新小児科医のつぶやき

2011-11-04 医療経済実態調査・231万円のムック

風物詩ネタです。ムック元は11/2付時事通信(Yahoo !版)より、

開業医の月収231万円=国立病院勤務医の2.3倍に―中医協調査

 中央社会保険医療協議会厚生労働相の諮問機関)は2日、全国の開業医や病院の経営状況を調べた医療経済実態調査の結果を公表した。今年6月時点の医師の平均月収は開業医(個人経営の診療所)が231万6500円で、国立病院の勤務医102万9500円に対し、約2.3倍の格差があった。

 2010年度の年収ベース(ボーナスを除く)でも、開業医の2753万7300円に対し、国立病院勤務医は1206万5900円にとどまり、大きな開きがあった。

私も毎度の事ながらビックリした、

    平均月収は開業医(個人経営の診療所)が231万6500円 

これがどこから湧いた数字かはなかなか面白い探し物になりました。


個人立診療所の給料

医師の間では実態を表していない実態調査として有名ですが、今日はその点は追々やります。今回の時事通信が指し示すのは第18回医療経済実態調査として良いでしょう。月収とか給与関係の項目を探してみると、機能別集計等に掲載されていました。これが157ページもあるのですが、pdf換算で117ページからあります。

まず見つかったのは時事記事のうち「国立病院の勤務医102万9500円」です。該当部分を示しておきます。

ちょっと読みにくいですが、国立病院の23年6月の医師の平均給料月額は102万9456円となっています。10円以下を四捨五入すれば「102万9500円」になります。間違いなくこのデータから引用されているのがわかります。ちなみに国立以外の平均月額給与(これには賞与が加味されていません)は、


区分 平均給料月額
国立 102万9456円
公立 111万3040円
公的 101万2258円
社会保険関係法人 93万8184円
医療法人 127万7986円
個人 87万2710円
一般病院平均 109万2467円


勤務医の皆様の実感と合うでしょうか。なおこの統計の給料とは、

給料(本俸又はこれに準ずるもの)には、扶養手当、時間外勤務手当、役付手当、通勤手当等職員に支払ったすべてのものが含まれる。

さてそうなると「開業医(個人経営の診療所)」を見つけるのは簡単そうに思うのですが、そうは問屋は卸してくれません。診療所の分類は、入院収益ありとなしで分かれ、さらに個人と医療法人とその他に分かれます。時事通信は「個人」と明記してありますので、その部分を引用してみます、まず入院収益ありの個人の診療所です。

なんつうても個人診療所ですから「院長 = 医師」です。その証拠に院長欄が空欄になっているのが確認できるかと思います。ここの平均月額給料は99万9076円です。う〜む、時事通信の231万円はここではなさそうです。では入院収益なしはどうなっているかですが、

ここも平均月額給料は93万2967円であり、時事通信の伝える231万円には程遠い金額となっています。程遠い金額になるのにもさらには裏付けがあり、一般診療所(集計2)に単月の事業収支が掲載されていますが、そこに損益差額と言うのが掲載されています。損益差額とは収入と支出の単月での差額ぐらいに考えてもらえれば良いかと思います。またこの損益差額には、

個人立の一般診療所の損益差額からは、開設者の報酬となる部分以外に、建物、設備について現存物の価値以上の改善を行うための内部資金に充てられることが考えられる。

つまり損益差額の中から開設者、すなわち医師個人の給与が支払われる訳です。でもって、


個人診療所 入院診療収益あり 入院診療収益なし
損益差額 339万7000円 175万1000円

入院収益ありの診療所なら机上では可能(実際には難しそうに思います)ですが、入院収益の無い、どこにでもある、ありふれた無床診療所では、毎月50万円以上借金しないと321万円は到底捻出できません。またたとえ入院収益ありの医療法人の診療所で机上で231万円の給料が払える可能性があるとしても、医療経済実態調査では「そうでない」と明記してあります。もう少し細かく集計しておくと、


平成23年6月個人立診療所単月度損益差額
診療科 入院診療収益(千円) 全体
あり なし
内科 2140 1573 1586
小児科 ND 2771 2771
精神科 ND 2125 2125
外科 2202 1013 1148
整形外科 3121 1696 1787
産婦人科 4297 717 2149
眼科 4812 2703 2951
耳鼻咽喉科 ND 1583 1583
皮膚科 ND 2189 2189
その他 2513 1262 1238
全体 3397 1751 1832

こうやって見ても「入院診療収益あり」の整形外科と産婦人科ぐらいは可能性はあっても、時事通信の231万円は医療経済実態調査に基く限り、個人の診療所ではありえないになります。

ただなんですがある人からアドバイスを受けました。個人診療所は院長自らが個人事業主であり、給料と言う概念は存在しないです。たしかにそうなんですが、そうなると医療実態調査で個人立診療所の「医師」となっているのは、個人立診療所に勤めている院長以外の勤務医になります。つまりは個人立診療所の医師(事業主)のデータは存在しないになります。


あった231万円

そうなると時事通信が誤報を行った可能性を考えないといけません。誤報と言っても個人と医療法人を取り違えた可能性です。「個人経営の診療所」の診療所とまで明記してですが、そもそも診療所に個人立と医療法人がある事の理解も怪しければありうる事です。ほいでは医療法人ならどうなっているかです。ここを表にして見ます。


医療法人 入院診療収益あり 入院診療収益なし 全体
院長 266万0258円 223万0831円 231万6481円
医師 123万7944円 112万1175円 120万4965円


おっと231万円がやっと見つかりました。医療法人の診療所の全体の平均月額給与の院長がこれに該当するのがわかります。


医療法人と個人立診療所

診療所における医療法人とは何かになります。ここは単純な理解で良いと思いますが、個人立の黒字診療所が節税対策の一環として法人化するです。では黒字診療所がすべて法人化するかと言えば、これは何とも言えません。法人化による節税効果は黒字幅が大きいほど有効ですが、逆に黒字幅が小さいと手間だけ増えて節税効果は乏しくなります。

でもって実態的には、法人化した診療所の大部分は節税効果がゼロで無い程度のところが多数に上ります。まあ、チョットでもみたいな感覚とか、後継をスムーズに行うためとか、医療法人と言う名前に憧れて(いちおう信用はチトあがるイメージ)みたいな部分も小さくないと言う事です。実際のところ法人化したものの、これなら無理に法人化しない方が良かったと感じている診療所は本音の部分で少なくないとされます。

法人化すると個人立と較べて法人と医師個人の会計管理が厳格になり、ドンブリ勘定部分があった個人立より窮屈になるからです。窮屈になって面倒になった上に節税効果も乏しいとなれば、なんのために法人化したか意味がわからないとすれば良いでしょうか。


それでも個人立に較べれば黒字経営の比率は高いはずです。少なくとも法人化時点ではそれなりの黒字(赤字経営では法人化は無理)であった訳ですし、法人化の節税メリットを十分に享受している診療所ももちろん存在します。俗に言うウハクリ系の殆んどは法人化していると考えて良いかと考えます。

個人立は千差万別です。法人化したくとも出来ない、赤字ないし綱渡りのツブクリも含まれます。またある程度黒字があって法人化するかしないかの岐路のところも多数存在します。ただ莫大な黒字を叩きだしているところはまずないでしょう。黒字幅が大きいほど税金は大きく感じますから、それこそトットと法人化します。

ミクロでは様々でしょうが、マクロ的には黒字の大きさは、

    個人立 < 医療法人

こう考えても大きな間違いとは言えないと考えます。もうちょっとラフにはウハクリで個人立のところは大変少なく、殆んどは医療法人であろうぐらいは言っても良いかと思います。税金対策がありますから必然的にそういう流れになります。


大規模医療法人

ここで一つ問題があります。医療経済実態調査の医療法人の診療所の範囲です。ウハクリ診療所は法人化率が非常に高いとしましたが、1人でウハクリしているところもありますが、一つの診療所経営に留まらず経営の多角化に乗り出しているところもあります。簡単には老健や特養、グループホーム、訪問看護・診療、グループ診療所の設立などです。

経営多角化で成功しているところは超ウハクリ状態になるのですが、そういうところのグループ理事長でも診療所院長を兼任していれば統計上は診療所経営者です。給料はグループ全体の損益差額から決まると考えます。法人の仕組みとして、理事長は法人の社員であり、給料は法人の社員として支払われるからです。1人で1ヶ所の診療所を経営しているだけなら診療所の経営成績とイコールですが、グループ経営者は違います。

一方で医療経済実態調査の診療所の事業収支は純粋に当該診療所のもののはずです。グループ全体の調査項目などありません。たとえ当該診療所の経営がさしてのものでなくとも、グループ経営がウハウハならば診療所の院長を兼任している理事長の給料は高いものになります。グループ経営とはそういうものです。

ま、それでもグループの本院たる診療所は、他のグループ経営が順調なら普通はウハクリになります。グループ設計として、本院に患者が集まる様に考えるからです。それは良いのですが、診療所院長を兼任している理事長の給料は、それでもウハクリ診療所の収益に限定される訳ではありません。法人ですから他のグループの収益も加算されて給料になります。

ここも誤解無い様に言っておきますが、多角化経営で大きな利益を叩きだしている事は悪い事ではありません。それだけの経営の才に恵まれているから発揮しているだけですし、グループが大きくなればこれを統率していくのは並大抵の苦労ではありません。努力に対する当然の報酬です。ただそういう「実態」は調査に反映されないと言う事です。


医療法人の構成

診療所のうちで医療法人がどれほどあるかです。まず全国の診療所の総数はほぼ10万ヶ所です。一方で医療法人4万6946ヶ所(平成23年厚労省統計)であり、一人医療法人が3万9102ヶ所あります。

この一人医療法人の定義ですが、診療所に勤務している医師が1〜2人の形態のものを指します。3人以上であれば一人医療法人と言わずとも普通に法人格が取得できるからです。実態的には街角に転がっているごく普通の町医者の診療所としても良いかと思います。ま、勤務している医師が2人と言っても大部分は親子、兄弟、夫婦みたいなスタイルと理解してもほぼ合っていると思います。

もうちょっと大雑把な理解として一人医療法人の診療所の経営実態は、個人立の診療所とほぼ変わらないとしても良いと考えます。つまり大部分は1人の医師が診療所を経営しているスタイルです。少なくともマスの統計ではそう反映されるはずです。ところが実態調査では。


全体平均 個人立 医療法人
医業収益 713万6000円 1382万1000円

上で経営成績は「医療法人 > 個人立」としましたが、それにしても医業収益が2倍近くも変わるのはちょっと差が大きすぎると思います。そうなれば診療所の医療経営の実態として、医療法人は個人立より約2倍の患者を集めている事になります。ベースの数は上記した通り、診療所約6割が個人立であり、4割が医療法人です。4割の医療法人が6割近い患者を集め、残りの4割を6割を占める個人立診療所が分け合っている事になります。

仮にこれが正しいとしても、4割の勝ち組病院の平均を診療所の医師の平均月額給与の代表とするのは実態を反映しているとは思えません。4割の勝ち組も、実感として殆んどが231万円の勝ち組とはとても考えられず、勝ち組の中のさらにスーパー勝ち組が平均を引き上げていると考えるのが妥当です。


医療経済実態調査のバイアス

231万円のカラクリには何段階のバイアスがあると考えます。先にまとめておきますと、

  1. 個人立と医療法人を分ける
  2. 調査段階で振り落とす

1.の個人立と医療法人の基本的な経営体質は上述した通りです。医療法人の方がマスとしては個人立より余裕があると考えますし、ウハクリ比率になると圧倒的に医療法人に軍配があがるはずです。ただそれでも多数部分は個人立でも、医療法人でも似たり寄ったりになるはずです。本当の意味での平均的な大きな部分が個人立にも医療法人にもあった上で、

  • 個人立には平均を引き上げるウハクリが少なく、逆にツブクリ比率が高くなる
  • 医療法人にはウハクリだけでなくスーパーウハクリが平均を引き上げ、個人立に比べツブクリ比率が低くなる

本当の診療所の平均月額給与は多数であるはずの共通するフツクリ平均であるはずなのに、平均を引き上げる要素が高く、平均を引き下げる要素が少ない医療法人を代表値としています。


2.については調査の概要を見て欲しいのですが、一般診療所の有効回答率は46.2%です。つまり半分以下です。有効回答率が低い理由は個人的には良く分かります。前回の17回の時にうちにも医療経済実態調査票が送られてきました。興味津々で調査項目を見たのですが、とてもとても片手間で書ける様なものではありません。

片手間どころか、ずらずらと並ぶ会計用語に眩暈を起こすだけでなく、通常の決算である年度の数値を記入するわけにはいかないのです。6月の単月度の数値が求められ、他も年間の1/12の換算を細かく求められる調査書式です。うちは税理士を年間契約で雇っているのですが、頼んだら「う〜ん」と唸って「出さなくて良いならやめましょう」との返事を承りました。

簡単に言えば調査票に回答できる診療所が、やる気以前に限定される仕組みになっています。医師の中にも会計に強い方もおられますが、どちらかと言うと少数派です。そうなると回答傾向にバイアスが出てきます。経営者である医師が自力で記入しなければならない診療所の回答率は下がり、自力で回答しないで済む診療所の回答率は自然に上るです。

ここをもう少し簡明に言えば、

    回答率が高いところ・・・調査表作成を命じる事が出来る事務系職員がいるところ
    回答率が低いところ・・・医師が自力で調査票を作成するところ

「回答率が高い層 = ウハクリ」「回答率の低い層 = フツクリ以下」の図式が簡単に出来上がります。


集計の怪

診療所全体の給料平均と言うのもあります。これがある意味奇々怪々なのですが、全体の平均を表にしておきます。


* 個人 医療法人 その他 全体
院長 空欄 2316481 1254300 2282563
医師 943078 1204965 949777 1134352
サンプル数 565 654 24 1243


これだけデータがあるので検算して見ます。実は検算すると端数が合わないのですが、院長給料は医療法人とその他の合計の平均としても良いかと見れます。しかし個人立の診療所は「医師 = 院長」としてよいはずです。その他や医療法人の医師とは立場が異なると考えるのが妥当です。個人立の医師を院長として計算し直すと167万2000円ぐらいになります。

それにしても、ここまで医療法人と個人立の「実態調査」の給料が相違するのですから、同じカテゴリーで考えるのはもはや意味が無いとするのが妥当でしょう。診療所の数としては個人立が6割ですから、外れ値とするのも不可能です。ましてや医療法人の院長の給料を診療所全体の代表値として考えるのは無理が通れば道理が引っ込むの世界と感じます。

まあ、ここも上述した通り、個人立の診療所の「医師」は事業主である院長でなく、それ以外の勤務医であるなら231万円は一人医療法人の院長の給与に近いといえないこともありません。


ぼやき

診療所医師の平均月額給与は医療経済実態調査を基にしても、せいぜい個人立の給料にもう少し毛が生えた程度、2割からせいぜい5割までぐらいと私は見ます。病院の医師の給料にしても、ヒラから役職部長までの平均であり、会社で言えばヒラから重役までの給与の平均と同じ意味です。診療所の医師の平均年齢はおおよそ60歳弱です。病院で言えば部長クラスから院長クラスに該当します。

医師の給料は大雑把に言うと経験年数に比例しますから、たとえ病院医師の平均給料を上回っていても、開業医の平均月額給与は勤務医時代よりむしろ下がっているの見方も可能です。

それをどうしても200万円以上の給料を実態として叩き出すために、あれやこれやとデータ操作し、上清みの上清みをすくい上げて231万円の数字を無理やり引き出しているのが実態と結論付けている調査と考えるのが妥当です。おかげで個人立と医療法人の間に巨大な溝が生じてしまったと見ても構わないと考えます。

もう一つデータを引用しておきます。診療所経営では医業収益はそのまま損益分岐点に直結する部分があります。これは個人立であろうが、法人であろうが大差はありません。医業収益から出てくる損益差額にはそれほど変わりはないと言う事です。これも一概には言い切れないのですが、診療所では医療収益が損益分岐点を越えれば越えるほど損益差額は大きくなるとしても良いと考えます。


* 個人 医療法人 その他 全体
医業収益(千円) 7136 13821 11008 10729
平均月額給料 94万3078円 231万6481円 125万4300円 167万1698円
サンプル数 565 654 24 1243


医業収益からすれば個人立の2倍程度医療法人の給料が高くても不思議無いかもしれません。しかし全体の平均は医療法人の77.6%に過ぎません。いかに無理やり医療法人のかさ上げを行ったかの一つの傍証と考えます。

ここもなんですが、個人立の「医師」が勤務医であるなら、見方は少々変わります。ちょっと乱暴ですが、医療収益と給料が比例していると仮定すれば、個人立の診療所の「給料」に該当する額は120万円程度になります。実際は損益分岐点に近づくほど損益差額は一般的に小さくなるのですが、荒っぽい概算でもそうなります。


とりあえずのまとめ

医療経済実態調査でいつも批判が集まるのは「収支差(損益差額)= 月給」批判です。これについてはかなり意識しているようで、今回も損益差額と給料を基本的にリンクさせていません。別項目の独立した調査項目にしています。

その上での命題は200万以上の診療所医師の月給を作り上げる事です。医療経済実態調査はその調査手法からウハクリ比率が高い調査になっています。今回は手法をもっと深めて診療所の代表値を医療法人に限定する手法を取っています。医療法人の方が個人立に較べてウハクリ率が高く、さらにモンスタークラスの超ウハクリも含みます。

一方で個人立の診療所は医師給料の統計から排除する荒技も使っています。個人立の診療所は単なる医師であり、決して診療所を代表する医師としない、もしくは事業主だからわからないです。これらの努力の甲斐もあって231万円が弾き出されます。

ただなんですが、一般診療所は10万ヶ所であり、その6割程度は個人立です。個人立の医師の給料の引き上げ工作までは手が回らなかったので、医療法人との医療収益に大きな格差が残る結果となっています。医療経済実態調査の結果をごく素直に読むと、個人立と医療法人で別のグループとして良いほどの巨大な差が出てしまっています。

個人立と医療法人に真の実体としてそんなに大きな差があるかと言われれば、これはそんなには無いと言えます。統計上の外れ値を整理すれば、それなりに医療法人の方が良いぐらいが関の山です。医療法人が給料231万円とされるのも迷惑な話で、殆んどの医療法人では遠い国のお話です。ましてやこんなに平均給料が高いから法人税をドカンと増やすと言われれば、多数の一人医療法人は卒倒します。

ま、損益差額と給料をリンクさせないと言っても、データとしての整合性は必要ですから、医療法人の医療収益を個人立の2倍にしてしまっています。本当に困る実態調査なんですが、これに代わる調査がないだけに、中医協では絶対の判断材料にされるのだけは間違いありません。いつになったら真の実態を反映する実態調査が出てくるかと思いますが、私が生きている間は無理なように感じています。


忘れそうになっていたので追加

時事記事にある

    2010年度の年収ベース(ボーナスを除く)でも、開業医の2753万7300円に対し、国立病院勤務医は1206万5900円にとどまり、大きな開きがあった。

月給で出せなかった「事業所得 = 院長の給料」理論をここでも持ち出しています。この記事の問題点は「2753万7300円」が医療経済実態調査で見つからない事です。あえて一番近い数字は、直近の2事業年(度)の機能別集計等の医療法人全体の院長の月給と賞与を合わせた金額で2755万2419円です。惜しいですが統計データですから出所の違う数字になります。

事業年度で事業所得が算出されるのは個人立診療所ですが、


個人立診療所 入院診療収益 全体
あり なし
損益差額(千円) 41139 22668 23741


全体平均の2374万1000円を12ヶ月で割ると197万8000円です。これは6月単月の損益差額と較べても矛盾する数字ではありません。医療法人の損益差額は、院長給料も差し引いた金額ですが、個人立はすべて事業所得で、ここから事業のために必要な支出があります。診療所辺りの医師数は第16回医療経済実態調査以降はウェブ公開されていないので、そこから引用しますが診療所全体で「1.2人」です。これは医療法人も含みます。

仮に医療法人の院長給も含めた損益差額が診療収益に比例するとすれば、損益差額は医療法人の院長給は4608万8000円になります。しかし現実は2755万2419円です。そうなるとせいぜい1420万円程度になります。実際はもっと少ないと思いますが、本当にあっちこっちからデータを寄せ集めてくると感心しています。

風物詩ネタなので毎度似たようなお話になって申し訳ありません。もうスルーでも良いの意見もあるでしょうが、指摘ぐらいはしておく方が良いぐらいに御了解下さい。

京都の小児科医京都の小児科医 2011/11/04 09:12 この調査はどうでもいい調査ではなく

(1)この調査は、病院、一般診療所及び歯科診療所並びに保険薬局における医業経営等
の実態を明らかにし、社会保険診療報酬に関する基礎資料を整備することを目的とし
て、中央社会保険医療協議会が平成23年6月に実施したものである。

といった調査であると思いますが・・・


(2)調査の対象及び客体
社会保険による診療を行っている全国の病院、一般診療所及び歯科診療所並びに保
険調剤を行っている全国の保険薬局のうち1ヶ月の調剤報酬明細書の取扱件数が
300件以上の薬局を対象とし、これらの医療機関等を、地域別等に層化し、次の抽
出率で無作為に抽出した施設を調査客体とした。
なお、特定機能病院、歯科大学病院及びこども病院(以下「特定機能病院等」とい
う。)については、別途、全ての施設を調査客体とした。

もう少し詳しい調査の対象の公表が必要では、
具体的には地域別の層化の表とか(地域って何?)
等っていうのが何かとか 厚生労動省の情報操作(カラクリ)のように思えるのですが・・
あと、回答率を上げるための工夫(飴と鞭?)はないのでしょうか
50%前後の回答で、社会保険診療報酬に関する基礎資料とする根拠が意味不明です。

BugsyBugsy 2011/11/04 10:08 >2010年度の年収ベース(ボーナスを除く)でも、開業医の2753万7300円に対し、国立病院勤務医は1206万5900円にとどまり、大きな開きがあった。

部長クラスですら 勤務医に関しては絶対にありえません。賞与を入れてもどうでしょうか。国立病院の勤務医といってますが 抽出した標本が偏っていませんかね。
一方医療法人の場合、給与は個人事業主たる院長や理事会できめますが世の中累進課税というものがありましてね、たくさん給与をもらうだけ税率が高くなります。それなら医療法人の内部留保か、スタッフを雇って経費に回したほうがよいはずです。無論開業医が望むだけ飲食を経費で落とせるというのは 都市伝説です。

SeisanSeisan 2011/11/04 11:32 この手の調査でいつも疑問なんですが、これ、保険診療を主たる収入源とする医療機関だけではないですよね。
とくに医療法人診療所の中には、相当数の自由診療が主たる収入源である医療機関が含まれていると思いますが、そういうところも計算に入っているとすれば、すごい欺瞞な数値ですね。

京都の小児科医京都の小児科医 2011/11/04 11:36 1.まず、医療経済実態調査票そのものが報告書に公開してあるべきです。
さらに、個別の調査対象の公表は必要ないと思いますが
どのように調査対象を選定したかを公開する必要があると思います。
このあたりは常識の範囲と思いますが・・・

2.で、その上で調査をきちんと行うできです。(調査対象者に飴と鞭が必要では)

現状のこの貧困なデータを社会保険診療報酬に関する基礎資料とする中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)はまともな協議会とは思えません。
よく、わからないのですが、協議会のメンバーから,このデータはおかしいのではないかとの
意見は出ないのでしょうか。協議会のメンバー=御用学者の集まりとも思いませんが
まず、きちんとしたデータがあってこそまともな議論ができると思います。

YosyanYosyan 2011/11/04 11:50 Seisan様

 >とくに医療法人診療所の中には、相当数の自由診療が主たる収入源である医療機関

事業収支の収入項目には保険診療収益以外に「その他の診療収益」「その他の医療収益」が含まれていますから、データとしてはカバーしている様に思います。

DrPoohDrPooh 2011/11/04 12:06 「わが国の医療費の水準と診療報酬」 ─ 中医協・遠藤会長の講演 (2)http://lohasmedical.jp/news/2009/10/15085656.php?page=4 より引用:
>実は、今回の「医療経済実態調査」では、医科診療所に関して無床、有床それぞれに、「その他」ではなくて、「医療法人」という枠を別途つくりました。従いまして、そこから出てくるデータを見れば、同じような会計基準ですので、診療所と病院の収支率の差が明らかになる。

会計の方法が異なる職種を比較することへの批判に対応したのだろうと思いますが,医療法人化した診療所を対象とした際の選択バイアスについては触れられていないようです。可処分所得を比較するのが筋だろうと思うのですが,技術的に難しいのかどうかは会計の素人である自分にはよく分かりません。どうなんでしょうか。

通りすがり通りすがり 2011/11/04 13:07 国立病院勤務の院長や医師の賞与がいやに少ない気がするのですが、何かからくりがあるのでしょうか?年俸契約とか?

BugsyBugsy 2011/11/04 13:47 通りすがり様

国立病院の院長の場合は存じ上げません。
しかし普通の医員の場合 毎年3月31日付で退職、翌月1日から採用になるので夏の賞与は出ません。
だから医員、医長、部長を平均すれば人数は圧倒的に医員が多いわけなので 少なくなるのではないでしょう。

元ライダー元ライダー 2011/11/04 14:16 マスコミは本当に開業医が嫌いなんですね。医者全体を叩いていたのが、勤務医を叩ける雰囲気でなくなったので、敵の範囲が絞られたのかもしれませんが。
・いつのまにか全国中央値と収支差額階級別施設数(ヒストグラム)が無くなってます。サンプル分布が不明です。マスコミには神の数値である加重平均だけで十分なのでしょう。
・「2753万7300円」ですが、「直近の2事業年(度)の機能別集計等」の285ベージ上段の表、医療法人、院長、前年(度),平均給料年(度)額が27,537,326円ですから、これではないかと。

ところで医師専用掲示板にも書かれていましたが、医療法人オーナーの給与を調査し平均を公表するなら、調剤薬局オーナー社長給与平均も同様に調べるべきですね。ただ、株式会社のオーナー社長なら社長給与をできるだけ低額にして、株式配当を手厚くし、20%の分離課税で節税という手もありますから、余計話が混乱しますかね。そして、そこから類推するに、医療機関経営への株式会社参入は、オーナー院長診療所にとっては自らが株式会社化した場合、悪くないのかなとも考えました。

Bugsy様
>たくさん給与をもらうだけ税率が高くなります。それなら医療法人の内部留保か、スタッフを雇って経費に回したほうがよいはずです。

普通に考えればそうなんですが、開業時に即医療法人でという形態は採れないので(行政から実績が必要とか言われるた)、個人事業主として開業してから医療法人に変身するのですが、医療法人に変身しても開業時の借金は個人の借金のままであることが多いのですよ(銀行が・・・)。そうすると、総支給額から税金や社会保険料を引いた残り、そこから年間数百万の借金(場合によっては千万円超)を返済するのですから、ある程度の給与が無いと、生活費が残らないのですよ。

YosyanYosyan 2011/11/04 15:50 元ライダー様

 >いつのまにか全国中央値と収支差額階級別施設数(ヒストグラム)が無くなってます。サンプル分布が不明です。

前回分から無くなっています。それだけでなく、診療所の医師数とか、外来患者数のデータもwebでは前回から公表されていません。お蔭で患者単価であるとか、大規模診療所の存在とかも藪の中になりました。図書館にでも行けば見れるのかなぁ。ただこの手の地味な公刊物はかなりの規模の図書館にいかないと無いのがネックです。最新版の消防白書も兵庫県に2冊しかなかったし・・・。

京都の小児科医京都の小児科医 2011/11/04 16:47 >調剤薬局オーナー社長給与平均

平均の詳しいことは知りませんが、トップが
日本調剤で4億7726万円
http://medical-confidential.com/confidential/2011/04/post-227.html
は知っています。

通りすがり通りすがり 2011/11/04 17:01 Bugsy様、お返事ありがとうございます。
そうなると、この表で出てくる国立病院勤務の医師は、正規採用の医師と非正規採用の医師が混在しているということなのですね。
そうすると、非正規採用の医師が平均値に近い給料をもらえるとも思えないので、実際には正規採用の医師が相当高額な給料をもらっているということになるのでしょうか?

京都の小児科医京都の小児科医 2011/11/04 17:23
DrPooh様が
示された医療経済実態調査2009でも
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/dl/s1030-6b.pdf
でも今回2011と同様に
「社会保険による診療を行っている全国の病院、一般診療所及び歯科診療所並びに保険調剤を行っている全国の保険薬局のうち1ヶ月の調剤報酬明細書の取扱件数が300件以上の薬局を対象とし、これらの医療機関等を、地域別等に層化し、次の抽出率で無作為に抽出した施設を調査客体とした。
 なお、特定機能病院、歯科大学病院及びこども病院については、別途、全ての施設を調査客体とした。」
となっています。 いわゆる専門家というのは厚生労働省が作成されたデータを使用するだけで、データそのものの信頼性、調査方法そのものの妥当性はどうでもいいような印象を持ちました。

医療経済実態調査の調査方法の疑問はどなたも持たれないのでしょうか。


DrPooh 2011/11/04 12:06
「わが国の医療費の水準と診療報酬」 ─ 中医協・遠藤会長の講演 (2)http://lohasmedical.jp/news/2009/10/15085656.php?page=4 より引用:
>実は、今回の「医療経済実態調査」では、医科診療所に関して無床、有床それぞれに

元ライダー元ライダー 2011/11/04 17:38
Yosyan 様

毎度のことですが、この調査が報道されるたびにマスコミに踊る言葉は「開業医の収入はナンタラカタラ」です。実質、開業医を締め付けるのが目的の調査ですね。生データーの加工もその目的に沿って次第に変わっているのでしょうかね。日医も開業医のことは眼中にありませんから、この調査について突っ込む方向が要領を得ていないようです。

さて、無床個人診療所の経年変化です。10年前の第13回医療経済実態調査から追ってみました。集計方法が微妙に変わっているので完全な同一比較でないかもしれませんが、一般的な開業医が苦しくなっているのが分かります。

        収支差月額(平均)
13回(平成13年)243万
14回(平成15年)220万
15回(平成17年)227万
16回(平成19年)223万
17回(平成21年)205万
18回(平成23年)175万

ここ4年間の落ち込みが激しいですね。

京都の小児科医様
>日本調剤で4億7726万円

そこと診療報酬改定を絡める話は全く浮上しませんね。同じ公費から収入を得ていても、マスコミ的には株式会社の役員ならば問題ないのでしょう。

BugsyBugsy 2011/11/04 17:41 通りすがり様

嫌な想像ですが この国立病院の勤務医の平均給与(賞与なし)って部長のみの給与を参考にしてませんかね。
オイラが公立病院の部長の時は しばらく前でしたが賞与も入れてこの位でした。今は給与水準が上がって賞与を入れたら少しは多いのかも知れませんし、公務員は勤務年数が長引けばベースアップもありえますから。
それと国公立を問わず、公務員共済などの公的な病院も給与水準は横並びが殆どです。

国立病院と言えども地方によっては多めに出すのでしょうか。ただ都内と関東近県では変わらなかったですよ。

京都の小児科医京都の小児科医 2011/11/04 17:48 本件の基本データは国立国会図書館にあることは理解できました。

医療機関の経営状況を調べる
http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-102799.php

医療従事者の所得を調べる
http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-102800.php

人生それぞれ人生それぞれ 2011/11/05 00:43 ああ、いやだいやだ。人の懐を覗き込むなんて、趣味悪い。
でも、ついでなので下司なことを言わせていただくと、なぜ、事務の給料が病院と診療所でかくも違うのか、です。
(もう、あまりこれを見ていると、ゆううつになるからやめます)

tadano--rytadano--ry 2011/11/05 06:51  私が若かりし頃、初めてコンサルティングした個人事業主さんは月収400万円超でありながら、昼食は毎日カップメンを(趣味でなく)食べておられました。特に個人事業主にとって「月収は可処分所得ではない」というのは常識なのですが、毎月毎月月収から勝手に天引きされた給与が振り込まれるサラリーマン(もちろん新聞記者も含めてです)には分からない感覚なのでしょう。
 まあとにかく新聞は相変わらずのレベルの低さですね。医療記事だけ格別にレベルが低いというわけでもないでしょうから、他の記事も推して知るべきです。最近は芸能関係の記事しか読みませんねw

働く薬剤師働く薬剤師 2011/11/07 13:00 言論サイト「ブロゴス」で紹介されているのを見て来ました。
日本調剤の社長が莫大な収入を得ており、毎年経営者報酬ランキング上位にランクしてはいますが日産のゴーン氏などとは違い、経済誌でも全く話題にはなりません。
実業界からすれば、かつてのNOVAなどと同じく興味の向くものではないのでしょう。私も同感ですが…。

医師の皆さんからすれば、自分たちの下請けのような調剤薬局の社長が多額の報酬を得ているのは面白くないかもしれませんが、残念ながらそれは筋違いです。
現在の日本は、医師会の主張により「任意の」分業です。患者が自由に薬局を選べるとの名目ではありますが、様々な制度の工夫により実質的には門前の薬局へと誘導されています。結局のところ、調剤薬局が医師に営業(院内投薬ではなく処方箋を発行しないか)をかけ、医師が薬局を選んでやるという構図ですから。
幾つかの調剤薬局チェーンが医師に賄賂を行っていた(もちろん禁止されている行為です)とかつて報道されていましたが、隣に薬局を出させてやるかわりに金品を要求する医師は、我々薬剤師からすれば珍しくもなんともありません。

医薬分業はそもそも、不適切な処方により患者が不利益を被らないようにする制度ですが、このように密着した医師‐調剤薬局では忌憚のない協議が不可能であることは自明です。
実際、多くの薬剤師は門前の医師の処方に問題があると考えても、それを患者に伝えることすら出来ていません。

驕れるもの久しからずとも言います。自重されますように。

元ライダー元ライダー 2011/11/07 14:22 働く薬剤師 様

>調剤薬局の社長が多額の報酬を得ているのは面白くないかもしれませんが、残念ながらそれは筋違いです。

主題はこれ↑なのでしょう。そして、それに続いて何故筋違いなのか書かれているのでしょうが、説明になっていないように思います。色々と調剤と医師の関係を書かれていますが、だからといって何故筋違いなのか説明になっていないように思います。これでは本当に筋違いなのかどうか判断のしようがありません。
(それ以前に「日調の社長が多額の報酬を得ているのは面白くない」というよりも、病医院職員の職員役員給与データを公表するなら、調剤も公表すべきだろうって話だったはずなんですが、それは置いときますよ。)

あと、気になったのは
>多くの薬剤師は門前の医師の処方に問題があると考えても、それを患者に伝えることすら出来ていません。

医師の処方に問題があると考えた場合は、まず処方した医師に疑義紹介するのが筋です。独断で患者に伝えることは、患者の健康に良くない影響を及ぼすことがほとんどですから止めてくださいね。疑義紹介ができないのであれば、それは薬剤師か制度に問題があるのでしょうね。

>驕れるもの久しからずとも言います。自重されますように。

誰に対して、何を自重しろと?

luckdragon2009luckdragon2009 2011/11/07 14:33 ま、上で言われているとおりなんですが、ちょっと追加。

そもそも、このブログのエントリーからの流れと、調剤薬局がどう繋がるかがよくわかりません。
説明していただけると、助かります。

給与分析の話(統計の分析)、だったよね...。

luckdragon2009luckdragon2009 2011/11/07 14:37 あ、これだと言葉足らずだ。
つまり、調剤薬局の社長の報酬とかのつながり、とか、自重とかの部分です。

要は、薬剤師さんの意見が、意味不明、なんですよ...。

働く薬剤師働く薬剤師 2011/11/08 16:54 元ライダー様

説明不足であったようで、お詫びいたします。


>医療法人オーナーの給与を調査し平均を公表するなら、調剤薬局オーナー社長給与平均も同様に調べるべきですね

ブログ本文中にも医療法人と個人立診療所について記述があり、乖離が大きく同じものとしての議論には意味がないとの流れだったように見受けます。あなたもそれについて同意した上での発言だと理解しています。

現在薬剤師はほとんどが勤務薬剤師であり、ほとんどの調剤薬局はチェーン店です。寡占化も進んでいます。医師と違い、オーナー薬剤師が1軒の薬局を経営しているような例は、特に保険調剤をメインとする場合では、ほとんど絶滅危惧種のような状態です。

つまり、調剤薬局オーナー社長の収入から薬剤師の収入を類推できるかといえば、先の医療法人と個人立との乖離などと比べれば正しく桁違いですから、歯科医師ではなく調剤薬局を引き合いに出すあたり、アドバルーンとしか表現の仕様がない。そしてそもそも、そのような状況を作っている大きな要因は、医薬分業の制度設計に物申してきた医師会やその制度を大いに利用してきた個々の医師達です。そういったことを考慮せず、気軽にこういった発言が出来る無邪気さを「驕り」と表現したのです。


>医師の処方に問題があると考えた場合は、まず処方した医師に疑義紹介するのが筋です。独断で患者に伝えることは、患者の健康に良くない影響を及ぼすことがほとんどですから止めてくださいね。疑義紹介ができないのであれば、それは薬剤師か制度に問題があるのでしょうね。

現実は、医師に連絡しても「私の処方にケチをつけるな」という方針の医師が非常に多いのです。マンツーマン分業では、そもそもそういった連絡をしないよう隣接薬局の経営者に命令する医師も珍しくありません。
薬剤師が不適切だと考えた内容、連絡しても医師がそういった回答であればその旨、それは本来患者も知るべきでしょう。医師無謬説を採用するのであればその限りではありませんが。
調剤薬局が景品交換所や自動販売機でないのであれば、疑義「照会」は、薬剤師が薬の専門家として患者の治療に寄与するための重要な職務です。「紹介」としか理解されていないのであれば、やはり制度が悪いのだと思います。

 
今回の231万円の信憑性はさておき、国民は身近な医師の態度や羽振り、各ハウスメーカーが医院建築専門の部門を持っている点(笑)や全国で医療機関の倒産件数が年間に40件ほどしかないことなどから、感覚的に捉えているのだと思いますよ。

知識層がどう考えているかは、今月号の「選択」に詳しいかもしれません。

元ライダー元ライダー 2011/11/08 22:07 働く薬剤師 様

おっしゃるように病院、一般診療所、歯科診療所はそれぞれ乖離があり、比較の対象にはなりませんが、病院、一般診療所及、歯科診療所は、給与の概念の無い個人立の医科歯科診療所長を除き、院長を含む従業員の給与平均が調査報告されています。その一方、保険薬局は従業員の職種別給与平均すら報告されていません。「社会保険診療報酬に関する基礎資料を整備することを目的とする(調査概要より)」なら、保険薬局だけ給与を調査報告しない合理的理由はありません。「保険薬局は乖離が激しいから」と言うのは、他の医療機関同士の乖離と比べての程度問題であり、本質的な違いではありません。乖離を理由に給与の調査報告をしないのであれば、他の医療機関もすべきではありませんし、他の医療機関の給与を調査報告しているのであれば、保険薬局も同種の調査報告をすべきです。その上でその報告で何が言えるのかを読み取るのは受け手の問題です。もちろん「比較の対象にならない」と読み取るのが正しい読み方だと思いますが、マスコミは開業医は儲け過ぎだと読み取っているようです。保険薬局社長(大手チェーン薬局も含む)の給与平均が医療法人と同様に医療経済実態調査で報告された場合、マスコミが報告書をどう読み解くのか、大変興味があります。

なお、調査報告書概要には「病院、一般診療所及び歯科診療所並びに保険薬局について、施設の概要、損益の状況、資産及び負債、従事者の人員及び給与の状況などの調査を行った。」と記載されています。日常で法律用語を扱う方なら言うまでもないことかもしれませんが『病院、一般診療所及び歯科診療所並びに保険薬局』で用いている「及び」「並びに」の意味するところは病院、一般診療所、歯科診療所は同種、同レベルの扱いだが、保険薬局は同種同レベルに扱わないということだそうです。厚労省は何かの意図があって保険薬局を別扱いにしているのでしょうか、医薬分業は失政だと国民に知れる恐れがあるからでしょうか。

>薬剤師が不適切だと考えた内容、連絡しても医師がそういった回答であればその旨、それは本来患者も知るべきでしょう。

「薬剤師が不適切だと考えた」、これが絶対に正しいのであれば、おっしゃるとおりです。しかし、そうではありませんね。薬剤師が不適切だと考え患者に伝えたが、実は不適切ではないのに、患者が薬剤師の考えに従ってしまい、治療上の障害になるケースはほとんどの医師が経験していることと思います。自分が不適切だと考え、疑義紹介した事実を記録しておけば、薬剤師の責任は免れます。指導には責任を伴いますので留意してください。

>そのような状況を作っている大きな要因は、医薬分業の制度設計に物申してきた医師会やその制度を大いに利用してきた個々の医師達です。

これは、大きな見解の相違です。そもそも医薬分業はデメリットのほうが大きく、その最たるものは調剤コストが医療費を過剰に食いつぶしていることだと、ほとんどの医師は思っています。昔のように院内調剤の方が国民医療費に、はるかに負担にならないとも思っています。にもかかわらず任意である院外処方をしているのは、制度上、院内調剤では薬剤管理コストをまかなうのが困難だからです。

手元に調剤薬局の領収書があります。
基本調剤料50点、調剤料170点、調剤加算量8点、薬学管理料30点で2580円
さらに院外処方箋料68点を加えれば、院外処方では、薬剤料(純粋な薬代)の他に3260円かかります。
これが院内調剤だと院内処方箋料42点、内服調剤料9点で計510円で済みます。その差2750円ですが、それに見合う付加価値が院外処方にあると考える国民はほとんどいないと思います。
院内調剤の現状510円で院内薬局を運営するのは困難ですが、3260円の半分程度でも運営可能と思います。何しろ、調剤薬局という法人の管理コスト(一般会社で言えば、人事部、総務部、役員のコスト)が大幅圧縮できますからね。

そろそろ医薬分業推進の功罪を総括する時期だと思いますが、医療財政上明らかな失政ですから厚労省は手を付けないでしょう。年金制度くらいの不都合が表面化すれば、政治家も動くでしょうが。

京都の小児科医京都の小児科医 2011/11/09 08:12 >そろそろ医薬分業推進の功罪を総括する時期
まず、ポイント制の議論からでしょうか
クレジットカードは???
「処方せんでポイントがたまる?」
http://yakuzaic.blog129.fc2.com/blog-entry-6176.html
くすりの勉強 -薬剤師のブログ-様のブロクより

働く薬剤師働く薬剤師 2011/11/10 11:08 元ライダー様 

コメント頂き、有難うございます。

仰っておられる内容は、医薬分業が政策上、特に医療財政の観点から明らかに失敗であり見直すべきだ。厚労省もそれに気付いているが自認出来ず放置している。といったところでしょうか。

今回の互いの主張が何故医薬分業の否定に結びつくのは些か不可解ですが、私の「驕り」発言で気を悪くされたかもしれません。その点はお詫び致します。

病院、医科歯科診療所と保険薬局の扱いが異なりおかしい。保険薬局経営者の給料を公表すればマスコミも目が行くだろう。そもそも別扱いなのは医薬分業が失政と判明するのを厚労省が恐れているのだろうとのことですが、そうではないと思います。

保険薬局は医療機関ではなく医療提供施設と位置付けられていて、そもそも扱いは違います。敢えて区分するとすれば、介護事業者が近いのではないでしょうか。
経済誌等には、ごくたまに調剤薬局チェーンが出てきますが、あなたが期待するようにアドバルーンとして注目を浴びないのは、医療政策の流れで浮上したものである点や予算規模が限られる点、結局のところ小売業界だという点です。私の最初の書き込みのNOVAの件で説明したつもりでしたが、うまく伝わらなかったようです。以前、介護事業でコムスンが急浮上しましたが、経済誌の見方は落ち着いていました(その時点では冷ややかではありません、念のため)。そういうことだと思います。

>医薬分業は失政だと国民に知れる恐れがあるからでしょうか
と深読みされているようですが、残念ながら的外れかと思います。上記の通りです。

まあ、どちらでも大したことではありません。


>「薬剤師が不適切だと考えた」、これが絶対に正しいのであれば、おっしゃるとおりです。しかし、そうではありませんね。薬剤師が不適切だと考え患者に伝えたが、実は不適切ではないのに、患者が薬剤師の考えに従ってしまい、治療上の障害になるケースはほとんどの医師が経験していることと思います。自分が不適切だと考え、疑義紹介した事実を記録しておけば、薬剤師の責任は免れます。指導には責任を伴いますので留意してください

一方で、これは非常に大切な問題です。

相変わらず「紹介」と記載されているのは、薬剤師は自分のアイデアを先生に「ご紹介」する、医師はそれが尤もだと思えば採用してやる、という理解で押し通すという事でしょうか?(笑)
「実は不適切でなく、薬剤師の行為が治療上の障害となるケースをほとんどの医師が経験している」とのことですが、前のコメントで述べたように、薬剤師も不適切な処方を度々経験します。そして照会しても「ワシの処方にケチをつけるのか。処方せん通りに調剤しろ。」と敬語すら使わないことすら。では、医師は無謬なのかと言えば、今の時代にそう言える(例え思っていたとしても)医師はいないでしょう。いや、いますか。時々(笑)
さらに付け加えれば、あなたがコメントされた「自分が不適切だと考え、疑義紹介した事実を記録しておけば、薬剤師の責任は免れます。(原文ママ)」という内容がそもそも、それも10年以上前に、裁判で完全に否定されています。(千葉地裁 平成12年9月12日判決をご覧下さい)
こういった誤りを平気で発言されることがそもそも、私の発言の正当性を補強しているとは思いませんか?

もしあなたのような医師が多いのだとすれば、患者は思いがけず誤った展開に身を置くことになります。その点に自覚的であって頂きたいと思います。



>そもそも医薬分業はデメリットのほうが大きく、その最たるものは調剤コストが医療費を過剰に食いつぶしていることだと、ほとんどの医師は思っています

医薬分業という意味の外国語がないことはご存知でしょう?
医師会の頑張りで、日本では長らく院内調剤がメインでしたが、そのおかげで多剤併用や大きな薬価差が維持されてきました。かつて30〜40%も珍しくなかった薬価差は現在は実勢10〜15%ではないでしょうか?以前と違い消費税もありますし。

そして買い言葉で言うのは憚られますが、院内調剤の技術料を調剤を担当するスタッフの人件費や薬剤保管コストと説明しておいて、分業推進の際には院内の技術料よりも処方せん発行料を高額にしないと発行しないという論理は破綻しています。処方せん発行に必要なのはプリンターではないでしょうか?

そんなことを完全に忘れ、処方せん料135点(6種類までの薬、後発含む、28日以上の場合)が必要としておいて、患者一人当たり技術料2000円ほどの薬局を叩く品性は如何かと思います。しかも(禁止されていますが)無診察外来で処方せんだけ貰う際でも、これに再診料等が加算されるのでしょう?
(しかしこの技術料論議はあまりにも稚拙ですね。私も含めてですが。)

実際に一部の医師(ほとんどの医師がそうだとは私には言えません。それはあまりに失礼です)がそういった考えなのは承知していますが、そのような思考パターンこそ周囲の冷笑や「欲張り村の村長」などとの揶揄を呼んでいるのではないでしょうか?

医師会やそういった一部の医師は、元来医師に必要である「高邁な人格」について考えるべきです。医師はそういうものだと、そもそも自分たちが主張しているのですから。

京都の小児科医京都の小児科医 2011/11/10 11:50 横からですが
>千葉地裁 平成12年9月12日判決
下記でしょうか  小児科の関連なので貼っておきます。勉強になります。

判例評釈
http://www.medsafe.net/contents/hanketsu.html
o.46「副作用成分が常用量を大幅に上回る薬剤を新生児に処方・調剤。医師と薬剤師の連帯責任を認めた判決」千葉地方裁判所 平成12年9月12日判決(判例時報1746号115頁)

医師・薬剤師の過失  裁判所は、次の理由を挙げて、漫然と常用量を大幅に上回る本件処方・調剤をしたという不法行為によってAに本件症状を生ぜしめたことにつき、Y医師とS薬剤師に過失があったと判断しました。

(1)本件薬剤についてY医師・S薬剤師が能書の記載から認識すべき本件成分の含有量の過剰性や本件成分の相互作用増強防止のための薬剤量減量の必要性に対するY医師・S薬剤師の認識の甘さ
(2)Aが生後4週間の新生児であることに対するY医師・S薬剤師の配慮の欠如
(3)Y医師においては、一般に風邪等に罹患した乳幼児はミルクの飲みが悪いと決めつけて個別的な症状を考慮せずに、患児のミルク摂取量という偶然性にかからせた薬剤処方をしたこと、S薬剤師においては、薬剤の専門家として右の処方に何の疑問も感じずにこれに従い調剤したことにつきそれぞれ落ち度がある。

 その上で、S薬剤師がY医師による本件処方に従って本件調剤をしたこと及びY医師は、S薬剤師に対し、体調の悪い乳児はミルクを全部飲まないので通常の服用量よりも多めに処方を行うため、処方どおり薬剤を調剤するよう指示し、S薬剤師はこれを了解していたことから、Y医師の本件処方とS薬剤師の本件調剤との間には客観的な関連共同性のみならず主観的な関連共同性さえ存在するということができるから、両名の行為が共同不法行為を構成することは明らかであると判示しました。そして、本件入院及び本件入院と同一症状・疾病でK病院に3日通院した際の治療費等を両名の過失と相当因果関係にある損害として、Aの損害賠償請求を一部認めました

京都の小児医科医京都の小児医科医 2011/11/10 12:01 上記 少しわかりづらいのですがNO46です。

感想ですが、
「欲張り村の村長」とか元来医師に必要である「高邁な人格」とかの表現は
昭和レトロな雰囲気があって実は好きです。平成生まれの医師とか薬剤師とか
出ているのはもうすぐもしくはもう出て来られているのでしょうか

明治生まれで頑張っておられるのは日野原重明先生を初め,ごくごく少数のように
理解しています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E9%87%8E%E5%8E%9F%E9%87%8D%E6%98%8E

働く薬剤師働く薬剤師 2011/11/10 15:16 京都の小児科医様

判決概略のご提示、有難うございます。

ネットで探しても、もう詳細は見つからなかったのですが、確かこの医師は「ミルクの飲みが悪いと云々」という信念の持ち主で、高用量処方が常だったようです。

そして門前の薬剤師はその信念を聞いても気にせずに毎回疑義照会をしている、という筈もない、という内容です。

実際にはよく聞くパターンです。


裁判所の見解は、調剤の拒否なり、患者に危険性を説明する(もちろん個々の患者に対して毎回)必要性があろうということです。
それこそ、門前の薬剤師の立場では不可能でしょうが。

ただ、この程度の法的思考力は、専門に学ばずとも身に付いて然るべきと思います。
それこそ、判例時報を2冊もパラ見すれば十分でしょう。


高邁等、表現が古く申し訳ありません(笑)

現実には、その時代(武見)の幻が残っているのみ、でしょうか。

元ライダー元ライダー 2011/11/10 22:03 働く薬剤師様

大まかに分けて論点は3つのようですね。

(1)医療経済実態調査について
保険薬局と他施設の違いを挙げているようですが、違いを挙げるだけでなく、なぜその違いが、保険薬局と他施設を別に扱う合理的理由になるのか説明しなければ無意味ですよ。違いを挙げるだけなら、病院と診療所の違いだっていくらでも挙げられます。でも、病院と診療所は職種別給与平均が共に開示されていますよね。例えば「介護事業者に近い」と言うなら、なぜ介護事業者に近いことが、主に公的保険から収入を得ているにもかかわらず、病院や診療所と別扱いしてもよい理由になるのかの説明が必要です。

(2)調剤薬局薬剤師の責任について
これは、失礼しました。JBMが確立しているようですね。であれば、薬剤師も責任をもって、患者を指導してください。ただし、その指導が患者の健康に不利益になると処方元が判断し、それが度重なれば、処方元も手をこまねいて見ているわけにはいきません。順を追って対策を講じることになるでしょう。と言いますか、対策を講じた実例を身近に事欠きません。

(3)院外調剤医療費の無駄について
患者つまり支払い側の視点から見てくださいね。薬価差の大小は患者側の負担に無関係です。薬価差が縮小しても薬剤費は下がっていません。新薬がどんどん出ていますからね。最近ではDPCの中に紛れ込んで補足できない部分も大きいですね。
http://hodanren.doc-net.or.jp/news/teigen/pic/5c.pdf

>分業推進の際には院内の技術料よりも処方せん発行料を高額にしないと発行しないという論理
私はそう言っていないはずですが。私なら[院内の技術料>処方せん発行料]であっても院外処方箋を出しますよ。できれば院内にしたいと思っても、当院では院内の技術料で薬の管理はできそうもありませんし。
前提が間違ってますので、これで終了なのですが、もう少し。

>患者一人当たり技術料2000円ほどの薬局を叩く品性
患者にとって、利点が大きいなら「技術料2000円ほどの薬局を叩く品性」とも言えますが、患者にとってそもそも不要なものですからね。そして私の挙げた事例も患者側からの視点です。初診で処方が無く、他に処置も無い場合、患者の負担は初診料だけですが、薬が出た場合、薬にかかわる手間賃は
・院内調剤なら、院内処方箋料42点、内服調剤料9点で計 510円 (料金名称は不正確かも、でも料金はこのとおり)
・院外処方なら院外処方箋料68点、基本調剤料50点、調剤料170点、調剤加算量8点、薬学管理料30点で 3260円
患者側(支払い側)はこれだけの薬の手間賃を負担しているのですが、料金に見合う「院外だからこそ」のメリットありますか?念押しますが、薬剤師技術料の評価ではなく、院内院外差の評価ですよ。患者の視点に立てば、この手間賃は真っ先に「効率化」すべき対象だと思いますが。

ついで
>高邁
ご自分でおっしゃるように幻です。

そうそう
>「紹介→照会」
他意はありませんよ

働く薬剤師働く薬剤師 2011/11/11 22:32 元ライダー様

失礼ながら、投了のタイミングではないでしょうか?


目新しい意見が出なかったのは少し残念ですが、今回の議論自体は楽しいものでした。有難うございました。お付き合い頂いたことに感謝します。



今回、この場をお借りして発言させていただきましたが、これは私と同様BLOGOSから流れてきた方々の目を意識してのものです。様々な方が見ておられますし、政治家(若しくは政治家の卵)の方も多いようですので。

ステークホルダーの多い医療政策が難しいことは承知しているつもりですが、その制度によってこういったステレオタイプな意見が形作られる点を考慮すれば、医師を批判してばかりもいられないのではないかと私は思います。

圧力に過度に影響されないフラットな議論を実施し、他の先進国の医療制度改革がそうであるように、そろそろ薬剤師にも活動の場を与えていただけるよう願っています。医師会の都合による医療のガラパゴス化は、もう終える時期ではないでしょうか。

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