新小児科医のつぶやき

2012-08-18 続なんとなく面白かった情報

昨日に引き続き、平成21年7月5日付で日本助産師会島根県支部が出している平成21年7月5日付で出されている助産師業務ガイドラインに関する説明資料です。とくに「ガイドラインの活用の前提となる留意事項」になるのですが、この留意事項の定義は、

ガイドラインの活用の前提となる以下の事項にも十分留意して助産所業務を展開していただきたい。

昨日もやりましたが、「どうも」努力目標らしいと解釈しています。この「前提となる留意事項」の中に、

    (5) 助産所におけるケア等の提供に際しては、個人情報保護に努めることとする。

こういうものがあります。ここも昨日は助産所のケアも医療行為に含まれるのは当然であり、医療行為であれば医療情報であり、個人情報以前に守秘義務があるのは当然ではないかとしました。それを「努めることとする」はおかしすぎるんじゃないかともさせて頂きました。ところが元もと保健所長様から久しぶりにウィットの富んだ解釈を頂きました。私も最初はどこが狙いかチトわかりにくかったのですが、何度もコメントを頂いてようやく面白味が滲み出てきました。

やや複雑と言うか捻りがきついので、エントリーを立てて解説してみます。出来れば面白味が理解できる人が多いほうが嬉しいからです。それとこれが正当な法律解釈かどうかは別です。私が法理論に詳しくないからです。ただそう解釈すれば「前提となる留意事項」が理解できると言う事です。とりあえず法の規定は2種類あるとしています。

  1. 行うことを禁じる規定
  2. 行えば罰せられる規定

どっちも行えば罰せられるのは同じだから実質として同じだろうと考えそうなものですが、これは明瞭に区別されるです。明瞭に区別されるとニュアンスがどう変わるかと言えば、

  1. 行うことを禁じる規定・・・該当行為自体を禁止できる
  2. 行えば罰せられる規定・・・該当行為自体は禁止できない

もう少し平たく言えば「行えば罰せられる規定」には、その行為自体は法は禁じていないです。あくまでも、もし行えば「罰するぞ」としているだけと言う事です。「罰するぞ」も無理に言い換えれば、罰する事も罰しない事もあるかもしれないの意も含んでいるぐらいでしょうか。これに対し「行えば罰せられる規定」は該当行為自体が禁止されていますから、行為を行うだけで問答無用に罰せられるです。

ここで条文をチェックしますが、


刑法143条 保助看法第42条の2
医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 保健師、看護師又は准看護師は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保健師、看護師又は准看護師でなくなつた後においても、同様とする。
行えば罰せられる規定 行うことを禁じる規定

なるほど微妙にニュアンスが違うといえば違います。だから助産師会は「前提となる留意事項」に、

  1. 漏らす事自体は禁じていない医療情報の秘匿は盛り込んでいない
  2. 個人情報保護法も分類としては「行えば罰せられる規定」になるため「努めることとする」に留めた

これであれば個人情報保護に関しても触れなくとも良さそうなものですが、この辺は色々事情があったんでしょうぐらいにしておきましょう。ま、多くの助産所は個人情報取扱業者に該当しないとも考えられるので、どのみち空文であるぐらいの考え方かもしれません。


何か重箱論争みたいでスッキリしないと思いますが、ここまで細かく解釈しないと「前提となる留意事項」は理解が出来ないのは同意します。さすがは法務大臣を輩出するだけの団体なので一味も、二味も違うと言うところでしょうか。もっとも、この解釈を提案した元もと保健所長様も、

「刑法に罰条があるから遵守義務がある」というのは短絡思考です。
「人殺しがいけない」のは刑法以前に「人として当たり前」のことで、
「刑法に書いてあるからいけない」わけではないのです。

同様に、医師、助産師はもちろん、歯科医師や看護師についても、
「患者の秘密漏洩がいけない」のは法律以前に「医師(など)として当たり前」のことで、
「刑法や保助看法に書いてあるからいけない」わけではないのです。

そういう意味で、
「助産所におけるケア等の提供に際しては、個人情報保護に努めることとする。 」の
奥深い意味に対し、皮肉なしに敬意を持って感服しているのです。

まあ時に素晴らしい法律解釈をしばしば行なわれる前歴はありますから、この程度は驚いてはいけないのかもしれません。法は様々な社会生活を規制はします。ただしすべてを規制し尽くしているわけではありません。法規制以前に社会常識、社会倫理で禁じられているものがあるのが前提と思っています。医療従事者の医療情報の秘匿も、法があるからではなく、それ以前に職業倫理として望ましくないはあるです。

ま、小難しい話は置いといても法であっても、医療従事者が医療情報を漏らせば「行うことを禁じる規定」であれ、「行えば罰せられる規定」であれ実質として同じ意味と解釈するのが社会常識と私は思っています。机上でいくら捻くり回そうが、職業常識・職業倫理として「おかしい」と感じるものはやはり「おかしい」と指摘するのは変わらないとしておきます。

京都の小児科医京都の小児科医 2012/08/18 14:16 下記私論ですが・・・
>「患者の秘密漏洩がいけない」のは法律以前に「医師(など)として当たり前」のことで
医師として当たり前のこととは、医師がプロフェショナルな職業として独立・自立して
いることが前提であると考えます。
ところが日本の医師は現医制上、厚生労働省から独立・自立していません。
医師免許には厚生労働大臣と医政局長の名の記載があり、さらに現時点は両名とも
医師ではありません。
歴史的にも医制成立と同時に厚生労働省(旧厚生省)ができたわけではありません。
さらに当たり前ですが、近代医制以前から産婆と同様に医師という職業は存在しています。
私は、米国・英国・フランス・ドイツなどいわゆる先進国は医師は一般の行政組織から独立した職業集団であると理解しています。独立・自立したうえで初めて職業常識・職業倫理が問われるのは当たり前のことでは。。

YosyanYosyan 2012/08/18 14:27 京都の小児科様の持論は良く存じていますが、制度上の自立と精神・倫理としての自律はチト違うのではないでしょうか。精神・倫理も自律できない状態で制度の自立は難しいと言うところです。詳しいようなのでご質問したいのですが、

 >米国・英国・フランス・ドイツなどいわゆる先進国

これらの国々は職業集団として独立するまでは職業常識も職業倫理も無茶苦茶で、これを制度上で独立させたら急に良くなったのでしょうか。それとも近代医業が成立すると同時に独立した職業集団として成立し、一時たりとも制度上の独立を冒された事はなかったのでしょうか。そこをはっきりさせないと論点としてシンドイ気がします。

京都の小児科医京都の小児科医 2012/08/18 14:28 Yosyan様が
刑法143条と保助看法第42条の2
を比較してあげられたので疑問ですが・・・
業務上取り扱ったことについて知り得た人とその業務上知り得た人の
取り扱ったことについてはどう考えればいいでしょうか。
私は取り扱ったことに関しては主治医であると解釈しました。
逆に言えば、病院などで主治医ではない患者さんの情報に関しては
刑法143条には問えないのでは・・・

YosyanYosyan 2012/08/18 14:43 京都の小児科医様

 >逆に言えば、病院などで主治医ではない患者さんの情報に関しては
 >刑法143条には問えないのでは・・・

詳しい法律上の解釈は知る由もありませんが、患者のカルテを読むと言う事自体がまず建前上はすべて業務になるかと存じます。同様に院内で耳にした患者に関する医療情報もすべて業務です。業務でないとそれらは聞き得ない情報だからです。私は業務とはそう解釈していましたが、そうではないのでしょうか。

元もと保健所長元もと保健所長 2012/08/18 16:11 Yosyan先生

独立スレを立てていただき恐縮しております。
ただ、私の論点は、ただただ「助産師会のガイドライン」への感嘆と賞賛に尽きるのであって、守秘義務そのものを突き詰める意図はござんせん。

ところで、正当事由のない診療拒否のように、法律で禁止されていても罰則がないことはいくらでもあります。

禁止○ 罰則○ 保看の守秘義務
禁止× 罰則○ 医助の守秘義務、殺人
禁止○ 罰則× 医師の応召義務
禁止× 罰則× 自由権に基づく多くの行為

罰則があるから禁止されている、わけではないことをご理解ください。

元もと保健所長元もと保健所長 2012/08/18 16:33 すみません。書きかけのまま投稿してしまったので続けます

刑法第十三章 秘密を侵す罪
第百三十三条  略
第百三十四条  医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2  宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする。

(親告罪)
第百三十五条  この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

ということで、医助の秘密漏洩であっても、秘密を漏らされる相手方が告訴しないなら罰せられることはないのです。

私がストレートに「罰せられるから守秘義務がある」とは考えないのは、「罰せられないなら守秘義務はなのか」という問いにイエスと答えられないからです。

なお、保看の秘密漏洩の罰条にも親告罪の規定はありますが、それとは別に秘密漏洩を禁じる条文が独立してあるのは前述したとおりです。

YosyanYosyan 2012/08/18 16:35 元もと保健所長様

今日はあまりに感心したので立てさせて頂きました。直球よりも変化球が好きなのですが、あれだけの発想は出来ませんでした。ナックルボールとかパームボールを見ている心境でした。それはともかく、やっぱりあの書き方は良くないですねぇ。屁理屈はともかく、助産所ではまるで個人情報保護が杜撰であると書いているのと同じです。でなきゃ、あんな表現が出るはずがありません。

項目に並べる時に「違和感」とか「不自然」とかの意見は出なかったのでしょうか。それこそ常識的には「おかしい」と誰かが感じそうなものですが、決定会議に出席された重鎮の方々は「自然」に受け取られたのだとしか思えません。面白い団体です。

元もと保健所長元もと保健所長 2012/08/18 17:04 Yosyan先生

>項目に並べる時に「違和感」とか「不自然」とかの意見は出なかったのでしょうか。それこそ常識的には「おかしい」と誰かが感じそうなものですが・・

お言葉を返すようですが、医も助も国家成立の遙か以前からあった「職能」と思われ、保助のような国家統制下にできた職業よりはむしろ「宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者(刑法第134条第2項)」に近いものと思います。

もし、かの団体が、ご自分たちを刑法第134条第2項に規定する職業に近いと感じておられるとしたら、ここ数日の先生のスレのご指摘内容はすべて合点がいくと思います。
もちろん、それが近代国家に受け入れられるかどうかは別の問題ですが。

YosyanYosyan 2012/08/18 17:19 元もと保健所長様

 >又はこれらの職にあった者

なるほどねぇ。

元もと保健所長元もと保健所長 2012/08/18 17:23 気づいていただけましたね(゜ー゜)ニヤリ

tadano--rytadano--ry 2012/08/18 18:16 関係ないですが、こんなこともありましたよ

http://pika2.livedoor.biz/archives/4093242.html

「娘さん余命半年」病院から漏洩 院長に賠償命令

娘が余命半年だという情報が病院から漏れ、他人から告知されたことで精神的苦痛を受けたとして、大分市の女性が同市の病院の院長に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が12日、福岡高裁であった。犬飼真二裁判長は請求を棄却した一審・大分地裁判決を変更し、院長に110万円の支払いを命じた。

判決によると、女性は2008年7月、がんの一種「ユーイング肉腫」の治療を受けていた娘について、知人男性から「娘さん、長くないんだって」「あと半年の命なんやろ」と告げられた。男性の妻は当時、看護師として娘を担当しており、病状を男性に漏らしたという。女性は病院からは娘の余命を告げられたことはなかった。娘は約半年後に19歳で死亡した。

犬飼裁判長は「時間や場所を問わず、職務上知り得た秘密を漏らさないよう監督する義務を負っていた」と使用者としての院長の責任を認めた。

YosyanYosyan 2012/08/18 19:13 tadano-ry様

それは保助看法42条の2の単純違反の解釈で宜しいかと。

tadano--rytadano--ry 2012/08/18 20:27 問題はそこじゃないんです。

「時間や場所を問わず、職務上知り得た秘密を漏らさないよう監督する義務を負っていた」というところが関心を呼んだところです。
 24時間すべての従業員を監督するなんて無理です。
 ですから管理者はどこまで注意を換気すれば「時間や場所を問わず、職務上知り得た秘密を漏らさないよう監督する義務」を負ったと言えるのでしょうか。

 個人情報の内規を作って誓約書を取るくらいならどこの病院でもやっているでしょうから、それではダメだという判断がされた可能性が高いです。じゃあどこまでやればいいのでしょうか。

 そこが知りたいと思っただけです。

tadano--rytadano--ry 2012/08/18 20:34 訂正

換気→喚起

ふぃっしゅふぃっしゅ 2012/08/18 20:34 Yosyan先生、こんばんは。
昨日からの守秘義務の件、勉強になります。学生時代、助産師の義務の中のひとつとして学びましたが、保助看法第42条2項については恥ずかしながら初めて気づきました。

法律に疎い私ですが、看護師内診問題以降、日本産婦人科医会の資料などを読む機会が増えて、もしかしたら私たち助産師は自分たちの法的根拠についてきちんと教わっていないのではないかと考えるようになりました。

たとえば、「周産期医療崩壊 −説明と対策ー」[http://www.oitaog.jp/syoko/senryaku/4.pdf]のp.7に保助看法の解釈について書いてあります。
***以下、引用***
・医師法の例外措置として、戦前からいた産婆に正常に限って助産をしてもよいとした法律(産婆救済法)
・資格のない、衛生兵などが業とすることを禁じたもの。
・「助産」の定義はされていない。
・医療が長足に進歩した現在には、そぐわない
***以上、引用終わり***

保健婦・看護婦が国家資格になったのは戦後なので、助産婦の守秘義務が刑法で先に定められて後から保健婦・看護婦が保助看法で追加されたというのも時系列的なものでしかないのですね。

そしてよく助産婦が「正常な分娩は助産師だけで介助できる」ことの法的根拠とする保助看法第37条の「ただし、臨時応急の手当てをし、又は助産婦がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に付随する行為をする場合はその限りではない」と言う部分も、産婆を近代医療の枠組みに入れる暫定処置のために過ぎなかったということを、未だに助産師は認められずに教育課程でもその法律の歴史の視点を教えていないのだと思います。

助産師はせっかく周産期医療の中で正常・異常すべての妊産婦さんに対応する能力を発展させてきたのに、いまさら「正常分娩」にあえて自らの職域を狭めてまで何かを守ろうとするのは、自分たちが聖職に近い特別な医療職と思い込んでいるためなのかもしれません。

もう産婆救済法の時代ではないと、つくづく思うこの頃です。

元もと保健所長元もと保健所長 2012/08/19 00:04 ふぃっしゅ 2012/08/18 20:34 さん

元もと保健所長と申します。まずは、横レス失礼します。

>昨日からの守秘義務の件、・・保助看法第42条2項については恥ずかしながら初めて気づきました。

とのことですが、(保看の)守秘義務規定は「第42条の2」であって「第42条第2項」ではありません。

さて、
>助産師はせっかく周産期医療の中で正常・異常すべての妊産婦さんに対応する能力を発展させてきたのに、いまさら「正常分娩」にあえて自らの職域を狭めてまで何かを守ろうとするのは、自分たちが聖職に近い特別な医療職と思い込んでいるためなのかもしれません。

詳細は存じ上げませんが(とはいえ「助産婦の戦後」くらいは読んでいます)、戦後の助産師が何を目指してきたかということだと思います。
私見ですが、病院助産師の多くはふぃっしゅさんのように「正常・異常すべての妊婦さんへの対応」を目指してきたのでしょうし、一方で「何を捨てでも医師からの独立がほしい」と願っておられる方もいると思います。

いくら医療が進歩しようと、医師がそうでありつづけるように、助産師もまた「聖職に近い特別な医療職」であって、医業を定義するまでもないように、助産も定義するまでもない、と私は考えています。

それだけに、現行法の助産師への扱いは不当と思うと同時に、医師への反感にのみ突き動かされているかのような誤解を受けかねない言動をされる方々がもしおられるのなら、その方々には是非ともご注意いただきたいとも思います。

京都の小児科医京都の小児科医 2012/08/19 05:25 Yosyan様

私のコメントを削除さず、残していただきありがとうございます。
色々な資料を少しづつ集めていますが。。まだ私の中では固まっていません。

たぶん、普遍的な考えとして一般的に情報共有可能な点は2点あると思います。
1.医療制度は医制百五十年の視点で論じなければならないこと
医制のスタートは、1874年(明治7年)8月ですから2025年程度は我々の視野に
いれておく必要があると思います。
2.国医論がないこと
私の知るかぎり、現在の日本の医師で制度として国医を論じた方はあまりおられないように思います。
具体的にはイギリスのChief Medical Officer、アメリカ合衆国の Surgeon General
のことです。

京都の小児科医京都の小児科医 2012/08/19 05:51 >いくら医療が進歩しようと、医師がそうでありつづけるように、助産師もまた「聖職に近い特別な医療職」

たぶん、私の印象では産科医の先生方は堕胎をされると思いますが
助産師さんは堕胎はされないと理解しています。素人の考えですがこの部分が
産科医と助産師の大きな違いでは。 さらに、堕胎の件はHP等に宣伝しづらい
事項であるとも思います。

京都の小児科医京都の小児科医 2012/08/19 06:02 tadano--ry様

>犬飼裁判長は「時間や場所を問わず、職務上知り得た秘密を漏らさないよう監督する義務を負っていた」と使用者としての院長の責任を認めた。

本件に関して論点になっているのは責任の所在が看護師ではなく院長であることだと
理解しています。

ふぃっしゅふぃっしゅ 2012/08/19 07:31 Yosyan先生、おはようございます。

元もと保健所長様、ありがとうございました。(訂正もすみません)

私が助産師になった80年代は、まだ看護師資格を有していなかった旧資格の方々が助産所にもたくさんいらっしゃったのだと思います。
でもいずれは、完全にそういう世代から交替する時代がくることを見越して私たちの業務が医療の中でどのように位置づけられるのかを考える必要があったのだと思います。

「自然なお産」を求める動きまでは理解もできたのですが、「自立した助産師」という言葉が使われるようになって、私は助産師の世界は変な方向にいってしまったと冷めた目で見るようになりました。

たとえば、現在の医療の中で医師はX−Pの撮影も自分でできるけれども放射線技師が専門知識をもってその業務を担っているように、分娩介助も医師ができるけれど助産師にその部分を任せているということと捉えれば、私たちはなんら「自立していない」なんて言われる筋合いはないことです。

助産師の世界での法の解釈は恣意的なことが多く理にかなっていないので、何が大事なのか見失っているのだと思います。

「個人情報」についての今回の件でも、助産所や院内助産所のHPではたくさんの母子の写真や分娩風景などが掲載されて「こんなにすてきなことをしています」とアピールしています。
でもヒヤリハットやインシデントレポートなど、医師のいないところでの分娩介助で危険なことはなにか、それの対策はどうしているかなどは、助産師でさえもその実際を知る手段はほとんどありません。
知らずして、どうして大丈夫なんて人に言えるでしょうか。

まぁ、反対に社会からみたら医療から逸脱していて危険だと思うようなことも助産所のHPにはたくさん書かれているのでその実際を知ることができるわけですが。
それはおかしいのではないかと指摘すると議論を飛びこして中傷ととらえられてしまうのであれば、助産師の世界は本当にダメダメですね。

luckdragon2009luckdragon2009 2012/08/19 08:22 >個人情報の内規を作って誓約書を取るくらいならどこの病院でもやっているでしょうから、それではダメだという判断がされた可能性が高いです。じゃあどこまでやればいいのでしょうか。

今件に関しては、該当判例を知りません。
つまり守秘義務を侵した従業員が居た場合に、管理責任者が免責された事例です。
私が知らないのかも知れませんが、素直に解せば、守秘義務違反事例があった場合、当事者と共に「管理責任者も連名で責任を問われる」、という事かなあ、と思います。

法に詳しい人なら、もうちょっと違う見解もでるのかも知れませんが、ひとまず、私の解釈は組織責任者の責は「逃れ得ない」と解釈しています。

元もと保健所長元もと保健所長 2012/08/19 08:27 京都の小児科医 2012/08/19 05:51 さん

近代医療制度や職能職種の視点や射程をどう設定するかについては、私にも持論があります。ただ、刑法はもともと「人として当たり前の規範を破ったらこういう罰を与える」というものですから、「職業集団としての自立や自律」などとの話に絡めるまでも無いと思います。
けだしこのようにしないと、殺人は禁じられていないのか、外国人はどうなんだ、宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者、は職業集団として自立・自律しているのか・・などといろいろなことを話題にしなければならなくなります。

>たぶん、私の印象では産科医の先生方は堕胎をされると思いますが助産師さんは堕胎はされないと理解しています。
>素人の考えですがこの部分が産科医と助産師の大きな違いでは。

堕胎や嬰児殺しも、産婆の歴史の中では「本来業務」だった時代が長いと思います。
私が聖職と考える「医師」と「産婆」は、歴史の中で、明治初年の医制の中で、近代化の中で、そして戦後の医療制度の中で揺れ動いてきたものであり、人工職能である保健師や臨床放射線技師などとは区別して考えるべきと思います。

そういうわけで、私は産婆を医師と同様の聖職と考えていますが、それだけに、聖職の名に値しない言動をしていると思わざるを得ない方々がもしいるとしたら、その活動をとても残念に思います。

YosyanYosyan 2012/08/19 08:52 ふいっしゅ様

もし御指摘の通りなら1980年代当たりに岐路があったのかもしれません。とりあえず旧来の産婆的な助産師路線ではどうしようもないが問題の前提です。その中でふぃっしゅ様が言われたような病院の中の分娩介助の位置に活路を見出そうとする考え方もあったと思います。考え様によってはこの路線の延長上の運動が看護師内診問題として表面に出たとも考えられます。

病院内のポジション確保はその方向性で動いたとして、もう一つの動きとして助産所を守る路線です。これは正面から競っても話にならないので、病院との差別化路線です。出てきたのが「自然なお産」路線の理解でもそんなに外れていないと思っています。ただ差別化のためにこの路線の推進もドンドン尖鋭化していったです。

「自然なお産」の差別化のためには病院での分娩を貶める必要があります。貶めた分だけ助産所が浮かび上がるわけです。貶めるのは言葉の上だけでは不十分で、実際の医療行為も差別化が必要です。つまり可能な限り病院で行っている医療行為を否定するです。否定が前面に出てくると病院側との摩擦が強まります。摩擦が出てきた時に摩擦も利用したと見ています。これでますます助産所分娩が差別化できるです。いつしか病院分娩と助産所分娩は言葉の上だけではなく、内容すら別の路線を歩んで行ったです。言い様によっては協調路線を放棄し、独自路線を選択したでしょうか。

助産師業界も一枚岩とは思っていませんが、指導者クラスは独自路線をより過激に進める事が疑問なき方針として持たれていると思っています。一つの象徴が代替療法の大幅導入で、後に世間の批判を浴びるホメパチ積極導入です。他にもマクロビも濃厚に導入しています。この指導者クラスの独自路線推進の怖いところは、助産師教育にフィードバックされる点だと思っています。前にも取り上げた事がありますが、助産師学校によっては過激化した独自路線こそが助産師業の本分であるとの教育が推進されています。

どこに向かっていくのだろうと外野からは思わざるを得ないところはあります。ま、結果として助産所の経営は持ち直し、持ち直したので新規開業も増え、ジリ貧時代を食い止めたの評価もできるのかもしれません。その代わりに払った代償は、どこかでまた払う必要がありそうにも思っていますが、払う日は来ないのでしょうかねぇ。

元もと保健所長元もと保健所長 2012/08/19 08:57 ふぃっしゅ 2012/08/19 07:31 さん
またまた横レス失礼します

>完全にそういう世代から交替する時代がくることを見越して私たちの業務が医療の中でどのように位置づけられるのかを考える必要があったのだと思います。

そうですね。医療の現在と将来に目を向ければ、おっしゃることに異論はありません。

>たとえば、現在の医療の中で医師はX−Pの撮影も自分でできるけれども放射線技師が専門知識をもってその業務を担っているように、分娩介助も医師ができるけれど助産師にその部分を任せているということと捉えれば、私たちはなんら「自立していない」なんて言われる筋合いはないことです。

これについては、私はすこし違う考えを持っています。
医師との関係を喩えに出すなら、診療放射線技師よりは、歯科医師か薬剤師の方がふさわしいと思います。

歯科医師ならば、歯科診療の名目があれば人体にどのようなことでもできます。私が卒業した大学病院では、歯科麻酔はもちろん、下顎骨再建のための腸骨稜採取を歯科医師だけで行っていました。これが今も認められるかは分かりませんが、個人的には認めるべきと考えています。

薬剤師の調剤は排他的業務であり、医師・歯科医師・獣医師の調剤は、自らの診療の一環として例外的に認められているに過ぎません。

産婆も、歴史の中では医師との関係において歯科医師や薬剤師と通じるものがあったと思います。

一方で、歴史は歴史として、現代医療や未来医療が「助産師の自立」を許すかどうか、許すとしてもどう許すかは、裁判所も含めてその国のその時代の国民が決めることと考えています。

ふぃっしゅふぃっしゅ 2012/08/19 13:54 再び、コメント失礼します。

Yosyan先生、ありがとうございます。
内側から見ても、どこへ私たちは行くのだろうと思ってしまいます。
こればかりはその時代の社会の状況が決めることなので仕方が無いのですが、あと数年か10年ぐらいでもっと産科の先生がいらっしゃらなくなって、助産所や院内助産で助産師だけでの分娩介助をせざるを得なくなった時にその代償を払うことになるのかもしれません。

また助産師内部でホメオパシーを初めとする代替療法に切り込めなかったのは、乳房管理・母乳相談自体が代替療法のまま広がってしまっているからではないかと思います。効果が認められれば、医療として認められすべての助産師・看護師の通常看護になっていくはず。ところが内部に民間資格を作って、一般化する努力とは反対の方向へ進んでしまったものが、助産師にはたくさんありますから、そこに切り込めば開業という形態が崩壊してしまうことでしょう。

コメントが長くなってしまい申し訳ありません。
元もと保健所長様、ありがとうございます。
たしかに歯科医師や薬剤師と通じるものがあるという方が、正確かもしれませんね。
明治時代の産師法制定の動きも医師、薬剤師と同等の立場を求める動きのようでした。
あるいは19世紀のイギリスでは、医師・弁護士と並ぶ聖職として認めよという動きがあったと読んだことがあります。これはどちらかというと階級社会の中での闘争のようですが。

ただ歯科医師や薬剤師が「異常」に対応する職種なのに対して、産婆の場合は「正常なお産」を扱う上での正常の境界線争いともいえるのではないかと思います。
医療が格段に発達した現在では、「終わってみないと正常かどうかわからない」と考えることが正しいと思います。


ところで、1980年代初めに、母子健康センターの見学をしたことがあります。まだ助産婦が分娩管理をしていたところでした。その後ほとんどの母子健康センターの助産婦による分娩の場は閉鎖されました。これもその時代の社会が求めた方向だったのだと思います。
この母子健康センターの歴史を調べているのですが、なかなか資料がなくて残念です。何かご存知のことがありましたら是非教えていただけると幸いです。

元もと保健所長元もと保健所長 2012/08/19 19:05 ふぃっしゅ 2012/08/19 13:54 さん
>あと数年か10年ぐらいで・・助産師だけでの分娩介助・・その代償を払うことに・・

代償を払うのは誰になるでしょうかねぇ。すでに私には「それは助産師の独立を認めなかった国民だ!」というカナキリ声の幻聴が聞こえます。

>産婆の場合は「正常なお産」を扱う・・

お産自体は病気ではないので、そういう考え方は成立するでしょうし、現在の日本の助産師の守備範囲もそのように定められています。
しかし、既述ですが、歴史の中では、異常分娩や堕胎や嬰児殺しも当然の付帯業務として行ってきたものと思います。

母子健康センターについては、昭和39年に設立された「全国母子健康センター連合会」の後身である「全国保健センター連合会」に資料があるのではないかと思います。(リンク切れのようなので、もうないかも)
あとは、普通にciiniiや医中誌で検索すれば、いくらか引っかかってくるようです。

京都の小児科医京都の小児科医 2012/08/19 19:21 ふぃっしゅ様

たぶん、ご存じと思いますが
母子健康センター事業の研究
身体をめぐる政策と個人 中山まき子 勁草書房 があります。
ホメているのかけなしているのかよくわからん書評
(たぶん、政治的な立場もあるのでは・・・)
http://www.igs.ocha.ac.jp/igs/IGS_publication/journal/5/journal05151.pdf

京都の小児科医京都の小児科医 2012/08/19 19:39 上記、中山まき子先生を探ってゆけば
色々と出てくると思います。
http://researchmap.jp/read0070650/
いわゆる雪玉式技法(snowballing technique)でしょうか
もし、アカデミックもしくは成果物にされたいのなら
看護研究のための文献レビュー マトリックス方式 
Judith Garrard 訳安部陽子 医学書院
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=81731
等が参考になると思います。

att460att460 2012/08/19 20:01 どうでも良いことですが。

>もう少し平たく言えば「行えば罰せられる規定」には、その行為自体は法は禁じていないです。あくまでも、もし行えば「罰するぞ」としているだけと言う事です。「罰するぞ」も無理に言い換えれば、罰する事も罰しない事もあるかもしれないの意も含んでいるぐらいでしょうか。これに対し「行えば罰せられる規定」は該当行為自体が禁止されていますから、行為を行うだけで問答無用に罰せられるです。

後者の「行えば罰せられる規定」は「行うことを禁じる規定」の誤りでは?


そういえば、NATROMさんの所に、何度か助産師らしき人が業務上知りえた秘密を書いていたような

京都の小児科医京都の小児科医 2012/08/19 20:03 追加
あと国のデータベースもあると思います
厚生労働省研究成果データベース
http://mhlw-grants.niph.go.jp/
で母子健康センターで1件、助産院で20件ヒットしました。

麻酔科医麻酔科医 2012/08/20 07:15 ふと思うと、私が病院で一緒に働いている助産師さん(いつも帝王切開の時は、ベビーは助産師さんがケアしてくれています。)というのは、100%看護師資格をお持ちです。
医師免許を持った上で、麻酔科標榜医を持つように、看護師資格を持った上で助産師資格をおとりになって、周産期に特化した看護をされているわけです。
しかし、私が生まれた頃は、助産師さんだけの資格で働かれていた時代もあります。
そういう流れからすると、もうすぐ看護師資格のない助産師さんというのは、いなくなるんでじゃないでしょうか?とすると、医療機関で、医師と看護師という関係を経験したことがない助産師というのは、存在しなくなる?
とまた時代は変わっていくような気がします。
助産師さんの資格しかないと、働き先が限定されますが、看護師資格があれば、周産期以外にも勤務先があるような、気がするんですが。どうなんでしょうか?産婦人科医がお産をやめても婦人科開業できるみたいな。

元もと保健所長元もと保健所長 2012/08/20 08:02 麻酔科医 2012/08/20 07:15 さん
>私が病院で一緒に働いている助産師さん・・100%看護師資格をお持ちです。
>看護師資格を持った上で助産師資格をおとりになって、周産期に特化した看護をされているわけです。
>しかし、私が生まれた頃は、助産師さんだけの資格で働かれていた時代もあります。
>そういう流れからすると、もうすぐ看護師資格のない助産師さんというのは、いなくなるんでじゃないでしょうか?
>とすると、医療機関で、医師と看護師という関係を経験したことがない助産師というのは、存在しなくなる?

いくつか誤解もあるようですので、整理しておきます。
1 保助看制度ができた戦前は、それぞれの養成課程が独立していて、看護教育を受けていない保助がいるのが前提であった。
2 戦後、GHQにより、保助看は一括して看護職とされ、保助養成は看護教育終了の後に行われることになった。また、保助であれば看の仕事ができるとされた(法第31条第2項)。今も、保助のみの免許所持者は医療法の標準数で正看扱いが可能。
3 しかし、より簡単と思われる保健師国試のみ合格し免許を受け、名称独占がなかった「看護婦」を堂々と名乗り看護婦の仕事をするヤシが多発したが、法的に問題なかった。
4 それじゃあんまり、と、看護師国試合格を保助の資格要件にした。看護師の名称独占規定も作った。
5 しかし今でも、保看国試、助看国試を合格して保や助の免許のみを取得することは可能であり、かつ医療法標準数の正看扱いも変更無し。
6 ただし、たとえ国試に合格していても、看護師免許をとらなければ、名称独占規定ができた「看護師」とは名乗れなくなったが。

------------------
保健師助産師看護師法
第五条  この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

第三十一条  看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法 又は歯科医師法 (昭和二十三年法律第二百二号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
2  保健師及び助産師は、前項の規定にかかわらず、第五条に規定する業を行うことができる。
第四十二条の三  保健師でない者は、保健師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。
2  助産師でない者は、助産師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。
3  看護師でない者は、看護師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。
4  准看護師でない者は、准看護師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。

京都の小児科医京都の小児科医 2012/08/20 08:25 たぶん、想定外と思いますが・・・
看護師免許・助産師免許取得後 医学部に入り直し医師免許をとって
その後、産科を勉強して、産科医になったにもかかわらず、助産師の資格で
病院勤務あるいは助産所を開業した場合は・・・・・
え〜〜〜と、まったく問題ないか???。。。

ふぃっしゅふぃっしゅ 2012/08/20 11:40 Yosyan先生、こんにちは。
元もと保健所長様、京都の小児科医様、資料をご紹介くださいましてありがとうございました。
研究とは無縁な身なのですが、Yosyan先生の昨日朝のコメントにあるように1980年代が助産師の岐路で、それがこの母子健康センターと助産所が激減したことと深い関係があるのではないかと考えています。
今後少しずつこの時代の研究が進んで、なぜ助産師だけで分娩介助する場がなくなりつつあったのか助産師のとって良いことも悪いことも明らかになっていくとよいと思っています。
今回も本当にいろいろと学ぶ機会になりました。
皆様どうもありがとうございました。

麻酔科医麻酔科医 2012/08/20 21:22 元もと保健所長 2012/08/20 08:02さま
くわしい法律の話をありがとうございます。
そうすると、看護師の資格なしでも助産師の資格のみで、産婦人科病棟勤務希望とかでできるんですね。公立病院なので、助産師資格はあるけれど、、、、もうお産とか夜勤がつらい方は、保健所勤務に流れていかれる方もいます。公務員が継続するところに、メリットがあるみたいです。
そういえば、以前あった、産科看護師はどうなったんでしょうか?

あと、NHKで助産所ドラマがはじまるみたいですね。
リアル書店によったら文庫本のところに沢山積んでありました。
http://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/22000/116967.html
「つるかめ助産院〜南の島から〜」
島の助産師に“余貴美子”>>>ディアドクターや『RAILWAYS〜愛を伝えられない大人たちへ』の名看護師っぷりから助産師さんもOKだとは思いますが、あらすじを読む限りは、ドクターコトーの助産師バーション?ですかね。