程度の問題

どうもスランプなのか適当な医療ネタが掘り出せなかったので、埋め草のつなぎのエントリーです。ですからただの時事ネタで、今日は医療のお話ではありませんが、7/25付サンケイスポーツより、

TBS世界陸上、選手キャッチコピーダメ!

 陸上の世界選手権(8月15日開幕、ベルリン)の独占放送権を持つTBSテレビが、日本陸連から選手のキャッチコピー(CC)を撤廃するよう通達を受けていたことが24日、分かった。

 同局では1997年のアテネ大会から独占放送を続けており、男子短距離の朝原宣治(37)を「燃える走魂」、男子400メートルハードルの為末大(31)を「侍ハードラー」などと日本人選手、有力外国人選手に独自のCCを付け、大会期間中に連呼してきた。だが、ネット上での批判や一部のネーミングに不信感を抱いた現場関係者も多く、高野進強化委員長(48)らが“強権”を発動したとみられる。

 この日、男女短距離とハードル陣の代表合宿が山梨・富士北麓公園陸上競技場で公開され、男子400継で中心となる塚原直貴(24=富士通)が「(高野)強化委員長がテレビ局に『(CCは)もういいんじゃないか』と言ったみたい」と明かした。

 TBS関係者も「確かにそのような話があったようです。今回は付けるにしてもかなり少なくなるはず」と認め、CCではなく、世界記録保持者など正当な肩書を使用することも検討中という。MCを務める俳優、織田裕二(41)の熱いコメントとCCで盛り上げてきた世界陸上中継が、方向転換を余儀なくされそうだ。

名選手、大選手には仇名が付けられることがあります。古くは「人間機関車」ザトペック、「暁の超特急」吉岡隆徳、さらには「裸足の少女」ゾーラ・バット、「鳥人」セルゲイ・ブブカなどが陸上では頭に浮かんできます。これらはキャッチコピーと言うより、その超人的な活躍への畏怖としての異名かと考えています。

名づけの経緯は様々です。関係者やライバルから名づけが流布される事もあれば、マスコミが名づける事もあります。ですからマスコミが名づけて悪いとは思いませんが、最近のはやりすぎです。この記事にある世界陸上に出場する選手は一流ではありますが、出る選手、出る選手のすべてに命名するのはチトやりすぎです。

また、あんまり命名しすぎて意味不明のものも時にあります。「笑顔の爆走娘」もかなりですが、「黄金の昇竜」になると「なんじゃそれ?」と受け取る方も少なくないと思います。それも毎大会、毎大会量産するわけですから、煮詰まればどうなるかの見本みたいなのが並ぶ始末になります。

何を履き違えているかと言えば、異名はその活躍ぶりにつけられるのを忘れていると言う事です。ですから本当に定着する異名は案外シンプルなものが多いと言うことです。活躍ぶりをシンプルに表現するから定着するわけであり、シンプルであるが故に付けられるのは一握りの名選手、大選手に限られるということです。例えばサッカーで誰もが知る異名となれば、

どれもが極め付の異名で、なおかつこれを越える選手がまずは現れない者に付けられています。野球もそうで、
  • 「鉄腕」稲尾
  • 「怪童」尾崎
  • 「世界のホームラン王」王
  • 「ミスター」長嶋
  • 「鉄人」衣笠
  • 「神様」バース
プロ野球界は異名が多いところですが、それでも付くのは極め付の名選手だけで、なおかつ非常にシンプルです。つまり数ある名選手の中で、さらに印象的な活躍を行なった大選手にのみ許されるのが異名であり、その驚異的な活躍を見、感じたものが思わず口にしたものが異名です。だからこそ流布され、定着するのです。

TBSがやっているのは全く逆の手法で、とにかく乱発して「どれか」定着するのを狙っているだけです。乱発する必要性のために適当な言葉の順列組み合わせに血道を挙げ、どんどん極彩色のネーミングになる悪循環に陥っています。売れていない芸人を売り出すために、無理やり付けられたキャッチコピー戦略みたいで強い違和感があります。

確かに異名がある選手はアピールしやすい側面はあります。ただあそこまでやれば悪乗りとか悪用レベルになります。かなり前ですが阪神のかつての助っ人であった、マイケル・ラインバックの事を日曜閑話に取り上げた事があります。彼の異名は、

    青い目をした猛虎魂
この異名にどれだけのドラマが込められているかです。これはラインバックが来日してすぐに付けられた異名ではありません。最初は「ダメ外人」の烙印をベッタリ押され、そこから這い上がっただけではなく、そのひたむきなプレースタイルに阪神ファンが深い畏敬を込めて贈った異名です。異名一つにもドラマがあり、だからこそ共感し広がり定着するのです。

ちょっと精神論みたいになってしまいますが、異名は見る者の感嘆から魂が揺り動かされて生み出されるものであり、魂の入っていない量産異名は雑音に過ぎ無いという事です。

高野進強化委員長(48)らが“強権”を発動したとみられる

放映権料のマネーに尻尾を振り続けなかった高野進は「漢」と思います。


もう一つ、これは余計ですが、

MCを務める俳優、織田裕二(41)の熱いコメントとCCで盛り上げてきた世界陸上中継が、方向転換を余儀なくされそうだ。

織田裕二、あんたの出演シーンは「いらん」。見たいのは競技そのものであって、スタジオのバカ騒ぎではありません。競技中継をハイライト・シーンにしてまで短縮し、スタジオのバカ騒ぎを垂れ流すのは興醒めも良いところです。スポーツ中継は、競技の待ち時間をいかに有効利用するかも中継技術で、そこを退屈させずに本番に盛り上げるのが醍醐味なのに、待ち時間を無駄な時間として芸人にバカ騒ぎさせるのは本末転倒と感じています。

俳優としての織田裕二の評価は別にあり、織田裕二を見るのであれば本業のテレビ、映画、舞台で十分です。主役は芸人のトークではなく、一流アスリートの力と技の全力勝負なのです。「方向転換」もなにも真面目に、いや普通にスポーツ中継をやってくれるように祈ります。