新小児科医のつぶやき

2011-11-17 小児科医として残念な優先順位

11/16付CBニュースより、

成人用肺炎球菌ワクチンの助成を検討へ- 民主・予防接種法小委が初会合

 民主党の医療・介護ワーキングチーム(WT)の下に設置された予防接種法小委員会(小委員長=仁木博文衆院議員)が16日に初会合を開いた。この中で、参加議員からは、厚生労働省が2012年度の事業継続を表明している3種のワクチン(子宮頸がん予防ワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン)の接種の公費助成に、成人用肺炎球菌ワクチンを追加すべきとの意見が上がった。これを受けて、小委では今後、同ワクチンの公費助成を論点の一つと位置付けて検討する。

 初会合で厚労省は、ワクチンの予防効果による医療経済効果の推計を提示。それによると、成人用肺炎球菌ワクチンは接種対象になる人数が多く、小児用のワクチンと比べて費用低減効果が格段に高いという。小委では、臨時国会中にある程度の結論を出し、医療・介護WTに報告する方針だ。

 小委ではこのほか、厚労省が来年の通常国会への提出を予定している予防接種法の改正案についても議論する。

まずピックアップしておきたいのは、

    厚生労働省が2012年度の事業継続を表明している3種のワクチン(子宮頸がん予防ワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン)の接種の公費助成

HPV、Hib,PCV7の公費助成は延長されると思ってはいましたが、厚生労働省が来年度も継続すると「ちゃんと」表明していたのは、恥ずかしながら初めて知りました。どうも与党も反対でないようで、この助成措置が延長される事を既定事実として、さらなる臨時公費の予防接種を追加しようとしているのもわかります。

ここについては小児科医の期待として、2年間の臨時公費化だけではなく、これが終了するまでに公式に定期接種化に進む事を期待していたのですが、それが実現しなかったのは少々残念なところです。それでも打ち切られるよりは遥かにマシですから、来年度に期待する事にします。


公費助成延長の感想はそれぐらいにして、新たに追加される予防接種は、

    成人用肺炎球菌ワクチンを追加すべきとの意見が上がった

あんまり縁が無いというか接種した事がないので詳しいとは言えないのですが、23価ですからPCV23(正しくはPPVでした)とでも略すのでしょうか。これも有用なワクチンである事は否定しませんが、追加される予防接種が1つであるとの前提であるなら、他の予防接種との比較はどうなんだろうです。比較対象にあげておきたいのは水痘、ムンプス(HBVも入れたいかな)です。水痘、ムンプスに較べてPCV23(正しくはPPVでした)が優先される理由としては、

    厚労省は、ワクチンの予防効果による医療経済効果の推計を提示。それによると、成人用肺炎球菌ワクチンは接種対象になる人数が多く、小児用のワクチンと比べて費用低減効果が格段に高いという

ほぉ、厚労省の御推薦ですか・・・。そりゃ、ほぼ決まったようなものです。あくまでも推測ですが、この委員会のテーマとしては追加で加える予防接種は何かが一つのテーマであり、その候補に舞台回しを事実上勤めるといってよい厚労省が強力推薦なら、参考資料もバッチリだと想像します。後はHPVの時のようにドサクサで水痘なり、ムンプスなり(HBVなり)を抱き合わせで潜り込ませる事が出来るかどうかが、今後の焦点になるかもしれません。


ところでですが、PCV23(正しくはPPVでした)の現在の適用は、これはe-paharmaからですが、

脾摘患者の肺炎球菌による感染症の発症予防、(鎌状赤血球疾患、肝機能障害、呼吸器慢性疾患、心慢性疾患、腎不全、糖尿病、慢性髄液漏、脾機能不全、高齢者、免疫抑制作用を有する治療が予定されている者)の肺炎球菌による感染症の予防

保険適用は2歳以上の脾摘患者だけだそうです。それ以外の「鎌状赤血球疾患、肝機能障害、呼吸器慢性疾患、心慢性疾患、腎不全、糖尿病、慢性髄液漏、脾機能不全、高齢者、免疫抑制作用を有する治療が予定されている者」に対してですが、高齢者以外は文句も何もありません。高齢者(65歳以上だそうです)も文句は本来無いのですが、選択が一つであれば小児科医としては悔しさが残るところです。

それとPCV23(正しくはPPVでした)は5年ぐらいで有効性は切れるはずですから、継続接種も延々と助成するのでしょうか。詳細はこれからでしょうが、厚労省の費用低減効果の試算はともかく、ここで予防接種の予算が大きく取られて、小児用のワクチンの助成が予算不足でドンドン後回しにされる事態になるのはあんまり嬉しい想像ではありません。

もっともなんですが、どこかの自治体の様にRotaを突然助成されても正直なところ困惑します。これはRotaの有用性を否定している訳ではなく、接種スケジュールがバラ打ち定着傾向のために、希望されても非常に接種し難いからです。もっとも今回の民主党委員会は初会合であり、これから最終的に何が飛び出すかわかりませんから、今後の動向は注意しておいても良いと思います。

まあ、瓢箪から駒で、ゾロゾロと芋づる式についでにあれこれワクチンが公費化に追加されたら嬉しいのですが、そこまでは期待しすぎでしょうねぇ。

当直明け当直明け 2011/11/17 08:52 こういう話題が出てくると言うことはHPVの公費助成は来年度も続くでFA?
今初回のワクチン受診者に来年4月以降の3回目がアナウンス出来ない状況なんですが。

Yosyan先生、HPV,PCV23の公費助成が先に行われると言うことは小児科医達が以前から本気で訴えている水痘やムンプスHBV等が後回し、つまりないがしろにされているということです。

一産科医一産科医 2011/11/17 09:03 仁木先生は産婦人科医ですね。どの程度予防接種に詳しいかは分からないですが・・・。
(最近はHPVやインフルエンザ・風疹ワクチンと産婦人科領域でも関係するワクチンが増えたので、産婦人科医でもそれなりに予防接種に関わる機会は増えていますけれど)

>厚生労働省が来年度も継続すると「ちゃんと」表明
あくまで「予算請求したよ〜」ということだと思います。予算が通るかどうかはこれから。財務省の意向を伺ってからでしょう。

こういう場合、政治的な介入は結局「選挙でどれだけ票になるか」で決まりますよね。老人の方が票になるとなれば、高齢者の方が優先されるのは当然の帰結かと。
もっとも単純に疾病予防効果による医療費削減効果だけでなく、接種を受けた人がその後どれだけGDPの産出に寄与するか、という視点もあっていいのではないかとも思いますけれど。

卵の名無し卵の名無し 2011/11/17 09:40 >あくまで「予算請求したよ〜」ということだと思います。予算が通るかどうかはこれから。財務省の意向を伺ってからでしょう。

つまり財務省が決めている以上厚労省の存在意義は皆無ということ。やっぱ厚労省イラン、なw

元ライダー元ライダー 2011/11/17 09:45 何のために予防医療を行うかというと、健康維持のためであって、医療費削減のためではない。
少し考えれば、高齢者に対する予防医療は、むしろ総医療費を増加させるということが分かると思います。
例えば「80歳以上には医療を提供しない」という政策と組み合わせれば、医療費削減効果はあるかもしれませんが。

当直明け当直明け 2011/11/17 09:50 とにかくHPVのときみたいに年明けにバタバタと決定して1月に遡って開始などのバカげたパフォーマンスは止めて欲しい物です。
ニューモバックスはCMが始まったせいか品薄です。

元ライダーさま
それを言っちゃあ以下自粛。

利香利香 2011/11/17 09:51 はじめまして。1歳の子どもがいる主婦です。
子どものワクチン接種を機に、ワクチンについて勉強しています。
HPV、ヒブ、肺炎球菌の公費助成の件ですが、厚労省の概算要求資料を見ると、他のいくつかの項目とひっくるめて「予算編成過程で検討」とされていて、現時点では消えてはいないものの予算規模はよくわからないような印象を持ちました。
厚労省には財務省に理解してもらえるように努力してもらいたいです。

京都の小児科医京都の小児科医 2011/11/17 10:49 >何のために予防医療を行うかというと、健康維持のためであって、医療費削減のためではない。
少し考えれば、高齢者に対する予防医療は、むしろ総医療費を増加させるということが分かると思います。

医療費の定義が問題と思いますが、少なくとも小児医療に関しては別の意見はあると思います。

あと、個人的な疑問ですが成人用肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種の問題が気になります。

SeisanSeisan 2011/11/17 11:21 厚労省が来年も継続する、と言っているのは、予算システムを考えると、当たり前の話で、「前年のものはそのまま続けて既得権として申請する(ことを表明する)」という手法を踏襲しているだけでしょう。
ワクチンの必然性を考えて、とは思えませんし、まだ確定したものとも思っていません。
まあ、このての継続性が必要なものをなかなかやめる、とは言えないでしょうが。

PPV23(Pneumococcal Polysaccaride Vaccine)に関しては、ズバリ、「有権者に訴求できる」ワクチンだからだと踏んでいます。中尾彬もCMでアピールしてますし。
国民人口動向の長期的視野に立つのであれば、間違いなくMunps、水痘、HBVのワクチンが優先されるべき(WHOの予防接種勧告でもそうなってます)なんですが、子供に選挙権はなく、選挙権のある親もいまだに「おたふくみずぼうそうはかかったほうがいいんじゃないの?」なんて言ってる状態です。HBなんて「自分が(あるいは子供が)かかることがあるような病気じゃない」と思ってますよ。

要するにわざとリスクを周知徹底せずに、ワクチンをしないことをごまかしている。だから、おたふく・水痘・HBのワクチンを公費で行う、といっても、「有権者」の心に訴えないんですよ。

実際には、ポリオの生ワクチンをすることで起こるVAPPの1000倍、おたふくかぜで不可逆性難聴になりますし、100倍の確率で水痘ウイルスによる脳炎(重度後遺障害が1割くらい発生する)が起こります。

ポリオの生ワクチンのわずかな確率の副反応がこれだけ騒ぎになっているのに、おたふくかぜや水痘は「当たり前の病気」でありすぎ、厚労省もその危険性を指摘してこなかったため、はるかに後遺障害リスクが高いのに、流行が放置されているわけです。

で、逆にマスコミが騒ぎだした「高齢者の肺炎球菌感染症」にはすぐに飛びついちゃう。

まあ、厚労省自体が一貫した感染症国防プランを持ってないから、行き当たりばったりでしかなく、専門家会議もあくまで「意見をお伺いする」だけの組織でしかないから、強制力がない。そして、官僚組織のマスコミコントロールがうまくいっているのか、厚労省の意向に否定的な意見は(よほど大きな騒ぎにならない限り)報道されない。
そうなっている以上、当たり前の話なんですけどね。

HPV/PCV/Hibの定期接種化には、予防接種法の改正が必要ですから、相当時間がかかると思います。
追加するなら、これらはあくまでも「任意接種の公費補助」ですから、何かあっても国に責任が及ばないという厚労省にとって非常に都合がいい制度ですから、予防接種法改正には非常に消極的になってるという現実もあるように感じます。

SeisanSeisan 2011/11/17 11:30 あと、高齢者のPPVですが、現在公費補助をしている自治体も多く見受けられますが、原則1回のみで再接種はしない、というところが多いです。ほとんどがインフルエンザ2類接種と同様の扱い(60歳以上の基礎疾患ありのものあるいは65歳以上のすべて)をしているようです。

ちなみに適用は

2歳以上で肺炎球菌による重篤な疾患が予想される者

で、その中には、脾摘、高齢者、基礎疾患を有する者、免疫抑制療法を受ける前(2W以上あけて)のもの、となっています。

でも、なんか今回の話、裏でMSDがだいぶ動いてそうですねぇ。あまりにタイムリーすぎる。
つか、この話、MSDでもPPVの輸入量を大幅に増やします、って言い出した途端なんですけど。

当直明け当直明け 2011/11/17 12:30 少々トピズレ、申し訳ありません。
近日発売のロタリックス、卸が価格を伝えに来ました。
ズバリ、ジャスト1万円プラス消費税。

またまたG社の統制価格管理の予感がしますが、この価格以外の価格呈示、ありましたでしょうか?

京都の小児科医京都の小児科医 2011/11/17 17:00 >まあ、厚労省自体が一貫した感染症国防プランを持ってないから、行き当たりばったりでしかなく、専門家会議もあくまで「意見をお伺いする」だけの組織でしかないから、強制力がない。そして、官僚組織のマスコミコントロールがうまくいっているのか、厚労省の意向に否定的な意見は(よほど大きな騒ぎにならない限り)報道されない。
そうなっている以上、当たり前の話なんですけどね。

異論を出して申し訳ありませんが、何十年付き合ってきたら上記のことの当たり前のことが理解できるのでしょうか ほぼ、専門家の間ではコンセンサスをもっている話だと思います。
専門家が一貫した感染症国防プラン(厚労省改革を含む)をもっていないことが問題だと
思います。
本お題は民主党の医療・介護ワーキングチーム(WT)の下に設置された予防接種法小委員会(

京都の小児科医京都の小児科医 2011/11/17 17:10 続き
本お題は民主党の医療・介護ワーキングチーム(WT)の下に設置された予防接種法小委員でですが
民主党の感染症国防プラン(厚労省改革を含む)ってあるのでしょうか

京都の小児科医京都の小児科医 2011/11/17 17:24 やっぱ厚労省イラン、なw

私は厚労省は改革をするべきと思いますが・・・

財団法人予防接種リサーチセンターはいらないと思います。
http://www.yoboseshu-rc.com/index.php
ネット上で予防接種ガイドラインを非公開にしているのは問題は大きいと思います。

SeisanSeisan 2011/11/17 20:01 厚労省的「専門家」が本来の予防接種専門家でないあたりが問題ですね。
故神谷先生をはじめとする本当に予防接種を専門とする人たちにまともな予防接種行政をさせてこなかった厚労省のシステムが大問題です。
やはりアメリカのACIPのような行政に対するある程度の強制力のある組織でないと意味がないですね。

まあ、ミンスのワーキングチームに関しては、意外に市井の専門家が入ってたりするんですが、今回のメンバーが誰なのかは知りません。

ちなみに、財団法人予防接種リサーチセンターは単なる天下り機関で、ほとんど「専門家」はいません(いなくなりました)。
地方自治体に対する発言力はあるかもしれませんが、現場に対しては、足を引っ張るような発言しかしないのが難点ですねぇ。わたしもサッサと解散してほしいです。

京都の小児科医京都の小児科医 2011/11/18 04:12 成人用肺炎球菌ワクチン
については
内科開業医のお勉強日記様のブロクが一番勉強になると思っています。
米国FDA50歳以上でPrevnar13認可:日本でやられてる肺炎球菌ワクチンはインチキです
http://intmed.exblog.jp/14021820/
ワクチンでは肺炎そのものは予防できない
http://intmed.exblog.jp/5387693/

SeisanSeisan 2011/11/18 19:19 遅レスですが

PPV23で肺炎が予防できないのは私も賛成です。
あくまでも「重症肺炎球菌感染症」の予防ですね。

PPVは莢膜多糖体ワクチンなので、抗原提示性はPCVよりも低いです。それが乳児に適用がなかった理由なんですが、免疫能の低下してきた高齢者に同様に効果が「高い」かどうかは非常に疑問です。まあ、無意味ではないでしょうが。
ということは、「高齢者に対し5年ごとに接種する」プロトコルで補助をするのか、「対象者1回のみ」とするのかで本気度が見えてきます。

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