日本医療機能評価機構

本当に久しぶりにこの機構のホームページを開きましたが、気のせいか事業が増えているようです。ちょっと上げておきますと、

  1. 病院機能評価事業
  2. 病院機能改善支援事業
  3. 評価調査者(サーベイヤー)の養成事業
  4. 医療機能評価に関する調査・研究開発事業
  5. 認定病院患者安全推進事業
  6. 産科医療補償制度運営事業
  7. EBM医療情報事業
  8. 医療事故情報収集等事業
  9. 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業
  10. 医療機能評価に関する普及・啓発事業
いやぁ増えましたね(つうても前は覚えていませんけど)。どこかで医療事故調が始まったらこの機構が担当する予定だの噂を聞いたことがありしたが、なるほど「医療事故情報収集等事業」とか「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を引っ張り込んでいますから、新たな収益事業としてやる気マンマンな事だけはわかります。とりあえずは産科医療制度補償制度運営事業が目に付きますが西日本新聞に、

 出産事故で赤ちゃんが重度の脳性まひになった場合、医療者の過失の有無にかかわらず3千万円の補償金を支給する産科医療補償(無過失補償)制度の申請件数が、開始後1年8カ月で全国67件だったことが分かった。制度が保険料(1分娩(ぶんべん)3万円)の算定根拠とした推定対象件数(5年目以降)は年800件で、ペースはこれを大きく下回る。脳性まひの診断は幼児になってできる場合もあり、制度活用のため「小児科医や保健師にも周知を図ってほしい」と求める声が出ている。

1分娩3万円ですが、年間分娩数を100万件としても年間300億円の収入があることになります。制度が発足して1年8ヶ月ですから500億円以上の保険料が転がり込んでいる事になりますが、支払ったのは、

    開始後1年8カ月で全国67件
1件3000万としても20億円程度ですから差し引き480億円の高収益を確保している事になります。そりゃ不宣伝にも熱意が沸騰すると思います。診療報酬改定での増額が話題になりましたが、公式発表で医科の増額分が4800億円程度とされています。その1割を座っているだけで収入として手にしている訳ですから、こんなに美味しい事業は世の中にそうそうは無いでしょう。



さてもう一つの看板事業である医療機能評価事業ですが、今は料金表が公開されています。チョット長いですが、大変興味深い料金表だったので頑張って引用します。幾つかあるので順番に紹介していきますが、

内容 相談時期 相談回数 定価 (本体価格)
窓口相談 受審前 初回時 52,500円 (50,000円)
2回目以降・1時間毎 21,000円 (20,000円)
受審後 初回時 52,500円 (50,000円)
2回目以降・1時間毎 21,000円 (20,000円)


うわぉ、窓口で相談するだけで料金が発生するようです。ちなみに窓口相談とは、

病院機能評価受審前後の問題点に関してのご相談、機能改善の方向性について、当機構内(東京)にて相談担当が応じます。

東京でしか受付ないようですから、東京にある病院はともかく地方の病院では、この料金にさらに交通費が上乗せされる事になります。1時間が基本で延長して2時間のようですが、弁護士への相談とどちらが高いのでしょうか。

内容 サーベイヤー 日数 定価 (本体価格)
訪問受審支援 3名 1日 525,000円 (500,000円)

2010年7月1日から実施体制と料金を統一しました。
現地までの往復交通費と宿泊費等、サーベイヤーの現地訪問にかかる諸経費については、当機構の旅費規程に基づき、別途申し受けます。


訪問受審支援とはなんじゃらホイなんですが、

病院機能評価受審準備のための支援メニュー。自己評価の結果明らかになった問題点等について診療・看護・事務管理サーベイヤー計3名が病院を訪問して助言し、ご相談に応じます。

機構の方々に病院までわざわざ御足労頂きアドバイスを受ける料金のようです。アゴアシ代は別で3人で50万円(消費税別途)のようです。これは1日となっています。ひぇぇぇと私なんかは感じてしまいます。

内容 サーベイヤー 定価 (本体価格)
専門相談員派遣
(受審後)
1名 315,000円 (300,000円)
2名 420,000円 (400,000円)
3名 525,000円 (500,000円)

現地までの往復交通費と宿泊費等、サーベイヤーの現地訪問にかかる諸経費については、当機構の旅費規程に基づき、別途申し受けます。


受審後の専門相談員派遣つうのも何をするのかわかりにくいのですが、

病院機能評価受審後の支援メニュー。病院機能評価の結果、明らかになった問題点について診療・看護・事務管理サーベイヤーが病院を訪問して、ご相談に応じます。

どうやら審査前に病院でアドバイスを受けるのは3人セットで50万円(消費税別途)で、審査が始まってからも50万円(消費税別途)である代わりに、3人セットではなくバラでも可とはなっているようです。もっとも1人でも30万円(消費税別途)ですから、3人セットの方がお得と言う表現で宜しいでしょうか。北海道とか沖縄では旅費と宿泊費も考えると3人セットで100万仕事かもしれません。格安チケットなんて利用してくれないでしょうし、宿もねぇ・・・。

内容 定価 (本体価格)
講師派遣 63,000円 (60,000円)

現地までの往復交通費と宿泊費等、サーベイヤーの現地訪問にかかる諸経費については、当機構の旅費規程に基づき、別途申し受けます。


講師派遣なんぞやになるのですが、

病院の中で病院機能評価の概要について2時間程度の講演を行います

これは、え〜と、専門相談員が具体的に審査の内容をアドバイスするのに対し、講師は「病院機能評価とはなんぞや」を講演してくれるもののようです。これが6万円(消費税別途)のようです。次は本審査の料金表なのですが、2007.2.6のエントリーで柳様から寄せられた当時の審査料金を先に示します。

審査区分 料金
一般病院種別A200床未満 120万円
精神病院種別A長期療養病院種別200床未満 140万円
複合病院種別A現行一般病院種別A200床以上 180万円
一般病院種別B精神病院種別A400床以上、精神病院種別B長期療養病院種別200床以上、複合病院種別B新料金一般・複合100床未満 120万円
精神・長期療養200床未満一般・複合100床〜200床未満 150万円
精神・長期療養200床〜;400床未満一般・複合200床〜;500床未満 200万円
精神・長期療養400床以上一般・複合500床以上 250万円


どうも現在は区分変更が行われているようなので単純比較が難しそうなのですが、まず病院を2つのカテゴリーに分けています。ここでの便宜としてA type、B typeとしておきます。
  • A type


    • 一般
    • 複合(一般+精神、一般+療養、一般+精神+療養)


  • B type


    • 精神
    • 療養
    • 複合(精神+療養)
この分類の上で、

審査体制区分 内容 サーベイヤー 定価 (本体価格)
審査体制区分 1 A type 20〜99床 4名 1,260,000円 (1,200,000円)
B type 20〜199床 うち申込金31,5000円(300,000円)
審査体制区分 2 A type 100〜199床 4名 1,575,000円 (1,500,000円)
B type 200〜399床 うち申込金420,000円(40,,000円)
審査体制区分 3 A type 200〜499床 7名 2,100,000円 (2,000,000円)
B type 400床以上 うち申込金525,000円(500,000円)
審査体制区分 4 A type 500床以上 7名 2,625,000円 (2,500,000円)
B type うち申込金630,000円(600,000円)


こうなっています。ここまで書けばお判りのように、本審査の料金には講師派遣とか、各種相談はすべて別料金です。本審査の料金も結構なものですが、それ以外に機構にアドバイスを求めようとすれば別途料金が発生する仕組みです。それと料金表を見る限りですが、本審査は病院の規模種別により料金が変わりますが、他のアドバイス料は同じのようです。

あくまでもこのブログでこれまで集まった情報によりますが、この本審査はなかなか1回でパスなんて事にはなりにくいようです。つまりは追試験が必要になる事が多いと言う事です。その料金も公表されています。

内容 形 態 サーベイヤー 定価 (本体価格)
再審査 書面のみ - 84,000円 (80,000円)
確認審査 訪問 1名 189,000円 (180,000円)
補充的な審査 2名 294,000円 (280,000円)
改善審査 3名 399,000円 (380,000円)


ふぅ、なんですがまだ料金表は続きます。

内容 審査内容 定価 (本体価格)
付加機能
【新規・更新】
救急医療機能 525,000円 (500,000円)
リハビリテーション医療機能
緩和ケア機能


付加機能とはそれこそナンジャラホイになるのですが、

救急医療機能 リハビリテーション機能 緩和ケア機能

「???」てな感じですが、これら3機能は病院機能評価の本審査では審査しないそうです。もう少し引用しておくと、

2010年7月1日から、新規で病院機能評価を受審する病院も、本体審査と同時に付加機能評価の申込みができ、本体審査の訪問審査に引き続いて付加機能評価の訪問審査を受けられるようになりました。

私はここで最高に笑いました。本審査と付加機能の審査が別建てになっているのは十二分に確認できるかと思います。病院機能評価で唯一の実利的なメリットは、

1. 緩和ケア

【施設基準】

「がん診療連携の拠点となる病院若しくはそれに準じる病院であること又は財団法人日本医療機能評価機構等が行う医療機能評価を受けていること。」

  1. 特定入院料 緩和ケア病棟入院料の施設基準〜 1日につき3,780点
  2. 基本診療料 緩和ケア診療加算の施設基準〜 1日につき 400点

緩和ケアの加算を取るためには病院機能評価の取得が条件になっています。これは昔から有名なのですが、その緩和ケア機能の審査は本審査と別に行われているみたいです。まあ、たぶんですが本審査でも含まれているが、さらにの「付加機能」として審査を設けているぐらいの釈明があるのでしょう。それでもケタケタと笑い出したいぐらいのブラックジョークに私は感じます。



じつに豊富なオプションが用意されているのですが、実際にはどう利用されているのでしょうか。これについてはほんの断片的な情報しかありません。あくまでも料金表から見た「標準的」な利用法ですが、

段階 意味 料金 備考
講師派遣 最初に職員に審査の意義を周知させる 6万円(消費税別途) 交通費別途
窓口相談 審査の準備が進んだ段階での質問。ここで訪問受診相談の必要性を指摘される 5万円(消費税別途) 交通費必要
訪問受審相談 相談員が病院を実際に回ってアドバイスを行う 50万円(消費税別途) 交通費別途
本審査 合格への不足点を指摘される *1 交通費別途
窓口相談 合格へのアドバイスを求め、専門相談員派遣のアドバイスを受ける。相談は長くなると考えられる 7万円(消費税別途) 交通費必要
専門相談員派遣 合格のためのアドバイスが行われる 50万円(消費税別途) 交通費別途
再審査 場合によってはさらに再審査の可能性も *2 交通費別途
*1:病院種別により差あり
*2:再審査内容により差あり


本審査と再審査は料金に変動がありますが、それ以外のオプション料金の合計は128万円(消費税別途、交通費宿泊費別途)です。ただどれだけ実際にオプションが利用されているかどうかが不明です。これの裏付けを探してみます。平成21年度事業実績報告書をまず参考にしてみたいのですが、

 平成21年度は、平成21年度以前に申請済の342病院に加え、新たに528病院の申請があった。これら870病院のうち、平成21年度に500病院(新規93病院・更新407病院)が受審した。

料金の支払いは申請時に申込金を払い本審査時に残りを払う形式になっています。そうなると本審査料金だけで、

  • 申込金支払い病院が528病院
  • 本審査残金支払い病院が500病院
こうなる事になります。でもって審査結果なんですが、

 訪問審査の4〜6週間後に中間的な結果報告を病院に送付し、中項目評点に2があり、かつ希望した401病院には補充的な審査を行い、結果を最終審査結果報告書に反映させた。

 留保中の病院に対する再審査を14件、条件付認定に対する確認審査を40件実施した。

この辺の手順がどうなっているか分かり難いと思うので、お申し込みから結果報告の流れから引用してみます。




あくまでも私が解釈した限りですが、本審査終了後に中間報告が病院に送られるようです。そこで評価の低い項目がある病院には補充的な審査を受ける様に示唆されるようです。そんな病院が500病院中で401病院あるとなっています。8割以上が補充的な審査を受けている事になります。さらに最終判定でも
  • 認定
  • 条件付認定
  • 認定留保
この3種類の判定が下され、条件付認定から正式認定になるには確認審査、認定留保には再審査が必要となっています。ちょっとわかり難いのは再審査が料金的には一番安いのですが、おそらく再審査に至るまでに改善審査等が必要になるんじゃないかと思われます。

それでもってどういう収入になっているかですが、財務諸表によると、

評価関連事業特別会計 経常収益
病院機能評価等事業収益 1,013,943,000円
改善支援事業収益 23,677,500円
講師派遣事業収益 1,840,670円
出版等販売事業収益 34,210,680円
講演会等事業収益 5,385,000円
合計 11億7859万3300円


どう読めば良いか難しいので、ここは単純に病院機能評価関連の収益は病院機能評価等事業収益にまとめられていると考えます。そうなると約10億円になりますが、これも大まかに審査を受けた病院を500とすると、病院平均で200万円ぐらいになります。「???」おかしいぞ、これは引用が間違ったかもしれません。ほいじゃ収支決算総括表で見直してみると、
    病院機能評価等事業収益:9億8147万7000円
    評価関連事業収益合計:11億4938万2300円
やっぱり10億円ぐらいになっています。ここの決算書の本当の読み取り方はtadano-ry様ぐらいに時間がある事を期待して、審査区分別の割合がどうなっているかです。参考になりそうなのは、平成20年度病院機能評価データブックにあり、この年は620の受審病院があります。そこに審査区分ごとの病院数があります。審査区分の比率がほぼ同じと仮定してシミュレーションしてみると、

審査区分 平成20年度実績 平成21年度シミュレーション
病院数 割合(%) 病院数 本審査料金 収入
1 124 20.0% 100 126.0万円 12600.0万円
2 184 29.7% 148 157.5万円 23310.0万円
3 229 36.9% 185 210.0万円 38850.0万円
4 83 13.4% 67 262.5万円 17587.5万円
合計 620 100.0% 500 9億2347万5000円


収支決算報告書の病院機能評価等事業収益にほぼ等しくなります。ここに加わるのは、401病院が補充的な審査を受けたとなっています。補充的な審査の料金は29万4000円です。これが1億1789万4000円になります。また条件付認定に対する確認検査(18万9000円)が40件あったとなっていますから、これが756万円になります。全部足しても10億4892万9000円で、これは財務諸表の病院機能評価等事業収益にほぼ等しくなります。

そうなると病院機能評価のために病院が支払う料金は本審査と補充的審査料金ぐらいであると考えるのが正しい事になりそうです。講師派遣とか、窓口相談とか、訪問受診相談とか、専門相談員派遣とかは料金表に記載があっても殆んど利用するものがないと判断するのが正しそうです。n=1 なんですが某経験者が「あった」と言っていましたが、これはかなり例外的なケースのようです。

もう一つ意外だったのが、審査を受ければ年会費30万円也の賛助会への強制加入があるという噂です。信憑性のありそうな話だったのですが、賛助会名簿を確認する限り51病院しかありません。ここは素直に審査だけ受けて賛助会に加入しない病院が殆んどみたいと思われます。



エエ加減長くなっているのですが、ついでにもう一つ病院機能評価がらみの話題です。ぐり研ブログ様のとうとう言ってしまったという話題に10/1付日経メディカルの記事が引用されています。そこからなんですが、

07年度の新規審査は130件。ピークの04年度の3分の1にも満たない。加えて、有効期限が切れても、更新しない病院が増加している。例えば 02年度の受審病院は約400施設あったが、07年度に更新審査を受けたのは300施設に満たない。更新を見合わせた病院はこれまでに合計400施設に上る。

一度認定を受けた病院の更新率もチェックできそうですからやっておきます。これもデータベースからなんですが、

これを表に直してみます。

年度 総認定病院 新規病院 5年後の更新病院 更新率
H.9 125 125 38 30.4%
H.10 125 125 140 112.0%
H.11 133 123 138 103.8%
H.12 177 177 143 80.1%
H.13 245 245 184 75.1%
H.14 398 360 292 73.4%
H.15 591 451 394 66.7%
H.16 603 465 (407) (67.5%)
H.17 484 341 * *
H.18 338 174 * *
H.19 422 130 * *
H.20 503 99 * *
*H.16の更新病院は受審分のデータ。H.20時点の認定率は88.24%。


平成15年度や16年度頃は更新の手順がやや未整備だったのかもしれません。また他の年度でもあるでしょうが、キッチリ5年ではなく6年目にまたがったりもあって、初期の更新率では100%を超えている時期もあったのだと考えられます。それを含めて考えても日経メディカルが指摘している通り、更新率は年度を追う事に漸減傾向を示していると考えられます。

審査を受けた病院も平成20年度は603病院でしたが、平成21年度は500病院になっています。13年もやってますから、この認定が欲しい病院とそうでない病院の色分けがはっきりしてきていると思われます。また日経記事には、

200床未満の 6085病院の認定率は19%だ。開設主体別では、個人病院の認定率がわずか4.2%にとどまっている。

 中小病院は、経営に余裕がないところが多い。現在の審査料金は、100床未満が126万円、100床以上200床未満が157万5000円(一般病床を持つ場合、いずれも税込み)。これだけの支出をする以上、相応の見返りがないと、時間と手間をかけて受審する気にはなれない。

その他の経費として発生するサーベイヤーとかの交通費・宿泊費、それよりもっと必要になると考えられる審査合格のための対策費はいくら位になるんでしょうか。まともに払えば相当な時間外手当は発生しますし、その他の物品の購入費もバカにならない額だとは聞いたことがあります。どんなものでしょうか50万円ぐらいで済むのでしょうか、それとも100万円ぐらいはかかるのでしょうか。

その見返りは実質として緩和ケアぐらいしかありませんし、緩和ケアをやっていないところはゼロです。経営に余裕のある病院はそんなに多くないですから、経営のためと考えるのなら病院評価機能の認定より、経営コンサルタントにお金を支払いそうな気がします。まあ、経営コンサルタントもピンキリなのは今日は置いておきます。

もっとも日本病院評価機構にとっては病院機能評価が先細りになっても、産科医療制度補償制度運営事業と言う新たな金の卵を産むニワトリを抱え込みましたから、痛くも痒くもないんでしょうけれどねぇ。そうそう国からの補助金も4億円ほどありますが、経営状態からして必要なものかどうか個人的にはどんなものかと思わないでもありません。