高い.

 したがって, 前記の30分の基準は, それが遵守されたからといって,当然に当時の医療水準を満たしていると評価すべきものではない。

長いので一旦切りますが、ここまでの裁判所の判断は「30分ルール」を巡るものです。被告側が主張した30分ルールに対し、30分は緊急帝王切開の一つの報告としてあるが、病態によってこの時間は異なり、VBACでは

    18分ルール

これが平成7年でもあるとの判断を下しています。

 ー方, 原告産婦が子宮破裂に至ったと考えられる時間(児心音が低下した午前3時35分) から手術開始(午前4時10分) までは35分、S医師が子宮破裂の確定診断(午前3時40分過ぎ) をしてからは約130分以内に手術に着手され, 午前4時12分には胎児が娩出されている。

 児心音が低下してから。子宮口が全開大であり, 児頭がsp+1の位置にあったことなどから, 吸引分娩を試み, 子宮破裂が疑われて, S医師が呼ばれ, 子宮破裂の診断後, 手術室への搬送, 執刀したY医師らの呼び出し, 原告産婦の血管の確保等が行われていたことを考えると, 帝王切開の必要性の判断の時期が遅れたとはいえず, その後の手術開始まで要したた時間も必ずしも遅れたとは評価できない(K鑑定書は, 子宮破裂時期について,診療録の医師の記載と分娩記録の助産婦の記載とに齟齬あるが, 子宮破裂が発生した後に記載した助産婦の記録よりも, 医師の記載を信頼すべきであること, S医師が連絡を受けてから診察をするまでの時間はわずかであるところ, その間にW医師が3回の吸引分娩を行っていたことを考えると, 午前3時32分というのは不自然であることから, 午前3時20分に人工破膜を行い,3分後に持続性除脈が始まったとみるべきであるというが採用できない。)。

 しかしながら, 本件では, 胎児に持続性除脈が発生していたのであり,上記の帝王切開への移行に遅れはなかったと評価できても, 客観的には上記の時間では胎児に低酸素血症による重大な障害が発生する可能性を避け得なかったというほかはない。

 したがって, 被告病院において, 手術決定後30以内に手術を開始したと評価することができたとしても, その事実だけでは被告病院の過失を否定することにはならないが, 吸引分娩を試みるべきではなかったとはいえず, 被告病院の診療体制において原告産婦の手術の要否の判断及び手術開始が遅れたということはできないから, この点を被告病院の過失と評価することはできない.

 また, 平成7年当時からすれば, 各医療機関において,VBACによる出産を行うに当たり, 一般的に直ちに帝王切開を行えるようにいわゆるダブルセットアップ体制(手術室の準備や麻酔医、執刀医等スタッフの待機など直ちに手術に着手できる体制) をとるぺきであったとはいえないから,この点もそれ自体では直ちに過失ということはできない。

3:35に児心音低下時を子宮破裂時と認定した上で、その時点で吸引分娩を試みた事にまず過失はないとしています。またそこから35分で手術を開始した事も評価はしています。その辺りは、

    被告病院の診療体制において原告産婦の手術の要否の判断及び手術開始が遅れたということはできないから, この点を被告病院の過失と評価することはできない.

そこまで評価したのなら過失は無いと言えば、そうではなく、

    客観的には上記の時間では胎児に低酸素血症による重大な障害が発生する可能性を避け得なかったというほかはない。

非常に怪しげな表現を散りばめて判断は続きます。

 しかしながら, 医療機関として一般的に取るべき体制と, 被告病院において原告産婦の状態に対応してVBACに当たりいかなる注意義務を果たすぺきであったかとは別の問題である。

 前記のとおり, 原告産婦は, 子宮壁の厚さが2mmであり, 胎児も大きめであったこと, 経睦分娩の経験がないことなどからすれば,VBACによるべきではないとはいえないとしても, 子宮破裂等により緊急帝王切開に至る可能性は高かったというぺきであり、被告病院の医師としても, 一般的にVBACが結果的に帝王切開に移行する割合が3ないし4割程度あり, 原告産婦は, その可能性が比較的高いことを検査等により知っていたのであるから, 本来, 原告産婦のVBAC にあたっては, 緊急の事態に対応できるようにずぺきであった(甲B56 の, より慎重に試験分娩を施行すぺき症例が参考になる。ただし出版は2002 年) 。

 また.VBACの試験分娩開始後に, 前記のように原告産婦の陣痛が強いことが認められ, 原告産婦も強いことを訴えていたこと、限局した部位である「下の奥の方」の痛みを訴えていたのであるから, より一層, 子宮破裂を確認する以前から直ちに緊急帝王切開が行えるように準備をしておくぺきであったということができる。

原告産婦はただのVBACではないから、「もっと、もっっと、もっっっと」注意すべき義務があったと認定しています。


争点9の損害賠償額の話は省略して1〜8までの争点のうち過失として認定されたのは、

以上のとおり, 被告病院の医師らには, 争点5及び8において過失が認められるというぺきである。

どうも争点3の「過強陣痛」の

    この点において分娩監視を怠っていたといわざるをえない

また争点4の「下腹部の強い痛み」の、

    原告産婦が一定の部位の痛みを訴えたころに医師が診察をしていれぼ, 切迫子宮破裂の診断ができた可能性があったと考えられるのであって,被告病院の医師等により慎重に原告産婦の分娩経過を観察すべき注意義務があった

これについては過失認定はされなかったようです。法律用語の表現は解釈が本当に難しいものです。

結局のところ

    (争点5) :出血
    (争点8) :ダブルセットアップ

この二つについて注意義務違反を認定しています。これについては、

 原告らの主張する分娩監視上の注意義務と帝王切開移行準備義務ば, 分娩経過の監視及び適時の診察をして子官破裂等緊急事態にならないうちにVBACを止める判断をすべき注意義務と緊急事態になっても迅速に対処できるように備えておくべき注意義務であるが、それは, 分娩時における一般的な注意義務に加え, 原告産婦の具体的な状態によって, 被告病院において負うべき注意義務を前提として構成されているものである。

 前記のとおり, 原告産婦のVBACは子宮破裂等の危険性が高かったのであるから, 被告病院は、一層, 原告産婦の分娩経過を注意深く監視すぺき注意義務を負い, また, 緊急の事態に対応すぺき準備をしておくぺきであったということができ, 被告病院において, 少なくとも前記のいずれかの注意義務が果たされていれば, 本件の事態は避けられた可能性が高かったのであって, 被告病院の過失が認めるというべきである。

皆様、長い長い判決文にお付き合い頂きありがとうございました。ここまでたどり着けた方がどれだけおられるか不安を感じるところですが、元の判決文が公開できないので、できるだけ引用を多くした関係と御理解ください。それと貧弱なOCRを使ったので判決文中に誤変換が残っている点もご容赦願います。

個人的な感想として、「結果」として子宮破裂を起すような「要注意」のVBAC産婦に対する注意が足りないとしている様な気がしてなりません。それとこの訴訟は控訴していますが、このまま確定するようであれば日本のVBACはもちろんですが、産科医の逃散が加速するのだけは確実かと思われます。今日は引用するだけで目一杯でしたので感想はそれぐらいです。

元外科医元外科医 2008/05/30 09:04 産科は今も以前も専門外なのですが、この判決によればVBACはするな。ということですね。個人的には初産から帝切なら次回も帝切が安全だと思います。なんで経腟にこだわるのか
理解できません。男だからでしょうか(笑)

一産科医一産科医 2008/05/30 09:21 とりあえず感想。
これを見る限り、産科で
「ダブルセットアップ」と称しているものは殆どウソっぱちだと認定されたと言えましょう。
まあ、一過性徐脈の場合は今回程度の時間でカイザーできれば、ダブルセットアップと見なしてやらんこともない、ということですが、持続性徐脈ならダメだということになります。

帝王切開決定から施行まで、17分以下でできる体制を24時間365日保っている施設を私は寡聞にして知りませんが、どこかあるのでしょうか?
それができなければVBACのときのダブルセットアップとは認められない、とするのであれば、それを満たせる医療機関は殆どないと考えます。それを「医療水準を満たす」とするのであれば、現実に全く即したものではなく、その点については控訴せざるを得ないですね。

一産科医一産科医 2008/05/30 09:23 開業医で、局所麻酔・助産師前立ちなら、それこそ5分でカイザーできるところもあるかもしれませんが。

YosyanYosyan 2008/05/30 09:32 昨日は読んで書くだけでフラフラだったのですが、VBACは「18分ルール」が訴訟では固定しそうな気がします。控訴審で勝ったとしても平成7年水準での勝利ですから、現在のVBAC訴訟では「18分ルール」の壁が聳え立っても不思議ありません。

 >VBACはするな

他に解釈するのが相当難しいですし、現在の産科の戦力からして整備の方向に進むというより、弱体化する傾向のほうが強いと考えられます。完璧なダブルセットアップ体制を組んで医療資源を費やすより、VBACなどやらないの方が妥当な選択と思われます。

お産はやめました。お産はやめました。 2008/05/30 09:38 「ダブルセットアップ」とカタカナで書かれるように、これは海の向こうのもっと医療費をふんだんにかけているところの話です。
分娩後にどちらかの料金しか払わない人に対して「ダブルにセットアップ」しておけるほど、日本の病院は裕福ではありませんし、他の方々が払った分娩料を勝手に自分のために使うことになるのかと。。。。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/05/30 09:43 現状、分娩室でただちに帝切できるように設備がなされていない理由というのは、何でしょうか?清潔度?
前に京都の心タンポナーデの心膜開窓術のときも、オペ室移動の時間を問われましたよね。

BugsyBugsy 2008/05/30 10:01 >米国の産婦人科学会の勧告によれば, 緊急帝王切開決定から30分以内に執刀することが望ましいとされている。

日本の医療体制は米国よりもはるかに後進国だというのを気付いてもらいたいものです。
産婦人科以外の診療科でも「米国では....望ましいとされている。」治療指針は山ほどありますが、といわけ日本では医療スタッフの数が桁違いに少ないので、望ましいとおっしゃいますが、現実には実施不可能な指針が殆どなんですがねえ。

ssd666ssd666 2008/05/30 10:04 この界隈では有名な開業医の先生のところで下の子供を出産させましたが、分娩室の隣に手術室がありました。
麻酔科研修では、予定の緊急帝王切開というのが最初は理解できず、なんだそりゃと思いましたが、麻酔手技を見て納得。
どうして、産科医の先生が、一度でもVBACなどという無謀な賭をしたのかは今でも理解できません。

元外科医元外科医 2008/05/30 10:05 ICUならその場で開腹、開胸できますね。セットも備えてあるので、医師がいれば2−3分で開創可能でしょうか。しかし、有限の医療資源をどう使うかということを考えれば緊急事態の発生の可能性をどれだけ見積もるかということと発生時の対応時間の関係になります。医療費削減の折り分娩をICUレベルでやれと言うのははっきり言って無理でしょう。

rijinrijin 2008/05/30 10:39  怨念ですね。

優駿優駿 2008/05/30 10:44 こういう勧告やガイドラインってこうするように努力しようという努力目標だと思ってました。
ボクは循環器医ですが、心筋梗塞でAHAのガイドラインではDoor to baloon(つまり病院に入ってから心カテをして風船を膨らませるまでの時間)を90分以内にしなさいという勧告があります。
夜間、休日に患者さんがやってきて救急当番がみてもしやこれは心筋梗塞では?と循環器当番を呼んでああ、これは心筋梗塞だから緊急にカテーテルをやろうということになりカテ室の準備、スタッフの招集でカテ室に入室。(ここまでで90分たっている施設いっぱいあります。)
これで、結果悪かったら訴えられて負ける可能性あるということですもんね。
田舎や人が少なくてもがんばってカテしている病院では心筋梗塞も受けられませんね。
しかも今度、日本循環器学会で心臓血管外科を標榜している病院か近くにすぐ外科手術ができるところしかAMIにPCIしてはいけませんってなるみたいです。
本当に田舎でAMIになると昔ながらの保存的両方か長い時間かけて遠くの病院に運ばれるかどっちかですね。
primry PCIが普及してAMI後の合併症が減少しているのにその恩恵には都市部の方しか預かれないようになるようです。


急性心筋梗塞(ST上昇型)の診療ガイドライン
 以前から「急性心筋梗塞の診療エビデンス集」として治療指針はあった。昨年、「急性冠症候群の診療に関するガイドライン」が発表されたが、不安定狭心症と持続性ST上昇を伴わない急性心筋梗塞(非ST上昇型)のみを扱っていた。新ガイドラインは、ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関してまとめた初のものとなる。

 このガイドラインは、発症から入院まで、救急外来またはCCUでの初期治療、入院回復期あるいは退院後の患者管理、など時間軸に沿って構成されている。診断アルゴリズムとして、問診や身体所見から12誘導心電図や採血を実施するまでを10分間以内、冠動脈造影検査のための動脈穿刺までの“Door to needle time”を30分間以内、バルーンによる再灌流までの“Door to balloon time”を90分間以内とすることを推奨している。

 新たな診断基準として「トロポニン陽性」を採用した。心臓外科体制が整っていないだけでなく、近隣病院の外科手術室に転送できない施設における primary PCIについて、クラスIII、レベルCとしたが、会場からは、地方では必ずしも都市部と同じような体制が整わないとする指摘があった。

suzansuzan 2008/05/30 11:05 法律家は、医療裁判では必ず「医師」の意見を参考に聞く(鑑定っていうんですかね)んですよね?
とすると、この裁判の影には、「この対応はまずい」という鑑定を出した産婦人科医がいるってことですよね?
それは誰?
…わかんないんでしょうねぇ。

YosyanYosyan 2008/05/30 11:48 >鑑定を出した産婦人科医がいるってことですよね?

判決文で確認できる鑑定書は2種類です。名字まで分かるのですが、原告側に近い意見書を書いた人物は、徳島脳性麻痺訴訟で、原告側意見書を書いた医師と特定されています。名前はここには出しにくいですね。

一般市民一般市民 2008/05/30 12:03
結論から言えば、今後も原告勝訴の気がします。
医療に拘わらず、他の分野でも消費者有利の
判決が続いています。
他の業界でも業界の人間から見れば、
トンデモ裁判はいっぱいあります。
この件では、もし患者のわがままを受け入れて
VBACで臨むならそれなりの準備をすべきで、
そういった体制を敷けないのであれば
始めから受けるべきではない、という
判断かと思います。

今後はVBACは一切受けないという統一見解を
産婦人科学会は出すべきでしょう。

そうして今後の萎縮医療を国民に問うべきです。

なんちゃってダブルなんちゃってダブル 2008/05/30 12:20 海の向こうでは『ダブルセットアップ』といえば、複数の産科医、麻酔科医(産科専属)、小児科医(同上)がコーヒーでも飲みながら分娩室の隣室で待機している状態をいいます。日本では、、、。麻酔科自宅オンコール(しかも他の都道府県に住んでいる)なんてことが周産期センターでもありますからね。私が医師になった(20年未満10年以上前)の時点で、既にVBACなんて受けた者の自業自得とも言える一面がありました。
H7.よりは後ですが17分?ルールは和文の商業雑誌で普通に目にしていました。レジデントが敷地内に住んでいるようなマンパワー豊富な病院でなければ難しいとか開業医が安易にするべきではないとか学会が野放しにせずにVBACできる施設の基準を設けるべきとか、、、、。
いまだに、乳幼児物品量販店の掲示板などで開業医が『当院ではVBACできまーす!連携施設もあるので安心デーッス!』とか宣伝しているのを目にすると眩暈がします。

KEIKEI 2008/05/30 12:44 昨今の患者救済型判決の流れからして、被害にあった患者がいれば、何がしかの賠償責任が発生するのは致し方ないのかもしれません。結局医師賠償保険(施設賠償保険)の射程の範疇でしょうし、あるいは公立施設であるから保険はきかず県条例で議会に予算をつけてもらうんでしょうか。さすがに不真正連帯債務として病院(県)が担当医に求償することは考えにくいですし、、、。

ただ今回は被告が控訴していますから、今回の判決は確定しておらず、その判決も当事者を拘束しません。

従って、17分ルールが確定したわけではなく、現状では努力目標といったほうが正しいのかもしれません。

産科婦人科学会もVBACについて会員を拘束するルールも決めてくれませんかね(例のガイドラインのようにいかようにも取れるものでは結局どっちつかずですし)。いっそのこと「VBACは学会の認定する施設で行うことを勧告する」とかやってくれれば、、、。

suzansuzan 2008/05/30 13:06 トンデモ判決の裏にトンデモ鑑定あり。

ミクシィで「治療行為の結果の後遺症もしくは患者死亡で医師の刑事責任を問うのはおかしい」というスレッドの議論をいたしましたとき、とある法律関係の方が「法律家が独自で判断しているのではなく、医師の意見をちゃんと聞いて判断している」と書いてました。
つまり「医師の立場から見てもおかしい」という裏づけがあるんだから、裁判官を責めるのは変だ、と。

複数の意見を聞けばいいのでは?に対しては「予算がない」で、その医師の専門外(たとえば産科の事例を腫瘍専門家に鑑定させるとか)を鑑定させるのはどうなのか?に対しては「自分が持っていきたい方向が決まっている場合には、その方向に沿った鑑定書を書いてくれる医師を選ぶ」のだとのこと。

今回も結局、「原告側の主張に沿った鑑定をしてくれそうな鑑定者」が選ばれているのですよね。


鑑定する医師を一定の専門家集団からランダムに3人以上選ぶ仕組みが必要じゃないのか?と思いました。

TOMTOM 2008/05/30 13:29  Yosyan先生、長文お疲れ様です。
 基本的なところなのですが、本件でVBACを選択したのは誰なんでしょうか。最終的には「担当産科医」ということになるのは職責上やむを得ないもしくは当然ですが、病院が危険を指摘したのに原告が強く経膣を希望したのか、病院側から「VBACでやってあげる」とセールスしたのか、正直それによって話が変わると思います。裁判的には(医【学】的客観性に於いても)争点1・2は「結果的に子宮破裂が起こったこと」との因果関係は確かにないですが、主観的にはそこから始まる話だろう、と思いまして。どっちにしても結論はVBACなんかやるな、という事になるんですけれどもね。

 ただ、その点とは関係なく、「op開始まで何分以内でなければならない」という文脈には、「理想の世界はこの世にはない」という事が何故わかんないのかな、と思います。このテの判決ではいつもですが。

BugsyBugsy 2008/05/30 13:45 >原告側の主張に沿った鑑定をしてくれそうな鑑定者

自分が知っている例ですと
「治療に奏功した難治性の000病の一例」なんていう和文の症例報告を書く医師がいます。
仮に100例治療経験があれば難治性疾患で全例完治出来る訳もないのですが、なまじ一例しか成功体験をしてないものですから 自分だったら奏功しうるという部分に固執してしまいます。

しかも裁判官が納得する権威ある社会的地位についていれば 遠い昔の治療経験であっても鑑定書を依頼したようです。教科書を執筆(弟子が実際には書いた)したから経験豊富だろうと判断されて依頼されたお偉いさんもいました。

rijinrijin 2008/05/30 13:51 > 名前はここには出しにくいですね。

 ここで議論する必要もないのですが、そっちのpeer reviewも必要ですね。あまり杜撰な鑑定意見を出し続ける「専門家」については、その専門性を否定するのはやはり他の専門家の仕事です。

 これも自律だと思います。

YosyanYosyan 2008/05/30 13:57 TOM様

誰がVBACを勧めたかは、原告はもちろん「前回C/Sだったので今回もC/Sかと聞いたのにVBACを強く勧められた」と主張していますが、被告側は「VBACと言う選択もある事を話し、危険性を説明した上で原告が了承した」となっています。

裁判所判断を一部引用しておくと、

『原告産婦は, 子宮破裂の心配をしたものの医師の説明で一応納得し, 強く帝王切開を求めたわけではないことからすれば, 原告産婦の意向に反してVBAC による出産が行われたものではなく, 本件出産前に十分な説明を受けていれば, 原告産婦は帝王切開を選択したはずだということはできないから, 患児の障害及び死亡と因果関係があるとはいえない。』

原告はともかく被告は6年近く前の話であり、記録に残り難いニュアンスの問題であるため、裁判所判断もこの点は玉虫色にしているように思います。

TOMTOM 2008/05/30 14:17 >Yosyan先生

 ご回答ありがとうございます。なるほどどっちもそう言うだろう、という内容で白黒つけ難いですね。

L.A.LAWL.A.LAW 2008/05/30 15:06 >suzanさん 2008/05/30 13:06

>今回も結局、「原告側の主張に沿った鑑定をしてくれそうな鑑定者」が選ばれているのですよね。

 いわゆる私的な鑑定(意見書)と裁判手続きにおける正式な鑑定について、整理のために述べますと、前者は、個々の当事者(弁護士)が自分のお願いできる医師にお願いして提出するものですので、それぞれ自己の主張に有利なものが提出されます(不利な意見だったら提出しないことになります)。
 後者の裁判手続きにおける正式な鑑定は、裁判所から医師に対し頼むもので、頼まれる医師は、双方当事者(原告被告)が少なくともその人はだめだと反対しない方になります。
 したがって、一般的論としては、後者の方が中立意見として、信用性が高いとされることになります。

 ただ、この裁判手続きにおける正式な鑑定でも一人だけだとということで、東京地方裁判所では、3人の医師に法廷で、それぞれの意見を言ってもらうカンファランス鑑定を行っていますが、他の地域では、協力してもらえる医師の方が少ない等の理由で、困難なようです。

 なお、裁判手続きにおける正式な鑑定の費用は、鑑定を申し出た当事者(双方申請になることが多いので、その場合は、双方当事者)が負担することになるので、裁判所の予算が少ないこととは直接関係ありません。

YosyanYosyan 2008/05/30 15:18 L.A.LAW様

訴訟での鑑定書の選出ルートは聞いたことがありますが、この判決文ではK鑑定書とM鑑定書の2通があるようです。判決文で「鑑定書」と明記しているのですから、意見書とは別物と考えますが、そういう事も時にあるのでしょうか。それとも用語として鑑定書と意見書が時に混同されるのでしょうか。

L.A.LAWL.A.LAW 2008/05/30 15:48 判決で、鑑定書と書かれていれば、正式鑑定のことだと思います。私的鑑定、意見書等書かれていれば、いわゆる私的な鑑定(意見書)のことだと思います。通常、混同されることはないです。

正式な鑑定が2回以上行われることもありますが、それは、前記のようなカンファランス鑑定は別にすれば、同時に二つの鑑定が頼まれるのではなく、まず、一つの鑑定が頼まれ、その結果が出たところ、鑑定書が鑑定で聞いたことを答えていない(これ自体は、かなり多いのですが、ただ、答えていない程度によるので、簡単には、裁判所は再鑑定を認めません)とか、重要な前提事実を間違えていることが鑑定書の記載、鑑定人の尋問でわかった場合、あらたな争点が発生しそれについて鑑定が必要、など、裁判官が再度の鑑定を必要と判断する場合だと思います(なお、刑事の場合の精神鑑定は、多少違う部分もあるようなので除きます)。

鑑定で不利な結果がでた側が再度の鑑定を求めるケースは、ありますが、通常は、上記のように裁判官が再度の鑑定を必要と認める場合を除いては裁判所は受け付けません(それをしていたら、きりがないので)。

その意味では、少ないケースだとは思いますが、ないわけではないです。

L.A.LAWL.A.LAW 2008/05/30 16:00  付け加えますと、再鑑定される場合は上記のような場合ですので、通常は、そもそも最初の鑑定書が鑑定で聞いたことに答えていないケースも含め、相互の鑑定書は、厳密に同じ鑑定事項に対する鑑定ではないことが多いことになります。

suzansuzan 2008/05/30 16:13 LA LAWさま

鑑定人は裁判所が選ぶのですね。
「予算不足で複数の鑑定人を頼めない」というお話は、確か弁護士さんの仕事をなさっている方から聞いたので、私が勝手に「裁判所の予算」と思い込んだのですね。

ところで、裁判所はどういう基準で鑑定人を選ぶのでしょうか?
たとえば福島県大野病院事件(刑事事件ですよね)、どう考えても産科専門でないドクターが鑑定書を書いていましたけど。
原告被告の双方が反対しない人間を選ぶとおっしゃいますけど、産科専門でないドクターと知っていれば、少なくても被告側は反対したと思うのですが。

HirnHirn 2008/05/30 16:37 ええと、この判決文には「原告提出のK鑑定書」と書いてありましたので、徳島でもお名前の挙がった先生は原告側協力医です。

suzansuzan 2008/05/30 16:45 原告提出の鑑定書、ですか。
じゃあ、被告側に有利な内容が書いてあるわけはないですよね。

鑑定書って原告側、被告側からそれぞれ「私的」に提出されたのを、裁判所が後で「おおやけ」のものとして採用する、というルートもあるんですか?
その場合は、鑑定書がふたつ出てしまうことになりますけど。
先ほどのLA LAWさまのお話では、ふたつ出る場合は「裁判所が再鑑定を必要と認めた場合」だけかと思ったんですが、またしても私、何か勘違いしてますでしょうか?

で、原告側から提出された「私的」鑑定書が「おおやけ」に採用されてしまった場合には被告側に不利になることは目に見えますから、被告側は当然採用に反対すると思うのですがどうなんでしょう。

YosyanYosyan 2008/05/30 17:29 suzan様

L.A.LAW様の意見に反する事になるのですが、どうもこの判決文での「鑑定書」の用語の使い方は厳密を期していない様な気がします。つまりK鑑定書もM鑑定書も「意見書」ではないかと考えられるフシがあります。それ以外に漠然と「鑑定所見は」という表現が為されており、別に鑑定書があるのかもしれません。文中のK鑑定書、M鑑定書は神経質なぐらい注釈を使っているので、名字を冠する事で本物の鑑定書と区別している可能性を考えます。

それと判決文の読み方に私もそんなに詳しくないのですが、ある意見によれば鑑定書に甲号証とか乙号証みたいな引用表現を用いないとされていますから、原告ないし被告側の意見書の可能性はあると考えます。

うらぶれ内科うらぶれ内科 2008/05/30 17:45 suzan様
>たとえば福島県大野病院事件(刑事事件ですよね)、どう考えても産科専門でないドクターが鑑定書を書いていましたけど。

あれは裁判所選任の鑑定医ではなく、検察側協力医です。この事件では検察はまともな産科の協力医を確保することもできないくらい杜撰な起訴をしたのです。

YUNYUNYUNYUN 2008/05/30 17:49 > 裁判所はどういう基準で鑑定人を選ぶのでしょうか?

最近では、学会などに推薦依頼することが多いようです。
しかし、モトケンブログでの医師の方のご意見によりますと、
学会内の政治的力関係により、必ずしも医学的に最適の能力の医師が推薦されないことがあるとのことで、それは司法の側では如何ともし難い問題です。

> 鑑定書って原告側、被告側からそれぞれ「私的」に提出されたのを、裁判所が後で「おおやけ」のものとして採用する、というルートもあるんですか?

私的鑑定(意見書)だけで、裁判所が鑑定人を依頼しない事件もあります。
その場合に、両意見書の内容が一致しなければ、裁判所がどちらが信憑性有るかを判断します(証人の証言が食い違った場合と同じように)。
当然ながら、裁判官が「選び違えた」と批判されている事件もあります。

そこで、私が思うに、
裁判に使う鑑定は全て、厚生労働省の医療安全調査委員会に依頼することにしたら、よいのでは。
原告・被告がわざわざ協力医を探して頼む必要はなくなり、裁判に出される医学的意見が一個に統一されるなら、裁判所が選び違えたと非難されることもなくなり、万々歳。

うらぶれ内科うらぶれ内科 2008/05/30 17:57 鑑定というのはすでにビジネス化しているようです。

http://www3.ocn.ne.jp/~mmic/003request.htm#01

ssd666ssd666 2008/05/30 18:05 http://www3.ocn.ne.jp/~mmic/doctor.htm
おもしろいメンバーですな。

BugsyBugsy 2008/05/30 18:35 YUNYUN様

ご教示いただければ幸いです。
おっしゃるように
>裁判に使う鑑定は全て、厚生労働省の医療安全調査委員会に依頼することにしたら、よいのでは。
というご意見には賛成です。同時に委員会の規模を大きくするしかないようにも思います。

ただ同時に警察も遺族から問い合わせがあれば独自に捜査を行う可能性を残しています。
この場合、医師法第21条の届け出先は、警察の刑事課であり刑事訴訟法の観点から捜査を進めることになると思うのですが、医療安全調査委員会の審議結果とは相容れない事案も出てくる可能性もあるのではないでしょうか。

あるいは警察独自の「医療調査委員会」のようなものを作って医師側のメンバーを入れるか 最初から医療安全調査委員会の審議結果に従うとする法律改正をする必要があるのではないでしょうか?
医師側としては極端な話ですが、医療機関で人が死亡されると「人が死んだ以上、被害者がいれば加害者もいるだろう。」という視点で捜査されそうで どうも医療現場の感覚とは合わないんですね。検察にあがっても何がしかの医療の専門家の意見に鑑定人という言い方がふさわしいかはわかりませんが、耳を傾けていただきたいのです。

YosyanYosyan 2008/05/30 18:35 神は存じてますが、それ以外はちょっと。

元外科医元外科医 2008/05/30 19:55 医療機関で暴力団員と間違われて射殺などというのは、当然警察の仕事にして頂いて
かまいませんが病死や合併症死まで刑事事件になるようでは医療は出来ません。逃散です。
第3者機関が出来た後は本当の医療ミスでも刑事介入は控えるべきだと思っています。

暇人28号暇人28号 2008/05/31 06:39 >裁判に使う鑑定は全て、厚生労働省の医療安全調査委員会に依頼することにしたら、よいのでは。

YUNYUN様のご意見に同意します。
この医療安全調査委員会に関しては、裁判所の付属機関としての役割を担ってもらうのが現実的かと。そのように割り切ったほうが医療従事者側としてはまだましだと思います。今までの鑑定を拝見すると、一人のトンデモ医師の書いたトンデモ鑑定書が独り歩きしていることが多かったようですしね。多数による合議制にしたらトンデモ鑑定は減少するものと思います。ただし、司法となるのであれば、当然不利な証言を拒否させてもらってもいいわけですよね。

まあ、これによって医師の逃散が減少するかはわかりませんがね。

YUNYUNYUNYUN 2008/05/31 15:20 Bugsy先生
民事訴訟をどうするかという問題と同時に、刑事手続きをどうするかという問題があるというのは、ご指摘の通りです。

これは以前、第三次試案のエントリに書いたことですが、
私にすれば、刑事民事の全ての司法手続きにおいて、医療安全調査委員会の意見を聴くということに、なぜしないかと思いますよ。
せっかく国家予算(国民の税金)を費やして新たな組織を作ろうというのだから、それを最大限に利用すればよろし。

特に刑事。
病院が自ら委員会に届出たものであろうと、遺族が警察に通報したものであろうと、医療安全調査委員会の意見を聴けばよいではないですか。
警察はどうせ、どこかの協力医の意見を聴かなければ捜査できないのですからね。警察で別個に調査委員会を作るというのも、無駄な話です。
厚生労働省は、医療安全調査委員会が「過度な刑事訴追を防ぐ」と説明していますが、そのためには論理的に、全ての刑事事件は調査委員会の判断を通る、ということでなければならないでしょう。

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> まあ、これによって医師の逃散が減少するかはわかりませんがね。

私は、医師の逃散は訴訟が主原因ではないと考えておりますが(国家が医療にもっと予算をつぎ込まないのが悪いとオモ)、
モトケンブログのほうでは、医師の皆さんは、トンデモ訴訟が逃散の第一原因だという主張が多かったですね。

もっとも、逃散の主原因が何であれ、トンデモ訴訟があってよいことにはなりませんから、
トンデモ訴訟阻止のために、ちょうど使えそうな医療安全調査委員会を使ったらよかろうと思います。

L.A.LAWL.A.LAW 2008/05/31 15:26 >YUNYUN様
>L.A.LAW様の意見に反する事になるのですが、どうもこの判決文での「鑑定書」の用語の使い方は厳密を期していない様な気がします。

私の感覚だと、鑑定書というと、私的なものは含まれないと思うのですが、判決がYUNYUN様のおっしゃっているとおりだとすれば、私が間違っており、使い分けない裁判官もいらっしゃるのでしょう。

YUNYUNYUNYUN 2008/05/31 17:02 > 判決がYUNYUN様のおっしゃっているとおりだとすれば

L.A.LAW先生、それはブログ主Yosyan先生のご説明です。
私は判決書そのものを拝見しておりませんので、本件でどうなのかは、何とも。

一般的には、L.A.LAW先生のおっしゃるように、裁判所が依頼する鑑定人が作成したものだけを「鑑定書」と呼び、原告または被告の協力医が書いたものは「私的鑑定」とか「医学的意見書」として、使い分けると思います。

YosyanYosyan 2008/06/02 12:19 L.A.LAW様

お恥ずかしいのですが、よく読みなおしてみると、

・鑑定及び補充鑑定の結果(以下「鑑定結果」という。)
 →裁判所の依頼した鑑定人

・原告ら提出のK医師作成の鑑定書等(甲B55の1(以下「K鑑定書」という。
 →原告協力医Kの意見書

・被告提出の鑑定書(乙B13の1)作成者M医師
 →被告協力医Mの意見書

こういう注釈があり、これにより以後、K鑑定書、M鑑定書として以後の判決文に用いられていました。私の読み込み不足で混乱させて申し訳ありません。

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