新小児科医のつぶやき

2010-05-06 これも市民感覚かな

4/30付東京新聞より、

 愛知県内の大手病院で昨秋、エイズウイルス(HIV)感染が判明した三十代の看護師が退職に追い込まれていたことが分かった。看護師は「病院幹部から看護師としては働けないと言われ、退職強要と受け止めた」と話している。病院側は「退職を求める意図はなかった」と、退職勧奨を否定している。

 国の「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」では、HIV感染者を差別しないよう求めているが、医療現場は対象外とされている。医療現場向けのガイドラインは策定の必要性が指摘されてから十五年以上たっても整備されておらず、国の不作為が今回のような問題を引き起こす一因となっている。

 看護師と病院側によると、看護師は昨年九月、勤務中に過労で倒れ、院内で治療を受けた。その際、病院側は本人に断らずに採血検査をし、HIV感染の疑いが判明。翌日、看護師は別の医療機関で詳細な検査を受け、感染が確定した。エイズは発症していない。

 看護師は、別の病気を理由に休暇を取った後、同十月中旬に感染確定の診断書を持参。最初は主に副院長と、二回目からは当時の職場だった施設の副施設長と数回、就労について話し合った。

 その際、看護師は治療後の職場復帰に支障がないことを明記した診断書を示したが、副施設長は「うちでは看護職は続けられない。運転や配膳(はいぜん)の仕事はあるが、差し迫って人が必要なわけではない。他の理解ある病院に面倒を見てもらっては」と発言。看護師は同十一月末、副施設長に「退職を強要されたと受け止めている」と伝え、辞表を提出した。

GWで休んでいる間に話題となったようです。既に各所で評論されているのですが、NATROM様の意見をまず御紹介しておきます。

 HIVキャリアというだけで看護師を退職させる病院には私は受診したくありません。病院側がHIVの感染力について知らないのなら、これは医学的に無知なわけですので話になりません。HIVの感染力を知った上で「他の患者様に不安感を与える」といった理由で看護師を退職させようとしたとしましょう。そのような病院は、私が「他の患者様に不安感を与える」病態に陥ったら、私を放り出すでしょう。そのような病院を容認する社会は、ハンセン病元患者の宿泊拒否を容認する社会であり、エロ同人誌の所持だけを理由にした解雇を容認する社会です。

「エロ同人誌」の喩えはNATROM様の元エントリーを御確認下さい。この意見が正論だと私も思います。つうか私もエントリーに仕立てるならそういう路線で書いたと思います。もう少し言えば、そういう反応がわっと巻き起こり、病院批判が大勢を占める流れを予想していましたが、どうも必ずしもそうでないようです。簡単に言えば賛否両論みたいな流れがあるようです。

否定意見はNATROM様の意見で代表できますが、賛成意見は感情論と言うか感覚論が主体のようです。大雑把にまとめると、

    本音としてHIV感染看護師のいる病院は受診したくない

ネットは本音がポロポロ零れるところですから、そういう意見が出る事自体は不思議ないのですが、この意見がごく少数ではなくかなり多い事に少々驚かされました。

HIV感染症についての情報が広まってからもう何年になるでしょうか。初期のものから現在に至るまで変遷はありますし、現在でも難病であることは変わりありませんが、感染症自体についての知識はかなり普及していると感じていました。治療と研究の進歩によりHIV感染者であっても、その多くは通常と変わらない生活を送れる知識はかなり広がっていると考えていたのです。

知識の広がりは当然の様に濃淡はありますが、賛成意見の主張者の中にもそれなりに知識がある人もおり、また意見交換の中で知識を広げても「感覚的に嫌」と言う人が必ずしも少なくないのは驚かないといけないかも知れません。感覚や感情はしばしば理性を超えますが、HIV問題で感覚や感情をいつまでも優先することは良い事だとは思いません。むしろ理性で抑えこむ作業を延々と続ける事が解決への道筋だと考えています。


もう一つですが、賛成意見の中でよくわからなかったのは、

    HIV感染者がいる事を公表すれば病院から患者が逃げるし、公表せずに後で発覚すれば情報隠蔽で叩かれる

これには病院であるなら少々逃げてくれた方がかえって助かるなんてブラックな意見が出てましたが、零細診療所では深刻な問題です。ただなんですが、HIV感染者である事を公表しないといけないのでしょうか。また公表していない事が発覚する事は悪事なんでしょうか。理想的には公表しても誰も差別意識を抱かない事なんでしょうが、今回の件で認知されたのは抱く方がかなり多いと言う事です。

HIV感染は難病ではありますが、医療業務での他者への感染リスクと言う点からすればB型肝炎(HBV)とさしての差異はありません。日本ではHBVの予防接種の普及が無に等しいので、そういう意味でも近いと言えます。HBV感染者の存在は公表されませんし、公表しない事で社会的にバッシングを受ける事もありません。なぜHIVが叩かれて、HBVが叩かれないのかの疑問は出てきます。

理想は公表しても感情、感覚的に反応が乏しい状態ですが、現実的に難しいのであれば公表しないと言う選択もあったはずです。私の知る限りHIV感染者である事を伏せても社会的になんら問題はなかったはずです。記事にもあるように無断で検査したことさえ問題視されるのですから、公表なんてトンデモナイと判断する方が適切だと考えます。


「そんなものは綺麗事だ」との反応も出てきそうですが、HIV感染問題を今回の様に感覚や感情だけで対応していてば永遠に問題は先送りになります。これはあくまでも憶測ですが、黙って雇っている病院もあると考えています。こういう問題は広く公表して理解を求めるのが本筋ではありますが、経営リスクとHIV感染者への風当たりを考慮すれば、現実的対処法としてありえる選択枝です。

まあ、今回の件で「病院が許せない」の感情や感覚が世論として沸き立つようなら、あえて公表してHIV感染者への理解を求める路線への道筋も開かれたかもしれませんが、こんな反応が市民感覚なら道はまだまだ遠いかもしれません。医療者としては地道に理性に訴えての啓蒙を続けるぐらいしか対策が思い浮かびません。

今回の問題が5年、10年先には違った市民感覚になる様に努力を重ねる事が一番重要と考えます。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/05/06 10:27
すみません。ブラックな意見言ったのは私です。<(_ _)>
流石に、アレなので、マトモな意見書いた、私のブログの方も。

>http://d.hatena.ne.jp/luckdragon2009/20100504/1272899121

luckdragon2009luckdragon2009 2010/05/06 10:35 別ブログの記事にもありましたが、世界中を合計しても、HIVの医療者から患者への感染は三例しか、ないようです。

moto-tclinicmoto-tclinic 2010/05/06 10:51 HIVのかたで自己申告なさるかたはさすがに居ないですが、HBキャリアのかたで術前自己申告なさるかたはときどきいます。
にこやかに笑って「あ、そうですか。わかりました、気をつけてやります。情報ありがとうございます」で、施術しますが、内心「黙っててくれればいいのになー」って思ってます。手術断るわけにもいかないし、器具などの滅菌手順が変わるわけでもなし。
術者が緊張してストレス増えるだけです。
国立病院勤めてたときに術前検査でHIVやHB、HCVチェックがルーチンだったときも、何のために検査するのか謎でした。

moto-tclinicmoto-tclinic 2010/05/06 11:12 >世界中を合計して、HIVの医療者から患者への感染は三例
それ本当なら、十分、病院側が雇用を拒否できる根拠のような気がしますが・・。
重い話ですから、ソース引用したほうが良いと思います。

わたしがHIV感染したら、HIV専門病院みたいなとこあるいは病棟で雇ってもらうかなー。
逆に、気が滅入るかしらん・・。

首都圏の産科医首都圏の産科医 2010/05/06 11:36 先進国の中でHIVが増加し続けている唯一の国らしい反応ですね。
しっかりとした啓蒙がされないと、水面下で感染者がドンドン増えます。

医療機関でさえ、HIVに大きな偏見を持っていることを端的に示すものがあります。
検査結果で、HIVだけがなぜか別になっていて、個人情報保護シールのついたハガキになっているのです
せめてHBV,HCV、梅毒などと同列に扱う必要があると思います

そのうえで、しっかりとした情報提供をしないと、不作為による感染拡大が増えそうです

卵の名無し卵の名無し 2010/05/06 11:43 >HIV感染者である事を公表
本人の明白な同意(書類がよいでしょう)なく病院が公表したならまず医師法の守秘義務違反でしょう。病院が本人へ公表への同意を強要したら人権侵害になります。
もしそういう患者の個人情報を病院の世間体だけが理由で平気で「公表」する病院があれば、そんな病院には私も受診しないし勤務もしませんねwここの病院がどうなのかは「記者が取材した」記事だけからは例によってわかりませんがw

元ライダー元ライダー 2010/05/06 12:08 首都圏の産科医さま

私も「本人に断らずに採血検査をし」に反応しましたから、まったく同意なんですが、例によって諸悪の根源は「健医感発 第78号 平成5年7月13日厚生省保健医療局」ではないでしょうか。
http://www.acc.go.jp/mlhw/mhw_yobo/doc_02_23.htm(未だに有効ならですけど)
どこにでも現れて、余計なことだけして、あとは放置。
余計なことをされた現場のモチベーションは下がる一方。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/05/06 12:54 > http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14768247

ソースは、これのはずです。
三例の件。

元法学部生元法学部生 2010/05/06 13:08 以前は、この手のニュースに接するたびに、日本人の科学リテラシーの低さの問題と捉えていました。
最近は、これは科学の問題じゃなくて、宗教の問題なんだと気がつきました。
日本土着宗教の中心概念である、浄・不浄つまり穢れの問題なので、科学的合理性だけでは解決が難しい問題なんだなと。

宗教的慣習というのは、どうしても思考と行動を束縛します。
たとえば、男性が小用をたすときでも、一般的な手の汚さ(付着してる様々な物質)と、小水の無菌性を考えれば、「用を足す前に手を洗う」ほうが科学的合理性がありますし、尿道炎・膀胱炎等のリスク低減効果があると思うんですが、日本人として生まれ育つと、どうしても「用を足してから手を洗う」という習慣になります。
ここで行われている手洗いは、小水という穢れからの禊ぎとしての手洗いなんです。

というわけで、病院側も、病院側を支持する意見にも、個人的には全く与しませんが、宗教的思考の産物である以上、その様に感じてしまう日本土着宗教原理主義者が一定数存在してしまうことはやむを得ない気がします。宗教に対して科学的合理主義は無力とは言わないまでも限定的影響力しか持ち得ないので。

もちろん私個人としては、そんなことで退職勧奨するような無法者の管理する病院は、新興宗教の付属クリニックやホメオパスが勤務する病院と同じくらい受診したくありません。

rokutanrokutan 2010/05/06 13:21 >「うちでは看護職は続けられない。運転や配膳(はいぜん)の仕事はあるが、差し迫って人が必要なわけではない。他の理解ある病院に面倒を見てもらっては」と発言。

 この発言が、「当院の感染対策は不十分であり、たとえHIVのように感染力の比較的弱い病原体であっても、院内感染を防ぐとができない。そんな不潔で、未熟な病院ですよ」と言っているに等しいということに気がついているのでしょうか。「他の理解ある病院」はちゃんと感染対策・対応できるのにねえ。
 個人的にはこのような発言をする病院には、勤めたくありませんし、かかりたくありません。

>先進国の中でHIVが増加し続けている唯一の国

 なんとかしなくてはいけない、ゆゆしき問題だとは思うのですが、最近はマスコミも取り上げませんしね。過去の病気と思っている人も多いのではないでしょうか。
 サーバリックスも発売されたことですし、子供たちにもっと性感染症の怖さをアピールしていくことを考えないといけない。そのような企画はないものでしょうか。

サルガッソーサルガッソー 2010/05/06 13:31 HIV忌避に穢れ意識があるのは同意ですが、厚生省が初期に行ったHIVキャンペーンの影響もあるのでは無いですかね。
本来なら避妊目的にピル、性感染症予防ならコンドームを使い分ければすむ話を
貞操観念の為に婚前交渉の否定に走り、その道具としてエイズの恐怖を煽ったわけです。
2ch界隈もエイズ=セックスした結果 と短絡に捉えて妬み混じりの反応じゃないかと

うらぶれ内科うらぶれ内科 2010/05/06 13:43 先日いらっしゃった、どうも彼女が感染源らしいクラミジアらしき尿道炎のお兄ちゃんに、どこまで言うべきか難しいですね。でも心を鬼にして言いました。彼女と一緒にちゃんと治療を受けなさい。そして二人とも必ずHIVの検査を受けることって。私も医者の端くれですから。その後2人の仲がどうなったかなんて知ったことではありません。

tadano-rytadano-ry 2010/05/06 13:43
看護師退職勧奨 『HIV 差別なくして』
(2010年4月30日) 【中日新聞】

医療現場 基準なく

 「エイズウイルス(HIV)の知識があるはずの病院で、こんな差別を受けるなんて」。HIV感染が判明したことで、昨秋に愛知県の病院から退職に追い込まれた看護師は、今も憤りが冷めない。HIVが発見されて25年以上がたつが、いまだに消えない偏見。看護師は「HIVは日常生活や看護業務では感染しないことを広めて、差別をなくしてほしい」と訴える。

「感染リスク高い」誤解に憤り

 「看護師としての業務はできない。リスク高いでしょ?」。誤った認識をもとに副施設長が浴びせた言葉を、看護師は忘れられない。
 この病院は、系列にHIV拠点病院があるような大手医療機関。だが、過労で倒れたときとはいえ、本人の同意なしに採血検査を実施された。看護師が診断書を副院長に持参したときも、プライバシー保護のために別の上司の退席を求めたが、認められなかった。
 そんなつらい体験をしても看護師は「10年ほど前に、亡くなった患者の家族から礼を言われた体験が忘れられず、看護師の仕事には思い入れがある」と話す。現在は理解ある病院に職を得、看護師として働いている。
 一時は訴訟も検討したものの、狭い医療業界で個人情報が広まることを恐れ、断念。看護師は「同じように泣き寝入りしている医師や看護師は多いはず。差別がない社会にしてほしい」と訴えている。

指針改定すべきだ

 薬害によるHIV感染を公表している川田龍平参院議員の話 HIV感染した看護師や医療従事者の就業を禁止するような法律はない。病院が十分な対策を取れば、そのまま就労可能なはず。感染していることをもって就業を制限するということは、考えられない。「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」の「医療現場は想定外」という項目が理由になるなら、改定すべきだ。HIV感染者の就業の難しさは、いろんな所で聞いており、周囲が十分な知識を持ち意識を変える必要がある。

国内理解低さ示す

 日本エイズ学会理事を務める名古屋市立大看護学部の市川誠一教授(感染疫学)の話 病院はHIVの知識がある人が一番そろい、患者を支援しなければいけない場所。そこで差別が行われるなんて、ひどいことだ。上司や周囲はサポートに回るべきなのに。この看護師に限ったケースではないだろう。日本でHIV感染者への理解が低いことを示している。

肝炎は就労制限なし

 エイズウイルス(HIV)に感染した愛知県の看護師が病院退職に追い込まれた背景にあるのは、HIV感染した医療関係者の就労についての基準がないことだ。
 旧労働省(現厚生労働省)の「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」(1995年)は、感染を理由にした解雇や就業禁止をしないよう求めているが、医療現場はガイドラインの対象外とした。

 旧労働省の検討委員会が94年にまとめた報告書では、医療現場を「HIVに感染する危険を有する職場」と位置づけ、別にガイドラインを設けるよう問題提起した。委員は経営者や労働団体の代表、弁護士ら。医師は2人だけで、うち1人は産業医だった。
 結局、医療現場向けのガイドラインは作られなかった。厚労省労働衛生課の担当者は「報告書に基づき、一般の職場と違って感染する可能性が高いと判断した」と話す。

 一方、同様に血液を介し感染するB・C型肝炎について、厚労省の「Q&A」は、医療従事者が感染しても患者に感染する危険はほとんどないと説明。仕事の制限はないと明記する。HIVは感染力が弱く、針刺し事故による患者から医療従事者への感染率は、B・C型肝炎の10分の1以下。医療従事者から患者への針刺し事故はまず考えられない。
 同省でも、院内感染対策などを指導する医政局指導課の担当者は「医療従事者であっても、HIV感染した場合に仕事に制限を設けるべきではない」と話し、労働衛生課と立場を異にしている。
 HIVの治療に詳しい愛知県赤十字血液センターの浜口元洋副所長は「看護業務で感染する危険はなくHIVも肝炎と同様に扱われるべきだ。ガイドラインが医療現場を対象外とするのは間違っている」と指摘する。

何かあると対応困る/HIVの知識ない

 病院側の副院長(看護師に応対した副院長とは別人)と、副施設長との一問一答は、次の通り。

 −看護師は「退職を強要された」と訴えている。

 副院長 退職勧奨はなかった。話し合った時期は本人の体調も悪く、まず十分に療養するべきことなどを中心に話し合った。寛解(症状改善)後の復職は当然のこととしても、具体的な話をする状況ではなかった。

 −その場で「看護師としては働けない」と伝えているが。

 副施設長 施設では入浴の介助などもあり、車いすでけがをして血を流す職員もいる。本人は「感染していることを周囲の職員には伏せてほしい」と希望したが、何かあったとき対応に困る。

 −「看護師を続けたいなら、他の病院に行ったら」などと伝えたのはなぜか。退職勧奨に聞こえるが。

 副施設長 (看護師が)理解してもらえる先生(医師)の話をよくしていたので、「それならそちらに行ったら」と話した。退職を勧めるような意図はなかった。

 −HIVの知識は持っていたか。病院の医師との連携は。

 副施設長 HIVの知識はない。連携も、全くなかった。

 副院長 HIVという言葉に、過剰に反応した部分もあったと思う。今後、同じような問題が起きたときにどうするか、院内の感染対策委員長に規約を作るよう頼んだ。

http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20100430145206773

tadano-rytadano-ry 2010/05/06 13:50 HIV退職勧奨 『医療機関も指針順守を』
(2010年4月30日) 【中日新聞】【夕刊】

厚労相『ガイドラインは必要最小限』

 愛知県内の大手病院で昨秋、エイズウイルス(HIV)に感染した看護師が退職に追い込まれていた問題で、長妻昭厚生労働相は30日、閣議後の会見で、医療機関も一般企業など他の職場同様、就労差別をしないよう求めた同省の「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」の趣旨に従うよう求めた。
 ガイドラインでは「HIVを含む血液等に接触する危険性が高い医療機関等の職場は想定していない」とされていた。

 ガイドラインで医療機関が除外されていることについて、長妻厚労相は「医療関係(医療機関)は、一般より高い医療知識を持っているので、そこで検討してもらう趣旨」だったと説明。「ガイドラインは必要最小限と考えている。ガイドラインの趣旨に従って、医療機関も行動してほしい。それがわれわれの考え方」と話し、感染者の退職勧奨などをしないよう求めた。
 愛知県内の病院での看護師退職問題については「事実関係を把握していないのでコメントは控える」と話した。

http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20100505132405681

---------------------------------------------------------------------
長妻大臣閣議後記者会見概要(H22.4.30(金) 9:36 〜 10:00 省内会見室)


(記者)
HIV感染者と、職場での対応についてお伺いしたいのですが、厚生労働省が95年に作りました「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」につきまして、この中でHIVに感染した医療関係者の差別的取扱いを認めているとも受け止められるような内容が入っているのですが、それがそういう趣旨なのかどうか、それから、改正を考えていないのかどうかということが1点。もう一つはHIVに感染した医師とか、看護師の就労についてどうお考えでしょうか。

(大臣)
これについては医療機関以外について決めたガイドラインはありますが、医療関係については一般の組織よりも高度な医療知識を持っておられるので、それはそこで検討いただこうという趣旨でガイドラインを策定されたと聞いております。ただ、一般の組織に適用されているガイドラインも、必要最小限のものと考えておりまして、基本的にはガイドラインの趣旨に沿って、医療機関も行動して欲しいというのが我々の考え方です。つまり、医療機関はある意味ではそれに上乗せするようなガイドラインを検討していただくという趣旨ですので、基本的には今ある一般的な組織に適用されているガイドラインで書かれていることは、医療機関としてもガイドラインの範疇で行動して欲しいということです。ただ、今回の個別案件については我々は事実確認もしておりませんのでコメントを差し控えますが、一般論としてはそういう考え方です。

http://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/2r985200000065jx.html

moto-tclinicmoto-tclinic 2010/05/06 14:03 >> http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14768247
>ソースは、これのはずです。
>三例の件

これは、外科医からの、手術時の感染のようですね。
ということは、術前検査として必要なのは、外科医のHIV,HB,HCVなどのチェックではなかろうか・・?
いずれにせよ、看護師による通常の看護業務での感染ではなさそうです。

moto-tclinicmoto-tclinic 2010/05/06 14:13 >tadano-ry様

最近「ガイドライン」は多いですが、この「ガイドライン」なるものに、現場はどう拘束されるのか?(法的拘束力のようなものはあるのか?)について、別件で以前考察したことがあります。
http://blog.m3.com/steroidwithdrawal/20091021/22
要は、ガイドラインには拘束力など無いし、ガイドラインに従ったからといって現場は免責されないし、言い訳にすらならない、ってことみたいです。(ただしアメリカのお話)
日本って「ガイドライン」が重視されすぎのような気がします。

tadano-rytadano-ry 2010/05/06 14:27  このケースの最大の問題は、医療機関であるこの病院の管理者にHIVに対する知識がほとんど無い事だと思われます。記者とのやりとりを見ていたら○○丸出しとしかいいようがありません。

 あと付け加えることがあるとすれば、今回感染が判明したから大騒ぎされたようですが、HIV感染者が先進国で唯一増加している我が国では、感染に気づいていない人がかなりいるのは間違いなく、その中には医療従事者も含まれているだろうと言うことです。

 ですから個々の事例として片付ける問題ではないように思いましたし、さんざん「イランなw」と言われていますがw、「ガイドラインの趣旨に従って、医療機関も行動してほしい」とした厚労省の対応は今回に限っては一応評価できます。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/05/06 14:46 実際には、英語の論文、集計したようですし、ウズベキスタンとかだと、汚染された器具でのアウトブレイク起きています。
まあ、私自身は肝炎の数百例も含め、ある程度は許容すべき、かつ、管理はすべきだが、差別すると、隠蔽されるだけなので、正確な理解が、必要かと思います。

実際、感染防御の手順はあるようですし。
> 感染症関連ブログで紹介されてた。

tadano-rytadano-ry 2010/05/06 15:11 motoさま

 ガイドラインに法的拘束力はないのは承知しています。

 ただ今回の「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」は厚労省の通達の一部を構成するものとして(平成7年2月20日 基発第75号・職発第97号)出されていることを考えると、我々が通常目にする診療ガイドラインとは別に考えるべきであると思われます。

 現にこのガイドラインは過去のHIVがらみの労働判例でも判断の材料として使われています。以下に判決の一例を示します。

 この判決では、HIV感染を理由とする警察官に対する退職勧奨による退職につき、
退職勧奨のみならず、本人の同意を得ずにHIV抗体検査を行ったことも不法行為であると認定している点が注目すべきところだと思われます。

--------------------------------------------------------------------
http://www.t3.rim.or.jp/~aids/police19.html

東京都(警察学校・警察病院HIV検査)事件

physicianphysician 2010/05/06 15:15 針刺し、起こさないと思っていたけど、やっちゃった私が通りますよ。
しかも、17〜18Gでぶっすり。物理的にも痛かったです。心はもっと痛かったけど。


moto-tclinicさま
国立病院勤めてたときに術前検査でHIVやHB、HCVチェックがルーチンだったときも、何のために検査するのか謎でした。

針刺しがおこった時の対処のためでしょう...釣りですか?

元ライダー元ライダー 2010/05/06 15:33 あくまでもひとつの可能性なんですが、
この病院の管理職がHIVについての知識が十分であり、職場感染の確率が極めて低いことを知っていたとしても、「市民感覚」による風評被害を考えれば辞めていただいたほうが病院経営上低リスクと考るのは経営者の立場としては理解できます。あくまでも理解できるだけで、同一行為はしませんが。

その場合、取材を受けても「市民感覚様には逆らえないので辞めていただいた」とは市民感覚様の急先鋒であるマスコミ取材者には言えないでしょうね。しどろもどろになるかも。

感染症において、「市民感覚」による風評被害を最も受けるのは医療業界、飲食業界、宿泊業界ですね。一方、トヨタやキャノンなどの製造業(あとマスコミも)ではほとんど風評被害を考慮する必要がないでしょう。ガイドラインを遵守しやすい企業とそうでない企業があるわけですな。正しい知識を持って正しい対処をしたからといって必ずしも市民感覚様が納得してくださるという訳ではありませんから、リスクマネージメントは難しいですね。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/05/06 16:09 でも、針刺し、患者→医療者、ですよね。
逆って、考えにくい。

moto-tclinicmoto-tclinic 2010/05/06 16:13 針刺し、わたしもやったことあります。ATLA陽性患者の鎖骨下挿入時に(^^;。

心痛いっていうか、医者になったこと、かなり後悔しますね〜。

その後、感染してるかどうか、知るのがこわくて、何年か血液検査できませんでした。
数年後、たまたま別の用事で(自分の繊維芽細胞を実験用に供出する関係で)、感染症チェック受けたら、ATLA陰性だったので、ほんと良かったけど。

まあ、感染しちゃったらしちゃったで、受け入れるしか無いんでしょうが。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/05/06 16:13 > http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/2652e95df7059e179a942d5f98784bc6

つけときます。

卵の名無し卵の名無し 2010/05/06 16:27 ガイドラインの話はいいけど、これまでのところ今回職員を患者として診療した上で知りえたHIV感染という個人情報を「公表」した病院側の行為については、具体的にいかなる(HIV感染)患者(職員)に対する病院としての業務上知りえた個人の秘密に対する守秘義務を果たしているのかが全く見えてこないですなw

rijinrijin 2010/05/06 16:54  科学的合理性よりも風評被害が怖いという例は、取り立てて珍しい話ではありません。

 HIVと病院という取り合わせはどうかと思いますが。

 でもね、風評って、誰が振りまくものでしたっけ。

moto-tclinicmoto-tclinic 2010/05/06 17:55 いかし、外科医から手術時に感染した例がある、っていうのは、けっこうショッキングです。メスで指でも切って血が垂れたのか?
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14768247

医療側が防衛というか、針刺し後の早期処置のため術前に感染症チェックするなら、患者側にも術前に外科医の感染症チェックの結果を示すべきではなかろうか?
そういえば、風俗のお店で「当店の女の子は、定期的に性病検査受けているので安心です!」てのもありますし。

moto-tclinicmoto-tclinic 2010/05/06 17:58 わたしの先代のころ(昭和30年代くらい?)には、外科の先生、手袋すると微妙な指先の感覚がにぶるとかいって、素手で消毒して手術するひともいたそうです。そのころは外科の先生のHB、HCVって、普通に職業病だったらしいですね〜。
感染するひとは、そういう行為(針刺しとか)をしがちな人が多いですから、感染させやすいとも言えます。
「HB陽性の経験豊かな部長先生と、感染症なしの3年目の若手がいます。お二人とも手は空いています。どちらかお好きなほうを術者にお選びください。ただし、自己責任・ノークレームでお願いします」
さあ、どうしたものでしょうか?

tadano-rytadano-ry 2010/05/06 20:13 >病院としての業務上知りえた個人の秘密に対する守秘義務を果たしているのか

 というか、この記事は書き方からして看護師側から記者へのアプローチがあったと推察されますが…

empemp 2010/05/06 21:46 術中って結構顔の方にも液体が飛んできますよね。術後に自分のメガネ見てかなりショックを受けました。
以後は手術室以外でも観血的処置をするときは基本的にゴーグルかメガネか着用するようにしてましたよ。

卵の名無し卵の名無し 2010/05/06 21:48 tadano-ry さま
んー、私はこの記事で「無断で採血検査した」とか「退職もしくは配置換え勧奨した」とかの点については全然問題じゃない、むしろ医療機関なら当然の通常の診断治療方針であると思っています。ただし医師患者関係を構築する原点である守秘義務に忠実に完全に非公開でなされたことであれば、ですが。現実には病院は検査技師も看護婦も医師も複数の職員の集団で組織されていますから職員の間での情報漏れは防ぐことは出来ませんが、病院の職員全員に守秘義務が科されていますから緘口令によって病院外(特に報道機関)へのカルテ内容のリークは防ぐことが出来るし医の倫理上も防ぐべきです。たとえ今回のように労働争議のような事件になったとしても副院長や副施設長が裁判所でもない記者取材如きに対して患者の個人情報に関する診療内容について医師としての立場からべらべらしゃべるべきではない、記者につながるような本人以外の人物に対しては公の訴訟の場以外では完全にノーコメントで通すべきであり、病院の風評被害など全然問題になりません。病院はまったく営利組織ではないのですから、たとえおっしゃるとおり>看護師側から記者へのアプローチがあった>としても病院は自院職員以外の者にたいして会見など開いてはいけないと思います。
私が病気になっても病院の風評被害wを防ぐために私のプライベートな診療記録情報を新聞なんぞに公開されるような病院職員がいるところにはとても受診する気にはなれませんからw

元外科医元外科医 2010/05/06 22:43 患者の秘密を守れない大手病院の名前は公表してくれないのですね(笑)

luckdragon2009luckdragon2009 2010/05/06 23:19 まあ、今回の件については、報道機関は守秘を守っているようです。
個人および病院を特定する情報は、地域エリア以外は公表しておりません。

あ、でも微妙に推測可能ですね。
まあ、そこらへんは各自の判断ということで。

卵の名無し卵の名無し 2010/05/06 23:56 >報道機関は守秘を守っているようです。
つうか、裁判も起こっていないこの時点で記事にする取材センスの無さは相変わらずの低レベルですな>新聞記者w
限られた紙面をこの程度のしょうもないゴミ記事で埋めるからますます売れなくなる悪循環にはまっていることがわかってないんだろうねw>編集主幹w

moto-tclinicmoto-tclinic 2010/05/07 01:23 わたしはこの記事で気になるところは、やっぱり

>医療現場向けのガイドラインは策定の必要性が指摘されてから十五年以上たっても整備されておらず、国の不作為が今回のような問題を引き起こす一因となっている

ここですかねー。アメリカみたいに免責宣言からはじまって、3年毎とかでしょっちゅう書き換えられるものならいいけど、ろくなもの出来ないような気がするから無いほうがましなような・・アメリカにはガイドラインあるんですかね?

看護師業務のうちでも、注射点滴とか観血処置は避けたほうが無難なような気がするけど。
医者はどうなんだろ?HB陽性とかHIVでも、いまのところ外科手術する医者いそうですよね。・・つーか、歯医者なんか、結構いるんじゃないのか?

このへんガイドラインはあると便利かも。考える参考になるから。だけど、日本は、ガイドラインできた途端、お上の作った金科玉条的にははーっと平伏して思考停止する傾向にあるから、やっぱり無いほうがいいかしらん。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/05/07 04:51 感染症ブログに一応、CDCガイドラインの記述が。(日本の例もあり)

はっておきますね。
(人の著作の紹介...、別に私には何も入らんけど(苦笑)。)
> http://www.medica.co.jp/book/view?id=1780

luckdragon2009luckdragon2009 2010/05/07 04:53 多分、探せば、インターネットのどこかにもあるんだろうけど、時間なし。(^^;

元法学部生元法学部生 2010/05/07 09:01 >個人および病院を特定する情報は、地域エリア以外は公表しておりません。

いや県が特定されていて、複数病院を経営する法人で、HIV拠点病院が系列にあるって時点で、病院は特定出来なくても、経営法人は特定されてるのも同然だと思うんですけど。
公立でも大学付属でも無いHIV拠点病院が県内にいくつもあるような県はそうそう無いでしょう。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/05/07 09:47 まあ、特定可能だと思います。
一応、匂わせてはおいたけど。

まあ、何か起きるのも感じ良くないので、曖昧な言い方に留めてはおきましたが。

10年ドロッポ10年ドロッポ 2010/05/07 12:16 >数年後、たまたま別の用事で(自分の繊維芽細胞を実験用に供出する関係で)、感染症チェック受けたら、ATLA陰性だったので、ほんと良かったけど。

研修医の頃ATLの専門家の先生に伺ったところによると「3回、300回、無限大」だそうです。
*何回針刺しすれば感染するか。順にHB、HTV、ATLA。

nyamajunyamaju 2010/05/09 15:58 皆さん、病院のガイドラインを確認してみたほうが良いかもしれませんよ。

うちの病院で昨年か一昨年にあったことですが、
まだよくわからないが怖い感染症と思われていた時代に作られた
古〜〜い手術時のHIV対策ガイドラインがそのまま放置されていました。

手術は全ての手術が終わったあと、
術者だけではなく麻酔科までごつい防御服、マスク、ゴーグルを付け
空調を切ったうえで完全にドアを閉め切った手術室で手術。
手術が終わるまで出入りも一切禁止。
これがそこそこ待てる緊急手術の申し込み後に発覚し、
あまりの過酷さに外科、麻酔科の医師が師長を懐柔しようとしましたが、
ガイドライン遵守を主張する手術室師長を切り崩せず、
そのまま苦行となりました。

moto-tclinicmoto-tclinic 2010/05/09 17:21 そうそう、ガイドラインなんかあるとろくなことが起きない。
少なくとも、
「このガイドラインの賞味期限は作成後2年間である」とか記載してあればまだ良いのだが。
わたしは、
「このガイドラインはあくまで参考であり、臨床での判断を拘束するものではないし、ガイドライン作成者は、本ガイドラインの内容に関していかなる責任も負わない」
と明記された以外のガイドラインは、一切信用できないと思ってます。そうでないガイドラインは、そもそもガイドラインの何たるか?を自覚していないひとが作ったものだから。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20100506