2010-11-25 この見方が一番おもしろかった
昨日御紹介した奈良県知事の公式会見への御意見ですが、法務業の末席様より
時間外割増賃金の支払を命じた1審2審の判決を、奈良県が受け容れるということは、それは時間外労働の割増賃金の支払を定めた労基法37条と、賃金の全額払いを定めた労基法24条違反を、奈良県が自ら認めるということになる。
で、労基法37条違反した使用者には、6箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金という刑事罰が科せられ、さらに労基法121条の両罰規定により、法人が事業主の場合はその法人代表者にも罰金刑が科せられる。奈良県立病院など公立病院の場合は設置者の地方自治体が事業主であり、地方自治体は法人としてみなされるので、その代表者である奈良県知事も個人として刑事罰(罰金刑)を受ける可能性がある。
これが一番おもしろいと思いました。条文を補足しておきますと、
労基法第37条
使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
33条と36協定は省略しますが、ここは33条及び36協定がなくとも、時間外労働させれば割増賃金を払わなければならないと解釈しても差し支えないと思います。それと私も初めて気が付いたんですが、
-
当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
こんな規定があったんだ。これはもちろん36協定が締結されていても同様で、1か月60時間を越えた分の時間外手当は5割以上の割増率に「しなければならない」になっています。個人的には非常に勉強になりました。最近、物凄い長さの36協定が病院で結ばれていますが、60時間を越えた分は5割以上の割増率が労基法で定められていますので、経営者の方も、労働者の方も十分に御注意下さい。
労基法第24条
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
- 賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第89条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
ただし書きが長いのですが、キモだけ取り上げると、経営者は毎月決まった期日に、1か月分の賃金を精算して、通貨で支払わなければならないとなっています。37条や24条に違反すると、これは法務業の末席様のコメントを引用させて頂きますが、
-
労基法37条違反した使用者には、6箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金という刑事罰が科せられ、さらに労基法121条の両罰規定により、法人が事業主の場合はその法人代表者にも罰金刑が科せられる。
奈良産科医時間外訴訟の原告の主張のキモは、
- 宿直時間の労働の実態は労基法41条3号の宿直勤務ではなく通常勤務(時間外勤務)である
- 宅直時間も同様である
このうち宿直時間について一審・二審ともほぼ全面的に認められています。奈良県は認めていないのですが、司法の場に於ては認められています。奈良県が民事でこれを認めると、時間外勤務についての手当を定めた37条違反に連動するわけです。24条はオマケのような連動ですが、払うべきものを払っていない24条違反にもなりうると言う事です。
ストレートに民事の結果と刑事が連動するわけではないとは思います。あくまでも私見ですが、労働に対する解釈の相違からの奈良県側の過誤(表現が不適切なら陳謝します)であるとし、遅れても未払い賃金を払えば、あえて刑事に問わないというのもありえる事かと思っています。刑事起訴はそれぐらいの慎重さがあると勝手に考えています。
では奈良県側が刑事違反に問われる可能性があるかと言えば、時限爆弾が仕掛けられています。奈良病院と五條病院に告発状が送られ受理されています。奈良病院の方の告発状のコピーもありますが、
告発状奈良労働基準監督署
司法警察員労働基準監督署長殿平成21年7月1日から平成21年7月31日までの間における、産婦人科所属医師、および当該期間において最も時間外労働が多い放射線技師1名に対する、次の事実について、厳重な処罰を求め、告発します。
- 36協定がないのに時間外労働をさせていること
- 宿日直勤務の実態が、労働基準法41条3号に定める基準に達しておらず、宿日直勤務の全ての時間が違法な時間外労働となること
- 宿日直勤務の全ての時間が違法な時間外労働であり、その時間外労働に対する時間外手当が、労働基準法37条に定める基準で、支払われていないこと。
平成21年9月28日
もちろん告発は受理されただけで起訴の決定はまだであったはずです。起訴するかどうかは検察官の判断になりますが、起訴判断に関して被告になる可能性のある奈良県側の態度は大いに参考されるはずです。違反事実に対して謙虚に反省し、これを償う姿勢が見られるのか、それとも「オレは違反などしていない」と強硬に突っぱねるかです。
県立病院の管理者は言うまでもなく知事ですから、公式記者会見の、
それは、あの、そこら辺が、あの、現実グレーになっておりますが、○○(ここは不明瞭)36協定のように当事者間で合意をすれば、強行法規(こう聞こえます)である労働基準法の制約時間を超えて、働いて良いのかどうか、と言う事になります。皆様の世界でも、あのう、そういう意味では労働基準法違反が、失礼しました、労働基準法違反が常態化しているという話もありますので、
それでは36協定で協定すれば良いのか、あるいはサービス残業と言われるようなものなのか、手当でするものか、勤務時間だから拘束で割増し手当を払うべきなのか、
時間外労働の対価に対する考え方として、
- 36協定に基く割増賃金の支払い
- サービス残業で処理
- 手当(具体的にどういう事を指しているのか不明)
- 時間外勤務として割増賃金の支払い
1.と4.をどれだけ区別して知事が御発言されているのか不明ですが、時間外労働の対価にサービス残業を並列で持ち出す姿勢は、検察官の判断に影響を及ぼす可能性は無いとはいえません。
クドクド説明する気力が今朝はないのですが、どうも奈良県側の戦術は医師不足と、患者の需要に対する医療の供給を混ぜこぜにして論点をずらしたい意図が感じられます。しかしこの訴訟の焦点はそんなものでは全く無く、奈良県が宿直業務と認定していた労働が、労基法に照らして通常勤務の延長(時間外勤務)であるかどうかの司法判断を求めているものです。
奈良県知事が会見で力説された「司法で判断できるか」とか、「これは行政云々」ですが、医師不足の状況下で、患者需要に対する医療供給をどうするかは行政の問題であり、司法判断に馴染まないとは思います。ただこれはこの訴訟から医療行政に及ぼす影響のひとつであって、この訴訟はあくまでも違法当直に対する適正な賃金の支払いを求めたものに過ぎません。これは司法に馴染む性質のものです。
もう少し言えば、この裁判で求められているものは、労働者が働いた内容に対する正当な対価を求めただけの訴訟であり、正当な対価を支払うのが経営上「困る」と言う主張を奈良県は行っているだけです。
さて刑事告発の時限爆弾と、この民事訴訟がどうやって絡んでいくのかも注目して良いポイントと私は感じます。もちろん民事と刑事は訴訟として別物であるのは私も承知していますから、あくまでも興味です。一つだけ私にはよくわからないのは、知事が変わったら責任問題はどうなるのでしょうか。後継知事が責任を負うのでしょうか、それとも責任が生じた前任知事にも責任が求められるのでしょうか。奈良県知事選は来年と言うお話です。

まあ、議事録やら発言やら、調べると興味深いかも。
そこまで深読みする余裕もないし、事情も知らないのですけどね。
さて、月60時間超での時間外労働について50%増し以上の率で割増賃金を支払え、という労基法37条での規定は、本年(平成22年)4月1日からの改正部分です。なお、一定の中小零細企業については、適用が猶予されています。
(県立病院は改正法通り本年4月1日の残業分からから適用されます)
また、知事とか社長が交代したら法人の事業主としての処罰はどうなるかですが、原則的には法令違反があった時点の事業主(知事とか社長)が責任を問われます。労基法違反の後に交代があって退任していても、違反時点(告発状では平成21年7月1日から平成21年7月31日までの間の1ヶ月間)に、事業主(知事とか社長)の地位に就いていたのであれば対象になります。ただし、新任の事業主が引き続き労基法違反を続けているならば、その新任者も捜査対象とされて処罰される可能性はあります。
>最近、物凄い長さの36協定が病院で結ばれていますが(Yosyan先生の日記本文より)
年に1千時間を超えるような長時間の三六協定が結ばれるのは、その病院では労基法41条3項”宿日直の許可”が、労基署から認められなかった(申請しても不許可だった)ことが原因でしょう。最近は、救急病院や高次の救命救急医療の中核となる病院に対しては、労基署は宿日直の許可を出しません。夜間の医師の当直は労基法41条での”断続的労働での宿直”ではなく、通常の業務に従事する通常労働であるから、1日8時間週40時間の法定労働時間を超えるなら三六協定を締結して時間外労働で対処せよ、というのが労基署の基本スタンスになってきています。
そういう意味では、荒井正吾奈良県知事の「医療法制での医師の当直と労基法の宿日直の整合性や明確化」という主張は、厚生労働省の中でも労働基準局〜都道府県労働局〜労働基準監督署の、旧労働省系のラインでは既に解釈基準はキッチリとされています。医療法での宿直義務が優先するはずだなどという戯言を言うのは、旧厚生省系の医政局とか医療行政に直接タッチする地方自治体などの方々だけです。
勤務医の医療法上の当直と労基法上の宿日直の扱いについては、労働行政としてはとっくの昔に決着済みの論点です。そうした既に終わった論点を今更ほじくり返そうと、論点をすり替えて拡散させるヘンテコな小理屈を捏ねているのが、荒井正吾奈良県知事です。県の有能な管理職公務員(局長とか課長とか…)は、県のトップである知事が斜め上の明後日を向いて突撃喇叭を吹いているので、その方向を向いて仕事せざるを得ないという状況ではなかろうか。このように傍観者としては思えますが・・・本当はどうなんでしょうねぇ、奈良県庁の内実は?
あれ?医師は含まれていなかったかな?と思って調べたら、やはり適用外。
奈良県のこの裁判、ゴリゴリ押すと、医師の裁量労働制にって事になるのでしょうかね?
とはいえ、交代職場?という一面もあるので、そうそう簡単にはいかないのでしょうが。
>どうも奈良県側の戦術は医師不足と、患者の需要に対する医療の供給を混ぜこぜにして論点をずらしたい意図が感じられます。しかしこの訴訟の焦点はそんなものでは全く無く、奈良県が宿直業務と認定していた労働が、労基法に照らして通常勤務の延長(時間外勤務)であるかどうかの司法判断を求めているものです。
>奈良県側の戦術は医師不足と、患者の需要に対する医療の供給を混ぜこぜにして論点をずらしたい意図は普通に考えて参謀の厚生労働省から出向されているキーマン奈良県医療政策部長武末文男氏の作戦(厚生労働省の戦略)と考えていいのではないでしょうか
この医師不足と、患者の需要に対する医療の供給を論ずることは発展論理的に考えていわゆる関西広域連合を論ずることになると思います。
ところが、選挙は来年4月と理解していますが、知事はいわゆる関西広域連合を選挙戦の争点にはしないつもりだそうです。
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/100826/lcl1008260934002-n1.htm
となるとどなたが知事に対して本件を変に話してゆくと関西広域連合を選挙戦の争点に
なる可能性があると警告すれば
奈良県が宿直業務と認定していた労働が、労基法に照らして通常勤務の延長(時間外勤務)であるかどうかの司法判断を求めているものであることであることのみを論ずるほうが
選挙対策としてもいいとの知事が政治的な判断をされるのでは
跳満で、知事ぶっ飛び・・・・なんてことにならないか、興味深々です
労基法違反の有無は、裁判所に問うまでもなく、それこそ通達・規則・法律で雁字搦めです
これまで通達行政してきた人が、厚生労働省の通達だけは無視しまくっているというのが分かって、こちらも興味深い話です
刑事罰まで行くことは、地裁判決後に不服とした段階で決まっていたようなものです
少なくとも金だけは払うことにした都立病院の対応の方が大人と言えます
もちろん時間制限の違法状態は続いているので、『誰か』が告発すれば、東京も瓦解します
> 給与
弁護士も大忙しでしょう。医師の場合 無理な手術だとわかれば絶対にやりません。
弁護士の場合は無理筋だと最初から分かっても受けるんですかね。オイラなら逃げ出したいものです。行政機関の場合契約を結んだ顧問弁護士というのは存在するのでしょうか。契約を結んでいればやらざるを得ないのでしょうか。
ご愁傷様です。
とくに弁護士の場合、クライアントが「上告する」と言えば、忠告は出来ても最終的に逆らえないかと思います。県ですから顧問弁護士はおられるでしょうから、知事が上告するといえば、その意向に副った上告書を作成せざるを得ないと思います。逆らうと言う事は、県との顧問契約を破棄するに等しいと考えられますから、どう考えておられても上告されると思います。
基本は週40h前後の裁量として考えると、
日勤(9時ー17時)を週3日、夜勤1泊(21−9時)、半日勤務1日を基本として、
手術対応等があった場合には、時間外扱いで、
日勤中に何人以上対応した場合には、時間外扱いで、
一定人数超えない限りは17時超えても裁量の枠内とかでしょうか?
どの日に夜勤日勤半日勤務は、前の週の何曜日までに管理者と合意の上決めるとかでしょうか?
主治医制度とかとはまったく合いそうにないですが、できなくはないのかな?
プロマネ(プロジェクトマネージャー)はシステムが稼働するまで夜も昼も無い。
これは、システムの主治医制度と同様の立場。
逆に、主治医制度は開業のみに限定し、公立病院については施設が最終的な責任を負う。
道はこうすれば拓けなくも無いような気がする様な気が。
なんかこう、あの時俺がもっとねばって弁護士さんを探しまくって頑張っておけば、あの嫌で大変な思いを他の人にさせることも少なかったのだろうと、、、。きっと同じ思いを奈良の人も思っているのではないかなと。民事は最高裁却下、刑事が本番だけど起訴してくれるか、という道筋を考えられているでしょう(まぁ私の勝手な推測です)。刑事事件として起訴され有罪判決が下った場合の影響は、その後の医療体制が変わることを意味しますから。
裁判沙汰およびそれまでのゴタゴタの苦労も、しかし現状の医療供給体制を強いられている医師個人の生活も、両者ともに次の世代には受け継がせたくないですね。
医療崩壊加速用ターボチャージャーでしょ
いまだって当直という名のサビ残
残業不払いの拘束
時間外の上限など散々違法な奴隷労働させてるんだから
合法化したら奴隷勤務医消滅かも