棚橋 vs 千葉 Part 3

衆議院の法務委員会の文字起こしの続編です。Part 3はPart 2の続きですから、まずその終盤部を提示しておきます。

棚橋委員(おそらく不規則発言)

    脱税総理は起訴されないし、マスコミに釈明しなくても良い、つまりそういうことですね。
千葉大
    私の、法務大臣としての立場でお答えをすべきものではないと思います。

棚橋委員
    違います。総理は司法の場に議論が移っているからと言いながら、一方で憲法上総理は訴追されないと言う事で守られているわけですね。一方で捜査中だからと言って、説明を拒むわけですね。だから説明義務も負わない、起訴もされない、治外法権の人だと言っている訳です。
千葉大
    治外法権と言うのは、あの、私はそのような事は無いと思っております。訴追の権利を免れない、それは憲法上でも既定をされている事ではございます。また個別の事件については、え〜、個別の事件については私から申し上げる事は差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    訴追の権利を免れないという事は、在任中訴追されないという事と別ですよ。だから今申し上げているように、鳩山さんは、自分で自分の起訴を同意しない限りは、起訴されないんじゃないですか。そして一方で、捜査の場に動かされていると言ってますけれど、検察官は行政官でしょ。法務大臣の指揮下にある行政官でしょ。

    自分たちの部下が、捜査をしているから一切国会では説明しない。しかし、憲法上起訴はされない。これは普通の人間にありうることですか、と言うより治外法権じゃありませんか。大臣としては、まず第一に、この問題に関して、きとんと説明すべきではないか。あなたは訴追をされないんだから、そういう事を総理に進言するつもりはありませんか。

この前の部分も含めて棚橋質問の要点をまとめてみると、

  1. 鳩山総理は脱税及び違法献金疑惑について、捜査の場、司法の場での解明に委ねるから、国会で国民に説明しないとしている。
  2. ここで司法の場とは起訴されて裁判が行われる事である。
  3. しかし総理大臣が起訴されるには、総理大臣の同意が必要と憲法75条に規定されている。
  4. 総理が同意しないと鳩山氏は起訴されないのだから、司法の場の解明は事実上ありえない立場である。
  5. 司法の場で解明されないのだから、国会で国民に説明しないと言うのは、まったく説明しないと同じ事である。
こういう風に私は解釈しています。この質問が始まる憲法75条問答で脱線がありましたが、これに対して千葉法務大臣がどう答えるかがPart 3になると予想します。予想としては、木で鼻を括ったような官僚式答弁で突っぱねるかと思いますし、それも棚橋委員は予想していると思います。棚橋委員がそういう状況で何を千葉大臣の答弁から引っ張り出そうとするか、それを千葉大臣がどう突っぱねるかの攻防戦をお楽しみ下さい。

千葉大

    私から進言させて頂くような問題では無いとおもいます。また、個別の問題について私からお答えするのは、差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    脱税総理の違法献金問題については、今申し上げたように、捜査が及んでいれば、一切国会、国民に説明なくていいんですか。であれば、鳩山内閣の閣僚は、もし疑惑が出来た時に、誰かに告発してもらえば、現在捜査中ですからと言って答えずに、一方で事実上起訴されない。そういう事が続くんではありませんか。大臣願いします。
千葉大
    私は、え〜、法務大臣として、個別の捜査活動について、具体的にお答えを差し控えさせて頂く、こう申し上げているところでございます。

棚橋委員
    そうではなくて、政治家として、総理あるいは閣僚は、疑惑があっても、捜査中であれば答えない。しかし一方で起訴されることはない。これはおかしくありませんか。逆に疑惑がない、李下に冠を正すのであれば、もし起訴された場合には、必ず同意をするという同意書を取り付けるべきではありませんか。

    また何よりも、あなたは法務大臣ですよ。検察官に対する識見があるんですよ。そういう人間が、個別の捜査に関しては何も言わないと言っても、世の中の誤解は、絶対に生みませんか。あなたの部下である行政官が、本当に総理大臣を起訴に持っていけますか。そういう状況の中で、総理大臣が、説明責任を一切果たさない事を、あなたは国務大臣として、政治家として、法務行政を総括する人間として、どうお考えですか。説明してください。
千葉大
    え〜、捜査機関は法に基いて、え〜、適正、そして公平公正に粛々と捜査をするものだと私は認識しておりますし、そのように、え〜、捜査当局が、あ〜〜、捜査をするものだ、と考えております。

棚橋委員
    では捜査機関が鳩山総理を起訴すると言ったときに、法務大臣はどうするんですか。
千葉大
    え〜、仮定の問題、個別の問題について、私から発言は、答弁は差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    では一般論で結構です。国務大臣が起訴された場合、法務大臣としては起訴すると決めた場合に、法務大臣はどうするおつもりですか。
千葉大
    これも仮定のお話と言う事になりますので、私から今お答えをする立場にございません。

棚橋委員
    いいですか。私が問題にしているのは、閣僚と言うのは、総理の同意がなければ訴追されない。そういう治外法権の立場にありながら、一方で捜査が及んでいるならば、一切捜査中なので国民には答えない。国会でも答えない。これおかしくありませんか、おかしいと思いますか、思いませんか、お願いいたします。
千葉大
    私は決して治外法権の事のようにならないと思いますし、そして、それぞれ適切に判断をするものだと、私は考えております。

棚橋委員
    おかしいと思いますか、おかしくありませんかと聞いているんです。先ほどから申し上げておりますように、答弁が質問に答えておりません。おかしいと思いますか、おかしくないと思いますか。
千葉大
    え〜、個別の事を、お〜、想定をした、あ〜、ご質問については、あ〜、お答えを差し控えさせて頂きたいと思います。

棚橋委員
    想定ではありません。現実にそうなっているじゃないですか。鳩山総理は、憲法上、事実上、起訴されない。しかし捜査が及んでいるから、政治資金献金疑惑、これには答えない。これまさに現実で起きてる事じゃないですか。この現実をおかしいと、法務大臣として法務行政を司る人間として、おかしいと思っているのかいないのか。仮定の話じゃありませんよ、現実です。どちらです、思っているんですか、思っていないんですか。
千葉大
    個別の事件に関ります、個別の捜査に関わる事について、発言を控えさせて頂きます。

棚橋委員
    鳩山内閣の総理である総理大臣が、一切説明をしない、捜査中である事を理由に。一方で起訴はされない、つまり誰もアンタッチャブルな人が鳩山さんなんですよ、今の状況では。国務大臣は在任中訴追されない、だからこそ余計、国会や国民に説明義務が求められんじゃないですか。それなのに、説明しなくていいんですか。もう一度、お答え下さい。
千葉大
    個別の問題について、私から発言は差し控えております。それぞれ、適切に、判断をするものだという風に考えております。

棚橋委員
    という事は鳩山総理が、捜査が及んでいるから、一切説明はしない。しかし起訴はされない、そういう事案は適切に判断されているという事ですね。
千葉大
    個別の問題について、私は申し上げているわけではございません。それぞれ、その立場で適切に判断をする問題であろうと、そういう風に考えていると申し上げました。

棚橋委員
    それでは、鳩山総理が不起訴処分になったときに、これは大臣として、捜査関係の書類は、すべてコピーでも現物でも、お返しをして、鳩山さんが即日釈明できるように、そういう指示をするつもりはありますか。
千葉大
    仮定の話については答弁を差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    つまり、総理は、現在捜査中だからと言いながら、捜査後も、書類が無いから答えられない、と言う抜け道を法務大臣はお許しになるんですね。
千葉大
    仮定のお話であろうと思いますので、私から御答弁をする事はできません。

棚橋委員
    ではもう少し伺いますが、現在捜査中との事ですが、捜査中だと内閣総理大臣は、一切疑惑に関しては、説明しなくていいんですか。
千葉大
    具体的に捜査の、捜査機関の活動につきましては、答弁は差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    また答弁に答えてないんですが、総理がそのような事でよろしいのですかと、国務大臣として伺っているのです。個別、具体的事件についてお答えできませんと言う話を聞いてるんじゃありません。

    捜査が、司法と総理は言ってますが、検察官は行政ですよ。あなたの指揮権に服するんです。そこにある間は、一切説明をする必要はない、説明はしない。という事が、国務大臣として正しいと思っているのか、そうでないかと、聞いてるのです。個別の案件の捜査について聞いてるんじゃありません。総理の説明責任について、国務大臣として、法務行政を司どる法務大臣に聞いているんです。お答え下さい。
千葉大
    え〜、個別のこれは、あ〜、課題になろうかとおもいます。それについては、私から答弁は差し控えさせて頂きます。後は、それぞれ、適切に行動を取られるものだと、私は考えております。

棚橋委員
    個別の案件ではないでしょ。私が今言ってるのは、個別の捜査に影響させるという話じゃなくて、捜査が及んでいるなら説明をしなくていい、と言う事でいいんですか。逆に、捜査が始まったから、国会や国民の前に説明する事ができない言うのであれば、鳩山内閣の大臣に疑惑のオンパレードがあったときにも、その場合、誰かが告発してくれれば、説明しなくてもいい事になるんですよ。

    この国の、民主主義、法治国家としての大臣は、訴追もされない、一切説明をしなくてもいいと言う、憲政史上に汚点を残す、そういう事になるんですよ。その点について、お話をください。
千葉大
    えぇ、今のご発言、あの〜、仮定の設定をされておられのではないかという風に思います。まあ、そういう事については、私から答弁を差し控えさせて頂きたいと思います。

法務大臣として、事件の捜査に関る事について答弁できないのはわかりますが、途中から千葉大臣の答弁が聞かなくても予想できるようになってしまいました。棚橋委員もそういう答弁が返ってくるのを百も承知で質問しながら、自説を展開しています。もちろんなんらかの大臣答弁を引き出そうと、微妙に論点をずらしながら質問していますが、千葉大臣は質問を「個別か、仮定か」に分類して応戦していると見えます。

聞きながら思い出したのは、

ここに残されている野党時代の鳩山由紀夫代表の国会での発言です。代表質問だと思うのですが、

民主党鳩山由紀夫です。総理の所信表明演説に対し質問をいたします。総理、あなた御自身が代表を務める、関係政治団体政治資金収支報告書、改竄されていると報じられています。これは明確な政治資金規正法違反、公職選挙法違反じゃありませんか。総理は、とくに自らを厳しく戒めると言われましたが、まず御自身の疑惑について国民にキチンと説明して、全容を明らかにしてください。

疑惑を指摘された閣僚が、資料を整備し、説明責任を果たすのは、最低限の務めです。これが出来ない閣僚は、自ら職を辞すか、罷免すべき事も当然であります。総理がどのように任命責任を果たされるのか、お伺いをします。

ここに

    疑惑を指摘された閣僚が、資料を整備し、説明責任を果たすのは、最低限の務めです。これが出来ない閣僚は、自ら職を辞すか、罷免すべき事も当然であります。
実に立派なご発言なんですが、まさか捜査中は除くという例外規定があるとは思いもしませんでした。時効になるほど昔の話ではないと思うのですが、野党党首から総理大臣に就任遊ばされれば、免責になる国会慣行でもあるのでしょうか。それともこの発言に続いて、
    総理がどのように任命責任を果たされるのか、お伺いをします
当時の総理にお伺いして、その任命責任の取り方に論破されて、総理答弁後に鮮やかに転向されたのでしょうか。いずれにしろ傾聴すべき発言がしっかり記録に残されているところが興味深いところです。そういう事で最終回になるPart 4は明日お届けできると思います。