新小児科医のつぶやき

2009-03-07 続30分ルール

2008.4.16付の30分ルールをできたら参照して欲しいのですが、まず30分ルールが発生したと言われるアメリカの見解です。ある産科の有力者からの情報提供です。

 いわゆる「30 分ルール」の存在がある。そのような基準ないしガイドラインはわが国には存在しない。これは米国での議論が不完全な形で輸入されたものである。以下のその事情を述べる。American Academy of Pediatrics(アメリカ小児科学会) とAmerican College of Obstenicians and Gynecologists(アメリカ産婦人科学会) が2002年に発行した書籍であるGuidelines for perinatal care(周産期ケアのガイドライン) にはいわゆる"30-minites rule" 「30分のルール」が記載されている。これは、分娩取り扱い施設に対し、帝王切開術の決定から施行まで30分以内で行うことが可能な能力を求めるものである。「分娩を取り扱うすべての病院は緊急帝王切開術が実施可能であるべきである。看護師、麻酔担当者、新生児蘇生チームのメンバー、産科医を含む必要な人員が院内にいるか、すぐに対応できる状態にあるべきである。産科医療を供給する病院はすべて産科救急への対応能力をもっているべきである。

 処置のタイミングとその結果の関係に関ずるデータは存在しないし、今後も得られる可能性はほとんどないが、一般に、病院は帝王切開実施の決定から手術を開始するまで30分以内に行う能力を有しているべきであるというのがコンセンサスとなっている。帝王切開術の適応の中には、30分以上の余裕が十分にあるものもあるが、逆に前置胎盤の出血、常位胎盤早期剥離、臍帯脱出、子宮破裂等のようにより迅速な児娩出が必要な可能性のあるものも含まれている。」(Guidelines for perinatal care p146-147)

 しかし、これには多くの異論がある。全く同一の団体が発行している別の図書には以下のような記載がある。「この時間制限は、病院の産科病棟が迅速に麻酔、手術室、看護師、産科医、新生児蘇生術などを提供できる能力を持っことが望ましいとの意図をもって決められた暫定的で任意的なものである。臍帯脱出や子宮破裂のような一定の状態ではできるだけ迅速に帝切がなされなければならない。しかし分娩誘発の失敗、会娩進行停止などのある種の状態に対しても同様に30分以内に帝切をすることは必ずしも必要ではなく、また望ましいことでもない。」(Anlerican Clollege of Obstctricians and Gynecologists, American Academy of Pediatrics,2003:Neonatal Encephalopaty and Cerebral Plasy p,35。

 帝王切開を決定してから児を娩出するまでに要ずる時間として、30分以内という数値が示されているが、それはあくまでも目安である。この30分という数値は「標準的な時間」として示されているわけではなく、現状では一般の分娩取り扱い施設においては努力目標と考えるべきである。

少々長いのですが、アメリカでさえ

    この時間制限は、病院の産科病棟が迅速に麻酔、手術室、看護師、産科医、新生児蘇生術などを提供できる能力を持っことが望ましいとの意図をもって決められた暫定的で任意的なものである。

アメリカの医療のピンキリの差は凄まじいので、リッチなところでは30分どころか10分ぐらいで緊急帝王切開が出来るところもあるとは聞きますが、アメリカの産科医療といえどもすべての分娩施設で「30分ルール」の達成など夢のまた夢であるという事です。理想と現実の落差がかなりあるアメリカの「30分ルール」を取り入れてしまったものの一つが日本産科婦人科学会産婦人科医療提供体制検討委員会の平成19年4月12日付け最終報告書「わが国の産婦人科医療の将来像とそれを達成するためめ具体策の提言」に見られます。

 緊急時の体制の整備:多様な分娩施設を許容しつつ安全性を確保するために、分娩を取り扱うすべての施設で、急変時に迅速に帝王切開を含む急速遂娩による児の娩出が可能な体制の整備を行っていく。すべての分娩施設には緊急時の体制に関する情報公開が求められる。努力目標としては30分以内に帝王切開が可能な体制を目指していくが、その達成には産婦人科だけでなく麻酔科、手術室の体制を含む施設全体の対応が必要である。

  1. 必要な人的整備及び施設整備を目的とした公的補助が地域分娩施設群に対して行われるべきである。
  2. 地域分娩施設群を構成する施設間の連携により緊急時の体制が整備された場合は、診療報酬の面で優遇措置がとられるべきである。

もちろんアメリカの「30分ルール」を何も考えずに直輸入したわけでなく、提言として理想としては望まれる「30分ルール」体制の整備できたところを

    診療報酬の面で優遇措置がとられるべきである

言わば「30分ルール」可能施設をスペシャル分娩施設として優遇し、優遇する事によって整備の呼び水にしようと言うぐらいの「努力目標」です。学会の整備目標の趣旨は行政も理解していないわけではなく、平成19年7月20日付医政指発第0720001号「疾病又は事業ごとの医療体制について」地域周産期母子医療センターの項目に、

(エ)医療従事者

以下の医療従事者を配置するよう努めることが望ましい。

  1. 産科及び小児科(新生児診療を担当するもの)は、それぞれ24時間体制を確保するために必要な職員
  2. 産科については、帝王切開術が必要な場合30分以内に児の娩出が可能となるような医師及びその他の各種職員
  3. 新生児病室には、以下の職員

(a)24時間体制で小児科を担当する医師が勤務していること。

(b)新生児集中治療管理室には、常時3床に1名の看護師が勤務していること。

(c)後方病室には、常時8床に1名の看護師が勤務していること。

ここでも「努めることが望ましい」の努力目標にされています。さすがに義務とするには現実との乖離が大きすぎるためだと考えます。ここに3/5付タブロイド紙ですが、

帝王切開:周産期センター「30分で手術可能」3割

 全国の周産期母子医療センターの約3分の2が、国の整備指針に反して「(必要と診断されてから)30分以内の帝王切開手術」に対応できない場合があることが、厚生労働省研究班(主任研究者、池田智明・国立循環器病センター周産期科部長)の調査で分かった。産科医よりも麻酔科医の不足がネックになっており、厚労省が年度内に見直すセンターの指定基準に麻酔科医の定員を明記するよう求める声が出ている。

 調査は昨年3月、全国の総合周産期センターと地域周産期センターに行い、130施設の回答を調べた。

 国の指針では、地域センターは30分以内に帝王切開ができる人員配置、総合センターにはそれ以上の対応を求めている。だが「いつでも対応可能」と回答したのは総合センターの47%、地域センターの28%にとどまり、48%は「昼間なら対応可能」、17%は「ほぼ不可能」と答えた。

 対応が遅れる最大の理由は「手術室の確保」(43%)だったが、人的要因のトップは「麻酔科医不足」(25%)で、「産科医不足」(17%)、「看護師不足」(14%)より多かった。54%の施設は当直の麻酔科医がおらず、緊急の帝王切開では執刀の産科医が麻酔もかけているセンターが16%あった。

 麻酔科は産科、外科などと並び医師不足が深刻とされるが、帝王切開で通常かける麻酔の診療報酬が全身麻酔の場合より著しく低いため、特に周産期医療の現場に集まりにくいとの指摘がある。

 分析に当たった照井克生・埼玉医大准教授(産科麻酔科)は「リスクの高い妊婦を受け入れるセンターには産科手術専属の麻酔科医の配置を義務付け、人員確保がしやすいように診療報酬を加算すべきだ」と訴えている。【清水健二】

まずですが

全国の周産期母子医療センターの約3分の2が、国の整備指針に反して「(必要と診断されてから)30分以内の帝王切開手術」に対応できない場合がある

この、

    国の整備指針に反して

この「国の整備指針」が何かなんですが、平成19年7月20日付医政指発第0720001号「疾病又は事業ごとの医療体制について」の中に書いてある、

医療機関に求められる事項

 母子保健通知の「周産期医療システム整備指針」第2(1)総合周産期母子医療センターの項を参照されたい。

これの原文は周産期医療対策整備事業の実施について(平成8年5月10日児発第488号)になります。内容は平成19年7月20日付医政指発第0720001号「疾病又は事業ごとの医療体制について」とほぼ同じになります。平成8年といえば1996年になりますから記事にある

調査は昨年3月

この時期でも12年前の「国の整備指針」の調査となります。12年前の通達が現在も達成できていないのロジックは時期的には成立します。ただこの整備指針の「周産期医療システム整備の趣旨」にも、

 一方、我が国においては、産科分娩施設での人員配置や検査能力における施設間格差があり、また、平日と夜間及び休日との格差が大きいこと、未熟児出生の増加に伴い、新生児医療を担う専門施設の整備が急務となっていること、また、周産期医療の中でも、医師の管理下における母子の救急搬送や医療施設相互間の連携等情報の伝達が必ずしも十分でないこと、さらに医療施設の機能に応じた整備が不十分であることなど、周産期医療体制に多くの課題を抱えている。

 このような状況の中で、地域においては、周産期医療に係る人的・物的資源を充実し、高度な医療を適切に供給する体制を整備することが要請されている。

 このため、都道府県において、医療関係者等の協力のもとに、地域の実情に即しつつ、限られた資源を有効に生かし、将来を見据えた周産期医療システムの整備を図り、これに基づいて地域における周産期医療の効果的な提供を図るものである。

国の整備指針の策定の経過まで検証できませんが、整備指針を作る時に「理想」と「現実」の両方が盛り込まれたのは間違いありません。整備指針の中に「30分ルール」も盛り込まれていますが、「30分ルール」の整備目標はあくまでも「努めることが望ましい」です。この表現は「理想」として盛り込まれた整備指針と考えるのが妥当です。理想だから達成に努力をしなくても良いと言うわけではありませんが、あくまでも、

    都道府県において、医療関係者等の協力のもとに、地域の実情に即しつつ、限られた資源を有効に生かし

地域の事情と限られた資源の中で「出来るなら実現して欲しい」程度の努力目標と考えるべきものです。努力目標の優先順位は現実として必要とされる整備目標よりも優先順位は下がります。たとえば現実目標として優先されるのは、施設しての総合及び地域周産期センターの設立です。努力目標は現実目標がまず達成されてから「限られた資源」から達成を努力するものと解します。

たとえばと言うほどのものではありませんが、現在の周産期センターの一覧を見れば分かりますが、山形県や佐賀県には周産期センター自体が存在しません。当然ですが整備指針があるにしてもまず優先される事は、いきなり「30分ルール」を満たす施設を作る事ではなく、周産期センター自体をまず作る事が最優先されます。

それと平成19年7月20日付医政指発第0720001号「疾病又は事業ごとの医療体制について」でも冒頭に、

 疾病又は事業ごとの医療体制を構築するに当たっては、それぞれに求められる医療機能を具体的に把握し、その特性及び地域の実情に応じた方策を講ずる必要があることから、下記のとおり、それぞれの体制構築に係る指針を国において定めたので、新たな医療計画作成のための参考にしていただきたい。

 なお、本通知は医療法(昭和23年法律第205号)第30条の8に基づく技術的助言であることを申し添える。

お役所文の解釈は時に一般常識を超越しますが、素直に読めば整備指針と言う目標は国は設定するが、後は地域の実情に合わせて「出来るだけ近づけてください」と読めます。決して義務では無いという事です。


「30分ルール」の実現体制のハードルは非常に高いものがあります。非常に粗い試算をしておけば実現のために必要な体制は、

  1. 24時間365日、手術室が「30分ルール」のために確保されている事
  2. 24時間365日、院内に産科医2名、麻酔科医、手術室看護師2名が常時スタンバイしている事
  3. 24時間365日、上の条件に加え常時NICU病床及び新生児科医が院内にスタンバイしている事が望ましい

なんと言っても「30分」ですから、院外のスタッフを呼び集めていたら間に合いませんから、上記の条件が院内に常にそろっている必要があります。さらに「30分ルール」が必要な症例は連日連夜発生するわけではありません。さほどの頻度で発生するわけではない「30分ルール」体制維持のために、それだけの設備・人員を余裕として含ませておく必要があります。簡単に言えば金がかかります。

ついでに言えば、そういう体制を組んだとしても緊急帝王切開の費用は変わりません。あくまでも病院の持ち出しとして体制を維持する必要があります。病院経営はどこもシビアでなのは周知のとおりで、現在ではとくに厳しく指摘され改善を要求されます。経営的にはインセンティブが乏しい「30分ルール」の整備ですが、あえて言えば負のインセンティブはあります。言うまでも無く訴訟での「30分ルール」の絶大な威力です。

つまり周産期センターにとっての「30分ルール」整備の意味は、負のインセンティブを考慮して日常経営的にはジリ貧の体制構築を選択するか、地雷原を歩きながら訴訟によるドカ貧のリスクを選択するかになるということです。そういう点で整備指針にある「努めることが望ましい」はあくまでも周産期センター側の自助努力としての整備を要求しており、「30分ルール」整備のために日産婦が提案するような診療報酬優遇によるインセンティブは行なわれていません。

そういう事情を考慮すると記事にある、

「いつでも対応可能」と回答したのは総合センターの47%、地域センターの28%にとどまり、48%は「昼間なら対応可能」、17%は「ほぼ不可能」と答えた。

この成績は非常に優秀なものだと考えています。首都東京の総合周産期センターである墨東病院を見ればわかるように、産科医の確保さえ四苦八苦状態なのが現実です。麻酔科医だって、がん治療や循環器医療の総本山である国立がんセンターや国立循環器センターでも不足に苦しんでいます。そんな現実の中でこれだけの達成率は驚異的と言う見方も出来ます。

後はオマケですが、

分析に当たった照井克生・埼玉医大准教授(産科麻酔科)は「リスクの高い妊婦を受け入れるセンターには産科手術専属の麻酔科医の配置を義務付け、人員確保がしやすいように診療報酬を加算すべきだ」と訴えている。

どこでもこういう識者なり関係者がもっともらしいコメントを残すのですが、

    産科手術専属の麻酔科医の配置を義務付け

全国の医師の失笑を買っているコメントです。なんと言っても「義務付け」ですからね。現在総合周産期は75施設、地域周産期は236施設あり、合わせると311施設です。24時間365日体制で「30分ルール」に対応しようと思えば、まともにやれば7人の麻酔科医か最低必要です。そうなれば2177人の麻酔科医が「産科手術専属」で必要になります。

ちと古いですが2007年時点での麻酔科認定医(指導医等も含む)は約1万3000人程度です。この1万3000人が実動戦力かと言えばそうではなく、前にyouri様から頂いたコメントがあるのですが、

麻酔科医が携わっている業務も手術麻酔だけではなく救急・ICU・ペインクリニックなどがあり、パートタイマーや、研究・教育・管理職・留学・休職・退職後の医師も認定医数に数えられているため、フルタイム勤務換算の手術部実働部隊数を出すのは困難なのですが、友人・知人の近況や自県の手術部実働部隊数を数えてみて、とりあえず認定医数/2で計算してみました。

そうなると手術室実働部隊は7000人足らずです。この7000人弱の麻酔科医の負担は前にマップにした事があるので再掲しますが、


ここから2000人以上の麻酔科医を「産科手術専属」で「義務付け」で引き抜けばどうなるかなんて、埼玉医大准教授(産科麻酔科)ぐらいなら知っておいても良いことだと思います。もっとも埼玉医大准教授(産科麻酔科)が本当はどんな真意でコメントされたかは「まったく」不明です。おそらく全然違う真意であった可能性が非常に高いと考えていますが、タブロイド紙にうっかりコメントしたのは失策とは言えるでしょう。

ただなんですが、まさかと思いますが、埼玉医大准教授(産科麻酔科)のコメントの真意が、各施設1人の「産科手術専属麻酔科医」を配置し、この麻酔科医が24時間365日病院内に泊り込んで「30分ルール」実現のために尽くすなんて事は無いと信じたいと思います。確かにこれなら311人の麻酔科医の動員で済みます。未だにそういう発想を実践される方や、自分はしませんが他人には平気で求められる方は、教授クラスを中心に医師でも結構残っておられますから可能性としてはあげておきます。

10年ドロッポ10年ドロッポ 2009/03/07 09:31 >つまり周産期センターにとっての「30分ルール」整備の意味は、負のインセンティブを考慮して日常経営的にはジリ貧の体制構築を選択するか、地雷原を歩きながら訴訟によるドカ貧のリスクを選択するかになるということです。

「周産期センター、という一点だけに絞れば、話はそうならざるをえません。視野を持続可能な周産期医療レベルにまで拡げれば、おのずと別の解決法がありましょう」
「その通り、周産期センターをやめればいいのだ」

通りすがり通りすがり 2009/03/07 09:46 <その通り、周産期センターをやめればいいのだ


唯一無二の解決方法ですね。

ssd666ssd666 2009/03/07 09:54 山形県医療人の先見性が広まったようですな。
馬鹿役人は作る気みたいですが。

タカ派の麻酔科医タカ派の麻酔科医 2009/03/07 10:03 30分を365日24時間できるようにするためには、もう一つ、LDRをすべてOP可能な部屋にしておく必要もあります。op終了次のopまで30分はぎりぎりなレベルですから。

SeisanSeisan 2009/03/07 10:05 現実的な対応方法のひとつ
「すべての手配を済ませてから緊急帝王切開実施の決定をする(患者に説明する)」でしょう。
そしたら決定してから30分以内、というのももう少し実現率が高まるかと。

まあ、言葉遊びに過ぎませんが、すべての施設に「最高度先進医療機関と同じレベル」を要求する訴訟対策には有効では?

rijinrijin 2009/03/07 11:41  うちは○○分だっ、文句あっか!と言い切ってしまう逞しい病院であって欲しい。…ただし事前に。

BugsyBugsy 2009/03/07 13:59 この30分ルールとは車で喩えれば いつもエンジンをアイドリングしておいて何時でも発車オーケーにしておけよと云うことになるようですが、その分スタッフと手術室が専用に必要になり、当然他の診療科にしわ寄せがくるわけです。人もお金もかかるのよ。

解っていてるのかしらと 人差し指を頭の上にかざしてクルクル回しながら溜め息をつきました。
あんたの病院でやってみなされ、やったらどうなることやら想像してみなされ。

tadano-rytadano-ry 2009/03/07 14:12 アメリカの場合大学病院ベースでも30分ルールを実現できているのは65%のようですね。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?Db=pubmed&Cmd=ShowDetailView&TermToSearch=16816049

Decision-to-incision times and maternal and infant outcomes.

OBJECTIVE: To measure decision-to-incision intervals and related maternal and neonatal outcomes in a cohort of women undergoing emergency cesarean deliveries at multiple university-based hospitals comprising the National Institute of Child Health and Human Development Maternal-Fetal Medicine Units Network.
METHODS: All women undergoing a primary cesarean delivery at a Network center during a 2-year time span were prospectively ascertained. Emergency procedures were defined as those performed for umbilical cord prolapse, placental abruption, placenta previa with hemorrhage, nonreassuring fetal heart rate pattern, or uterine rupture. Detailed information regarding maternal and neonatal outcomes, including the interval from the decision time to perform cesarean delivery to the actual skin incision, was collected.
RESULTS: Of the 11,481 primary cesarean deliveries, 2,808 were performed for an emergency indication. Of these, 1,814 (65%) began within 30 minutes of the decision to operate. Maternal complication rates, including endometritis, wound infection, and operative injury, were not related to the decision-to-incision interval. Measures of newborn compromise including umbilical artery pH less than 7 and intubation in the delivery room were significantly greater when the cesarean delivery was commenced within 30 minutes, likely attesting to the need for expedited delivery. Of the infants with indications for an emergency cesarean delivery who were delivered more than 30 minutes after the decision to operate, 95% did not experience a measure of newborn compromise.
CONCLUSION: Approximately one third of primary cesarean deliveries performed for emergency indications are commenced more than 30 minutes after the decision to operate, and the majority were for nonreassuring heart rate tracings. In these cases, adverse neonatal outcomes were not increased. LEVEL OF EVIDENCE: II-2.

Level3Level3 2009/03/07 14:24 埼玉医大のT先生は,産科麻酔をsub specialityにしておられ,産科麻酔に関しては理想をもっておられるとは思いますが,どのような状況でこの言葉が出たのか定かではありません.マス○ミおとくいの切り貼りであることも考えられると思います.
彼も現状の医療情勢のことは解っていると思いますから,あくまで「理想論」として話たにすぎないと考えるのが普通かなと思います.

BugsyBugsy 2009/03/07 14:48 というか

関東近県で常勤の麻酔科医が充足している病院って本当に聞きません。フリーター麻酔科医はよく見かけます。

やはり理想論なんでしょうねえ。

tadano-rytadano-ry 2009/03/07 15:08 上の論文の内容を分かりやすく説明してくれているサイトを見つけました。

http://www.obgmanagement.com/article_pages.asp?AID=5372&UID=#bib3

要点は
 The data are clear: More than one third of all C-sections for these indications did not comply with the “30-minute rule.”

Notably, the study also found that:

1)when the decision-to-incision time was less than 30 minutes, the rates of fetal acidemia and intubation in the delivery room were higher

2)95% of infants delivered in more than 31 minutes did not experience any of the adverse outcomes.

3)only one of eight neonatal deaths occurred in the group of infants delivered after 31 minutes.

としています。しかも合併症の発生率を示した表のタイトルは

"Outcomes are no better when the decision-to-incision time is less than 30 minutes"

となっています。not betterでなく"no better"という否定度の高い表現を使っているのが
印象的です。

bamboobamboo 2009/03/07 17:40 うちの病院では、分娩予約の際に、帝切決定から手術までには1時間以上かかることを文書で説明しています。
それで良ければ予約をしてくださいとお話ししています。
裁判になったときに有効かどうかは分かりませんが。

clonidineclonidine 2009/03/07 17:59 S医大では、2003年頃に日本初の「産科専属麻酔科医の当直制配置」を実現させて、業界の注目を集めましたが、新研修医制度導入以降のドタバタで休止し、現在では他の大学病院同様の、一般的な麻酔科当直体制に戻っています。

アメリカ型の「産科専属麻酔科医」はT先生の悲願であることは想像に難くないのですが(昨年11月25日の厚労相のヒアリングでも、同様の発言をしています)、皆さんご指摘のとおり、アメリカと日本では麻酔科医の分布密度が違いすぎます。アメリカ麻酔学会(ASA)の会員数は43000人です(フルタイム勤務平均年俸は3-40万ドル)。

また、アメリカの産科麻酔の現状を論じるうえで、忘れてはならないのが麻酔看護師の存在です。確かに、アメリカの大規模分娩施設では「産科専属麻酔チーム」は一般的ですが、麻酔科医だけでなく麻酔看護師も含めてチームを組んでいる場合が多いのです。そして、アメリカ麻酔看護師協会(AANA)の会員数は約4万人です(フルタイム勤務者の平均年俸は14万ドル)。

日本の13000人の麻酔科医で、米国の8万人のマンパワーを前提にした制度をそのまま輸入、というのは、日米の人口比や医療費を考慮しても、ムリな話だと思います。

開業医M開業医M 2009/03/07 18:14 bambooさま

神奈川帝王切開賠償訴訟では、

「被告病院の平均時間が1時間20分であり,一般病院においても1時間以内に行うことに大きな制約があるとしても,それは医療慣行に過ぎずこのような医療慣行に従ったからといって,被告の過失が否定されるということはできない」

とする判決が示されています。

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20080414

手術までには1時間以上かかることを文書で説明したとしても、医療慣行に過ぎないとあしらわれるのではないでしょうか。

元もと保健所長元もと保健所長 2009/03/07 19:28 「負のインセンティブ」という言葉に感動しました。
国の医療政策が、司法・マスコミとも協力して「負のインセンティブ」を現場に与えることであると理解すれば全ての説明が付きます。
そしてこの「負のインセンティブ」に抗する医師は、すべて国家の敵として刑事民事の裁判で弾圧されることもすべて理解できます。

麻酔科医麻酔科医 2009/03/07 19:55 tadano-ry 様
その表は、去年の臨床麻酔科学会の麻酔科のセッションで、新生児科の先生が呈示されていました。

都内病院勤務医都内病院勤務医 2009/03/07 21:38 T井先生とは直接の面識はありませんが、T井先生の下で産科麻酔を学んだ医師を複数
知っています。そうした方々から聞いた話から判断して、T井先生はきわめて常識的な
方だと思います。ただ、首都圏勤務という都合上、麻酔科が崩壊した地方の先生方よ
りは麻酔科医の数に関する認識は甘めになっているかもしれません。


産科麻酔を専門にする麻酔科医にとって、産科麻酔の診療報酬問題は非常に切実な
問題といっても過言ではないです。脊椎麻酔850点(材料費込み)で常勤の麻酔科標
榜医が自ら麻酔した場合には麻酔管理料200点、さらに帝王切開では700点加算があり
ますが、このレベルです。産科麻酔で常勤の麻酔科医を雇用できるような点数では
ありませんし、まして夜間の緊急に対応するための当直医を置けるはずもありません。

夜間の帝王切開に麻酔科が対応可能な病院は東京周辺にいくつかありますが、いずれ
も全身麻酔が必要な緊急手術に対応するためであって帝王切開は片手間仕事(少なく
とも病院経営上のコストという意味では)というのが実態でしょう。


東京周辺に限れば麻酔科に入局する研修医はかなりの数がいますが、産科麻酔に興味
を持つ医師は少ないです。多くの病院で産婦人科医が片手間に麻酔を行なっているの
が現状ですから、麻酔科を専門とする医師が産科麻酔に手を出しても将来はないと考
えるのが普通です。外科系の他科や将来できるかもしれない麻酔看護師には手を出せ
ない分野(典型的には心臓手術麻酔)に集中したほうがいいですからね。

中堅からベテランクラスの複数の麻酔科医から、「全身麻酔の症例だけで手がいっぱ
いだから帝王切開は産科に自前でやってもらったほうがいい」という意見を聞きます。

こうした現状を踏まえた上で、麻酔科医が担当する帝王切開の報酬を大幅に上げて欲
しい、でないと産科医療に携わりたいという麻酔科医がいなくなってしまう、という
危機感があるのでしょう。

tadano-rytadano-ry 2009/03/07 23:24 麻酔科医さま

 貴重なご指摘ありがとうございます
 論文そのものは2006年のものですので、日本でもかなりの方がご存じのはずと推察できます。とりあえず基準を作って後で検証し修正していくのはいかにもアメリカ的な発想ですが、日本の場合は一度基準を作ってしまうとなかなかその呪縛から抜け出せないお国柄ですから、後しばらくはこのルールが一人歩きして崩壊を加速するんでしょうね。

 報酬にしたってそうで、年に一度だけしか改定されないのでは今の医療崩壊のスピードにはついて行けないでしょう。せめて年3回くらいのペースにしないといけません。そこまですると中医協の方々も忙しくなって教師のお仕事などとてもじゃないけどしていられないでしょうが(謎)、こうした現場の貴重な意見を迅速に反映するシステムがないと我々医師の無力感は一層増すだけです。ぺーぺーの一医師が中医協にもの申すなど禁則事項なのかもしれませんがwww

卵の名無し卵の名無し 2009/03/08 02:55 昔は麻酔科で研修中1年以内に100例かければ麻酔医標榜できた。麻酔科に入局する者は昔からそんなに多くなかったし、それゆえ外科の研修医が麻酔科にローテ研修で所属中に100例経験して標榜し、primitiveな手術は最低自分ひとりで麻酔かけて手術する資格とスキルを身につけるのが外科の修業だった。
前に妙手の頁に書いたがすべての科の研修医含む公務員医師に産科・救急・小児科分野に限りバイトを解禁すれば合法的に個人の収入が増える魅力的な分野となりみな研修に対して目の色を変えて取り組むようになるだろう。ただし一手で妙手とはなり得ず二手一組の妙手である。もう一手はこの分野に限り病院にいわゆる名義貸しを認めること。これで病院にとって産科・救急・小児科分野の経営が安定し給料面での自由市場が形成されれば競争原理に随って医療の質も向上が見込める。麻酔医もまたしかり。麻酔医標榜の外科医がこの分野の手術にバイトで参加できるようになれば麻酔医不足が解消するし医師のスキルアップが収入増に直接資することになる。

一産科医一産科医 2009/03/08 03:20 産科医全員に産科麻酔をびっちり教え込む。
→産科からドロップアウトしても、産科麻酔のバイトができる
助産師に麻酔看護師としてのサブスペシャリティを教育する
↑今でも分娩の大部分がC/Sのため、あまり出番のない助産師が総合周産期センターには結構な数勤務してます。
(麻酔看護師については門外漢なのでよくわからないですが)

とりあえず新生児の蘇生については、トレーニングプログラムの導入で周産期スタッフ(産科医・助産師・看護師)がある程度新生児科医の代役を果たせることを期待されてます。

麻酔科医麻酔科医 2009/03/08 10:25 tadano-ry様
「産科麻酔」のセッションでした。当然、T先生も参加されていました。私は、学会のセミターなど、直接産科麻酔の講義を学会などで聞く機会があり、先生は、普通の方でした。マスコミ報道の発言は、いわゆる「編集による極論」ではないかと思います。

さて、産科麻酔医制度ですが、麻酔科入局には、思いっきり冷や水です。だって、将来の仕事が看護師と一緒にされてしまうんですから。

産科麻酔に人気がないのは、将来的にも、緊急帝王切開という「救急」と縁が切れないのと、突発的に大出血になったりする「地雷」原を常に歩いていかないといけないからでしょう。

nyamajunyamaju 2009/03/08 17:53 2件、3件、緊急帝王切開が必要な状況が
同時に発生しないなんて保証はありませんから、
撤退以外の選択肢は無いと思いますけどね。

BugsyBugsy 2009/03/08 18:33 仮に産婦人科の医師さえいれば 産婦人科の深夜診療も麻酔も何とかOKと思い込んでいたオイラが浅はかでした。

勤務医 開業つれづれ日記・2様のご指摘ですが、

>荏原病院では地域医療の要である産科を維持できなくなった。原因は看護師の大量欠員だ

通勤の利便性も病院の設備も良いところですが 都内23区のうち ここで看護師が集まらないのであれば 他の公立病院などどうするんだろと思ってしまいます。

墨東だけじゃなく都内の公立病院も 目に見える形で産婦人科が終わってきましたねえ。

去年は神奈川さえ持ちこたえれば都内には波及はしないだろうって。
ラインの護り 多摩川渡河防止作戦、首都防衛戦と呼号していた時期は ほんの少し前でしたがね。マスコミのおかげで荒川方面が戦線崩壊してますから。あとは雪崩の如く....
負けたつもりは無いけど「背後から撃たれた」のですよ。
そもそも司令部の医局の移動命令を聞こうとする医師が目減りしています。統制をとれた作戦行動がとれません。

それでも戦闘準備は必要なので 師団や連帯毎に連絡や人員派遣を依頼したいのに 連絡を拒否する師団や残存兵員数がさっぱり把握できないのです。

今更徹夜続きの勤務を肯んじている医師のことを密かに「人狼部隊」と呼んでいます。
こいつら症例検討会でも 疲れ果てて黙り込んで目ばかり光ってまともな会話が出来ないんですよ。

元外科医元外科医 2009/03/08 23:18 年度が替わるとまた一つ、また一つと産科医療機関が消えるんですね。

白クマになったパンダは白クマには戻りませんねw

麻酔科医麻酔科医 2009/03/09 05:34 すいません、×産科麻酔医制度 ○麻酔看護師制度。
とりあえず、産科麻酔は、人気のある(?)小児麻酔とセットになって周産期センターの研修となっているので、今のところ私の医局では、そんなに不人気ではありません。

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