10mlバイアル増産効果は無かった

10mlバイアルの生産が年内で打ち切られる事になりました。長妻答弁では1800万人分であった舛添前大臣時代のワクチン量が2700万人分に急増したのは、

  1. 見込み量の上方修正効果(8割 → 10割)
  2. 10mlバイアル増産効果
この二つであると参議院予算委員会で明言しております。この2つの効果のうち10mlバイアル増産効果は昨日のエントリーで算数した通り、
    721万人分(1mlバイアル換算)→ 1172万人分
こういう莫大なものです。


さてと、平成21年11月17日付の【現時点での標準的接種スケジュール(目安)】が発表されています。これがなかなか興味深い内容になっています。従来の計画は10/20付の生産計画(新しい風<宮崎市郡医師会のブログ>より)に残されているのですが、比較すると面白い事がわかります。

計算は従来のデータと比較しやすいように人数単位(2回接種)でそろえますが、

ワクチン 10/20時点 11/17時点
10mlバイアル 1172.0万人分 636.5万人分
1mlバイアル 1392.0万人分 1921.0万人分
0.5mlシリンジ 137.0万人分 136.5万人分
2700万人分 2694万人分


10ml製造予定分が1mlにほぼ回されている事がわかりますが、ワクチン生産量は「変わっていない」として良いと思われます。つまり10mlバイアルで生産することでワクチンが増えるという事実は無かった事になります。そうなると1800万人分が2700万人分に増えた理由として、生産量の上方修正効果に加えて「何か」が必要になりますが、もう一度長妻答弁をロハス・メディカルから引用します。

舛添

    「私がおった時、新型インフルエンザワクチンの培養で1800万人までしかできないということだった。私が辞めてすぐ2700万人分まで上がった。この上方修正の理由をお聞かせいただきたい」
長妻
    「当初見積もっていた時点では、ワクチンを出荷する時の容器、バイアルと言うが、容器の大きさを全て1ミリリットルで出荷しようとしていた。しかし昨今のワクチン不足ということで、容器の半分については10ミリリットル10倍大きな容器で出荷しようと、そうすると梱包とか色々な手間としてその部分が製造量が大きくできる。もう一つ、当初発表する時に間違いがあってはいけないということで予想される培養量から2割減らして発表した。実際にやってみないと分からないので予想されるものより低まっては大変なことになるので、8割の量で国民の皆さんに発表した。その後、試験を繰り返したところ実際に予想通り10割で培養量が確保できることになったので、その2つの大きな要素で上方修正した」

舛添質問はシンプルで、1800万人分がどういう理由で2700万人分に増えたかの理由を問い質しています。前任者の時には1800万人であったのが、あっと言う間に2700万人になれば「なぜか」は当然出てくる質問です。生産量が増えた下りは、

    8割の量で国民の皆さんに発表した。その後、試験を繰り返したところ実際に予想通り10割で培養量が確保
「8割」は舛添時代の1800万人と取るのが妥当と考えます。2割増えると2250万人分です。問題の10mlバイアルですが、
    容器の半分については10ミリリットル10倍大きな容器で出荷しようと、そうすると梱包とか色々な手間としてその部分が製造量が大きくできる
ここはやや難しいのですが、「製造量が大きくできる」の取り様になります。二つの解釈が成立し、
  1. 期間あたりの製造量が増える
  2. トータルとしての製造量が増える
もちろん「どちらも」もありますが、最後にこういう締め言葉があります。
    その2つの大きな要素で上方修正した
2つの要素の一つは10mlバイアルであるのは間違いありません。ここで元の質問の意味は、現在の不足に対してのものではなくトータルとして1800万人分から2700万人分に増えた理由を聞いています。さらに長妻答弁の「8割」が1800万人分であれば、「10割」になっても2250万人分しかなりません。そうなると残りのワクチン増加は長妻答弁にある10mlバイアル増量効果と考えざるを得ません。

ところが10mlを1mlに切り替えてもワクチンの生産量は変わっていません。10mlバイアル瓶採用による増量効果は無いという事を、公式資料が証明しています。それでもって、この「急遽」発表された方針転換に対するメーカーの対応ですが、1月、2月の生産出荷予定量を見てみます。

ワクチン 10/20時点 11/17時点 増加分
1月生産量 400万人分 619.5万人分 219.5万人分
2月生産量 343万人分 418.5人分 75.5万人分


1mlに切り替えられた分は1月、2月分に反映されるのですが、295.0万人分増えたうち、219.5万人分が1月に増加しています。それとこれは因みにですが、10mlバイアルを最大限に生かして生産した12月と、生産効率の悪いはずの1mlバイアルに切り替わった1月の生産量を較べてみます。

12月 1月
773万人分 654万人分


もちろん12月出荷分と言っても瓶詰めされたのはもっと前でしょうから、季節性ラインとの関係もあり一概には言えないとは思いますが、一つだけ仮説を立てる事が出来ます。これまでの出荷状況から「どうやら」10mlバイアルを製造しているのは化血研だけであり、12月に出荷される10mlバイアルもすべて化血研である可能性が高いと考えます。

化血研の12月出荷分の瓶詰めは11月中には終了していると考えられますから、1mlバイアルの製造に取り掛かるのは12月になってからと推測され、さらに1月の1mlバイアルの増加量は化血研のものになる可能性が高くなります。本当に10月時点から1mlを作ると季節性ラインを止めなければならなかったかの疑問と、実は1ml製造でもワクチン量は間に合ったのではないかの疑問です。

まあ、この仮説と言うか疑問の真相が明らかになる可能性は低いですから、「そうとも考えられる」程度にしておきたいと思います。ちょっと話が飛びましたが、こういう事実を踏まえて、参議院予算委員会の舛添質問への長妻答弁を改めて聞きたいものです。

  • 1800万人分から2700万人分に増えた理由
  • 10mlバイアル製造を選択した理由
第2ラウンドは果たしてあるのでしょうか。あっても木で鼻をくくった様な官僚式答弁に終始するんでしょうねェ。。。