新小児科医のつぶやき

2012-07-10 子供の不慮の事故の統計

Bugsy様の

未成年の自殺率が増えたような報道も目にしますが 実際には相変わらず圧倒的に不慮の事故によるものが多いのではないでしょうかね。

これに反応しただけのお話です。可能な限り人口動態調査から掘り起こしてみました。今日も昨日に引き続いて

  1. 子供とは19歳以下の未成年者を指す
  2. 発生率は年齢階級人口に対する10万人対

まずは長期推移です。1950年から2010年までの動きです。

かつては0-4歳児の不慮の事故の発生率が非常に高かったのが確認できますし、1970−1990年にかけて15-19歳の不慮の事故が多かったのも良くわかります。長期推移のグラフではかえって最近の動きがわかりにくいので、1990年からの20年間のグラフを提示します。

全人口では、ほぼ30人程度で安定しています。1995年度が高いのはやはり阪神大震災の影響でしょうか。一方で子供の不慮の事故はほぼ一貫して減少しています。1990年度から5年毎の数値の変動を表にします。


年度 全年齢 0-4 5-9 10-14 15-19
1990 26.17 16.55 7.03 3.77 25.01
1995 36.46 16.12 8.09 4.98 20.83
2000 31.43 8.96 4.04 2.55 14.15
2005 31.59 7.39 3.90 2.50 9.43
2010 32.23 5.02 2.25 2.06 7.03
2010/1990 1.24 0.30 0.32 0.55 0.28


20年間で0-4歳、5-9歳、15-19歳は1/3に減少。10-14歳も半減です。ついでですから実数も示しておくと、


年度 全年齢 0-4 5-9 10-14 15-19
1990 32122 1071 523 320 2493
1995 45323 959 525 370 1769
2000 39484 525 242 166 1052
2005 39863 410 230 150 615
2010 40732 264 125 121 424

こんなものです。ではでは年齢階級別の総死亡数に対する割合はどうなっているかです。

表も提示しておきます。


年度 0-4

(%)

5-9

(%)

10-14

(%)

15-19

(%)

1990 13.42 37.98 25.76 57.27
1995 13.62 42.51 31.25 52.62
2000 9.96 32.79 22.31 43.89
2005 10.00 35.11 25.42 34.13
2010 7.81 26.04 21.88 29.82
2010/1990 0.58 0.68 0.85 0.52

年齢階級で差はあるとは言え、0-4歳で4割減少、5-9歳で3割減少、10-14歳で1割5分減少、15-19歳でほぼ半減です。どこまで減らせば合格点はキリがないにしろ、ここ20年間の間でも不慮の事故の発生数、発生率、また死亡数に対する割合も確実に低下していると考えられます。


不慮の事故と自殺

元のBugsy様のコメントの趣旨は、子供の自殺と不慮の事故の発生率の差ですから、これにちゃんと回答を書いておかないといけません。とりあえず発生率のグラフを示しておきます。

1980年時点(1995年時点でも!)では圧倒的な差がありますが、2010年時点では相当縮まっています。2010年時点では子供の不慮の事故の発生率は4.11人、自殺が2.26人です。あえて破線のグラフを付け加えたのはさすがに0-4歳の自殺者は存在しないため、5-19歳を母数とすれば、2.94人(警察庁統計なら3.16人)になります。これは両者の死因の発生率としては近いと感じます。

では子供の死因に占める割合はどうかです。これは1980年時点と2010年時点を較べてみます。

不慮の事故と自殺の合計の割合は1980年時点も、2010年時点もほぼ変わりはありませんが、比率がかなり変わっているのが確認できるかと思います。とくに自殺の占める割合が増加しており、1980年時点では2.6%であったものが、8.8%に増え、不慮の事故の半分以上になっています。これは子供の自殺対策が、不慮の事故対策に較べても軽視出来ない事を示していると見ます。

もう一つデータを示しておきます。


年度 子供の死亡数 自殺 不慮の事故 子供人口 子供の死亡率
(10万人対)
1980 24741 654 5737 35540652 69.6
1985 18486 538 4837 34838500 53.1
1990 14955 428 4407 32370067 46.2
1995 12821 489 3623 28359365 45.2
2000 9148 547 1985 25765069 35.5
2005 7149 556 1405 23961223 29.8
2010 5837 514 934 22717343 25.7


子供人口も減っているのですが、子供の死亡率自体が低下しているのが判って頂けるでしょうか。それもかなりの速度で改善しています。10年前からでも3割弱程度減少していますし、30年前からになると6割以上も減少しています。実数で見ても15年前と較べて半減以下の6000人を切っています。一方で不慮の事故も1000人を切る状態になっており、これ以上の子供の死亡率の改善を考えるのなら、自殺対策は軽視できないと思います。

あえてBugsy様への回答とさせて頂くなら、未成年者の自殺の実数は大きく変わりはありませんが、自殺以外の死因による死亡が大幅に減少し、相対的に自殺対策の重要性が大きくなったです。これは子供人口の減少及び子供の死亡率の低下を考えると、急増中とも言えます。他の死因が低下を示す中で増えているのはやはり対策の必要性が求められるです。

ただデータだけで言うと、2010年時点で自殺が514人、不慮の事故が934人ですから、ここからどれほど減らせるかは容易ではなさそうは言えます。ですから不慮の事故に対策のさらなる重点を置いても、どれほどの効果が期待できるかはかなり未知数ではないかと私は考えます。

luckdragon2009luckdragon2009 2012/07/10 08:00 不慮の事故が実数減って、体感的に自殺の方が割合として増えたのが、一見、自殺が増えたように見えそうな気がしますね。
自殺の実数は変わらない、という感じで、多分、現場的には、増えもせず、減りもせず、ただ、時代的な微妙な推移がある、という感じでしょうか。

そういえば、最近の学校って、屋上とか危険な場所が閉鎖されていたりしませんかね。予防的に。

YosyanYosyan 2012/07/10 08:25 luckdragon2009様

自殺は子供人口からすると微増と言うところでしょうか。一方でかつて圧倒的に多かった不慮の自己を始めとするその他の死因は大幅に改善されています。結果として実感として多いになっているが統計からの見方として良いかもしれません。それぐらい子供の死亡率が減少しているのは数値が示しています。

ほいじゃ、相対的であれ、なんであれ増えてきた自殺がそう簡単に対策出来るかは難しそうに思います。対策は万単位とか、せめて数千ぐらいが対象であれば成果を得やすい部分がありますが、百単位となると厳しくなります。子供人口は減っているとは言え、年代ごとにそれでも100万人を越しているものであり、子供人口2200万人の500人をどうするかはマクロ対策では難しいです。俗に言う「万が一」以下のミクロの対策になるからです。不慮の事故のこれ以上の対策も類似していると感じます。

BugsyBugsy 2012/07/10 10:00 Yosyanさま

自分の素朴な疑問に細かくお応え頂き有難うございます。
オイラも自分なりに調べてみました。
>http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/furyo10/01.html
厚生労働省が不慮の事故による死亡の年次推移について調べています。この中で未成年の不慮の事故の傾向が分かるのですが、確かに溺死、窒息、火災は変化がないようですが、交通事故による死亡は15-19歳で三分の一近く減少しています。ところが20歳をこえると中毒死が増加しています。この中毒ってなんでしょうか。

皮肉を言えば 一見交通事故死が減ったのは事故後1か月以上の延命例が増えたのかもしれません。ただし平成7年から急速に救急医療が進歩普及したとまでは思えません。おそらく交通法規が年々厳しくなり 未成年がバイクに乗ることが少なくなったのも一因ではあるでしょう。勤務先の病院でも未成年の交通事故による重症頭部外傷も少なくなりつつあるなとは感じています。

YosyanYosyan 2012/07/10 10:13 Bugsy様

未成年者の交通事故の減少は、御指摘の交通法規などの警察側等の努力もあるとは思いますが、若者のクルマ離れも大きいと思っています。未成年者ですからクルマはまだ小さくとも、バイク離れは非常に大きいかもしれません。乗らなきゃ事故になる確率が下がるです。

またバイクに乗ったとしても、これもまたかつての様な暴走スタイルは減少し、それこそスクーターで近所で買い物程度になっている者が増えている様な気がします。あれだけ多かった暴走族の言葉を聞かなくなって久しいと思っています。暴走族の減少は、暴走予備軍の減少も伴い、結果として大きな交通事故の発生率を下げているかもしれません。

 >ところが20歳をこえると中毒死が増加しています

自殺ならわかりやすいのですが、なんでしょう?

とおりすがりとおりすがり 2012/07/10 10:37 急性アル中ではないのかしら(笑)…笑いごとでもないですが。

ヨシダヒロコヨシダヒロコ 2012/07/10 10:54 Yosyan先生、こんにちは。

いつもリーダーに入れて読ませて頂いてます。歴史ネタはわたしにはちょっとマニアックすぎますが……。

このイジメ事件はABCニュースでも報道されたそうです。"Kids and Laughing Teachers Bullied Suicide Teen" http://t.co/0RcSj8hi

テレビをあまり見てないので詳しくは知らないのですが、国内でも相当報道していたようですね。

それでなんですが、「実数は増えていないが陰湿なイジメがある」という趣旨のブログエントリを英語で書きたく思っています。ご迷惑でなければ最後の表をお借りできないでしょうか?とはいえ、はてなでは表を埋め込めるのか分かりませんが、WordPressにそのまま移植できるものやら。

ところで、「日本人の若者の自殺率が高い。どうして?」というスレッドが某LinkedInで立ったことがあり、頑張って1000word程書いたのですが、日本関連グループなのに日本人または日本在住外国人からの投稿が少なく「経済の根本的な改革が必要」とか日本では絶対無理そうな代案を示される方がいたりして、嫌になって後を追うのを止めた経験があります(トピ主さんにはお礼のメッセージを頂きました)。

リンク先のブログは今の所平和なことしか書いてませんが、それだけにするつもりはありません。

YosyanYosyan 2012/07/10 11:36 ヨシダヒロコ様

表の引用は構いませんが、

 >はてなでは表を埋め込めるのか分かりませんが

元はすべてHTMLタグで組んでいます。hatena仕様でも表はできるのですが、あまり綺麗に組めないもので。これがWordPressに移植できるかどうかは、持っていないのでわかりません。

京都の小児科医京都の小児科医 2012/07/10 11:47 2点
1.たぶん、皆さん気づいておられたと思いますが、この統計は2010年までで
昨年の地震(2011年)がまだ統計として入っていないことに今気づきました。
津波・地震による死亡はどういう種類になるのでしょうか

2.図1 不慮の事故による死亡数の年次推移 -明治32〜平成20年-
わざとらしく、昭和10年代後半が白紙です。 爆撃による死亡は
どういう種類になるのかなと思いました。

BugsyBugsy 2012/07/10 12:27 京都の小児科医様

災害や戦災による死亡は不慮の死亡に入ると思います。

ヨシダヒロコ様

>「実数は増えていないが陰湿なイジメがある」
これって昔からでしょう。大人の世界にも陰湿なイジメは多いと思いますが 子どもの世界で最近増えたとは思えません。あくまで外来診療で接する10代の若者やや自分の子どもを通じた印象からではあります。

10代の若者の自殺が増えたとはいえ 経済的な困窮が原因とは考えづらいです。親が経済的に困る場合はあるでしょうが、普通未成年は親掛かりの生活をしているからです。親の世代とても乞食や物乞いは見かけません。食料ほしさの泥棒もいません。ましてや困窮からの餓死者は現代の日本ではいないじゃないですか。未成年のそういった出来事も耳にはしません。
20代初頭での就職難は確かにあり、若者が自殺したとの報道はあるにはあるのですが、あれでさえ就職先がないのは希望する会社に就職できないことではあっても 就職先が絶無ではないはずです。飲食業などの人手不足の業種だっていくらでもあります。
従ってかつての英国や現在の韓国のような 絶対的に就職先の数がないというのは日本においてはありません。外国からの報道は 無意識の中に自分の国の情勢に当てはめて考察するか 経済的な不安というキーワードで解説するからでしょう。無論日本人の性格を大人しいといわずに 陰湿と言う言葉で括りつけることは多いようです。

社会不安が本当にあるとすれば 暴動がおきても宜しいはずなんですがね。10台というのは多感なお年頃で感情が不安定なのは昔からです。中には自殺を念慮する人間が出てきても当たり前だと思います。無論大人は彼らに真摯に向かい合うべきではありますが 繰り返すようですが 経済的に将来が先行きが不安というのは日本においては当てはまりそうではありません。

YosyanYosyan 2012/07/10 12:31 京都の小児科医様

死因分類は基本的にICD10に基づいており、

 地震:X34 地震による受傷者
 津波:X38 洪水による受傷者

どちらも不慮の事故の「自然の力への曝露」に分類されます。ちなみに1995年の地震の死亡者は5326人となっています。

 >爆撃による死亡

これは「Y36 戦争行為」のうち、「Y36.1 航空機破壊を伴う戦争行為」になると考えます。ただこれが不慮の事故に入るかといわれれば違うとも考えられ、これまでみた事のある項目なら「他殺」もしくは独立して項目となるのかもしれません。

京都の小児科医京都の小児科医 2012/07/10 14:01 Bugsy様、Yosyan様
ありがとうございます。

昨日のエントリー(自殺)を含めてですが10代の特攻隊はどのようなカテゴリーに
属するなかとも思っていました。
特攻隊=自殺ではないように感じています。

図1 不慮の事故による死亡数の年次推移 -明治32〜平成20年-
の昭和10年後半〜20年前半に関しての空白はその理由を明記するべきと
思いました。

BugsyBugsy 2012/07/10 14:45 再び 京都の小児科医さま

以前は特攻隊は10代の素直な少年が 大人に説得させられて特攻した、覚悟の上の自殺ではあるが兵士としては戦死であると漠然と思っていました。ところが少なからずヒロポンを打たれて正常な判断力を失わされての迎撃であったようです。従って上官による他殺であったように思うようになりました。

実に罪深いことです。最近でも子供が面白半分に薬物に手を出しているようです。これもきちんと取り締まるべきですね。

ヨシダヒロコヨシダヒロコ 2012/07/10 16:17 Yosyan先生、ありがとうございます。htmlなら組み込めると思います。

それでもうひとつ質問なのですが、この表は上の統計を総合したものでしょうか?


Bugsyさま、質問者はカンボジアの人でした。まともな選挙が開かれたのもごく最近、と言う国ですよね。豊かなはずの日本がなぜ?と思ったのでしょう。
回答者は先進国の人が多かったです。「自分の国に当てはめて考えてしまう」傾向は引きこもりのスレでもありましたね……。やっぱり途中で「議論のための議論」になっていました。

普段はROM普段はROM 2012/07/10 16:32 一昔前は自殺の一部は不慮の事故として扱われたんではないでしょうか
表向きは変わっても、実際の割合としては変わらないではないでしょうか

YosyanYosyan 2012/07/10 17:05 ヨシダヒロコ様

 >この表は上の統計を総合したものでしょうか?

総合? 実際に人口動態統計を調べられるとわかると思いますが、長い年次推移を掘り起こそうと思えば、少なくとも5年分ぐらいの統計表から引っ張り出さないと構成できません。年齢階級人口も死亡数も同様の作業が必要になります。そういう作業を総合と言われるなら総合になります。単にそれだけのものです。

10年ドロッポ10年ドロッポ 2012/07/10 17:56 >ところが少なからずヒロポンを打たれて正常な判断力を失わされての迎撃であったようです。従って上官による他殺であったように思うようになりました。

当時ヒロポンは合法で、それこそ栄養ドリンク扱いだったわけで…。
ちなみに米軍パイロットは、未だに薬漬けだとか。
*書式は整っていて表向きは個人の判断と責任で、って事になってるけど拒否したらパイロットクビだそうで…。まあ薬で集中力を高めた方が戦死率は下がるでしょうから痛し痒しなんでしょうね。

BugsyBugsy 2012/07/11 00:28 10年ドロッポ様

>当時ヒロポンは合法で、それこそ栄養ドリンク扱いだったわけで…。
だからといって青少年に判断力を失わせるような薬物をつかうのはおかしいでしょ。それを本人が志願してsuicide bombに駆り立てたわけだし、当時の教師やマスコミも特攻に赴くことを「悠久の大義」とか「大空の散華」と謳ってはしました。無論戦後は口を拭っています。戦後しばらくもヒロポンの影響にある事件はあとを絶たなかったわけです。

すくなくとも日本史の汚点だと思います。子供たちを犠牲にして大人は戦争に生き残ったわけですから。

moto-tclinicmoto-tclinic 2012/07/11 00:29 医者の自殺率は高いんじゃないか?と思ったら、やっぱりそうでした。
http://medical-confidential.com/confidential/2012/05/post-403.html

>医師の自殺の原因・動機は、健康問題が最も多く、家庭問題、勤務問題、経済・生活問題、男女問題と続く。詳細を見てみると、健康問題の中で過半を占めているのが「病気の悩み・影響(うつ病)」だ。
長年、医療費を抑制していたイギリスの医療に詳しい近藤克則・日本福祉大学教授によると、イギリスでは90年代に医師や看護師が不足し、長時間労働による「燃え尽き症候群」により、自殺率は医師が他職種の2倍、看護師で4倍となったという。現在、イギリスは医療費拡大を伴う医療制度改革を進めているが、かつてのイギリスのように日本の医療を荒廃させてはなるまい。

ふーん。

10年ドロッポ10年ドロッポ 2012/07/11 09:52 Bugsy様、
>だからといって青少年に判断力を失わせるような薬物をつかうのはおかしいでしょ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3
現在でこそ覚醒剤の代名詞であるヒロポンだが、当時は副作用についてまだ知られていなかったため、規制が必要であるという考え方自体がなく、一種の強壮剤のような形で利用されていた。

そういうものの言い方は我々が最も忌み嫌うところの「後出しじゃんけん」そのものかと…。

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