新小児科医のつぶやき

2008-07-09 学会のお墨付

7/7付け読売新聞より、

くも膜下出血、5〜8%見逃す可能性…風邪や高血圧症と診断

 くも膜下出血の患者のうち約5〜8%が、最初の受診で風邪や高血圧症などと診断され、出血を見逃される可能性のあることが、日本脳神経外科学会の調査でわかり、7日に記者会見で発表した。

 激しい頭痛があれば、コンピューター断層撮影(CT)検査をするが、軽い頭痛程度の患者まで全員を検査できない、という。こうした見逃しの確率が示されるのは珍しい。

 同学会は昨年1月から今年5月に宮城県内の病院に入院したくも膜下出血の患者198人について、確定診断を受けるまでの経緯を調べた。開業医などの初診では、頭痛や肩こりといった症状を訴えた10人は風邪や高血圧症などとされ、CT検査もなかった。

 また、1996年から05年に山形県内の病院に入院した患者293人中23人も宮城と同様だった。

どこかで読んだような話と思っていたら、一昨年の桑名事件の時に論議になったテーマです。桑名事件では疾患が脳腫瘍であり、今回の記事はクモ膜下血腫ですが、医師が見える症状としてのテーマは「頭痛」です。頭痛の主訴に対してどういう対処を考えるのかが問題になります。

正統的には他の症状や所見もあわせてルールアウトしていくのが医師の腕の見せ所なんですが、「神の手」レベルならともかく普通の技量の医師なら完璧な診断は不可能です。「神の手」レベルの完璧とは100%無謬であり、普通の技量とは90%以上、いやこの記事によると92〜95%を指します。それでもって「神の手」レベルは「神」の名の通り、この日本に居るかどうか、いや世界中探しても居るかどうかのお話になります。

ただJBM的に頭痛の話になるとルールアウトの技量の話にはなりません。話の焦点は単純で頭部CT検査を行うか否かに絞られます。頭部CT検査を行っても時期によっては診断がつかなかったり、後日の所見と照らし合わせて「見落とし」騒ぎは現実としてありますが、とりあえず頭部CT検査を行わずでの「見逃し」は非常に大きな医師側の失点になるのだけは事実です。後日の「見逃し」騒動は回避できなくとも、当日の「見逃し」騒動を回避するために頭部CTをどうするかがJBM的な問題です。

当日に頭部CTを行なわないのは、JBM支配下の医療では医師のみがリスクを抱え込むのは周知の事実です。「見逃し」問題は技量では解消しません。ここでルールアウトの技量で100%回避する自信がある方は読まなくて結構です。私が対象にしているのは「神」ではなく「人」ですから、「神」に理屈を説く様な畏れ多い事をする気はサラサラありません。

「見逃し」問題は技量の問題でなく「統計学」の問題と考えます。技量ではカバーできない「見逃し」が「統計学的確率」で発生し、「見逃し」のうちこれも「統計学的確率」で訴訟問題に発展します。訴訟問題に発展すればこれもまた「統計的確率」で有責かどうかが決定します。当日に頭部CTを行なわないという判断はその後の

  • 統計学的な「見逃し」発生
  • 統計学的な「見逃し」からの訴訟発生
  • 統計学的な「見逃し」訴訟での敗訴

このリスクを必然的に背負うという事になります。主訴の一つに「頭痛」が含まれる患者を診察し、これに頭部CT検査を行わないという行為は、自動的にこういうオマケがついてくるのが現実です。またここには時にオプションがつきます。頭痛にCTは患者でも良く知られている知識であり、診察中に一言でも「CT」と患者が発言すれば、訴訟発生率、訴訟敗訴率は司法的要素が加わりに飛躍的に高くなります。この「CT」の発言を押しきるオプションリスクは計り知れないものがあるように思います。

そういう訳で、これは桑名事件に頂いたれい様のコメントですが、

 頭痛のある方が病院受診したなら、CTを置いているところであれば、ルーチンCT(単純)は必須だと思います。恩師の神経内科の先生が頭痛の統計を出していましたが(非公式か公式かはわからないけど)、初診1000例のうち脳腫瘍は5例見つかっております。この統計を知ってから、頭痛の患者さんはルーチンに単純頭部CTをとるようにしています。確率からいって、スクリーニングでCTは間違っていないと思います。

 ただ、単純CTだけでは判断できない症例も確実に存在し、その場合には、MRI(造影つき)をとることになりますが、設備の関係で造影MRIは1週間くらい先になるのは普通ですね。1週間で取れれば、早いと思うほどでもあります。

 自験例では、頭痛のみでの脳腫瘍は2例です。頭痛のみの人の頭部CTは300件もとっていないと思うので、確率は結構高いと思っています。

れい様のお話は脳腫瘍のお話ですが、くも膜下出血であっても意味合いは本質的に変わらないかと考えます。つまり「頭痛」で受診されたら

    頭部CTはルチーンである

現実問題はともかくJBM的には頭痛にCTは結論が出ているお話です。そういう観点からすると、日本脳神経外科学会の調査結果の発表はJBMの裏付け調査と考えるのがもっとも自然な解釈であると考えます。実際の調査報告にはそういう趣旨で書かれていなくとも、学会の公式データとして5〜8%の「見逃し」とあれば、今後は

    こんなに見逃されるのが分かっているのにCT検査をしなかった

こういう主張がJBM的には益々猛威を振るう事になります。これに対応するにはあくまでも「神」であるとして従来の正統的な手法を守るか、「人」として流されるかになります。自称「神」を除いて、学会報告のお墨付にしたがって「人」として行動する医師がどっと増えそうな気がします。

mosriteownermosriteowner 2008/07/09 08:04 おはようございます。
>頭部CTはルチーンである
 今の勤め先は、一応救急告示病院であり、CTもありますが、診療時間外に技師は常駐しておりません。そういった態勢で、もし頭痛患者を受けざるを得ない状況になった場合も、CTは…とらないとダメなんでしょうなぁ。技師を呼び出してね。

元もと保健所長元もと保健所長 2008/07/09 08:33 法匪学会、内科学会に続いて今度は脳外科学会ですか。
自分たちの領土拡大の主張が結局全ての医療現場と医師をおとしめることに気づかないのですね。
本当に学者さんは始末に負えません。

峰村健司峰村健司 2008/07/09 08:35 某僻地では,日中の通常時間帯であっても,放射線技師はレントゲンまでの担当で,CTは医師が取説を片手に撮影しているとのことでした。

BugsyBugsy 2008/07/09 08:44 珍しく 毎日新聞が(非難でも中傷でもありません)

 >米国では5〜12%の見落とし率という報告がある。嘉山教授は「くも膜下出血の診断は難しく、完ぺきな診断はできない。現代の医療でも見落としは不可避という現実を周知し、脳ドックの普及など社会全体で対策を考えるべきだと思う」と話している。

「現代の医療でも見落としは不可避という現実を周知し」
といった部分を除いて「見逃し」という言葉を使ってしまったら まるで診断出来ないのは全て医師のミスであるという印象を与えてしまいますね。そこが印象操作か一方的な決めつけのようで嫌らしく感じてしまいます。

神経内科医です神経内科医です 2008/07/09 08:44 JBMとしてはCTでいいですが、3年間以上の慢性頭痛で脳の器質性疾患疾患の見つかる確率は無症状の方に見つかる確率と同じです。もちろん、この前提には神経学的所見がきちんととれることが必要だとは思いますので、神経専門以外の方が診る救急では即CTでもいいと思います。くも膜下出血はまずCTはそれでもいいけど、それだけでは危険です。本当の突然発症でなければ、疑わなくてもいいし、本当に突然発症ならCT、所見なしなら腰椎穿刺です。ここまでしないといけません。病歴をどうとるかに本当にかかっていて、病歴をとるのが難しいもんだと思います。
このご時世ですから、頭痛即CTでいくしかないのですが、それだけが強調されるとなんだか寂しい気もしてしまいます。

テキサンテキサン 2008/07/09 08:46 Yosyan先生、こんにちは。
EBMや標準医療の話ではなくあくまでもJ-JBM(日本のJBM)の話ですよね。
EU諸国を併せたよりも多数のCT、全世界の1/2のMRIを有する「機器天国」日本では、「頭痛があればなにはともあれCTを」という欧米から冷笑されるような医療常識が今後もまかりとおるのでしょうね。
脳神経学会は決して ”日本ではわずかな(致命的でない)SAHも含めて92-95%も初診時に診断できている。そのうえ数日内の診断でも許される脳腫瘍まですぐに見つけている。これは世界的にみてすごい事だ!” と表現しているわけではありませんね。
この件に限りませんが、おかしなjudjementとヒステリックな世論によってゆがんだ医療を続けていかねばならないのはなんとも悲しい事です。

通りすがりX通りすがりX 2008/07/09 08:46 エントリーの論点とは異なりますが、日本人の約80%は、一生涯に頭痛を経験するといわれています。すると、日本人100人に76人は一生涯に頭部CTを撮影するということになりますね。

DrPoohDrPooh 2008/07/09 09:05 全例紹介という流れになっていくんでしょうか…。こちらの頭が痛いです。

LTLT 2008/07/09 09:07 極力診断漏れがないようにするためには全例CTは当然となります。さらに読影が正しいかどうか、専門医を複数配置しておかないといけませんね。
医療経済としては膨大なコストを負担する覚悟がないと出来ないわけですが、そんなことには触れてもいません。こういう発表は世論をミスリードします。
ここまで医療費を削減しようという国ですから、コストと見落とし率から最もパーフォーマンスが良いのは・・・程度まで行えばよい、と検査基準を示す方が余程まっとうな議論を起すと思います。

沼地沼地 2008/07/09 09:13 頭痛にはCTは撮れる病院ではかなりスタンダードにならざるを得ないのかもしれません。
ただし技師さんを当直させる、呼び出す、当直の医師が取説を片手に撮影するとしても画像は誰が判定するのでしょうか?
放射線科医、脳外科医、神経内科医が常にいる病院以外で、専門で無い医師が少量のクモ膜下出血を見落とした場合もかなり怖そうです。
CTをとらないで訴えられる確率ととったのに見落として訴えられる確率、訴えられた時にどっちが責任が重いとされるかなど、不気味な地雷がたくさん埋まってそうですね。
どっちが患者さんのためになるかじゃなくて、どっちが医療従事者を守れるかって観点で話しをしなきゃいけない社会状況が既にどうかしてる気もしますが。

SeisanSeisan 2008/07/09 10:55 もう一つ、私のような開業医が恐れるのが、「頭痛の患者を診たのに、CTを撮れる施設に紹介しなかった」と責められることなのですが、これはどうなのでしょうね。
まあ、私は小児科医なのですが、親の頭痛の相談を受けることもあるので。

BugsyBugsy 2008/07/09 11:13 SAHが全例を通じて突然の頭痛発作に続く意識障害や瞳孔不同ならば診断に苦労はしません。頭痛よりも首の凝り、肩の痛みが初発症状のこともあります。当然心筋梗塞も可能性があります。
頭痛と患者が訴えても 実際には後頭部から頚部の事もあります。灼熱感らしいこともあります。夕べから寝違えたみたいで首が痛い、或いはひょっとしてと頭部CTを撮影してもSAHがはっきりしないことも少なくありません。首の凝り、瞬間的な目眩感の患者は全員spinal tapかなあ?それも極端だと思います。
一方でsudden onsetと言いつつ、先週やはり軽い頭痛があったとのたまう患者もいます。minor bleedingだろうとは後になって想像するだけです。

意識清明で歩いて来るSAHの患者も少なくないのです。そういった人が全員脳神経外科に受診するとは限りません。結局SAHという疾患に思い及ばねば、非典型例が診断出来るわけがないと思います。「見のがし」とおっしゃいますが、5-10%というのは極めて妥当な数字だと思いますよ。日本全国に沢山CTを揃えて無駄な検査をしやがって、医療費を上げやがったと あれだけマスコミでたたいておいて今度はどういう風の吹き回しでしょう。100%初診で診断が出来るように努力することは大切ですが、国民が本気で100%診断可能だと信じだしたらどうなるんでしょう?お産の二の舞いになりかねないですなあ。

CTを撮りさえすればすれば SAHの全例が診断可能とは真っ赤な嘘です。

なんちゃって救急医なんちゃって救急医 2008/07/09 11:19 CTがすぐに取れない医療環境の方は、まさに病歴勝負だと思います。これも、カルテへの記載の仕方がかぎになります。 もし、高次施設にご紹介なさるなら、CTの取れる施設ではなくて、脳外科対応の可能な施設という選択がよろしいのではないかと思います。

骨科骨科 2008/07/09 11:43 SAHが全例を通じて突然の頭痛発作に続く意識障害や瞳孔不同ならば診断に苦労はしません。頭痛よりも首の凝り、肩の痛みが初発症状のこともあります。当然心筋梗塞も可能性があります。
@骨医者としては「腰痛」もいれていただきたいです
で、「腰痛」が大動脈瘤 破裂 つうのもありです、、、
  となるともうねえ、、、、

ssd666ssd666 2008/07/09 11:54 「そもそも緊急MRIというオプションを取れないような施設が、意識障害を診てはいけない」主義の私としては、なんか周回遅れ感を感じますな。
日本の救急を救うには、なんちゃって救急の根絶が必要だと思っているので、CT撮れない施設なんか、さっさと退場すべきです。

元外科医元外科医 2008/07/09 12:33 全国に3次救急の大規模センターを作り1次から3次まで全部やれば救急は完結ですねw

YosyanYosyan 2008/07/09 12:55 ssd様

 >日本の救急を救うには、なんちゃって救急の根絶が必要

今の国民が望む救急医療のレベルを達成するにはそうなりますね。応急措置の姑息策の積み重ねによって出来上がっている日本の救急医療ですが、それでもそこそこ以上の医療を提供してきたと思っています。「なんっちゃって救急」だって、相当有用な働きをして救急医療の下支えをしてきたと思っています。ところがそのレベルの「なんちゃって救急」の評価は極めて低いと思っています。

「なんちゃって救急」のレベルが低いのが問題と言うより、すべての救急が同一の最高水準であることを求められ、医療機関のレベルに応じて提供する医療の質、量は勘案してくれなくなっている事は既成事実です。満たせないところにはJBMの制裁が舞い降りる事になります。救急医療に対して望まれているのは「広く」「厚く」「均質」にですが、「なんちゃって救急」体制が「広く」を現状の戦力で成立させた最大要因でした。これが容認されない以上、廃止せざるを得なくなります。

現在の医療の戦力で提供できるのは「厚く」は不可能ではありませんが、非常に狭い「厚く」になります。零れ落ちるところは「なし」になります。狭くなった救急医療は「厚く」を提供できるかもしれませんが、それを享受できるのはたどり着けた者のみになります。そこまで一度行かないと「再生」な無いでしょうね。

暇人28号暇人28号 2008/07/09 13:13 だからこそ自由診療・混合診療なのですよ。
検査を出来る施設を限定させて(集約化)、しかも自己負担額を大幅に増やす。頭の病気が疑われる人全例に頭部CTの説明をして、「検査するには10万円自己負担が必要です」とすれば無問題です。

何?読影する人がいない?読影する人が24時間365日在籍できる程のマンパワーを病院が備えればいいのです。
そんなに人件費を賄えない?その人件費を賄えるほどまで医療費を増額させればいいのです。アメリカ並みに夜間の緊急CTなら30万円とかすればいいのですよ。

恐らくそういう状況になってみんなが医療を受けられなくなれば、国民のほうから「医療訴訟を制限するから医療費を下げてくれ」って言ってくるのではないのでしょうか。

もちろん、その前に、国民の皆さんが気づいて民事・刑事訴訟を制限するのがみんなにとって一番良いのですが、感情に負かされた人間が煽動している現状では不可能でしょうね。

hot cardiologisthot cardiologist 2008/07/09 13:50 えーと、ちょっとずれるんですが。
悪性腫瘍の治療にガンマ・ナイフってのがありますよね。
その医療機器が人口6000万人のフランスでは、全国でたったの2台。
福祉国家で人口900万人のスウェーデンではゼロなんですって。
で、人口一億人の日本ではかなりそろえているでしょ。
多分、ガンマナイフ機器の世界の半分は日本にあるんじゃない?

MRIも世界の半分以上が日本にあって、CTもマルティ・スライスならやっぱり半分は日本が占めているのでは?廉価版のCTの数も凄いでしょ。
よーするに、医療コストの財源を考えない検査好きの日本国民が、検査、検査ってうるさいから、こういう状況になった。
別に検査しなくても良い状況でも、精査を希望する日本国民の皆様のために、医療コストはどんどん上がる・・・のくせして、医療費削減には賛成している一般国民・・・変じゃのぉ〜〜。
いらない検査のための医療コストとしての財源は、国民のみなさまが負担してきださい。
財源確保としての増税に反対して、医療費削減に賛成なら、この際CTやMRIも自費診療にしていただくのが一番かと。

福祉国家の欧州でも、ここまで検査好きの国民はいませんし、第一、医療機器が日本の半分未満どころか、圧倒的に少ないから、無駄な検査はやりようがないのです。

BugsyBugsy 2008/07/09 14:01 今回の記事で

>開業医などの初診では、頭痛や肩こりといった症状を訴えた10人は風邪や高血圧症などとされ、CT検査もなかった。

ではでは 頭痛や肩凝りの症状の中でくも膜下出血は何%あるのでしょう?
風邪や高血圧症の中では如何でしょう?おそらく統計のとりようがないくらい低いはずです。
こういった患者が一体全体毎日何人ほど受診されるのでしょう?
全員にCTを当日撮影可能でしょうか?何台必要で、何人専属技師が必要でしょうか?

現実には高血圧の患者を全員CTを撮るなんて最初から不可能です。

>CT検査もなかった。
さぼったと言いたいのか、悪意しか感じません。

鼻息で吹き飛ばしてやりたいところですが、昔は脳の病気というだけで 患者家族はあきらめムードでした。マスコミが絶対安全神話を振りまいて小児科、産婦人科と駆逐してきました。今回は脳神経外科や救急医療へとターゲットを変えつつあるんでしょうかねえ。
また逃げ去るなあ。医療費を減らすには格好のターゲットではあります。

元外科医元外科医 2008/07/09 14:26 完全を求めれば頭全部MRI撮るようになり膨大な医療資源が浪費されますね。リーズナブルなコストでやれば6−8%見落とし。それでいいのじゃないかと思います。マスゴミ論調は「6%の誤診は許せない」ですからねえ。一旦崩壊させてグローバルスタンダードを国民に味わっていただくのが最善かとも思うようになってきていますw

信仰告白信仰告白 2008/07/09 14:35 昨日からつづき、医療ミス、「見逃し」と「技量」の話題なので。固定HMで。
専門科が違うのでなんともいえないのを承知ですが、これを判断することができるのが、医者のみなさまだと考えてます。判断するのは、けっして裁判所ではないのでJBMはありえません。そうした積み重ねが、発見率とか治癒率をあげてこられたわけですから。この医療の「進歩」も医者の先生たちの努力のたまものだと考えます。

追記。暇人28号先生の言うように、自由診療になって、>恐らくそういう状況になってみんなが医療を受けられなくなれば、国民のほうから「医療訴訟を制限するから医療費を下げてくれ」って言ってくるのではないのでしょうか。
ですので、医療崩壊して困るのは、医者ではなく国民です。だからどうするのか、マスコミ批判だけしても解決しないので、直接国民に教えていただけるようなことを期待しています。

BugsyBugsy 2008/07/09 14:42 信仰告白様

>だからどうするのか、マスコミ批判だけしても解決しないので、直接国民に教えていただけるようなことを期待しています。

おっしゃるとおりです。
今回の脳神経外科学会の記者会見では「くも膜下出血の診断は難しく、完ぺきな診断はできない。現代の医療でも見落としは不可避という現実を周知し、脳ドックの普及など社会全体で対策を考えるべきだと思う」と述べています。
不可避である点を啓蒙しているのだと個人的には好意的に解釈しています。これも記者会見という場で国民に理解を求めているのだと思います。

暇人28号暇人28号 2008/07/09 14:53 直接国民に情報伝達する術がないからこのような事態になっているのですよ。間に入ってニュアンスを捻じ曲げて「医者悪い」とする人たちがいるから〜。

あなた達のことを言っているのですよ、マスコミの皆様。

今回の記事にしても、毎日は比較的記事の内容をじっくり読めば理解していただけるのですが、見出しだけを見たり(実はこういう人が一番多い)、あるいは他社さんの記事だけを見ると、「診断ミスがこんなに多いなんて日本の医者は何をしているんだ。怠慢だ」となるわけです。

YosyanYosyan 2008/07/09 15:14  >直接国民に教えていただけるようなことを期待しています。

元の学会調査報告を読んでいませんが、間違い無く言えるのは皆様御指摘の通り、「これだけ『見逃し』が出るのは今の医療レベルとしてやむを得ない」のはずです。それ以外の結論を出していると思えません。わざわざ記者会見まで行なって発表した時には、その点をひたすら強調したはずです。

ところがマスコミフィルターを通ると「見逃し」が独り歩きしていきます。それこそ「CT」やればもっと減るみたいな論調に変質します。マスコミの情報発信力は未だに強大です。一度発信された情報のイメージを覆すのは相当な努力を要します、ネット以前では全く訂正不可能でしたし、ネットでもまだまだ発信力として微弱です。B29に竹槍より進歩はしているでしょうが、少数の高射砲だけでは対抗しきれません。悲しい現状です。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/07/09 15:38 Bugsy様が示唆されている通り、くも膜下出血は脳ドック(自由診療)で、ある確率でリスク回避できるのだから、それを怠って、発作が起きたとしても、それは自己責任。保険診療側で、早期発見できなかったとしても、保険診療が有限の公的補助システムである限り、やむをえない、という形で日本国民が受け入れていくしかないでしょう。

この一週間ほど、財務省の資料を中心に、あちこち日本の財政の将来見通そうとがんばってるんですが、今の日本って、破綻前のソ連に似てますね・・
悲観してたけど、ひょっとしたら、楽しいかもしれない。。不謹慎っぽいけど・・
いまの、経済復興したロシアなんて、行く気起こらないからなあ。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/07/09 15:49 続き)
>ひょっとしたら、楽しいかもしれない
なんでかっていうと、国債と預金が相殺されると同時に、国民の心もリセットされますからね。
良くも悪くも、人間の本来の姿に戻ります。それは、ある意味、とても「人間的」な世界かも。

PSBPSB 2008/07/09 17:35 脳神経外科の教授が脳ドックの普及について本当に言及しているなら違和感を感じます。家族暦や他のリスクファクター(ADPKD等)がある場合適切かもしれませんが、一般層に対するスクリーニングには何のエビデンスもありませんし、検査自体に相当のリスクを伴います。
そこが、子宮癌、大腸癌のスクリーニングとは決定的に異なります。

UP TO DATEより

RECOMMENDATIONS OF EXPERT GROUPS — A task force of the Stroke Council of the American Heart Association published recommendations for the management of patients with an unruptured intracranial aneurysm in the year 2000. The task force identified no randomized, controlled clinical trials that addressed cost-effectiveness, so all recommendations were Grade C. They concluded the following:

Screening for asymptomatic intracranial aneurysms in the general population is not indicated.
Theoretical modeling suggests that screening is not efficacious in populations with genetic syndromes associated with cerebral aneurysm formation or in family members with a single first-degree relative with aneurysmal subarachnoid hemorrhage or an intracranial aneurysm.
In populations with two or more first-degree relatives with intracranial aneurysm, screening programs have demonstrated an increased incidence of intracranial aneurysms, but the cost-effectiveness of screening in these populations has not been evaluated. Screening in these individuals should be considered on an individual basis.

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/07/09 17:48 >PSB様
それは、アメリカの場合は、脳ドックも、SAHになったときの治療も、財布がいっしょだから、2親等以上はなれたひとは、費用対効果の点ですすめられない、って話ではないですか?
日本の場合、脳ドックは自費で、SAHの治療は通常公的保険だから、富裕層が脳ドックうけて、少しでもSAHの発症減らせるなら、いろんな意味でいいことですよ。

崩壊痴呆医崩壊痴呆医 2008/07/09 17:58 半年ほどROM専でしたが失礼致します。

会見の詳細はわかりませんが、見逃しの率は「脳神経外科医以外が初診の場合」に
限定されるようです。脳神経外科医が初診の場合は不明です。
私には「最初から脳神経外科医が診れば見逃さない、他科医は診るな。
俺たちが診てもわからなければ仕方がない」という風に聞こえます。

「自称神」の発表ですので。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/07/09 18:05 続)
PSB様のコメントなんか読むと、うーんと唸ってしまいます。。
PSB様は、たぶん、医者または研究者としては、優秀な方なのでしょう。これは、嫌味とかじゃないです。文面から素直にそう思います。
しかし、経済として医療をみるという視点が、なんか、恐ろしいくらいに欠けてるように、わたしなんかには感じられるんですが、どうなんでしょうか?・・
ここんとこ、ちょっと、本気で聞いてみたい。。
いや、わたしも、別に経済の専門家じゃないです、もちろん。しかし、自分でクリニック経営してるんで、若干はそういう感覚は持ってるつもりです・・10年位前、国立病院の勤務医だった頃は、PSB様と同じようなこと考えたりししたのかなあ?
・・もう古いことで忘れてしまいましたが。。。
それとも、わたしが、脳ドックを過大評価しすぎなだけなのかしらん?

元外科医元外科医 2008/07/09 18:41 崩壊痴呆医さま
頭痛は全て脳外科紹介と言うことにしますねw
見逃しはゼロに近づくのでしょう。

TOMTOM 2008/07/09 19:10  えー、世間の皆様。ついでにマスコミの阿保共。数ある医療問題の中でも、これは実は非常にシンプルな話なのです。
要するに、「あなたは何で死ぬのなら納得しますか?」という問いに対し、

1.病院や医者になかなかかかれないので、順番待ちの間に寿命が来た(Accessの制限)
2.病院には行けたがもの凄いお金がかかるので、必要な治療や検査ができなくて死んだ(Costの制限)
3.病院には行けて費用もそこそこで済んだが、それでは非常に精密な検査や非常に先進的な治療までは受けられないので死んだ(Qualityの制限)

言い換えれば、
1.非常に腹が減ったがレストランに1万人並んでいて入れない
2.レストラン行ったらハンバーグ定食が一人前100万円だと言われて払えない
3.レストランは空いてて、一皿500円だが、まずい

さぁどれ? 私ならとりあえず食える分、3なら納得する(より他ない)ですがね。何? お一人様300円で、満願全席を予約無しで今すぐ食わせろ? お客様どうぞお帰り下さい。(笑)

※おまけ(つうかどっちも他人様のWebですが...)
各国のCT・MRIの普及台数比較です。
http://www.geocities.jp/yamamrhr/ProIKE0911-78.html
http://www.ipss.go.jp/seminar/j/seminar11/%E5%B0%BE%E5%BD%A2H1811.pdf

ssd666ssd666 2008/07/09 19:46 MDCTもMRIも、保険診療が無くならない限り、あっという間に他の国に追い抜かされますよ。
高い機種を購入するインセンティブがほとんどありませんから
安い機種で更新して、台数だけはそれほど減らないかも知れませんがね。

脳外科医以外の見逃し率が問題なら、全部、脳外科医が診るのが良いでしょう。
放射線科医は、まあ、質はともかく、俺らの方が見逃し率低いなんて傲慢発言は
思っていても言わないです。

YosyanYosyan 2008/07/09 19:55 崩壊痴呆医様

亀レスになってしまいますが、もし本当なら自分で自分の首を絞める調査報告になります。そりゃ、脳神経外科医の方が発見率は高いでしょうが、そんなものを自慢してどうするんだと言いたいところです。結果として押し寄せてくるのは他科からの頭痛患者の紹介の山だけです。そんなに脳神経外科が人手も時間も持て余しているとはとても思えないのですけどね。

もっとも最終的な評価は実際に調査報告書を読んでからにしたいと思います。もちろん読めたらですが・・・

ロハスメディア・川口ロハスメディア・川口 2008/07/09 20:24 脳神経外科学会のサイト http://jns.umin.ac.jp/ によると

なお、本学会発表について、一部新聞報道内容に「初診6.7%見落とす」という、説明内容とは相違する誤解をまねく不適切な表現がありました。強く抗議を表明します。

だそうです。

banch1banch1 2008/07/09 20:41 母数はSAHなのにいつの間にか頭痛にすりかわっている。
きっとわかってやってんだろうな〜。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/07/09 20:42 医師の診断も、広い意味で「検査」のひとつと考えると、そこには、感度と特異度を考えることができます。
「見落とし」というのは、疾患があるのに無いと判断したことだから、「感度が低い」ということになります。
脳外の先生は、他科の先生に比べて感度が高い、と言えるかもしれません。
その一方、特異度は、疾患がないのにある、と判断してしまった、すなわちoverdiagnosisの率を、1から引いたものです。
これはどうでしょうか?・・根拠はないですが、脳外の先生のほうが低そうな気がします。
・・と、ここまで考えましたが。。
続きは、またあとにします(^^;。。

寒風寒風 2008/07/09 21:24 Yosyan様はじめまして.
いつも興味深く見させてもらっている寒風というものです.
私は医療関係者ではないのでコメントするのが少々怖いのですが今回思い切ってコメントしてみました.

今回のニュースをみて感じたのは,何でこんなことを発表したんだろうということでした.
「5〜8%見逃す可能性」なんて報告をだすだけだったら医療批判を招くえさにしかならないと思ったからです.
この結果の背景は,対策はなどといったことは発表しなかったのかと思ったら・・・
マスコミフィルターで加工されていたのですね.
私としては学会側から伝えたい内容が違うと抗議して欲しいと思います.

それにしても,マスコミは本来情報を的確に要約し皆に提供する役割だったのにいつから私見を混ぜ込むようになったのでしょうか.
受け取り側としては迷惑極まりないです.

元外科医元外科医 2008/07/09 22:12 一見すると頭痛の6%を誤診するようにも感じますね。
実際は全頭痛のうち0.0なん%がSAHなんだろうw

しがないサラリーマンしがないサラリーマン 2008/07/09 22:56 こんなご時勢ですので、「見逃しではなく診断不可能な割合が必ず存在する」というアピールを積極的に行わなければ一般人はCTで病気が必ず見つかると錯覚したままでしょうね。
医師の皆さんにはなんだかなって会見かもしれません。

最近、金融商品の購入を行ったところいやになるぐらいリスク説明と確認を求められました。
医師個人が検査などのリスク確認を毎度行っている時間は無いでしょうから、学会などを中心として周知していくしかないのでしょうかね。

PSBPSB 2008/07/10 01:45 無症状の動脈瘤を持っている人は相当な数います。下記によると1.8%です。大多数は破裂せずに生涯を終えるわけです。(破裂の率 推定 6 to 16 per 100,000 population) スクリーニングの結果、動脈瘤が発見された場合、治療を選ぶとなると相当のリスクです。未治療ままを選ぶ人もいるでしょうし、知らないほうがよかったと思う人もいるでしょう。

私がいいたいのは、そういった議論なしに、脳神経外科の教授がSAHに対する対策として脳ドックを切り札であるかのように本当に言及しているなら違和感を感じます。もし新聞が例のごとく事実を曲解して報道しているのなら、心底いやになります。

moto-tclinic さんのおっしゃっている、経済として医療をみるという視点とはどういう意味なのでしょう? 各病院・クリニックが得る診療費という意味でしょうか?それとも日本全体の総医療費という意味でしょうか?前者の場合、上記のとおり未破裂動脈瘤を発見することが本当によいことなのかという議論無しに収入のために行うことには保険であれ自費であれ疑問です。文脈からは違うと思いますが、もし後者の場合、明らかに医療費の損失です。

TI Incidental findings on brain MRI in the general population.
SO N Engl J Med. 2007 Nov 1;357(18):1821-8.

BACKGROUND: Magnetic resonance imaging (MRI) of the brain is increasingly used both in research and in clinical medicine, and scanner hardware and MRI sequences are continually being improved. These advances are likely to result in the detection of unexpected, asymptomatic brain abnormalities, such as brain tumors, aneurysms, and subclinical vascular pathologic changes. We conducted a study to determine the prevalence of such incidental brain findings in the general population. METHODS: The subjects were 2000 persons (mean age, 63.3 years; range, 45.7 to 96.7) from the population-based Rotterdam Study in whom high-resolution, structural brain MRI (1.5 T) was performed according to a standardized protocol. Two trained reviewers recorded all brain abnormalities, including asymptomatic brain infarcts. The volume of white-matter lesions was quantified in milliliters with the use of automated postprocessing techniques. Two experienced neuroradiologists reviewed all incidental findings. All diagnoses were based on MRI findings, and additional histologic confirmation was not obtained. RESULTS: Asymptomatic brain infarcts were present in 145 persons (7.2%). Among findings other than infarcts, cerebral aneurysms (1.8%) and benign primary tumors (1.6%), mainly meningiomas, were the most frequent. The prevalence of asymptomatic brain infarcts and meningiomas increased with age, as did the volume of white-matter lesions, whereas aneurysms showed no age-related increase in prevalence. CONCLUSIONS: Incidental brain findings on MRI, including subclinical vascular pathologic changes, are common in the general population. The most frequent are brain infarcts, followed by cerebral aneurysms and benign primary tumors. Information on the natural course of these lesions is needed to inform clinical management.

cobonzucobonzu 2008/07/10 07:12 「脳卒中における新知見に関する学会発表」
http://jns.umin.ac.jp/~jns/cgi-bin/page.cgi?name=2008_07_09

「記者発表資料は」
http://jns.umin.ac.jp/080707.pdf

これじゃどこをどう抗議してるかわからんと思います。記者発表資料も素人が読むものとしては、はなはだ不適切に思えます。

これでは記者会見の場で、伝わる言葉で発表していたかどうか疑問ですね。

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/07/10 08:01 >PSB様
失礼ともとれるコメントに丁寧なレスありがとうございます。
わたしの「経済として医療をみる」の意味ですが、後者の「日本全体の総医療費という意味」のほうです。おおざっぱに、総医療費=保険診療支出+自由診療、と考えてください。

自由診療でAVMが見つかること自体は、患者にストレスを与えるかもしれないですが、それ自体は何ら不利益を与えません。その先、手術に踏み切るかどうかは、患者の、いわば自分の体への投資態度によります。医者が決めるべきではありません。・・ここをPSB様が、まるで医者が議論して決めるべきかのような書き方してらっしゃるんで、非常に違和感を感じた次第です。医者は統計データのみを提供するべきです。リスクを含んだ投資になるわけですから。まして自由診療(脳ドック)において。

で、脳ドック、それ自体は、たとえば、AVM見つかったら、本気で血圧管理しようとしたり、タバコやめようとするかもしれない。そういう契機になります。よい意味で、自由診療が増え、保険診療が減るのではないでしょうか?

moto-tclinicmoto-tclinic 2008/07/10 08:07 ですから、脳外の教授が脳ドックの普及に言及したとして、それは、見つけたAVMを片っ端から、最近流行の血管内手術でつぶすべいだという意図ではなく、あくまで脳ドック自体のプロモだとわたしは思うのですが・・
AVMが見つかって、SAHの発症時の症状の説明を受けておくだけでも、その患者にとっては大きなメリットであるし、脳外の先生としてもやりがいある仕事と感じるのではないかなあ。